もしもカフェのマスターが元デビルハンターだったら【本編完結】   作:CP厨の悪魔

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公安・支配・コーヒー

 

 

 ――東京本部が襲撃される少し前。

 支配の悪魔の権能によって、デンジとレゼが過ごした時間は全て筒抜けになっていた。ただし、ある場所を除いて。

 夜の学校探検も、夏祭りも、あの夜の戦いも、海岸での会話も、全て。しかし――「二道」での会話だけ、何故か把握することは出来なかった。

 しかし、マキマにとってはどうでも良かった。デンジが誰と会おうとも、話そうとも。最も重要なのはチェンソーの心臓だけだ。

「じゃあ天使くん、行こっか」

「……はーい」

 天使が気だるげに返事した、その時だった。

 マキマが部屋を出ようと、ドアノブに手を掛けたその瞬間――何か硬い扉が、公安内部のあちこちで開いた音を()()()

 

「――やられた」

 

 

 

 

 

 

「な、なんだこれ、霧か?」

 突如として。公安本部の内と外の全てに現れた霧に、公安職員達は困惑していた。

「あー……こりゃ悪魔のせいかもしれねぇな。ったく、こんな朝っぱらから……」

「しかも直接公安に乗り込むとはな、肝が座ってんのかイカれてんのか」

 しかしながら、ここは公安デビルハンターの本部。周囲にいたデビルハンター達が冷静に事態を把握して、各々の武器を取り出した。

「おそらくこいつは霧の悪魔ってところだろうな。どっかに本体がいるタイプだ。二手に分かれて探すぞ」

 中の一人――ベテランのデビルハンターが、周りに指示を出すと、そのまま別れて動き出した。

 霧は歩けば歩くほど、濃ゆくなっていく。厄介だ。周りも見えないし、どこを歩いているのかすら分からない。

 歩く、歩く、歩く。

 そして――ふ、と立ち止まった。

「……なぁ、なんで俺たちこんな所にいるんだ?」

「あ?そりゃあ……なんでなんだ?」

「おい待てよ。そもそもお前らは?今もってるこの武器はなんなんだよ」

 ()()()()()()()()()()()()、今自分が何をしていたのか、周りが誰なのかを忘れてしまっていた。そして、パニックが起こる。

「おい!!お前らなんなんだよ!!近付くんじゃねぇ!!」

「それはこっちのセリフだ!!てめぇは誰だって言ってんだよ!!」

「あぁっ!?俺ァ……俺は……誰、だ?」

 まさに五里霧中。霧はどんどんと、侵食範囲を広げて行く。ゆっくりと、されど確かに。

 

 

 記録――公安デビルハンター東京本部庁10時33分。霧の悪魔、出現。

 

 

「――ですから!困ります!事前のアポイントメントがなければ入れないんですって!」

「あぁ〜ん?わらひの言うことが聞けねえってのかぁ〜??」

 公安本部1階。そこでは2人の男女が言い合っていた。

 1人は男――ここ公安の受け付けをしている者だった。もう1人は女――長い黒髪をポニーテールにまとめ、紺色の瞳が特徴的な美女だった。普通に出会えていれば、声を掛けたくなってしまうぐらいの。

 しかし、場所が場所だ。日本の治安を守るための公安本部。不審者を入れる訳にはいかない。ましてや()()()()()()()()()なんて言うふざけたものは特に。

「ったく、使えねーなー……あたしゃあ岸辺ってのに会いてえってのによぉ〜」

「ン〜……なんだか暑くなってきた」

「っちょアンタ!何してんだ?」

「あ〜ん?見て分かんねぇのかよォ〜脱いでんだよ〜」

 唐突に。女が目の前でシャツのボタンを一個一個外し出した。男は動揺したように止めるが、関係ないと言わんばかりに脱ぎきってしまった。

「いくらなんでも酔いすぎだ!早く着直して……はれ?」

 なぜだか、酷く酔っ払ったような感覚に陥った。

 ぐらり、ぐらり、と揺れる。

 目の前が上手く認識出来ない。二日酔いのような気持ち悪さも出てきた。

「ほら〜はーやーくー岸辺をだーせーよー」

 蹲り出した男の容態を気にすることもなく、肩を揺すりながら岸辺の場所を聞き出す女だったが、男はそれどころじゃなかった。

 すると、この異常に気付いた一人のデビルハンターが、刀を持って近付いてきた。

「お前、悪魔だな?その人から手ェ離せば楽に殺してやる」

「あ〜??なんだテメ〜??」

「はぁ……悪魔は悪魔か。――死ね」

 刀を振り下ろそうと踏み込んだ次の瞬間、強烈な酩酊感と共に剣先がブレた。

「が……は……?」

「おいおいおい〜なんじゃそりゃあ〜?余興か?余興なのか?いーねいーね!楽しくなってきた!」

 弱々しく振り下ろされた刀をあっさり躱して、デビルハンターの背後に抱きつく。そして、刀を持った腕を掴み上下しながら、まるで人形のように無邪気に遊んだ。

 しかしデビルハンターの男はもうされるがままだった。なぜなら既に口から吐瀉物を撒き散らしながら、絶命していたからである。

 男の死因は――急性アルコール中毒。

「うぇ〜いうぇーい!……飽きた。自分で岸辺探しに行こ」

 無造作に男を投げ捨てると、女は公安内部へと歩みを進める。千鳥足のまま、ふらふらと。

 

 

 記録――公安デビルハンター東京本部庁10時36分。酒の悪魔、出現。

 

 

 ぴょんっ、ぴょんっ、ぴょんっ。

 なんだか間抜けな足音が聞こえて、廊下の通りに出た。

 すると、顔に変な文字の書かれた札が貼り付けられ、中華風の服を着た男が、両手を前に出し、足を綺麗にそろえてぴょんっ、ぴょんっ、ぴょんっ――と、飛んで移動していた。

 男は刀を抜き、ゆっくり近付く。誰がどう見ても悪魔だ。どうやってここに入ったのか、何が目的なのかが気になったが、悪魔がいたならデビルハンターがやることは一つだけだ。

 無言で、気付かれないように近づいたつもりだった。

 しかし――

「ひっ」

 ぐるり、と首が真後ろに回転して刀を持つ男を視認すると――ニヤリ、と残虐な笑みを浮かべ――

 

 ぴょんっ、ぴょんっ、ぴょんっ。

 ぴょんっ、ぴょんっ、ぴょんっ。

 男が二人、並んで飛んでいる。1人は中華風の服を着て、もう1人はデビルハンターの服を着ていた。

 

 

 記録――公安デビルハンター東京本部庁10時36分。キョンシーの悪魔、出現。

 

 

 

「うわぁ……悪魔がたくさん。どうする?これ」

「全て処理します。天使くん、協力してくれる?」

「最初からやらせるつもりの癖に……」

 マキマは、天使の悪魔共に事態の収束の為、最上階である7階から悪魔の掃討に移っていた。

 公安職員の血で染まった廊下を歩きながら、生存者を探す。すると、奥の方から一人の男が駆け寄ってきた。

「ま、マキマさん!大変です!悪魔が――」

「うん、知ってる。木村君、だったっけ?今から走って台風の悪魔の対処してる岸辺隊長のところまで行って貰える?」

「はっ――は?」

 「これは命令です」

「――はい。岸辺隊長の元へ向かいます」

「……何したの?」

「君が気にすることじゃないよ。――さ、彼が岸辺隊長を連れてくるまでに悪魔を倒そう。このままじゃあ公安が無くなっちゃう」

「はいはい……」

 有無を言わせぬ圧を感じた天使の悪魔はそれ以上何も言わなかった。――が、ふと気になったことがあった。

「マキマってこの事態の犯人って気付いてるの?」

「うん。一人心当たりがあるよ」

「誰?」

 天使の悪魔の問いに、マキマは昨日飲んだコーヒーの香りを思い出しながら、答えた。

 

「――昔、ここでデビルハンターをしていた人。今はただのカフェのマスターなんだけどね」

 

 

 

 

 カフェ「二道」では、マスターがコーヒーを揺らしながら新聞を読んでいた。

 記事には、昨日のボムとチェンソーマンの戦いの話が一面に載っていて、見応えがある内容となっている。

 ――カラン、カラン。

 不意に。扉の鈴の音が鳴った。マスターは新聞から顔を上げると、そこにはランチタイムの常連客――デンジがリュックを背負い、花束を抱えて立っていた。

「おや、いらっしゃい。デンジ君」

「うす……レゼはきてるっすか?」

「いやまだだね。まったく、どこで道草食ってんだか……」

 マスターは呆れたように肩を竦めながら、いつものテーブル席に座るデンジに、水を出した。

「その花束は……誰かに渡すプレゼントかな?」

「まぁ……レゼに渡すために、花屋でテキトーに選んでもらって、買ってきたんスよ」

「へ〜!中々キザな事するじゃない、デンジ君」

「キザ…?」

「かっこいいって事さ」

「……そう、スかね……」

 照れくさそうに笑うデンジを見て、微笑んだマスターはデンジにメニューを差し出した。

「ランチタイムには少し早いけど、デンジ君は常連さんだからね。なに頼む?」

「いや、今日は――」

 今日、レゼと共に逃げる日だ。そんなには二道にはいられない。そう思って注文を断ろうとしたが、今日でここのランチを食べられるのも最後かもしれないと思うと、少しもったいない気がした。

「……今日は、カレーと、アイスで」

「いつもより少ないね。食欲がなかったりする?」

「いや……今日、オレとレゼで逃げようって……約束したんすよ。このカフェで、いつもの時間で待ってるって……」

「……君の今の日常を捨ててでも?」

「ウマい飯はいつでも食えるけど……でも、そこにレゼが居ないのが、なんか嫌で……」

「そうか……そうか。君は、共に道を歩くつもりなんだね」

 マスターは深くは聞かない。

 おそらく、デンジはあのチェンソーの悪魔なのだろうことも、レゼがソ連のスパイであったであろうことも。

 どんな話があったのかも、聞かない。彼らの選択に、余計なことは言いたくなかったから。

 マスターにできることと言えば、注文通り美味しいカレーと、アイスクリームを用意することだけだった。

「はい、できたよ」

「あざっす!」

 ホカホカと湯気を立てるカレーを前に、テンションが少し上がった様子を見せるデンジ。

 マスターはコーヒーを片手に、美味しそうに食べるデンジを見て、嬉しそうに微笑んでいた。

 

 カレーも、アイスも、綺麗に平らげたデンジは買ってきた花束を抱えて、レゼを待った。

 デンジはただ待つ。きっと、レゼは来てくれると信じていた。

 

 ――カラン、カラン。

 

 扉の鈴の音が鳴る。

 デンジはゆっくりとその方向へと目を向けた。

 

 そこには――

 

「本当に、一緒に逃げるつもりなんだ……」

 

 呆然とした様子で、けれど嬉しそうなレゼが赤いガーベラを持って、立っていた。

 

 




デンレゼ最高!デンレゼ最高!デンレゼ最高!
オマエもデンレゼ最高と言いなさい!
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