もしもカフェのマスターが元デビルハンターだったら【本編完結】   作:CP厨の悪魔

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コーヒー・過去・日常

 

 

 美味しいコーヒーを淹れよう。

 カフェのマスターとしては当然のことではあるのだが、彼には一人どうしても自分のコーヒーを「美味しい!」と言わせたい人物がいた。

 今日はかなり自信がある。わざわざ海外から取り寄せた超高級コーヒー豆に、秘密兵器として、新しく新調したサイフォンコーヒーメーカーを用意しているからだ。

 慎重にコーヒーカップへコーヒーを淹れながら、件の少女を待つ。最近、海外から留学してきたと言い生活費を稼ぐ為にこのカフェ――「二道」でアルバイトを始めた――

「おっとと、遅れました〜」

「遅れた分、給料から引いとくよ」

「えぇ〜??マスターちょっとケチすぎない?」

「いや当たり前のことだから……はいこれ」

「コーヒー?」

「この前のリベンジ。ぜひ飲んでみてよ――()()ちゃん」

「ふふっ、マスターまだ気にしてるの〜?」

 ソ連からやってきたボムガール、あるいは武器人間、あるいはソ連のエージェント、あるいは――

「うーん……やっぱりそんなに美味しくないよぉ?」

「えぇ〜〜……」

 がっくり、と肩を落として自信作のコーヒーを見つめるマスターと辛辣な評価を取り下げないレゼ。いつもの日常がそこにあった。

「まぁいいや……それよりも、モーニングの時間始まるから机の片付けよろしくね」

「はーい!」

 愛想良くレゼは返事しつつテキパキと仕事をこなす。

 カフェ「二道」、開店の時間だ。

 

 

 ◇

 

 

 普通の男がいた。男の家庭は貧乏で両親は共に働き、小さい妹と弟はいつも腹を空かせていた。けれど、笑いの絶えない、良い家族だった。だからこそ、超有名大学に行けるほどの学力をもちながら、民間のデビルハンターとして、中学卒業後悪魔狩りの仕事を始めた。

 

 優秀だった男は、民間の中でも優秀なデビルハンターとして名前が売れだした……そんな頃だった。

 

 銃の悪魔が出現した。

 

 全世界合わせて犠牲者は約120万弱。

 銃の悪魔が通った場所は全て灰燼に帰した。男の家も例外では無く、家族もまた、男を残して銃の悪魔の被害からは逃れられなかった。

 漠然と、大丈夫だろうと――油断していた。まさか自分が巻き込まれるなんて、と。

 そんなことはありえない。悪魔なんてものが存在するこの世界で。

 ただ、見通しが甘かった。それだけに尽きる。

 

 絶望とは違う虚無感に苛まれた。

 銃の悪魔に対する恐怖、怒り、絶望。

 家族を失ったことに対する、悲しみ、苦脳、孤独。

 それだけが、男の生きる糧だった。家族の仇、憎き銃の悪魔を殺すために、給料の良い民間を辞めて、公安入りを決めた。

 

 まぁ――よくある志望動機である。

 

 銃の悪魔に限らずではあるが、公安のデビルハンターを目指す者の九割九分は大抵悪魔に身内や、家族を殺されその恨みから――というパターンが多い。だが、大抵そういう()()()なデビルハンターは長生きできない。

「悪魔が恐れるデビルハンターは強い奴でもなければ勇敢な奴でもなく、悪魔よりもイカれた奴」――というのが、彼の同期の持論だったが、彼はその持論においては例外だった。

 人に対しては誠実で、紳士的。しかし、悪魔に対しては人一倍の加虐性を持って対峙する。だが、彼が行った任務においては民間人の被害は一切出すことなく、また彼の部隊で命を落とした者はごく僅かで、指揮能力も優秀だった。それでいて、落ち込んだ同僚に対しては趣味のコーヒーを振る舞い慰めた――と、人間性が終わっているような者も多い公安デビルハンター東京本部の中でも屈指の、人格者と評されていた。……もっとも、味の方は微妙の一言であったらしいが……。

 同期に「最強のデビルハンター」がいたが、周りはそれになぞらえて彼を「最優のデビルハンター」と惜しみない賞賛を送った。

 

 数十年に渡り実績を重ね、東京本部長官の座も噂され始めたある日の事だった。

 彼は唐突に、

 

「――カフェでも開こうかな、と」

 

 上層部へ辞表届を提出した。

 

 

 ◇

 

 

 カフェ「二道」のマスターは、モーニングの忙しい時間帯が過ぎ、自分で淹れたコーヒーを飲みながら、新聞を読んでいた。見出しは「電ノコ悪魔!サムライソードを一刀両断!」と、あった。

「お、電ノコ悪魔」

新聞を読みながら独り言をこぼすマスター。

「電ノコ?」

 興味を持ったレゼがカウンター越しに新聞を覗いてくる。それに気付いたマスターが見やすいように広げる。

「チェンソーのことだよ。ココ最近公安に入ったっていう悪魔でね、実はちょっとしたファンなんだ」

「えぇ〜悪魔のファン?趣味悪いよ〜?」

「だってほら、カッコいいじゃない」

「なんじゃそりゃ、男の人のセンスってわかんないなぁ……」

 ――頭とか超イカすじゃん、腕も超かっけぇし……と、ボヤく。

「……ま、いいや。お客さんも居なくなったし私は勉強しちゃいますね~」

「……アンタ、店員だよね?」

「だってもうお客さん来ないじゃんー」

「いやぁ……分からないよ?……多分」

 レゼはある程度読むと興味を無くしたのか、はたまたこれ以上の情報は望めないと判断したのか、いつも勉強しているテーブル席に戻ると参考書とノートを広げ、筆箱からシャープペンシルを取り出し、まるで学生のように机に向き合った。

 

 ちらり、と新聞越しにレゼを盗み見る。

 勉強しているのか、それとも先程の電ノコ悪魔――もといチェンソーマンの事を考えているのかは定かではないが、その物憂げな表情は通るもの皆の視線を釘付けにしてしまうだろう……というようなものだった。

 

 ――思考する。

 レゼ、という少女は平凡でいてそうでない。端正に作られた人形のような顔もそうだが、彼女の醸し出す雰囲気というのがどうにも――昔、公安チームを組んでいたある女デビルハンターと似ているのだ。ロクでもない女だった……と、苦々しい思い出が蘇るが……今となっては懐かしい記憶として、ギリギリ処理されている。

 ――思考する。

 横道には逸れたが、レゼという少女――その全容は未だ理解は出来ていないが出自だけに絞れば、心当たりがあった。

 

 それは、ソ連の母親が子供を叱る時のおとぎ話。

 軍の弾薬庫には秘密の部屋があって、その部屋には親のいない子供達でぎゅうぎゅうに詰められている。

 そこにいる子供達には自由はなく、外にも出られない。

 物のように扱われ、体を実験に使われる。

 

 ――おとぎ話だったはずの「秘密の部屋」は、()()()()()()。アメリカのジャーナリストが、突き止め、そこにいた子供達の写真も当時公開されていた――が、なぜだかすぐにその話は聞かなくなってしまった。当時は、酷い話があったものだと憤慨していた記憶がある。しかし、数十年後、なんの因果か、カフェ「二道」に潜り込んでしまったのは――「秘密の部屋」出身の、ソ連が生み出した国家に尽くす為作った戦士――レゼだった。

 

 しかしながら、だからといってカフェ「二道」のマスターにして、最優のデビルハンターは何か行動を起こすつもりはなかった。

 なぜなら、彼は公安でもないし、デビルハンターでもない。美味しい美味しいコーヒーを提供する髭面の似合うナイスガイなのだから。

 

「マスターのコーヒーってさ、少し苦すぎると思うんだよね」

「何言ってんの。それが大人の渋みって奴よ」

「癖が強いだけで渋さはあんまり感じませんけど〜?」

「ふふ、おとなっぽいなと思っていたけど、まだまだレゼちゃんはお子さま、かな?」

「厶、なら私のコーヒーも飲んでみてよ」

「いいよ?ま、僕のには敵わないだろうけどね」

 

 

 ――正直、レゼが淹れたコーヒーはかなり美味しかった。

 

 




デンレゼ最高!デンレゼ最高!デンレゼ最高!
オマエもデンレゼ最高と言いなさい!そして今すぐチェンソーマンの映画を見に行きなさい!
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