いつもながら不定期なんですが、よろしくお願いします。
十一月に入るとクィディッチシーズンに突入した。
そうなると、ハーマイオニーはなかなかスリザリンには来なかった。寮対抗のイベントなので、やはりグリフィンドールの彼女がここに来るのには抵抗があるのだろう。「そんなこと関係ないのに………」と、パンジーが少しすねながらダフネに話していたのを聞いた。勿論、それ以外にも理由があるのを俺は知っている。
「そういや、土曜日はスリザリン対グリフィンドールだな。」
何気ない感じで、隣で宿題をするドラコに話しかけた。クィディッチシーズンだからといって宿題が減るわけではない。ドラコは魔法薬学の「半月草を用いた傷薬」についてのレポートを書きながら少し苛立った調子で返事をした。
「ああ。ポッターが出るんだろ? 箒から落ちて、怪我でもしてくれないかね。」
「まあ、そう言うな。そんなことになったらハーマイオニーが報われないだろ。」
「そんなの知ったこっちゃないね。大体、なんでグレンジャーがあんな連中といるのかが僕には疑問だ。どうせ、クィディッチを言い訳に自力で宿題をしようともしないマヌケ野郎だろ? そんなヤツに教えるくらいなら、もっと僕たちに教えてくれればいいものを………。」
「まあまあ、落ち着けって。」
いつだったか、ハーマイオニーが俺たちに宿題を教えてくれた時があった。正直、ドラコもできる方だとは思っていたのだが、ハーマイオニーはそれ以上だった。俺も、知識に関してはハーマイオニーには適わない。教科書を全部暗記している奴に適う気がしない。
以来、ドラコは「マグル生まれに負けるのは恥だ」などと言って、より一層勉強に励むようになった。ハーマイオニーを贔屓呼ばわりしなくなったのも、この時からだ。
そんなドラコの様子を見て、ハーマイオニーはポッターの愚痴を俺に言ってきた。スリザリンでまともにポッターの話ができるのは俺だけなのだ。
「ハリー達も、マルフォイみたいにしてくれたら教えがいがあるのに………。クィディッチで忙しいのは分かるけど、宿題くらい一人でできるようにならないと………。」
「ポッターの宿題も見てるのか?」
「ええ、まあ。もうすぐクィディッチシーズンでしょ? ハリーの初めての試合だし、少しでも力になれたらなって………。」
俺の質問に少し嬉しそうに答えたのを見ると、頼られるのは満更でもないようだった。
「だから、クィディッチが始まるとなかなかこっちに来られないかも………。ハリー、緊張して宿題どころじゃ無いみたいだから。」
少し、表情を曇らせて最後にこう付け加えた。
こういった事情を知っている分、俺としてはポッターにはいい成績を残してもらいたい。敵チームではあるが。そんな俺の態度が、ドラコにはクィディッチに興味がないように映ったのだろう。少し怪訝そうにこちらを見てきた。
「ジン、君はクィディッチに興味がないのかい?」
「興味はあるさ。クィディッチなんて見たことないしね。」
「クィディッチを知らないのかい!?」
「ああ。何度も言っただろ? 俺はマグル育ちなんだって。」
すっかり忘れていたのだろう。ドラコは少し固まった。そして、そんなんじゃダメだ! と言うと、立ち上がってどっかに行ってしまった。かと思いきや、直ぐにブレーズを連れて戻ってきた。
「ジン、お前、クィディッチを知らないんだって?」
「ああ、まあ。マグル生まれだし。」
「ドラコの言うとおりか………。そんなんじゃダメだ!」
「なんだよいきなり………。」
「お前は人生の半分、いや、全てを損している!」
「お前は俺の人生を何だと思ってんだ………」
「いいか? クィディッチというのはだな………」
そう言って、クィディッチの魅力をドラコとブレーズが語り始めた。
話を聞く限りは確かに面白そうではある。が、実物を知らない俺にとっては何といっていいのやら、といった感じだ。
二人共それを察したのだろう。顔を合わせて、ため息を吐き、
「とにかく、土曜日は一緒にクィディッチを見に行こう。話はそれからだ。」
と、ドラコが締めくくった。
そして、約束の土曜日。クィディッチ場には、ほぼ全校生徒が集まっていた。グリフィンドールにとっては重要な試合だ。これに負ければ、優勝にはまず望めないだろう。応援席も気合が入っている。
特に、ポッターへの期待が強いようだ。「ポッターを大統領に」と言うだいぶ凝った旗をハーマイオニーたちが持っていた。
「大統領って、魔法界にもあるのか?」
「大統領? なんだそれは。」
「ああ、無いんだ。そうだな………。マグルで一番偉い人って感じだな。」
「ああ、マグルの魔法省の大臣みたいな感じか。いいじゃないか、ポッター。なってくれよ、大統領に。そして二度と帰ってこないでくれ。」
「………とりあえず、お前の旗には「マルフォイを魔法大臣に」って書いといてやるよ。」
「フン、そんなものを持つよりも、一緒にプレーしてくれた方が僕は嬉しいよ。」
「………………なあ、ブレーズ。ここで少しトキメキを感じた俺は変か?」
「そういったことはパンジーに聞いてきくれ。俺はノーマルだから分かんねぇんだ。」
「ああ、変なのね………。」
そんな雑談をしながら、観客席につく。選手達にも近くて、いい席を取れた。
「クィディッチの魅力は、何といっても迫力とスピードだ。しっかり見てろよ。」
そうブレーズは言い、コートに集中し始めた。
選手達が入ってきて、マダム・フーチの合図で試合が始まった。
ブレーズの言っていたように、確かにすごい迫力とスピードだった。
あちこちでブラッジャーが飛び、それを避けたり跳ね返したり。
クアッフルを持った選手が勢いよく突っ込んだかと思いきや、ボールを奪われ、逆に決められてしまう。
ボールが奪われる、と思った瞬間に、矢のような勢いで味方に渡るボール。
それらが空中で、しかも、かなりのスピード(具体的にはバイク並みのスピード)で行われるのだ。
しばらくは、接戦が続いたが、実況の一言で一気にコートの展開が変わった。
「ベルをかわして、ものすごい勢いでゴー………ちょっと待ってください、あれはスニッチか?」
その言葉に、両チームのシーカーが動いた。
早かったのはグリフィンドール、ポッターの方だった。誰もがポッターがスニッチを掴むと思った。が、次の瞬間、スリザリンのキャプテンがわざとポッターを弾き飛ばした。
グリフィンドールからは怒りの声が、スリザリンからは歓声が上がった。
ファールと警告をくらったが、スリザリンのファインプレーだった。実際、アレがなかったらスニッチは取られ、負けていた。一気にスリザリンチームの士気が上がった。
一方、ポッターはまた選手たちから離れて、スニッチを探しに行った。しかし、そこで奇妙なことが起きた。ポッターの箒が、まるで乗り手を振り落とそうとしている様な動きをし始めたのだ。
他の人たちも気付いたのだろう。所々、悲鳴が聞こえる。
ついに、ポッターが箒に触れているのは片手だけになった。いつ落ちてもおかしくない状況だった。
「おいおい、何だありゃ?」
「分からない。箒のコントロールを失ったのか?」
「まさか。そんな滅多なことがない限り、ニンバスみたいな高級箒が暴走するものか………。」
もはや、試合には目が行かなく、全員がポッターを注目していた。
しかし、緊迫した状況はいきなり終わりを告げた。
俺たち三人のすぐ隣で、クィレル先生がブッ倒れた。と、同時にポッターの箒の動きが止まった。
そして、何故かわからないが、すぐ後ろでいきなりスネイプ先生のマントが燃えた。同時に、ポッターは箒にまたがり、急降下し始めた。
そして、口を抑える様にしてポッターが地面に倒れた。起き上がり口に何かを吐き出して、それを掴むと叫んだ。
「スニッチを取ったぞ!!!」
確かに、その手にはスニッチが握られていた。スリザリンの抗議も虚しく、試合はグリフィンドールの勝利で終わった。
初めて見る試合としては如何なるものかと思った。
ファールによるファインプレー、暴走する箒、いきなりスニッチを掴むシーカー。
しかし、確かにクィディッチは面白かった。
負け試合を見て、落ち込んでいるドラコに話しかけた。
「確かにお前らが言ってた通り、面白いな、クィディッチは。」
「! そ、そうだろう? まあ、君がそう思ってくれたなら今回は良しとしよう。どうだい? 一緒にプレーしたくなったかい?」
「そうだな。一緒にプレーするのも、面白そうだ。」
「だろう! 来年は、一緒に箒を買いに行こう! ニンバスシリーズの最新型が今度、販売されるんだ! ポッターが乗っている箒より、性能がいいんだ!」
さっきまで落ち込んでいたのとは打って変わって、明るくなり、来年の買い物を一緒にしようと約束した。勿論、ブレーズも一緒に。三人でクィディッチチームに入ることを話しながら、寮に戻った。
その日の午後、珍しくハーマイオニーが寮に来た。少し相談があるようだ。立ち話もなんだからと、図書室へと向かった。
「ねえ、その、誰にも言わないで欲しいんだけど、いい?」
「ドラコ達にもか?」
「ええ。できれば。」
「分かった。」
そう言うと、少し安心したように話し始めた。
「ねえ、今日のクィディッチでハリーの箒がおかしくなったのは知ってる?」
「ああ、見てたからな。結局、原因は分からず終いだったな。」
「その原因はね、スネイプ先生がハリーの箒に呪いをかけていたからなの。」
「スネイプ先生が呪い?」
ハーマイオニーの説明によると、試合中、スネイプ先生が何やら呪文を呟きながらハリーのことを瞬きせずにじっと見ていたらしい。これは、本に載っている呪いを行う人と全く同じ行動なのだという。それ以外にも、ニンバス2000が生徒のイタズラ程度では操れないこと、マントを燃やしたら呪いが止まったこと。以上のことから、犯人はスネイプ先生だと思ったらしい。確かに、そう考えてもおかしくはない。
「でも、動機がないだろ。呪いを使うなんて大事、それなりの動機がなきゃやるはずがない。確かに、スネイプ先生はポッターが嫌いなみたいだけど、殺すほどでもないだろ?」
「………有るとしたら? その動機が。」
「………何だ、その動機ってのは?」
「今から言うわ。………四階の立ち入り禁止の廊下に、何がいるか知ってる?」
「? いや、知ってるわけないだろ? ………もしかして、ハーマイオニー、入ったのか?」
「ええ、まあ………。そこにね、三頭犬がいたの。」
「………………は?」
「三頭犬。ケロベロスよ。」
「いや、それは分かるが………。」
「でね、ハロウィンの日にハリーたちが見たんだけど、スネイプ先生だけが地下に行かずに四階に向かったんですって。」
「は、はぁ………。いや、おい………。」
「そしたら、足にひどい怪我を負って帰ってきたの。そして、ハリーが「三つの頭に同時に注意するなんてできるか?」って先生が部屋でつぶやくのを聞いた。」
「………。」
「四階の廊下の三頭犬の足元には、扉があったの。きっと、あそこにある何かを守っているんだわ。そして、スネイプがそれを狙っている。それを知ったハリーを、口封じに殺そうとした。………どう? 辻褄は合うでしょ?」
「………………。」
急な展開に頭がついていかず、混乱した。
スネイプが何かを狙って、口封じにポッターを殺害? しかも、四階の廊下に三頭犬? ダンブルドアの忠告はこのことか?
いや、そんなことより………。
「ねえ、どうしたの? 急に黙って………。」
ハーマイオニーが心配そうにこちらを見るが、こっちはお前の方が心配なのだ。
「ハーマイオニー。」
「? どうしたの?」
「もう、四階の廊下には近づかないでくれないか?」
「え? ど、どうして?」
「三頭犬に会ったって言ったけど、怪我はしなかったのか?」
「ええ。直ぐに部屋を出たもの。」
「………そうか。俺が思うに、四階の廊下は、三頭犬を置くほど重要で、危険な物が置いてあるはずだ。絶対に生徒に言えないような。」
「ええ。私たちもそう思っているの。だから、スネイプ先生を止めるため………」
「だから、無関心を装うべきだ。」
「………え?」
「ポッターが何かを知ってしまったから、殺されそうになった。そう考えているんだろ?」
「………ええ、そうよ。」
「だったら、自分は何も知らない、関係ないと装えば危険は何もない。そうだろ?」
「で、でも、そしたら、スネイプは誰が止めるの? こんなこと、先生の誰にも言えないし………。」
「何のための三頭犬なんだ?」
「それはそうだけど………。」
「なら、このことは三頭犬に任せていいと思うぞ。何か余計なことをして、お前が犯人に狙われるのは嫌だ………。」
そう言うと、ハーマイオニーは少し驚いた顔をした後、気まずそうに俯いてしまった。
俺が心配しているのは分かったのだろう。しかし、大人しくしているつもりもないようだ。きっと、俺に頼もうとしたことも、自分達でやろうとするに違いない。そう考え、協力した方がハーマイオニーは安全だと気がつく。溜息を吐いて、既にここを去ろうとしている彼女に声をかける。
「ごめんなさい。じゃあ、その………」
「待てよ。俺に何を頼もうとしたんだ? やってやるから言ってみろよ。」
そう言うと、ハーマイオニーは驚いたようにこちらを見上げてきた。
「え? でも、」
「俺が協力しなかったら、自分達でやるつもりなんだろ? だったら、俺が協力した方がいいに決まってる。」
「でも、無理しなくていいのよ? 危険だし………。」
「危険だから手伝うんだよ。俺がやらなかったせいで、お前が怪我するなんて寝覚めが悪すぎる。いいから言ってみろって。」
そういうと、また俯いてしまった。それなりに巻き込んでしまった罪悪感を感じているのだろう。それならやるなとも言ってやりたいのだが、頑固なところは既に知っている。ここは、何も言わずに協力するのが一番いいと思う。
「………二つあるの。頼みたい事が。」
「分かった。何だ?」
「一つは、スネイプ先生を見張っていて欲しいの。なるべく怪しまれないように。特に、一人でいるときは注意して………。二つ目は、ニコラス・フラメルって人物について調べて欲しいの。」
「ニコラス・フラメル? どんな人だ?」
「分からないの。ダンブルドア先生と何か作ったみたいで………。それが、きっと四階に隠されていると思うの。」
「了解。これを、ドラコ達に内緒でやればいいんだな?」
「ええ。大変だと思うけど、他に頼める人なんていないの………」
「いいさ。気にするな。」
「ありがとう。じゃあ、お願いね! 私、これからやらなくちゃいけないことがあるから!」
そう言って、出口まで走っていき、出る直前にもう一度振り返って、「本当にありがとう!」と言うと今度こそいなくなった。
………正直、もっと言いたいことがあった。自分達に秘密で、生徒を呪い殺そうとするような奴と戦っていたこと。四階の立ち入り禁止の廊下に入って三頭犬を見たなんてこと。どうして、今まで何も言ってくれなかったのか。
頼りないわけではないのだろう。現に、こうして頼ってきた。今まで黙っていたのは、あまり巻き込みたくなかったというのはなんとなくわかる。
でも、ハーマイオニーは分からないのだろうか? お前が俺達を危険に晒したくないのと同じように、俺達もお前を危険に晒したくないことが………。
ハーマイオニーの気持ちも分からなくない。俺だって、このことをドラコ達に話す気はない。結局、俺も同罪だ。
でも、全部が終わったら言ってやろう。お願いだから、俺たちの知らないところでそんな危険な真似をしないでくれって。このことをドラコ達に話して、どれだけ心配させるか分からせてやろう。
だから、それまでは俺が守ってやらなきゃ。ギリギリまで、無茶をしないように。もし無謀なことに挑戦するようだったら、先生に報告しよう。マクゴナガル先生や、ダンブルドアにでも。無理矢理にでも止めよう。俺がストッパーになるんだ。
そう、密かに心に決めて俺も図書室を出た。
少し、胸が重たかった。二つほど、余計な秘密が詰まっているせいだろう。
また、安心して寝れなくなりそうだ。
感想、評価、アドバイスなどお待ちしております。
しかし、自分の文章を読んでいて思ったのですが、なんだか展開と展開のつなぎが下手ですね。
急な展開が始まって、急に終わるがめちゃくちゃありますね。
どうしたらうまくまとめられるんでしょうか………。