もしもfgoの杉谷善住坊がキヴォトスにいたら?   作:鈴橋鳴海

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二話

「……なんだいこりゃ」

 

 バスや電車、徒歩での移動など慣れない地域で目的地のD.U.地区にたどり着こうとする杉谷ゼンの目の前には唖然とする程荒れ果てた道路の光景が広がっていた。

 

「……キヴォトスはいつから戦国時代になったんだ?」

 

 紙の地図と目の前の景色を見比べ、道筋と方向は合致していることを確認したあと懐に仕舞い、遠くになり響く銃声に気を付けながら進むことにした。

 

「気にしてもしょうがねえか、あちこちで騒ぎが起きてるみたいだし、さっさと行くか」

 

 連邦生徒会の本拠地方面の道路は何らかの砲撃によって崩れた瓦礫によるものなのか、道を塞いでしまっていたが杉谷は木を登るように軽々と越えていき辺りを見渡しながら降りていく。

 

 瓦礫の向こう側へと行くことができたが、無数の弾痕や大きなキャタピラの跡などを見つけた。

 

 辺りを警戒したが荒れ放題の状況に変わりはなく足元に気を付けながら歩き始めた。

 

「しかしまた、派手に暴れまわってるみたいだな」

 

 人影はなく、車両やバイクなどが放置され、火の気や硝煙の匂いなどが残ってることからそれほど時間が経っていないと感じた。

 

 再び懐から地図を取り出し、目の前の光景と見比べた杉谷は脳裏に最短ルートと方角を描きながら耳を澄ましていた。

 

 その時。

 

「うん?」

 

 今度は銃撃戦の音がハッキリ聞こえ、地図を素早く懐に仕舞いながら近くの瓦礫に身を隠し、顔だけ出しながら周囲を索敵する。

 

「銃声の種類はバラバラだが、同じ銃声のヤツの方が多いな」

 

 正確な種類を聴き比べることは難しいがアサルトライフルが比較的多いように感じ、僅かではあるが、同じ種類の銃声が多い方が遠くに聴こえる。

 

 地元の自警団かヴァルキューレの部隊が防衛線を構築して交戦しているのではと予想した杉谷は迷わず戦闘区域へと走っていく。

 

 道中罠を仕掛けられていないか慎重に確認し、狭い脇道を通りながら徐々に騒動の大元へと近づいていると開けた十字路に出た。

 

「あれか」

 

 荒れた十字路に分かれて挟むように人だかりが出来ているのを見つけ、再び近くの瓦礫に身を隠し顔を覗かせる杉谷は状況の情報収集を優先しつつ、布を被せていた狙撃銃を取り出し、スコープを通して集団を観察し始める。

 

「撤退戦なら逃げながら罠を仕掛ける筈なんだが、そんな余裕も無い程追い詰められてるみたいだな」

 

 一方の追い詰められてる奥の集団は服装も武装も統一感があり、盾に書かれている英語を見るにヴァルキューレ警察隊であることが分かった。

 

 もう一方の手前の集団はヘルメット被ってること以外全く統一されてなく、不良の集団だと思われる。

 

 不信に思うのが、不良集団の武装がやけに良質な物ばかりだからだ。 

 

「んー?」

 

 再度不良集団を観察して分かった違和感は服の汚れ具合からだった。

 小綺麗な銃と小汚い服装、不釣り合いな格好と言える集団に杉谷はある噂を思い出した。

 

「そういや一時期ブラックマーケットに大量の銃と兵器が流れたって話だったな、あんな所から出る噂なんざ信用しちゃいけねえが、どうやら本当だったみたいだな」

 

 どこから出た噂か分からず、確かめもせずに信じれば犯罪の片棒を掴まされるのがブラックマーケットだと杉谷は思っている。

 

 情報を精査して真偽をハッキリさせてから依頼を請け負うのが“狙撃屋・杉谷ゼン”の定めたルールだ。

 

「ただの一匹傭兵だったんなら、所構わず引き受けてたんだろうがな」

 

 と、知らず知らず独り言を呟いていたことに気づいた杉谷は気を引き締め直しつつも、百鬼夜行学園の生徒であることを忘れずに立ち振舞いを意識して行動を開始した。

 

「ヴァルキューレ率いてるのはアイツか」

 

 見知った人物を見つけたことで勝機があると踏んだ杉谷は戦況を見ることにした。

 

「ヴァルキューレの方の武器は火力不足気味だな、連携が取れているからなんとか持ってるが、勢いに押されてる」

 

 ヘルメットの不良集団の中から数名マシンガンを撃っているせいで迂闊に顔を出せなくなっているヴァルキューレ達の姿を見た杉谷は足早に移動した。

 

 近くに放置されたトラックの荷台の上を陣取り、砂の入った小袋を下に引き高さを調整しつつ目視で不良集団に狙いを定めた後うつ伏せに寝転んだ。

 

「風は……、良くも悪くもない」

 

 杉谷は小道具袋に仕舞っていた物を取り出し置いた。

 それは三つの半球が付いた風速計で早くもなく遅くもない速さで時計回りに回っていた。

 

 風向きを確認しながらM700のフォアエンドの部位を砂袋の上に乗せ、さらに小道具袋から距離を測れる単眼鏡を取り出し覗いた。

 

「約350、ちぃと遠いが問題ないな」

 

 ビルが影になっているお陰で気温は高くなく蜃気楼による距離の誤認は無い、トラックの上という高所故に障害物も少ないため敵の姿がよく見えた。

 

 出来うる限りの準備と確認を終えた杉谷は銃を手に取り狙撃体制をとる。

 

「さてと、つるべ撃ちといくか!」

 

 息を止め、狙いを定め、集中力が高まった時、風が止んだ。

 

 瞬間、甲高い射撃音が鳴り響き、意気揚々と行われた初のM700の狙撃は寸分違わずにマシンガン不良の後頭部に直撃した。

 

 続けざまに息を止めたまま素早いコッキングをし、残りのマシンガン不良達の頭を撃ち抜き、気絶させた。

 

 突然後方からの銃声と主力だったマシンガン不良が全滅したことで不良達は慌てふためいた。

 

 だが、かなり目立つヘルメットを被った不良が落ち着かせるように声高く命令を出したことで騒動は少し収まった。

 

 杉谷はヤツが頭目だと見抜き、容赦なく頭を撃ち抜き行動不能にした。

 

「と、流石に気づかれるか」

 

 不良達の中にスナイパーを持った数名が此方に狙いを定め始めたが、反撃を食らう前に杉谷は素早くスナイパーに狙いを定めたと同時に狙撃し一人を無力化に成功した。

 

 しかしその他のスナイパー不良、特に片目に眼帯をしたヤツから狙撃を許してしまった。

 

 幸い弾は反れていくだけだったが、いつ直撃するか分からない状況になる中、風が再び吹き始まった。

 

 杉谷は落ち着き、空になった弾倉に五発弾を追加で装填し直しながらもまた敵の狙撃が杉谷を襲うが、直前に吹いた強風の影響で弾は右真横を通りすぎた。

 

 装填を終えた杉谷は再びスコープを覗き敵を睨んだ。

 

 脳裏をよぎったある情景を意図的に無視しながら。

 

「狙いも腕も悪くなかったが、風を読み忘れてるぜ」

 

 そう呟き、外れたことに驚愕している眼帯女に照準を合わせ、風向きを考慮しながら撃ち抜いた。

 

 頭を撃たれ、糸が切れたように倒れる眼帯女に数人の不良が駆け寄り、物陰へと隠すように引き摺っていく様子が見えた。

 

 スナイパー達が倒れ伏した所を見た不良達は再び混乱に陥り、どよめきが起きたことで最早大勢は決した。

 

 主力も頭目も失った不良達はヴァルキューレからの反撃にあい、蜘蛛の子を散らすように敗走していった。

 

「いくら不良共が武器が良いからって、訓練されたヴァルキューレの練度を甘く見たツケだ」

 

 不良連中の敗因は良質な武器で気を良くして慢心したことと、ヴァルキューレを率いていたのがある人物だったことに気付けなかったことと言える。

 

「んじゃ、挨拶しに行くか」

 

 うつ伏せから膝立になり、荷物を纏め、銃を再び布で覆い肩に担ぎ、服に付いた埃を払い落とした。

 

 トラックのに台の上から立ち上がり、相手に見えるように手を振りながら降りていく。

 

 手を振られた相手も気づいたのか、銃口をまだ上げていた他のヴァルキューレに銃を下げるよう命令し警戒体制を解いた。

 

 距離があったため十字路まで着くのに時間が掛かったが、件の人物とのお目通しが叶い、挨拶を交わした。

 

「やはり貴女でしたか、杉谷ゼン」

 

「公安のお前さん……じゃなかった、貴女まで駆り出されるとは思いませんでした、尾刃カンナ局長」

 

 この戦闘で勝機があると思った要因であるワルキューレを率いた人物。

 

 “狂犬”と呼ばれたワルキューレ公安局局長、尾刃カンナ。

 

 彼女は叩き上げで局長の座に着き、荒事に慣れきっている人物だったからだ。

 

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