もしもカフェのマスターが元デビルハンターだったら【本編完結】   作:CP厨の悪魔

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とある日の夜。

 

 

 

 

 

 ――深夜。デンジとレゼが住んでいるアパートのベランダにて。

 空気の悪魔は月を見上げていた。大きく、綺麗に見える。

 マスター、一ノ瀬と出会った時もこんな夜だった。

 日本の花火大会、誰もいない()()()()()()()()()()()()()で、ユカと共にいる所だった。あの日、一ノ瀬は両片思いの幼なじみに告白しようとしている時だった。二人の仲は密かに推しており、色々隠れて手助けをしたりもした。空気の悪魔は密かに透明化してるつもりだった。――が、夢中になりすぎて透明化を解除してしまい、彼の告白を邪魔してしまった。その時だ。一ノ瀬と契約を結んだのは。

 彼の肺に住まわせてもらう代わりに、彼の力になる――と。まぁ、こんな契約は建前で、本当は二人が結ばれる所を最前列で見たかっただけなのだが。

 ――……だが結果として、それは叶わなかった。

 自分のせいだと謝罪した空気の悪魔に、一ノ瀬は何も言わずに頭を撫でた。そして「君のせいじゃない。僕が遅すぎたんだ」――と、言っていた。だが、それは違うと思っている。邪魔をしてしまったのは事実だ。想いを伝えるのに遅いも早いも無いだろうに。いっそ、責めてくれた方が楽だった。怒って、憎んでくれると、どんなに良かったか。

 ――そんな、後悔を今更思い出してしまう。

「はァ……」

「どうしましたか〜?そんな浮かない顔して」

「ヒャッ!?」

 屋上には自分一人しか居ないと思っていた。しかし、いつの間にかレゼが湯気の立っているマグカップを二つ手に持って立っていた。

「ナ、ナンデここに……?」

「デンジ君寝ちゃったからさ、私も寝ようと思ったんだけど、ベットにエアちゃん居なかったから心配になってね」

「なにか浮かない顔して、どうしたの?」

 レゼの方を見てみれば。彼女はいつかの海岸の時のように、デンジのシャツを一枚羽織るだけの格好をしていた。

「……」

「――わかった。当てたげる」

 レゼは優しく微笑みながら、空気の悪魔にマグカップを一つ渡す。中身にはココアが入っていた。

「マスターのことでしょ」

「……ソウ、ダ」

「まーここまで音信不通だと心配にもなるよね」

「ち、チガッ……」

「分かってる。マスターさん……死んじゃったんでしょ?」

「ヘッ……?」

「コーヒー豆……いや、珈琲の悪魔の取説を貰った時にね、私にだけ手紙があったの」

 心中を言い当てられて、今まで抱えてきた秘密を暴かれて。空気の悪魔は口をパクパクと空けたり閉じたりして忙しない。

「多分、デンジ君にも入ってたと思う」

「ねぇ気付いてた?最近私たちがマスターの話をしなくなったの」

「そこにはね、「五年間僕から連絡がなければ死んだものと思ってくれ」って、書いてあったんだ」

「ソンな……事ガ……」

 言われてみれば。彼らはココ最近の二人はマスターの話をしなくなっていた。レゼはマグカップに入ったコーヒーを一口飲みながら、手紙の内容を思い出していた。

 ――多分空気の悪魔は僕が死んだことは君たちに言わないようにするから、彼女の意を汲んでやってくれ。

 ――とても頼りになるやつなんだ。でも、同時に寂しがり屋で優しい。

 ――5年後、デンジ君かレゼちゃんのどちらからでも良い、彼女に伝えて欲しいんだ。「ありがとう」って。

 ――何に罪悪感を感じているのか分からないけれど、君の事だ。空気の悪魔自身がなにかした訳じゃないんだろう。

 ――本当に悪いことをしてない子に怒る大人がどこにいるって言うんだい?

 ――だから……君は生きてくれ。どうか幸せに。

 ――君の友人より、友愛を込めて。

「ヒッグ……エッグ……」

 いつの間にか、大粒の涙を零していた。

 デンジとレゼを傷付けると思って、彼らの逃避行に水をさしてしまうと思って、ずっと抱え込んで来た秘密。そして、あの日の後悔。空気の悪魔が幸せの空気を察知する度に、重い鉛のようなものが胸に残っていた。――それは、日を重ねる事に重くなっていた。

「いつか、日本に墓参りしに行こう。私たちのことも報告しなくちゃだし」

「ウン……」

「マキマが怖いけど……でも、大丈夫」

「エアちゃんがいるからね」

「……任セロ。絶対ニマキマから見ツケられナイ様ニスる」

「頼りにしてますよ〜、お姉ちゃん?」

 この、頼りになりすぎる姉は頑張りすぎているのだ。自分達のために、色んなことをやってくれているのは知っている。――過去にどんな後悔があったのかは知らないけれど、彼女が話してくれるまでずっと傍にいるつもりだ。かつて、マスターがそうしたように。

 

 

「それにね、エアちゃんだけじゃない。マスターも守ってくれる」

「マスターの、美味しいコーヒーの香りが……きっと」

「ソウダナ……ウン、きっとソウダ」

 

 月が綺麗な夜の街に、二人は隣合って笑うのであった。

 

 ――それは、まるで仲の良い姉妹のように。

 




どうか元気で。僕の事は気にせずに、幸せになっておくれ。
手のかかる妹だったけど、今の君は、僕の代わりに二人の幸せを見守ってくれる姉なのだから。

君の一番の親友より。
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