もしもカフェのマスターが元デビルハンターだったら【本編完結】   作:CP厨の悪魔

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霧・公安・コーヒー

 

 

 

「外には蝿、ムカデ、スズメバチを配置して封鎖……公安本部内には霧の悪魔を中心に対人に脅威を発揮する悪魔の配置……」

「クソ、仕掛ける側からやられる側に回ると厄介極まりねぇな」

 いまいましげに、スズメバチの悪魔――その女王の死骸の上に座りながら、スキットルに入っている酒を飲んだ。昔、マスターとクァンシで、悪魔を使った反社会勢力を潰して回った時によく使った戦法だった。

「――岸辺隊長!民間から吉田ヒロフミを呼んで来ました!」

「外の雑魚ども片しとけって伝えろ」

「は、はい!」

「それと木村、お前は吉田と共に外の悪魔の殲滅だ」

「了解!」

 遠くで岸辺にヘラヘラと笑いながら手を振る吉田に舌打ちしつつ、立ち上がった。

「アキ、本部に突入するぞ」

「……もう少し増援を待つべきでは?」

「まともに使えそうなのが残っちゃねぇ。それに、あまり時間も掛けられないのもある」

「霧の悪魔のことですか」

「あぁ。マキマはどうせ大丈夫だろうが他の人間が危ない。下手すると幼児退行までして戻れなくなる可能性まであるからな」

 ――時は少し遡る。

 岸辺達は台風の悪魔の死骸のあった場所から移動し、デビルハンター東京本部庁前にまで来ていた。来た時にはそこまで強くないが、そこそこ厄介な悪魔が公安の外を彷徨いていた。岸辺とアキと木村――ほぼ岸辺だけだったが――ある程度まで掃討したのだった。

「公安に入ったら俺だけを見て、俺に付いて行く事だけ考えてろ」

「了解です」

 

 アキは早くマキマの元へ駆けつけたかった。公安がこの状況で、恩人は未だ外に出られず、悪魔との戦いを強いられている――そう考えると、いてもたってもいられなかった。

「……入るぞ」

 岸辺に続いて、霧に包まれた内部へと入る。

 視界中を霧が塞ぎ、5メートルも離れてないはずの岸辺の背中が、目を凝らさなければ見えない程濃密だった。

 歩く、歩く、歩く。そしてふと、アキの脳内に()()()()()()()()()記憶が一つ、また一つと消えていた。

 何故、ここに来ているのだろうか。何故、デビルハンターをしているのだろうか、何故、自分はマキマの事が好きなのだろうか――

「早川アキ」

「っは……?おれ、いま……」

「口に出てたぞ。これが霧の悪魔の恐ろしさだ」

「だが、安心しろ。()()()()

 岸辺が、足元を指さした。そこには人の顔が床から生えていて、口、鼻、耳、目――あらゆる所から霧を噴出していた。

「コイツが霧の悪魔の分体だ。七つ合わせてようやく本体になるが――ここで潰しておけば後々楽になる」

「……昔、こいつは遭難の悪魔の番だったんだがクァンシっていう俺の元バディが、遭難の悪魔を殺しちまってな」

「怒り狂った霧の悪魔が、俺達を殺そうと霧に閉じ込めてきた事がある――」

「霧の悪魔の対処法は二つ。何も考えずにただ歩くか、逆にただ一つの事だけを覚えて突き進むか」

「……俺とクァンシは何も考えずに、分体を見つけて潰し回った。だけどアイツは、一ノ瀬は――銃の悪魔のことしか考えない事で分体を見つけ回ってたな」

 いつもとは違ったテンションで、懐かしむようにアキに霧の悪魔の対処法について教えていたが、途中である事に気付いたのか、舌打ちしながらスキットルに口をつけた。

「クソ、ジジイになると昔話も長くなって嫌になる。アキ、こいつを刀で刺せ」

 分体を刺す。すると、霧がみるみると消えていき、いつも見る公安の1階が姿を現した。

 周りを見渡して見ると、記憶の大部分を失ってしまった影響か、ただ虚ろな目をして立ち尽くす職員やデビルハンター達が大量に姿を現した。

「こいつらは暫くしていたら戻る。次行くぞ」

 

 

 四階。慣れてきたアキは記憶を飛ばすことなく霧の悪魔の分体の処理ができるようになってきた。

 さて次の階へと向かおうした――その時、廊下の角からマキマと天使の悪魔が出てきた。

「……生きてたか」

「岸辺隊長も思ってたよりも早くに到着してくれて、助かります」

「そのスーツの血はどうした?」

「あぁ、これ全部返り血ですよ。私と天使くんは最上階から順に降りたんですが、道中でキョンシーの悪魔と酒の悪魔に出くわしまして」

「キョンシーの方はあらかた潰しましたが、酒の悪魔には逃げられました。どうやら岸辺隊長を探していたようですが……心当たりでも?」

「昔、因縁が少しあるだけだ」

「……これからどうする?」

「引き続き悪魔の掃討、お願いします。まだ少しいるようなので」

「お前は?」

「私は……逃げようとしている鼠を捕まえようかと」

「……」

「――では。ああ、早川くんも来てくれてありがとうね。じゃ、天使くん、行こっか」

「……はぁ、もう疲れたんだけどなぁ……」

「は、はい!」

 アキはマキマに感謝されたことに少し照れた。岸辺は無表情のまま、マキマを見送った。

 

「5階から上の霧の悪魔の分体はマキマさんたちが処理してくれたようですね」

「らしいな」

「……岸辺隊長。今回の件の犯人、知ってるんじゃないですか?」

 5階。霧は完全に晴れており、廊下には夥しい量の血の跡と、キョンシーの悪魔達の死骸が転がっていた。

 マキマと別れたあと、アキは岸辺に質問した。

「ああ、知ってる」

「誰ですか」

「……「最優」、この2つ名に聞き覚えないか」

「確かマキマさんの前任でとんでもなく優秀なデビルハンターだったって……まさか」

「そのまさかだ」

「あんな強力な悪魔、それも複数体を……?どうやって契約を……?」

 

「……アイツが()()()()()()()()()()()()悪魔は四体しかいない」

「空気、蛸、狐。空気だけは変わり種だが、ほか二匹はよくデビルハンターと契約している悪魔だ」

「ヤツの力のカラクリは最後に契約している悪魔にある――」

 

 

 

 ◇

 

 

 

「このカフェ、団体客は受け付けてないよ」

「ここには、コーヒーを飲みに来たわけではないので」

「ですが……そうですね。せっかくカフェに来たので注文してみましょうか」

「――マスターさん、あなたの首をください」

「大方、デンジ君達のとこに送り付けて罪悪感を煽るつもりでしょ。よくやるよ」

「えぇ。彼は私の大事なものを奪って行きましたから」

 ――時が戻って、カフェ「二道」。

 マスターとマキマは向かい合っていた。1人は直立不動で、もう1人は丸椅子に腰かけコーヒーを飲んでいる。二道ではかつてない程の緊張感が漂っていた。喫茶店ではよく流れている、聴き古されたジャズも、今は場違いだった。

「さっきは随分なご挨拶だったじゃないか」

「時間が無いですから」

「そう慌てない。ここはカフェだよ?ゆっくりしていくには丁度良い」

「聞こえなかったのかな。急いで、いるんだ」

 マキマの目は特徴的だ。ずっと見ていると、引き摺り込まれてしまうような錯覚がする。――マキマに睨まれたマスターの鼻から、ツーっと、鼻血が垂れ落ちた。

「支配の悪魔としての権能が効いていないことがそんなに驚くことかな」

 しかし、マスターは平静を崩さない。ポケットのハンカチで血を拭うと、コーヒーを一口飲んだ。

「今後の参考になるから、聞いておくと良い」

「……」

「キミはね、出し抜かれたんだよ。僕に、2回も」

「1回目は――ここでの会話を最後の最後まで聞くことができなかったこと。まぁこれは偶然に近いんだけどね」

「鼠の1匹、虫の1匹も出さず清潔に保つのは飲食店として当然のことだから」

「まさかまさか、ここまで作用するとは思ってもなかったけどね」

「そして2回目。公安襲撃だ」

「マキマさん、君は思わなかったかい?「まさかここまでやるとは、やられた」――って」

「人間ってね、()()()()()()()()()って思っちゃうような事で色んなことをやってしまう人もいるんだよ――僕のようにね」

「人間、案外やる時はやるでしょ」

 マキマは黙ってマスターの言葉を聞いていた。けれど、氷のような鉄仮面からどこか苛立ちが見える。

「支配の悪魔の力は自分よりも程度が低いものを()()できる――だったっけ?」

「今、君に僕を程度が低く見ることは出来ているのかな?」

「……ええ、認めましょう。今のあなたは支配できません。けれど、それがどうしたんです?」

「一ノ瀬ケイ、「最優」と呼ばれた貴方に日本国民は殺せますか?」

「――私は内閣総理大臣との契約により、私への攻撃は適当な日本国民の病気や事故に変換されます」

「このままいけば、あなたとの殺し合いになるでしょうね。だけど、私を殺しても蘇る。日本中にいる国民の誰かを犠牲にして」

「運悪く、仲の良い四人家族のうちの、お父さん、お母さん、お兄ちゃん、妹さん――が、それに選ばれるかもしれない。いつかのあなたの家族を犠牲にしてまで、私を殺せますか?」

 マキマは宣う――自分を殺せば民間人が犠牲になると。もしかすると、マスターの家族のように、どこかの誰かの幸せを奪うことになるかもしれない――と。

 しかし、マスターは揺るがなかった。

「今の内閣総理大臣……大隈は臆病な奴だろ?」

「昔っからそうだった。僕が現役で、彼が内閣官房長官だった頃もずっと」

「頑固で、保守的で、人を傷つけることで自分を守っていた。でもね――確か二年前ぐらい前だったかな。大隈が次の総理大臣に――って時にこのカフェに来て、こう言ったんだ」

「「俺はいまから悪魔と契約する。国家機密だから言えないが、相手がとても恐ろしすぎて、いつか自分には扱えない大きな力になってしまう。だから、その悪魔が暴れたら、お前の手で俺を殺して、契約を破棄させてくれ。そして、その悪魔の討伐をお前に頼みたい」――ってね」

「君のその言葉を聞けてよかったよ。本当に」

 マスターはそう言うと、ジャズの音量を下げて手元にあるラジオをつけた。

 緊急速報を伝えるアナウンサーが、慌てながらもしかし正確に報道している。

 『速報です。本日15時過ぎ、内閣総理大臣大隈聡氏が――悪魔被害に遭い、死亡が確認されました。周囲への被害は無く、専門家からは暗殺を疑われており――』

 途中で、ラジオを切った。

 

「臆病な奴だったが、人の心はあった」

「さて、マキマ。君はいま、日本国民を盾にして僕を脅したな?」

「明確な敵対行為だ。君をただの悪魔と見なして、討伐させてもらう」

「ご自慢の1億2400万人の残機は使えなくなったね」

 

「――人間をあまり舐めない方がいいよ。支配の悪魔(マキマ)

 




デンレゼ最高!デンレゼ最高!デンレゼ最高!
オマエもデンレゼ最高と言いなさい!

※一話から修正しなきゃ行けない箇所を見つけてしまいましたが、とりあえず今は放置して、完結まで突っ走ります。ご了承ください。ちゃんと修正はします
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