「えぇ⁉月曜マン⁉」
頭の部分に月の字が浮かんでいる異形頭の月曜が、Twitterを見て驚きの声を上げた。月曜は、自分以外にも月曜の異形頭が存在していたことを知らなかったのである。
月曜マンの投稿を見ていくが、人間を追い詰める様子に彼は良い気持ちがせず、DMで連絡を取ることにした。
初めまして。月曜と申します。突然ですが、月曜マンさんの投稿を拝見して、お話したいことがあります。直接お会いしてくれませんか
しばらくして、月曜マンから返事が来た。
まさか月曜から連絡が来るとは驚きだ。話とは何だ
それはお会いしたときに話したいです。いいですか?
いいだろう。場所と日時はどうする
僕は絶対に月曜日しか来れません。それ以外の日は別の世界にいます。ですので、必ず月曜日でお願いします。場所は東京がいいです
月曜は月曜日だけ人間界に来ており、その日以外は異形頭界と呼ばれる、異形頭だけが存在する世界にいるのであった。そこには他の曜日たちもおり、全員同い年の7つ子兄弟である。
ならば、来週の月曜に渋谷のハチ公前で待ち合わせはどうだ
分かりました。当日はよろしくお願いします
時間はどうする。朝の9時から午後5時の間ならいいぞ
では、午前10時でお願いします
分かった。会えるのを楽しみにしている
次の月曜日、月曜は少し早めに約束の場所に来ていた。10時になり、月曜マンがやって来た。
「お前が月曜か」
月曜は、月曜マンに真剣な面持ちで向かい合った。
「初めまして。月曜マンさん。初対面でこんなことを言うのも何ですが、言わせてもらいます。月曜マンさんは、 人間さんたちに対して厳しすぎると思います」
「労働を嫌がる人間どもを働かせる、それが私のやることだ」
月曜マンは、悪びれる様子もなく言った。
「人間さんたちは、一生懸命働いています。怖がらせてどうするんですか」
「月曜、お前がどれだけ人間どもに対して優しくしても、そいつらが私たちを好きになるわけがない」
「!」
月曜マンの発言に、月曜は固まった。
「同じ月曜なら分かるだろう。どうせそうなら、いっそ嫌われ者になった方が楽だ」
「・・・」
俯いた月曜は、過去に人間に言われたことを思い出した。
「おい月曜!お前がいるから俺たちは苦しんでんだよ!分かってんのか!」
人間の言い分は理不尽なものだった。しかし、月曜は怒ることができなかった。月曜日という存在が、人間にとって良いものではないことは、月曜自身がよく分かっていたからだった。
(確かにそう言われたことはある。でも・・・)
月曜は、仕事に行く人々の嫌そうな顔を思い出した。
(僕には、あの人たちに厳しくなんてできない)
「月曜マンさん」
「何だ」
月曜は顔を上げて、月曜マンを真っ直ぐ見た。
「確かに、人間さんたちが月曜日を好きになることはないでしょう。僕たちは、永遠に嫌われる運命だと思います。でも、それでも僕は、人間さんたちを応援したい。今日から1週間頑張れるように、背中を押したいんです。僕は、月曜マンさんのようにはなれません」
月曜マンは、ため息交じりに言った。
「生ぬるいな、お前は」
「月曜マンさんには月曜マンさんのやり方があることが分かりました。だから僕たちは、それぞれのスタンスで人間さんたちに接すればいいと思いました。だからもう、月曜マンさんの邪魔はしません。最初に言ったこと、お詫びします。申し訳ありませんでした」
月曜は月曜マンに謝罪し、頭を下げた。
「いいだろう。許そう」
「ありがとうございます」
「他に話すことはあるか」
「いえ、もうありません。今日はありがとうございました」
月曜マンに丁寧にお辞儀した。
「私はしないが、人間どもの応援頑張れよ」
「はい。月曜マンさんも活動頑張ってください」
「ではこれでな」
「さようなら」
これで2人は別々の道へ行き、別れていった。
2人はそれぞれの道を行くと決め、別れた。もう2度と会うことはない。そのはずだった。
「さっさと働きに行け!人間野郎!」
優しかったはずの月曜が、何故か暴走してしまった。人間たちは悲鳴を上げながら月曜から逃げていった。そのとき、月曜の前に立ちはだかる人物が現れた。
「おい月曜」
「お前は・・・月曜マン」
「人間どものケツを叩くのは、私の仕事だ」
「うるさい!」
「お前、前に言ってたよな。人間どもの応援をしたいと。私の邪魔はしないと」
「黙れ!」
「私の仕事の邪魔をするなら、お前を止める」
「そもそもこの世に月曜は2人もいらないんだ!真の月曜はどっちか、決着をつけようじゃないか!」
「いいだろう。その勝負、受けて立とう」
月曜と月曜マンの戦いやいかに!映画『月曜VS月曜マン』、20XX年4月1日公開!
「カットです。映像を確認します」
監督の時計が言った。月曜の友人である。
「月曜マンさん、今回のエイプリルフールの企画に参加してくれてありがとうございます」
「月曜から連絡が来たときは何かと思ったが、まさか嘘の映画の予告に出ることになるとはな」
渋谷での出来事は実話であり、もしも2人があのあとに再開するならという話が映画の予告である。これを企画したのは月曜以外の曜日たちである。エイプリルフールに何かやろうという話が出て、月曜と月曜マンで何かやったら面白いんじゃないかとなり、月曜が月曜マンとのことを話し、結果的に今回の企画が立ち上がった。曜日たちはそれぞれ自分の曜日の日にしか人間界に行けないが、曜日たちの友人である時計にはその制約がないため監督をやらされることになった。ちなみにカメラマンは時計の弟であるデジタル時計がやることになった。月曜マンは企画に驚いたが、こういう機会は滅多にないからという理由で出演を許諾した。
「にしても、月曜があんな演技ができるとは。意外だったぞ」
「僕も最初はちゃんとできるか不安だったんですけど、やってみたら案外いけました。自分でもびっくりですよ」
「月曜の才能だったのか」
月曜マンは月曜に感心した。
「そうかもしれませんね。月曜マンさんの演技も本当に良かったですよ」
「私はいつもと変わらないからな。あれは演技ではなく素だ」
「そうだったんですか⁉それこそ意外ですよ!」
月曜マンの意外な発言に、月曜は素っ頓狂な声を上げた。
「私には演技というものは分からないからな」
「まぁ普通は素人はそうですよね。僕が特殊だっただけで」
そのとき、時計が現場にいる出演者たちに呼びかけた。
「映像はOKでした。これで撮影は終了します。皆さん、お疲れ様でした。良い演技でした」
エキストラの人たちがお疲れ様でしたと言って次々去って行った。
「それでは月曜マンさん、今日はお疲れ様でした。本当にありがとうございました」
「月曜もお疲れ。ではまたな」
月曜マンの言葉に、月曜は強く反応した。
「!はい!また今度お会いしましょう!あ、LINE交換しましょうよ!」
「いいぞ」
裏ではLINEを交換し友人になった2人だが、表向きでは対立しているように見えていた。なぜなら、月曜はTwitterでは人間たちを応援するツイートをしているのだが、月曜マンにとっては興味がないもので、月曜にとっても月曜マンの投稿は良いものではなかったため、お互いにフォローすることはなかったためである。
2人は出来上がった予告をTwitterに上げた。
映画の予告ができました!人間さん、ぜひ見ていってください!
月曜と決着をつけるときが来たようだ
また、このために作った公式YouTubeチャンネルにも予告は上げられた。
これを見たファン達は「対立してるのにコラボしてる???」と混乱することになったのであった。
このお話は、Twitterで活動している月曜マンから着想を得て、人間に優しい月曜を生み出し、月曜マンとその月曜が出会ったらどうなるかと考えて書きました。
いつもは人間たちを追い詰めている月曜マンが、映画の中ではヒーローと化していて面白いなぁと思っていたのですが、よく考えたら月曜と戦う理由が人間たちのためではなく自分のためなので、ヒーローではなかったことに気づきました。それと、月曜マンが勝ったら結局人間たちはケツを叩かれるし、月曜が勝ったら理不尽に怒鳴られるしで、どっちが勝っても人間たちにとっては地獄なんですよね。エイプリルフールで良かったなぁ。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。