デュエル・マスターズK×K   作:月兎タンク

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 こんにちは月兎タンクです。ちょいと気分転換がてらに新しい小説を書いてみようと思い、昔から大好きだったデュエマの二次創作を執筆しました。
 一応大筋のストーリー自体は完成してますが基本的には『イナズマイレブンHEROS!!!』の投稿を優先するので投稿頻度はあっちよりも遅いです。
 本小説の執筆にあたってデュエマ関連の作品だけでなく、遊戯王等の他作品のTCG作品を参考にしている為、デュエマっぽくないな〜と感じる要素があると思いますがどうかご理解ください。


銀河からの流浪者

 ここは遥か遠く離れた銀河のどこか。周囲に存在している星々は全て生気を失った死した惑星となっている。その元凶となったのはたった一匹の宇宙の捕食者(コズミック・イーター)であった。

 

 “奴”は数多の惑星を食い尽くし、死した惑星に変えてきた。たった一匹のクリーチャーによる銀河系の絶滅の危機、その事実は数多く派閥に属する知的生命体達が団結する理由には十分だった。

 

 文明問わずに集結する数百億を超えるクリーチャーの大軍。しかし、圧倒的な物量を前にしても“奴”の前には無力であり次々と仲間が、兄弟が、なす術も無く捕食されていく。

 

「モット…タベモノヲ…タリナイ…コレッポッチデハ…ワタシノハラハミタサレナイ…!」

 

 “奴”は億を超える惑星とクリーチャーを食い尽くしておきながらまだ満足していない。数百億を超えていた軍隊も今では10分の1にまで減っている。

 このままでは銀河どころか宇宙の全てを食い尽くされてしまう。もはやどうしようもない絶望感が軍を包んだ時。

 

 その旅人は現れた

 

『ナニモノダ…オマエハ…?』

 

『…さぁな。その答えを俺は探している。』

 

 突如として現れた一匹の旅人(ドラゴン)は一太刀の大剣を手に持ち“奴”と対峙する。

 旅人のスピードは光すらも超え、捕食する為だけに特化した“奴”の捕食すらも避けていく。クリーチャー達が傷一つつける事が出来なかった“奴”の身体を次々と切り裂いていく。

 “奴”を圧倒する様は軍に希望を与え、“奴”には絶望を与えていく。

 

『タベモノノブンザイデ…!コシャクナァァァァア!!!』

 

 遂に“奴”の討伐まで後一歩まで迫った所で“奴”は最後の抵抗を試みた。身体中から光が溢れ出し、熱を帯びている。

 数秒後には“奴”の身体はまるでビックバンを思わせる膨大な光を放出し、“奴”を中心に大爆発を引き起こす。

 “奴”は今際の際に数億の軍隊と旅人を巻き込み、後世において“星喰い事変”と呼ばれる歴史上最悪と謳われる大戦争は幕を閉じた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…筈だった。

 

♢side earth

 

「おい姉貴!待てって!学校はどうすんだよ⁉︎」

 

「私がこの世で最も優先するべきなのは義務教育機関よりも好奇心だよ!さ〜て!クリーチャーちゃん達出ておいで〜!」

 

 この惑星の名は『地球』。猿から進化した知的生命体が惑星の食物連鎖の頂点に立つ別名『蒼き宝石』と形容される環境の良い惑星である。

 

 そして住宅街から外れた森林を猛スピードで駆け回っている少年・少女が住む地の名は『日本』。国土が狭い島国にも関わらず一部の技術力水準が世界トップクラスという独特の国風が特徴の先進国の1つである。

 

 後ろを走る少年から姉貴と呼ばれた少女の目当ては数十年前からこの日本の地でのみ目撃証言が報告される謎の存在『クリーチャー』である。

 

「おい姉貴…!いい加減俺の話を聞けって!クリーチャーなんて…本当に存在するわけがねぇーだろ⁉︎クリーチャーはカードの中の存在なんだぞ⁉︎」

 

「そんな事ないって!いい勝路?おじいちゃんは昔から言ってたじゃん!クリーチャーは本当にいるって!今はまだ私達の前には姿を表さないけどいつの日か必ず私達の目の前に現れてくれるって!」

 

 そう言って少女は勝路という名の少年に向けて一枚のカードを見せる。

 そのカードには『コッコ・ルピア』と名付けられた可愛らしい小鳥のイラストが描かれており、裏には“デュエル・マスターズ”のロゴが印刷されている。

 

 “デュエル・マスターズ”…。それは史上最高にハゲしくアツかりしカードバトル。数十年前に大企業『WOG(ウィザードオブザゴースト)社』によって開発されたこのTCGは世界中で大ヒット。この日本においても老若男女に愛される人気のカードゲームとなっている。

 

「そ・れ・に!勝路も見たでしょ?朝のネットニュース!」

 

 事の発端は今日の朝大々的に報道されたニュース。その内容は…

 

『隕石消失!先日宇宙からもたらされた漂流物の正体はUFOだったのか!?』

 

 数日前にこの街の裏山に落下した隕石が忽然と消えたというニュースだった。

 隕石の調査チームの話によるとほんの少し目を離した瞬間、忽然と消えたとの話があった為この手の話題に敏感な若者達は隕石の正体は未確認生命体…それこそ昔から目撃証言のある“クリーチャー”ではないかと噂した。

 

「事件現場は私達の家の近く!そして消えた時間帯は今日の朝!これは神さまが私にクリーチャーに会えって言ってるようなもんでしょ!」

 

…んなお気楽なもんじゃねーんだよ…クリーチャーは…。

 

「え?何?なんか言った?」

 

「あんな職業:遊び人のジジイの昔話を鵜呑みにすんなって言ってるんだよ!もういい加減学校行くぞ!」

 

 少年は少女の首根っこを掴み強引にでも学校へ連れて行こうとする。

 

「は〜な〜せ〜!私は絶対にクリーチャーに会うの〜!会った一躍有名になりたいの〜!」

 

「う〜ご〜く〜な〜!俺はニート予備軍の姉を義務教育施設で更生しないといけねぇんだ〜!!」

 

ガサガサ!

 

 学校に行きたい弟と好奇心を満たしたい姉。絶対に譲れない2人の信念がぶつかり合っていると近くの茂みから物音が聞こえた。

 

「はっ!これはクリーチャーちゃんの物音!」

 

「猫かなんかd…エッ?」

 

 茂みの中から勢いよく現れたのは猫でも狸でもなく全長は170cmはあろうボロボロの布で構成された生命体であった。

 

「で…!」

 

「「出たァァァァァッ〜〜!!!」」

 

 あまりに予想外すぎる生物の登場に姉弟は馬鹿でかい叫び声を上げ、裏山全域に木霊する。

 

「ま、ま、ま、不味いよ勝路…!

 

「お、お、お、落ち着け姉貴…!背中を見せずにそぉ〜と逃げるんだ…!」

 

「それって熊に遭った時の逃げ方じゃん!」

 

 警戒レベルをMAXに引き上げる姉弟だが謎の生命体はピタリとも動かない。

 

「…あれ?動か…ない?」

 

「お、おい姉貴!危ねぇーって!」

 

 無抵抗の生命体を見た姉は警戒を緩め一気に近づく。弟の静止を振り切った姉は軽く突くと謎の生命体は垂直姿勢で地面に伏した。

 

「や、やべぇ…!救急車…!」

 

 未だに正体不明の生命体だが倒れたとなると話は別だ。この中で唯一常識を持つ勝路は急いでスマホを取り出して『119』に電話しようとする。

 

 だが…

 

「待ちなさい勝路。」

 

「んだよ姉貴!?人が倒れてんだぞ!?早く救急車を呼ばねぇとやばいって…!」

 

「…ここがどこだか知ってんの?」

 

「ここがどこって…裏山…ハッ!!」

 

 そう今姉弟達がいる場所は確かに裏山だ。数日前に隕石が落下し今朝それが忽然と消失した裏山なのだ。

 当然そのような事が起きればこの裏山はただの裏山ではなくなる。その証拠に山の入り口には黄色の『立ち入り禁止』テープが貼られており姉弟達はそれを無視して潜り込んでいるのだ。

 そんな状況で救急車を呼ぼうものならどうなるだろうか?

 

「俺達がここにいる事がバレる…!」

 

「そう!つまり私達は大人からメチャクチャ怒られる!勝路も例外なく!」

 

「ちょ待てよ!俺は姉貴を止める為に付いて来ただけだろーが!なんで俺まで怒られなくちゃいけないんだよ!?」

 

「こうなったら死なば諸共!私は意地でも勝路と一緒に来たって証言しまーす!」

 

「こんの…クソ姉貴が…!」

 

 割と本気で拳を振るわなければ姉の腐った性根は治らないと思い始めるとどこからか怪物の唸り声のような音が耳に響く。

 

グギュルルル~

 

「…さっき朝飯食ったばっかってのにもう腹減ってんのかよ。」

 

「えっ!?違うって!私じゃないよ!」

 

「じゃあ誰が…?」

 

グギュルルル~

 

 再び腹の音が聞こえた為音の方向に視線を移すと、持ち主の正体はローブの不審者だった。

 

「…こいつもしかして腹が減ってるだけか?」

 

「…! 分かった!この人を私ん家に連れて行こう!」

 

「ハァ!?なんでそうなるんだよ!?」

 

「多分この人はお腹が空いているんだよ!だったら家に連れて帰ってご飯を食べさせれば私たちは怒られる事なくこの人もお腹が膨れる!まさにwinwinじゃん!」

 

「ぐぬぬぬ…!姉貴にしては合理的だ…!」

 

「さぁそうと決まれば善は急げ!調査隊の人に見つかる前に脱出だァーーッ!!!」

 

 その後姉弟は謎の人物を担ぎ上げ調査員の目をなんとか掻い潜りながら家に帰るのであった…。

 

 彼らの姿を上空から見つめる1羽の小鳥に気づく事なく…。

 

『生キテ“マスター”…。貴方ガイナケレバ…コノ惑星…イヤコノ宇宙ガ終ワワル…。』

 

「ん?今なんか声が聞こえたような…?」

 

「ちょっと勝路!もっと力入れてよー!」

 

 ようやく裏山を抜けた姉弟は会う人々から疑惑の視線を向けられつつも我が家の前に到達する事に成功した。

 

「ゼェ…ゼェ…、お、重い…。」

 

「あと…少しだよ…。ほ、ほら…!見えた…!」

 

 姉が指を刺した建築物は家と呼ぶにはいささか憚られるデザインをしている。

 2mの長身でも楽々と入れそうな巨大な自動ドア。窓ガラスから見える縦型のショーケースには様々な種類のカードが所狭しと並べられている。

 そして最も目立つのは入り口にデカデカとか掲げられた看板だ。そこにはこう書かれてある。

 

カードショップ『切札(ジョーカー)』と…。

 

「た、ただいま〜…」

 

 自動ドアを潜り抜けた少女は誰にも聞こえないように小声で帰宅の挨拶を行う。

 

「よ〜し…おじいちゃんはいなi「何処に行こうしてるのかね?」ビクッ!」

 

 いつのまにか姉弟の前に腕を組んで立っていたのは私服の上に『切札』のロゴが入ったエプロンを身に包み、まるで某戦闘民族の変身形態の如く逆立った白髪が目立つ小柄な老人だった。

 

 小柄であるものの老人からは“ゴゴゴ…”の擬音が聞こえそうな程の威圧感が発せられている。

 

「タンマ爺ちゃん!俺は姉貴に巻き込まれただけ!本当は学校に行こうとしてたんだよ!」

 

「酷い勝路!全部私が悪いみたいじゃん!」

 

「みたいじゃなくてそうなんだよ!」

 

 老人をそっちのけに口喧嘩を始める姉弟。それを見た老人は溜め息を吐くと彼らが持ってきたボロボロのローブに視線を移した。

 

「やめんか勝美!勝路!」

 

「「は、ハイっ!!!」」

 

 老人の怒声によって漸くヒートダウンした姉弟は地面に対してジャスト90度になるように立つ。

 

「そこにおるボロボロの布の塊は何じゃ?」

 

「え〜と…これは〜…。」

 

「正直に答えなさい。もしかして…死体じゃあるまいな?」

 

「し、し、し、死体ィ〜〜!?違う、違ェ、違いますッ!!たまたま裏山に入ったら急に倒れちゃって…お腹が空いているみたいだからウチでご飯を食べさせてあげようかな〜って…。」

 

「ほーん…。こいつがのう…ちょっとお顔を拝見…。」

 

 老人は不審者のフードを外すと気絶している白髪の青年が姿を現した。

 

「うわ〜意外とイケメンじゃん!」

 

「気にするとこそこかよ…。」

 

「フム…まぁいいじゃろ雑炊でも作ってやりなさい勝路。」

 

「作るの俺かよ!?」

 

 結局押しに負けた勝路はブツブツ文句を言いながら2階のキッチンに向かうのだった。

 

♢side ???

 

 漆黒の壁には幾星霜の何月を掛けて届いた煌めく星々が彩り、私の視線には蒼に輝く美しい惑星が自転を行っている。

 

 そして私の肉体が惑星が発する重力を感じ始めた頃…。私の前に漆黒の影(・・・・)が現れた。

 

「待っていたぞ旅人(・・)よ。」

 

 太陽の反射光によって照らされた影は鳥を思わせる意匠を持った異形の怪物だった。

 私を見つけた奴は容赦なく鋭い爪を光らせ私に襲い掛かった。何故だか分からないが奴に対して異常な殺意を湧き出た私は右手に大剣を携え奴と応戦する。

 

「どうした旅人よ?恒星を両断する究極のパワーは!?彗星すらも追い抜く超スピードは!?この細胞に刻まれている記憶とはどれも程遠いぞ!!!」

 

 別に奴の動きに対応できない訳じゃない。だが大剣を振るう度に身体の至る箇所が酷く痛み思うように身体を動かす事が叶わない。

 

「フフフ…思った通りだ。まだあの大戦(・・・・)の傷は治っていないようだなぁ!今の貴様では私は疎かあのお方(・・・・)の足元にも及ばないっ!!!ここで死ねぇ!!!」

 

 古傷を庇った一瞬の隙を突かれ漆黒の爪が私の胸を貫きそこで意識が途切れたしまった。

 

 それからどれだけ経っただろうか。目を覚ました先にあったのは見知らぬ天井だった。

 

「コ…コハ…?」

 

「おっ!ようやく目を覚ましたようじゃのー!おーい勝美〜客人が目を覚ましたぞ〜い!」

 

 俺を見張っていた老人は俺の目覚めに気づくと『カツミ』という名を呼ぶ。

 

「はいは〜い!お腹を空かせた不審者さ〜ん!勝路特性の雑炊だよ〜!」

 

 奥の部屋から現れた少女は手に持っている木の板にある器を私の前に差し出す。

 

「ったく…飯まで俺に作らせてやがって…。」

 

 少女に遅れて現れた少年は何やら苛立っているようでブツブツ独り言を言っている。

 

「お前さん裏山で倒れていたそうじゃよ。ワシの不良娘が見つけられなかったら今頃あの世にいる婆さんと会っていたかもしれんのお。」

 

「オレガ…?」

 

 …駄目だ。目の前にいる生命体の言語を理解する事はできるが上手く話す事ができない。

 …取り敢えず目の前に出された料理を頂こう。

 

ガツガツ…!

 

「おお!いい食べっぷりだねぇ〜!ねぇねぇ!もしかしてだけどさ…あなた宇宙から来た宇宙人だったりしない!?」

 

 ウチュウジン…?俺は…

 …いや待て、そもそも俺は誰だ?名前、種族、文明…駄目だ何1つ思い出せない。さっきまで見ていた夢の内容すらも最早あやふやだ。

 

「思イ…ダセナイ…。」

 

「もしかして記憶喪失って奴じゃねぇーの?」

 

「マジで!?ん…どうしよう…、ッ!そうだ確かアレがあった!」

 

 何かを思い出したカツミは奥の部屋から持って来た何かを俺の前に差し出した。

 

「これあなたが持ってた物なんだ!これを見てなにか思いだす事はない?」

 

 カツチから差し出されたガジェットを手にすると俺の脳内に声が響く。

 

『…ィナー…!…ウィナー(・・・・)…!思い…だして…くれ…!お前の…使命…を…!』

 

 なんだ今の声は…。身に覚えがない…だがどこか懐かしい気分だ。

 

「ウィナー…ソレガ俺ノ名……ラシイ…。」

 

「ウィナーかぁ!うん!いい名前だね!…!ねぇねぇウィナー!あなた記憶ソーシツなんでしょ?だったら記憶を取り戻すまでここで働けば?いいでしょおじいちゃん!」

 

「ハァ!?俺は反対!ここで働くっつー事は居候するって事だろ!?こんな見ず知らずの奴と一緒に暮らすなんて無理無理!」

 

「ん〜まぁ別にいいじゃない?ワシの弟だって一時期ちゃうちゃう言うペットを飼ってたらしいし、ウチの人手も欲しいし。」

 

「嘘だろ…。」

 

「よーーし決まり!あなたは今日からカードショップ『切札』のアルバイトだよ!よろしくねウィナー君!」

 

 こうして俺は“記憶喪失のウィナー”から“アルバイトのウィナー”へと進化した。

 

 

 時計の針が深夜を指し示した時間帯。この街の殆どの住人は眠りに着く中、公園に2人の人影がいた。

 1人は身長こそ高いが体格は恵まれておらず弱々しい印象を与える青年、もう1人は髪、鼻、ファッションその全てが刃物のように刺々しい人相の悪い青年。

 

「これで終わりだァ!!!ダイレクトアタックッ!!!」

 

「ヒッ…!う、うわあああああッ!!!」

 

 人相の悪いプレイヤーのダイレクトアタック宣言により気弱そうな青年の敗北が確定する。

 

「ヒャッハッハッ!!!俺の勝ちだなァ!約束通りレアカードは貰っていくぜェ!!!」

 

 人相の悪い男の名は灼屋。この街では有名な“カード狩り”の一員である。今やDMのカードは1枚で数万もの値が付く物が存在する。

 そんなレアカードを持つプレイヤーに目を付け不公平なアンティルールを化仕掛けカードを奪う集団…それが“カード狩り”である。

 そして今夜理不尽な狼に目を付けられた哀れな羊が犠牲になろうとしていた。

 

「ヒッ…!い、嫌だ…!嫌だァァァァァッ!!!!」

 

「ぐわっ!?て、テメェ…!!」

 

 予想外の反撃により視界を遮られた灼屋は間抜けにも羊に逃げられる。

 

「クソがッ!!!せっかくいいカモを見つけたと思ったのによぉ!!!どうする…これじゃあ今月のノルマが…!」

 

 ノルマを達成できなかった事による上司の制裁を恐れた灼屋は頭を抱えながらベンチに座り込む。

 どうやら犯罪組織も楽ではないようだ。

 

「さっきみてェなカモは中々お目に掛かれねぇしよぉ…。」

 

「“レアカードが欲しい”…それが貴方の願いですか?」

 

「ッ!だ、誰だ!?」

 

 頭部の右半分だけ仮面を装着し、烏の羽を思わせる意匠が施された漆黒のスーツを身に包んだ高貴さを感じさせる美女が佇んでいた。

 

「もう1度聞きます。貴方の願いは“レアカードが欲しい”ですか?」

 

 壊れたロボットのように同じ台詞を繰り返す女性に対して肌付きのワルである筈の灼屋は恐怖を感じてしまう。

 だが身につけた全てが“不審者”に直結する女性の筈なのに、彼女の口から発せられる言葉の数々は生まれてこの方他人を信じた事の無い灼屋の心に染み渡り、思考に霞がかかるような感覚に襲われる。

 

「そ、そうだ…!俺は100…いや1000枚のレアカードが欲しいっ!!!そうすりゃ俺は一気に金持ちになれるからよぉ!!!」

 

Certainly(かしこまりました)お客様。その願い叶えましょう。」

 

 美女は左手を軽く鳴らすと上空から幾千ものレアカードが降り注ぐ。降り注いだレアカードは状態にもよるが1枚数万は下らないだろう。

 

「ほ、本当に願いが叶った…!しかも最上級のレアカードだ…!これを全部売れば数千万はくだらねぇ…!俺は一気に大金持ちだァァァァ!!!」

 

 願いが叶い至福に浸る灼屋。レアカードを出し尽くした女性は懐から1枚のカードを取り出す。

 

「それでは対価を頂きます。」

 

「対価ァ?チッ…おいいくらだよ?カードを換金したら払ってやるから待ってろ!」

 

「いいえ。対価に頂くのは貴方自身(・・・・)です。」

 

 美女は小さく微笑むと手に持っていたカードが灼屋に水面に投げられた小石のように身体の中に吸い込まれていった。

 

「な、なんだよコレ!?…!う、うぎゃぁぁぁぁぁぁッ!!!お、俺が…俺が消えて行くゥゥゥゥッ!!!!」

 

 まるで自分の人格が別の存在に上書きされるような感覚に襲われた灼屋の表情は恐怖に支配され絶叫する。

 すると灼屋は白目を向き地面に崩れ去った。

 

「目覚めろアントワーヌ。」

 

 頃合いを見計らった女性は同一人物とは思えない程低い声を発する。すると気絶していた灼屋はおぼつかない足取りで立ち上がった。

 

「ん〜…ハッ!!!こ、これはこれは…!支配人(・・・)!お久しぶりでございますッ!!!」

 

 立ち上がった灼屋だったが彼の様子がおかしい。先ほどまで初対面であった女性に対してはまるで会社の上司と会ったかのように遜った反応を見せ、粗暴な言葉使いも礼儀正しいものへと変化している。

 

「フム…受肉は成功したようだな。新しい肉体の調子はどうだアントワーヌ?」

 

「ははっ!すこぶる元気でございます!まぁ〜…強いて文句を言わせていただけるならば知性のカケラも無さそうな人間が受肉先である事くらいですかね!ハッハッハッハ!!」

 

 美女は灼屋だった者の軽いジョークを無視し淡々と彼の使命を伝える。

 

「貴様をこの世界に呼び出した理由はただ1つ。旅人の抹殺だ。」

 

「た、旅人をですか!?し、しかし…奴は支配人が殺した筈では…?」

 

「その筈だった、だが奴の生命力を侮っていたらしい。私の一撃から逃れた旅人は命からがらこの地に流れ着いたようだ。」

 

「…フム確かにこの肉体の記憶によれば近くに隕石が落ちたようですな。しかも先日行方不明になったとか…。」

 

「恐らくその隕石が奴なのだろう。私はまだやらなければならない事がある。奴の始末は貴様に任せた。」

 

 すると支配人は懐からカードの束を取り出し灼屋に差し出した。

 

「これは…?」

 

「この世界で唯一のクリーチャーの力を引き出す道具だ。詳しい事は受肉先の記憶にある筈だ。これで話は以上だ、私はあのお方の元へ行く。」

 

 情報を伝え終えた支配人は黒いモヤと共に姿を消し公園には再び灼屋1人になる。

 

「ほお…!これは面白そうだ…!ククク…待っていろ“旅人”よォ!!!忌々しい貴様の血肉をォ!!我が君に送る極上の料理にしてあげましょおォ!!!」

 

 狂気の笑みを浮かべながら高笑いする灼屋…否かつて灼屋であった者。

 月明かりに照らされて伸びる影は人型の生命体から異形の怪物(クリーチャー)へと変貌していた…。




デュエルシーン入れたかったけど長くなりすぎたんで泣く泣く次回に回しました…。
キャラクター設定等は3話終了後に公開する予定のためもう少しお待ちください。
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