もしもfgoの杉谷善住坊がキヴォトスにいたら?   作:鈴橋鳴海

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四話

「ちょいと騒がしいな?」

 

 本部の自動ドアを潜り、受付がある場所を探そうとしていた杉谷は連邦生徒で人でごった返している光景を目の当たりして立ち尽くしていた。

 

 受付らしき場所にすら人が座っていないことから時間がかかると思った杉谷は入口付近の壁にもたれ掛かり、体を休めながら時間を潰すことにした。

 

「 しかしまぁ、そこかしこに忙しそうだな」

 

 近くを横切る連邦の生徒もいるが、余程疲れきってるのかこちらに気づかないくらい忙殺される仕事をしてるようだ。

 

 暇潰しの代わりに目線だけ動かして本部内を観察していた杉谷は改めて事態の大きさを感じていた。

 

(結構慌ただしい事になってるな、治安悪化だけでここまでになるか?)

 

 受付の奥にいる生徒達だけでなく、本来見えない壁の向こう側で事務処理してる生徒も駆り出されているのだろう、いろんな人が出入りしている。

 

 東奔西走とはこの事かと独り言を呟く程人が入り乱れている様は見たことがなかった。

 

 ワルキューレのカンナ局長まで出てることを含めてここまでの騒ぎは尋常じゃない出来事なのだろう。

 

(となると矯正局から生徒が抜け出したって話しは本当なのかもしれないな)

 

 ヘルメット団がD.U.で暴れている件と、被害の大きさが釣り合ってるようには思えなかったが、まだ見かけていない戦車とおぼしき車輪痕や傭兵の存在を考えれば納得がいく。

 

 噂に聞くSRTも出張ってるかもしれないが、見る機会がなかったのが残念だ。

 

 壁に寄り掛かりながらそう思い、人でごった返している状況をつぶさに観察していた時。

 

「誰か来るな?」

 

 仕事でてんわやんわしてる人々を尻目に鼻歌交じりでこちらに来る桃色ツインテールの生徒が目に入った。

 

 ネクタイは確り締まっているが、肩を出すほど上着を着崩した人物は遠目から見ても背丈が小さく、いかにも不真面目という感じで緊張感の無い楽しそうな表情で入り口に向かっている。

 

 流石に近くに来れば相手も気付き、無遠慮に頭の天辺からつま先までじっくり見たその生徒は不審者を見る目付きでこちらを睨んできた。

 

「どちら様?」

 

 明らかに浮いている服装の人を問答無用で追い出されない辺り理知的だったようで胸を撫で下ろす思いで、身分を明かすことにした。

 

「拙僧か? 百鬼夜行連合学院所属の杉谷ゼンだ」

 

「百鬼夜行……。 あの大きい桜の樹でお祭りをやってる学園の?」

 

「そうそう、知人からの依頼でここまで来たんだが、あちこち荒れ放題なもんでな、一苦労した所で休んでた訳だ」

 

「ありゃ、何か用事があったの? 本部付近の治安があんなことになってるのに大変だね」

 

「全くだ、ある生徒のことを聞きに来る簡単な仕事だと思ったんだけどな」

 

 面倒なことになったと愚痴を溢しながら用件を伝える杉谷に目の前の生徒は首を傾げた。

 

「ある生徒? 問題児か誰か?」

 

 面倒くさそうに、或いはうんざりしたように肩を竦めながら。

 

「問題児も問題児だ。 狐坂ワカモって奴だがな、矯正局から脱走したって話は事実かい?」

 

 嘘も誤魔化しも許さないと鋭い睨みを聞かせながら本題に切り込んだ。

 

「うーん、少なくとも私じゃなくて首席行政官が知ってると思うけど、その人さっき出掛けちゃったよ~」

 

「あちゃあ、タッチの差ですれ違っちまったか」

 

「運がなかったね」

 

 望んだ回答を得られないことといつもの不運に杉谷は溜め息をつきながら睨みを緩めた。

 しばらくの時間をどうすればよいか考えを巡らしていたら桃色髪の生徒は何かを思い付いたようにハッとした顔で凝視していた。

 

「……あっ、これちょうど良いじゃない」

 

「ん? 何か言ったか?」

 

「なんでもないよ~」

 

 何かしら呟いたがはぐらかされ、杉谷は首をかしげながらも気にせず、生徒の話に耳を傾けた。

 

「行政官はね、外郭地区にあるシャーレという所に向かったよ、今から行けば追い付けるかもね」

 

「……そりゃありがたい話だが、な~に企んでやがるんだお前さん?」

 

「む~企むなんて酷い、リン先輩を心配して人手を向かわせる善良な後輩に隠し事はないですよ~」

 

 こちらに都合がいい事ばかりの話に不信感を募らせ、問い詰めたが、本気なのかからかいなのか分からない弁明に気が抜けた。

 

「そのリンていうのが誰なのか知らんが、そういやお前さんの名前なんだ?」

 

「由良木モモカだよ、これでも高校一年だからね」

 

「へえ~、拙僧と同い年か」

 

「えっ、年上じゃないの?」

 

「……こう見えても一年なんだけどな」

 

 杉谷の外見とのギャップに驚くモモカ。

 しかし驚かれる本人は年不相応と見られることが多いため慣れてはいてもショックは受けるのだ。

 

「いやまあ、その話しは置いといて、赤の他人でしかない拙僧に援軍を頼むなんざ、どういう訳だい?」

 

「本当は生徒会以外の人には仕事を出したりしないんだけどね、今は猫の手でも僧侶の手でも借りたいほど忙しいのよ」

 

 僧侶の手は拝んで念仏唱えるためにあるんだが?

 杉谷はそう反論しそうになったが、話の腰を折る野暮は今は控えた。

 

「それならヴァルキューレに頼めば良いだろ? 個人と組織じゃあ頼りがいが段違いだろ」

 

「ヴァルキューレは防衛省の管轄だから私じゃ動かせないのよ、リン先輩にヘリの運転頼まれたのすっぽかしたし」

 

「ちょっと待て、つまりすっぽかした仕事の補填を俺にやらせるって魂胆か!?」

 

 聞き捨てならない事を耳にして詰め寄る杉谷にモモカはあっけらかんとした笑顔で右手での指だけで丸を作りながら答えた。

 

「正解~、ちゃんとわかった杉谷ちゃんにはおにぎりを贈呈します」

 

「握り飯で面倒事押し付けようとしてんじゃねえ! どのみち行くしかないけどな!」

 

「おおありがたや~、神様仏様杉谷様~」

 

「祈るな拝むな崇めるな! こっちはありがたくねえ!」

 

 まさかの理由に若干の怒りとマイペースに煽て始めるモモカにツッコミを入れてしまう。

 

「まあいいや。 そのリンという人がなにか知ってるかもしれないが、今はシャーレって言う場所に向かってるんだな?」

 

 気を取り直し、杉谷は柔軟体操をしながらモモカから話を聞くことにした。

 仕事の押し付けに成功したことで気を良くしたのか、詳細を語り始める。

 

「そうそう、生徒会長が指名した『先生』っていう人と抗議に来てた生徒達も一緒にここから30km先のシャーレを奪還するために出掛けたよ」

 

「何人組だ?」

 

「六人組だね、まあリン先輩はナビゲートするだろうから五人で動いてるかな」

 

「特徴は? 髪色と髪型だけでも分かってるならいい」

 

「うーんと、先生は大人の男性だね。 あとはトリニティの黒の長髪で長身の生徒に白髪でサイドテールの生徒、ゲヘナから来た栗色髪のお下げのメガネ生徒、ミレニアムからも青髪のサイドアップで太股が太い生徒だね」

 

「……他はともかく最後のはお前さんの偏見混じってないか?」

 

「ホントに太かったんだって」

 

 モモカの説明に少し呆れながらも見つけるべき対象の情報を暗記した杉谷は体操を終え、本当に貰ったおにぎりを食べながら荷物を担ぎ直して玄関へと歩いていく。

 

「まぁ太いのかは兎も角として、とりあえず追うだけ追ってみるか」

 

「お仕事頑張ってねー♪」

 

 押し付けた張本人の物言いにカチンと来るが深呼吸して精神を落ち着かせ、先生一向を追っていく。

 

 二人の会話を盗み聞きし、監視していた生徒の視線に杉谷は気づいていながらも、仕事のことに集中し記憶のすみに追いやって。

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