透き通った世界にロスサントスの住人をブチ込む話 作:おしゅし
そういう訳でワカモさんと協力する事になったあなたですが、これから何をすれば良いのかまるで分かっていませんでした。
普段であれば今何をするべきなのか、どこに行くべきなのか、そういった事はハッキリと分かるハズです。
しかし今はそれがまるで分かりません。
どうやらこちらに来てからその辺の''勘''と呼べるようなものが一部機能していないようです。
新たな事実の発見に、理解を深めたいところでしたが、そういう訳にもいきません。
あなたは受けた仕事はしっかりこなすタイプの犯罪者です。
プロとしての自覚を持つあなたは、今回の依頼主であると言えなくもないワカモさんに、自分達はこれから具体的に何をするのかを質問しました。
「あら。そういえば具体的に何をするのかは伝えていませんでした。」
そう言ってワカモさんは、これからDUにある連邦生徒会所有の施設に攻撃を仕掛けると教えてくれました。
それを聞いたあなたは、
''わざわざ歩いて行かなくても自分がB11サンダーボルトでその施設とやらを瓦礫に変えよう''
と進言しました。
「待ってください。あなたの言うB11サンダーボルト?が何かは分かりませんが遠慮いたします...」
ワカモさんが苦々しい顔をしながら断って来たことに驚きが隠せないあなたは、なぜダメなのかと聞き返しました。
「あなたが自分から提案してくる作戦に不安しかないというのが理由ですね。」
とワカモさんに''頭のおかしい奴''というレッテルを貼られている事実を理解し、あなたは困惑しました。
あなたは客観的に見れば、頭のイカれた史上最悪の犯罪者ですが、自認は良識ある一般人です。
たしかに、あなたはロスサントスに住む犯罪者の中では比較的温厚な方ではあります。
武装ヘリでカーミーティングを邪魔したり、目の前を通る他の住人を殺したり、意味もなく人に向けてミサイルを撃ったりはしません。
しかしワカモさんからすれば、つい先程キヴォトスにおける禁忌''殺人''を何の気なしに行おうとしていたイカレ野郎です。
あなたはその決定的なズレを理解しないまま、自分の名誉を挽回すべく、B11による攻撃の利点を伝えました。
が、どうやらそれはワカモさんからあなたへの''イカレ野郎''という評価を決定する決め手になったようでした。
「いいですか?あなたは私が伝えた地点で、私が良いと言うまで誰も通さないようにしておいてください!!」
結局、ワカモさんにはあなたの思いは届かなかったようです。
''誰も通さない''という非常に簡単な任務を頂いてしまいました。
しかし約束は約束、あなたは約束はどちらかというと守るタイプの犯罪者です。
''どこを守ればいい?''
あなたは今回のミッションでこの世界(セッション)における自分の強さを測るつもりです。
強さを測るという目的においてバッチリなこのミッションにおけるあなたのモチベーションは意外と高めです。
「なんでちょっと上機嫌なんです???」
ワカモさんはあなたのやる気の高さに困惑と不安を隠しきれません。
「コホン、まあ良いでしょう。あなたにはこちらの通りを封鎖していただきます。」
そう言ってワカモさんが指した地図をあなたは眺めます。
どうやらあなたが封鎖するのは、連邦生徒会から今回の目標への最短ルートにある大通りのようです。
''ああ。任せてくれ''
これだけ広ければ射線も通り放題。先制攻撃を仕掛ければ余裕だと、あなたは自信満々に返事をしました。
「それは良かった。では、現地のスケバンさん達と合流後、作戦を開始してください。」
どうやら調子を取り戻してきたワカモさんが嗜虐的な笑みを浮かべ作戦開始を宣言しました。
あなたは現地のスケバン??と一瞬ツッコミかけましたが、仲間がいるのは別に構わないかと考え、ツッコミをやめることにしました。
あなたは雰囲気に合わせられる犯罪者です。ジャパニーズ オマツリガールではなく厄災の狐としての威厳を纏う彼女に、雰囲気をぶち壊すような質問はしません。
そうしているとワカモさんはどこかに行ってしまいました。
あなたは約束を守るべく作戦を考え、我ながら隙のない完璧な作戦だと自負する最高の案が思いつきました。
そうして、あなたは自信満々に移動を開始します。
バンシーGTSの排気音が遠ざかる頃には意識を失ったスケバン達が残るだけでした。
バンシーGTSを走らせていたあなたは、後ろから追ってくる警察車両に気が付きました。
ロスサントス在住の犯罪者であるあなたに道路交通法という概念はありません。
信号なんて気にした事もありませんし、ウィンカーの出し方すら分かりません。
走れるから走る、それ以上の法はあなたには無いのです。
故に、後ろから追ってくるヴァルキューレを名乗る者たちが、スピード違反がなんだの言っている事に疑問しかありません。
''別に誰かを殺した訳でもないのにどうして''
あなたは真剣にそう考えています。
ワカモさんの殺人未遂のイカレ野郎という評価はとても正確でした。
彼女の人を見る目はとても素晴らしいものです。
しかしどうやらヴァルキューレなる者たちが乗る車両は、あなたのバンシーGTSにまるで追いつけていません。
どんどんと距離が開いていく中、あなたは警察とのチェイスでよくやっていたように拳銃を使い、片方の前輪をパンクさせました。
運転しながら追いかけてくる車の前輪を撃ち抜くという絶技に、ヴァルキューレの方々も驚いているようです。
しかし、時速100キロを超えるスピードで走る車の前輪が急にパンクすると当然、制御を失います。
車両はあらぬ方向を向き、周囲を巻き込みながらクラッシュしました。
あなたは後ろを見ることなく、走り去ります。今は先程考えた作戦の準備をするために一分一秒が惜しい状態です。
そんなアクシデントもありつつ、あなたは目的地に到着しました。
既にスケバン達がいましたが、今は準備が最優先です。あなたは挨拶もそこそこに急いで準備を開始しました。
まずはペガサスに電話をかけます。
''どう言ったご要件でしょうか?''
3コール以内に必ず出てくれるサービス精神に溢れた素晴らしい企業です。
''サベージを頼む''
あなたは自分が保有するヘリの中で最も対地攻撃に優れた攻撃ヘリを頼みました。
''かしこまりました。最寄りの飛行場に最高の状態でご用意いたします''
整備士程ではありませんが、かなり手早く用意を済ませてくれます。
その間に整備士にも電話をかけハンジャールを用意してもらいます。こちらは文字通り最短最速を実現した素晴らしい仕事ぶりです。
しかしハンジャールは今すぐ使う訳ではありません。ちょうど大通りからひとつ入った通りに届けてくれたようなので、停めたままにしておきました。
あとはサベージをとりに行くだけです。距離もそこまで離れていませんし、あなたは走って向かうことにしました。
「お、おい!!」
しかし走り出す前にスケバンの1人に呼び止められてしまいました。
まあ当然と言えば当然です。普通は共に仕事をするとなればコミニュケーションは必須なのです。
ロスサントスにいた頃は会話などしなくとも、周りが勝手に物事を進めてくれていたのでコミニュケーションを疎かにしていても大丈夫でしたが、ここではそうもいきません。
「あんたがワカモさんの言ってた助っ人か...?」
あなたの溢れ出るイカレ野郎オーラに少々たじろぎながら、スケバンが聞いてきました。
彼女は内心、到着するなり「よろしく」の一言だけ済ませてどこかに電話をかけ、急に立ち去ろうとしたあなたを助っ人だとは思いたくないようです。
しかしそんな事をあなたは知りません。むしろあなたはコミュニケーションをとっている方だと自認しています。
ロスサントスでは挨拶すらしないこともざらでした。こちらの常識に合わせようと、あなたなりに努力をしたつもりです。
あなたは自信満々に''そうだ''と応えました。
「そ、そうか…まあ、戦力としては期待していいとは聞いてるが、ヘイローも無い奴が戦闘なんてできるのか?」
彼女だけでなく、他のスケバン達も少々訝しげな様子です。
たしかに彼女達からすれば、ヘイローを持たない弱い存在であるあなたの実力を疑問視するのは当然です。
あなたもその点については言及されるだろうと思っていたので''大丈夫だ''と答えました。
「ほんとかぁ...???」
どうやら疑われているようです。あなたは死ぬ事はあっても死にはしないという特別な存在(プレイヤー)です。
本当の意味での死、終わりのない存在であるあなたは時間さえかければ、自分と同じような存在以外は倒すことができます。
''任せてくれ''
相変わらず致命的なコミニュケーションを発動したあなたは、自信満々な態度を崩さずにそう言いました。
「ま、まあ、そこまで言うなら信じるよ...」
あなたの自信満々な態度と壊滅的なコミニュケーションにより、スケバンは何とか説得できたようです。
カジノのルーレットで車を当てるほどの奇跡が起きた事を、あなたはまるで理解していません。
「それで?戦車級の戦力って聞いてたんだが、どんな感じで陣取るんだ?」
スケバン達は、ワカモさんから命令された足止めという役割をしっかり果たすつもりのようで、作戦を聞いてきました。
あなたは、ここに来る前に思いついた完璧な作戦をスケバン達に伝えることにしました。
まずスケバン達が弾幕を張り、敵の足を止めます。そこにサベージに乗ってビルの影に隠れていたあなたが現れ、障害物ごと敵を粉微塵にするという完璧な作戦です。
もしそれが失敗し、サベージが撃墜されたとしても、隠しておいたハンジャールに乗り、もう一度敵を粉微塵にするという隙の生じぬ二段構えの策をスケバン達に伝えました。
「お、おい」
「これは...」
「ああ...」
「「「完璧だな!!!」」」
誰も、
''最初からハンジャールで良いのではないか?''
''ヘリだと音ですぐにバレそう''
などの疑問は出なかったようです。
スケバン達とて、まだ年若い乙女。稀代の大犯罪者の力(本物)とカリスマ(笑)に踊らされ、正常な判断ができなくなるのも仕方ないというものです。
パーフェクトコミニュケーションをとれたと思っているあなたが、早速サベージを取りに行くことをスケバンに伝えようとした瞬間、スケバンの持つ無線機から声が聞こえてきました。
『おい!お客さんのお出ましだ!』
最前線に陣取り、見張りを担当していたスケバン達が接敵したようです。
『クソっ!ゲヘナの風紀委員とトリニティの正実がいやがる!うちらだけじゃ抑えきれねぇ!』
どうやらマンモス校のゲヘナ、トリニティの一級戦力である風紀委員と正義実現委員会のメンバーがいるようです。
あまりに都合の良い展開に、あなたは笑みを抑えきれません。
「お、おい!正実と風紀の連中がいるなんて聞いてないぞ!」
「どうするんだ!?」
「そもそも敵は何人なんだ!」
後詰のスケバン達も少々混乱しているようです。周囲のスケバン達が口々に疑問と怒号を発しながらも、あなたを時折見ています。
今、この場の指揮権は暗黙の了解であなたにあります。この場の最大戦力に視線が行くのは仕方の無いことです。
あなたは笑みを絶やす事なく、スケバン達に向き直ります。
''最前線のメンバーは退却、陣地を敵に渡せ''
周囲のスケバン達が一斉に黙り、あなたの言葉に集中します。
''陣地に敵が入り込んだら、一斉に弾幕を張れ''
ロスサントスにおいて、あなたは温厚な部類でした。しかし、それは理由も無く殺しや盗みを犯し、それを楽しむような残酷な性格でないというだけです。
殺す理由さえあれば死体すら弄び、それを''お前のせいだ''と嬉々として楽しむ程度には、あなたはあの街に染まっています。
''敵の足を止めろ。それで奴らは終わりだ''
あの街において''それなり''に名の売れた悪であるあなたは、キヴォトスにおいて比類する者のいない巨悪です。
そんなあなたが、ロスサントス基準で悪としてのヒヨっ子、いや、それ以下のスケバン達を悪として魅了してしまうのは当然の事です。
「「「「「「「押忍!!!!!!」」」」」」」
スケバン達の気合いの入った返事を聞き、あなたは走り出しました。敵が既に来てしまった以上、ハザードを急いで取りに行かなくてはなりません。
「おい!退却だ!前線を下げろ!」
「急げ!弾薬も忘れるなよ!」
「前の連中を下がらせろ!やられた奴らもだ!陣地ごと吹っ飛ばす!」
「陣地を作れ!敵の足をとめるんだ!」
無線機に向かって怒鳴ったり、銃と弾薬をめいっぱい持って駆けて行くスケバン達を背に、完璧なコミニュケーションだったと確信を持ち、さらに笑みを深めたあなたは、さらに走るスピードをあげました。
次回でやっと先生とエンカウントです。
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