疑心貌   作:カカラカ

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【ハイセキ】孤

 

 

 

 

【ハイセキ】孤

 

 

 酒に呑まれてふらふら、気づけばこんな年まで生きちまった。

 勇敢に生きたやつは早死にした。尊敬される人間は囲まれて表に出てこない。残ったのは呑んだくれのジジイただ一人、滝を登る勇気も持ち合わせず、天寿を無駄に消費する愚者が一人よ。

 人生山あり谷あり、程度が激しいほど濃くて豊かだとされているわな。おれの人生は平地も平地……草原で生い茂って地面の波なんざ見えねぇな。

 

 後継も家族も作れねぇ生涯一人の俺様、老いてくたばる一瞬まで、ただ国の行く末を見ることしかできないおっさん。介入は若いやつらの仕事。主役の座なんて生まれた時から譲っていたさ。

 変化を受け入れる心がなければ人は成長しないとか。俺の心には寸分の狂いもなく正気が詰められていたおかげで成長することはなかったな。

 

 現状の不満は狂気的な思考だ、なんてな。頭のかてぇおっさんが何をほざくか。自らの正気は他人を狂気で断定することで保証されるんだ。周りをみて同じやつを探すんじゃない。違うやつを探すんだよ。そうそう、あの若造みたいにな。

 永遠に感じていた一日も、今では酒を一杯飲むだけで終わっちまう。須臾の虚しさと孤独への耐性がついてきた事に嘆くべきか喜ぶべきか。

 

 ふらふら、おぼつかない足取りで組合まで向かう。途中優しそうな若者が手助けすると名乗り出たが、丁重に断ったぜ。俺は幸せな若者が許せないからな…………なんて、冗談だぜ。割とマジでな?

 受付に討伐報酬を提示して酒をお願いする。ただもんじゃねぇ雰囲気を出すコイツの目は良いらしく、俺の欲しい酒を必ず持ってくる。どんなカラクリかは不明だが、少なくともおれに理解できるもんじゃないってことは理解できたぜ。腕に刻まれた魔法陣らしきものも見て見ぬふりをして、ただお酒を待つ。

 運ばれてきたのは隣国産のビール。後味がモンスターの体液レベルで最悪と評判のモンスタービールだ。俺は嫌いじゃないぞ? モンスターにマウントを取ってるみたいで気分がいいからだ。

 

 あら? ああくそっ、酒がもうなくなりやがった。何種類もの食べ物や飲み物が体の中に入ってくるくせに、体の外に出るのは二種類だけってむなしいな。そう、せっかく育てたのにな……。

 まあいい。とにかく酒だ。冷静な自分でいたくないからこの姿なんだ。自分を見てられなかったから正気を守ってられないんだ。人を信じられないから酔いが覚めないんだ。

 ガタン、と机をビールの入った樽が揺らす。

 今日も一日中、おれは酒に浸る。

 

 

 

 

 

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