もしもカフェのマスターが元デビルハンターだったら【本編完結】 作:CP厨の悪魔
今日も今日とて、デンジは二道へ訪れていた。
もちろん、公安のデビルハンターとしての仕事は忘れていないし、彼の上司にして憧れの女性――マキマとの約束も一度も忘れたことは無い。
マキマはデンジにとっての最大の恩人で、今の恵まれている環境も全て、彼女のおかげである。それに、つい先日の映画館デートでは自分の中にあったモヤモヤもスッキリ晴らしてくれたこともあり、彼の中では、自分の心はマキマだけの物だ、と決めている――が。
「(なんでだ……!!身体が……勝手に……!!)」
いつもの巡回ルート――にしては少し公安から離れているところに店を構えているカフェ「二道」に吸い込まれるようにして入ってしまう。
「いらっしゃいデンジ君。今日もランチ?」
「あー……そうっスね……」
扉を開けると、マスターがにこやかにデンジへ話しかける。
「レゼちゃんならちょっと買い出しに行ってもらってるよ。多分もうじき帰ってくるんじゃないかな」
「えっ俺そんなにわかりやすかったスか?」
「はは、そんなにキョロキョロしてたら誰だって分かるさ」
「ハズカシ〜……」
顔を赤くするデンジをテーブル席に促しつつ、水の入ったグラスを目の前に置くマスター。
今日の昼は何を食べようかとメニューを開くが、そこで少し、手が止まってしまった。店に入る前に考えていた事がずっと頭によぎっていたからである。
「頼まないのかい?」
「いやぁ……頼むは頼むんスけど……なんか……ちょっとそんな気分になれなくて……ハラは減ってるのに、なんか、いま口に入れたら吐いちまいそうで……」
「ふむ……何か悩みを抱えているとか?」
「まぁ、はい……」
「ふぅん?……いまならレゼちゃんも居ないし、誰も聞いてないから、言ってごらん?」
人生経験だけは豊富だからね――、とマスターはコーヒー片手に語りかけた。その雰囲気はデンジが今まであってきた男性とは全く違う、落ち着きがあった。アキとも、岸辺とも違う、年季の入った古木のような。
デンジはそんなマスターの雰囲気に当てられたのか、ポツリ、と悩みを零した。
「俺、好きな人がいるんスよ。公安に」
「マキマさんって人で、スゲ〜美人で、スゲ〜優しくて。俺の恩人で」
「この前も、デート行った時に俺ン中のモヤモヤっつーか……悩みを一発で晴らしてくれて」
「ホントに、超超超感謝してるんスよ。そんで、超超超好き。でも――」
「最近、レゼと話してると、なんか……揺らぐっつーか……俺の心はマキマさんだけのモンのハズなのに、今はずっとレゼにあるような感じがして」
「俺ってこんなサイテーな奴だったのかなって……ちょっと、ショック受けてるんスよ……」
清々しいまでの少年の思いの丈の発露に、マスターは目を細める。彼は、16歳で公安のデビルハンターになっていることからして――親もいなければ義務教育も受けていない。きっと、自分の感情との向き合い方というのがまだわかっていないのだ。その様は微笑ましくも、痛ましい。
しかしながら、デンジという少年のその感情の揺れ動きは大人として、マスターとしては綺麗に映って見えた。
「デンジ君。マキマさんのことは好きかい?」
「超好き!」
「レゼちゃんのことは?」
「……超好き、かも……」
脳が爆発しそうな程、茹だる脳みそで返答した。
だって、選べないから。マキマはもちろん好きだ。でも、それと同じくらい、「自分の事が好きな人」が好きなデンジにとっては、レゼもまた、マキマと同じくらい好きになっていた。
こんなの、良くない。デンジの中で勝手に――理由は分からないが――そう思ってしまっていた。
だからこそ、アキとも岸辺とも違う大人の男に見えるマスターの次の言葉が怖かった。
しかし、
「ならそれでいいじゃないか」
と、呆気なくマスターは答えてしまった。
この答えには思わずデンジはいつになく胸が騒いだ。
「へ?ふ、二人も好きになっちゃって……いいのか!?それって、フセージツってことじゃねえの?!」
「ははははははっ!!いやはや、面白いこと言うなぁ。――好きになる人なんて何人居たっていいだろう」
「大事な人が沢山いる。大いに結構じゃないか。何が問題なんだい?」
「い、いいんですかァ?」
「あぁいいとも」
「ふ、二人超好きな人が居ちゃっても?」
「二人超好きな人が居ちゃってもいいさ!!――でもね、デンジ君」
悩んでいた顔が一気に晴れたデンジに、少し真面目な顔で忠告する。
「人生において、二つ同時に選ぶ――なんて美味い話はないよ。選べる道は二つに一つだけ。まさに「二道」ってわけさ」
「君はいつか選択しなくちゃいけない日が来る。それまで、大いに悩むといい。大人とはそんな大きな選択と、小さな選択の連続が積み重なって、成っていくものだからね」
二つに一つ、今の状況に当て嵌めるならば、マキマかレゼか。デンジにとっては、それは恐ろしく難しい問題だった。
「――まぁ、今はこの時間を楽しむのも大事さ。ここで決めなきゃいけないって訳でも無いからね」
「そーいうモンなんスかね……」
「そういうものさ。そうだね……いつか、どちらかの道を選ぶと決めたならここに来るといい。僕で良ければいつだって相談に乗るよ」
「ンン〜〜そうだな!マスターの言う通りかもしれねぇ!サンキュー!マスター!」
「どういたしまして。さ、なに頼むか決まった?」
「あ、ランチランチ!忘れてたぜぇ〜!」
いつの間にか。悩みに悩んでいた少年の顔は消えさり、いつものデンジが戻ってきたようだった。
そんなデンジの様子を見て、マスターは美味しそうにコーヒーを啜る。カフェをやっていて、良かったなと思える瞬間であった。
「たっだいま戻りました〜!って、デンジ君来てるじゃ〜ん」
「おう!今日もランチ食いに来たぜ!」
「もう〜そんなに食べるほどここのランチ美味しく無いでしょ〜?」
「美味しいよ?」
「美味いぜ〜?」
「バカ舌〜お子ちゃま舌〜」
「そーいうレゼはコーヒーとか飲めんのかよ」
「飲めるよ?でもここのコーヒーはミルクがないと飲めないかな〜」
「ふっ、まだまだレゼちゃんもお子さまだね……」
「違うけど〜??マスターのコーヒーが他のお店と比べるとどーしても……ね?」
「ふっ………(べ、、別に効いてなんかない……無いったら無い……)」
いつか絶対に美味しいと言わせてやる、と心に誓ったマスターであった。
デンレゼ最高!デンレゼ最高!デンレゼ最高!
オマエもデンレゼ最高と言いなさい!
少し投稿頻度が落ちます!ごめんよ!一日二本は流石にキツかった!
あと評価赤バーもありがとう!