日本人のマセガキが魔法使い   作:エックン

9 / 87
私の知らぬところで何を………

どうしたものか。先程のことを思い返し、そう考えを巡らせる。

あの二人、今はまだ絶対に会わせてはいけない。ましてや、俺と同時に会うなんて、絶対に避けたい。

ドラコはいまだに俺が純血主義者だと思い込んでいる。確かに、純血主義の考えに一部は賛同しているから純血主義者と言えばそうなのだろうが、マグルの追放なんてものには賛同していない。それをどうやってドラコに伝えるか………。あいつは頑固なところがあるから、いきなりマグルの追放に反対だと言ったら話がややこしくなるのは必須だろう。

グレンジャーもまた、やっかいだ。一度だけ列車の中で純血主義の話になったのだが、そんな考えは間違っている、許せない、と熱く語ってくれた。それはもう、純血らしい俺と純血のロングボトムがなんだか気まずくなるくらい。あいつもまた頑固だ。俺が純血主義の一部に賛同していることを知ったらややこしくなる。

そんな二人が、現状で、同時に俺のところに来ると俺がややこしい目に遭う。下手を打てばどちらか、もしくは二人とも俺と縁を切るとか言い出すだろう。そうなったら関係の修復は難しい。

こうして考えるとあの二人、何となく似てるように思える。場合によっては息の合う仲にもなれるのではないだろうか。

そんな楽観的な考えを頭の隅に追いやる。打つ手としては、先に来た方に状況を把握してもらい、もう片方を納得させるのを手伝ってもらうか納得するまで黙っていてもらうぐらいしかないだろう。とりあえず、一対一ならまだ話しやすい。対策と言えるほどのものではないが、現状で俺ができるのはこれくらいだろう。おとなしく、二人を待つことにした。

 

 

 

 

 

 

夕食を食べ終えたドラコは、少し早足で医務室へと向かっていた。夕食後はあまり時間が無く、もたもたしていたら直ぐに門限の時間になってしまうからだ。

本当は、もっと早く大広間を出たかった。しかし、何故かしつこく絡んでくるパンジー・パーキンソンを振り切るのに思ったよりも時間がかかってしまったのだ。

ノロマなクラッブとゴイルは置いてきた。今はたった一人で人気のない廊下を小走りしている。思えば、ホグワーツを一人で歩くのはここ一週間で今日が初めてかもしれない。いつも、隣にはジンがいた。授業は退屈だけれども、移動時間、休み時間、いつも隣にいた彼のお蔭で毎日が楽しく感じられる。

ドラコにとって、従うのでもなく媚を売るのでもなく、素のままで傍にいる人というのは同年代に限らず少なかった。それは彼の家がそれだけ高貴なものであったということを物語っており、彼にとって少なからず誇りに思えることでもあった。だがやはり、それでも寂しくなる時があった。

その点、ジンはドラコにとって完璧な存在だった。

傍にいながら、全く嫌な気持にならない。落ち着いていて礼儀正しい彼の振る舞いは、家柄上、どうしてもそういったことが気になってしまうドラコにとっても立派なものだった。その上、愚痴や小言も受け入れてくれるし相談にだって乗ってくれる。冗談だって言い合える。

たまに感じていた寂しさはもうどこにもない。代わりに満足感があふれている。

素直になれないドラコだが、感謝の気持ちを伝えたいとは思っていた。だからこそ、彼が入院した時、怒りもしたのだが、これで何か借りを返せると安心した気持ちもあった。

何もいらないと言っていた彼だが、一人の間は退屈だろうと思いドラコが家から持って来た本を渡すことにした。何度も読んだお気に入りの本だが、彼になら渡してもいいと思えたし、感謝する彼の姿と本の内容で楽しく話す自分たちを思うと、むしろこのために本を持って来たのだとも思えてきた。

いつの間にか医務室までの道も、あとは角を曲がって階段を上るだけとなった。

明るい面持ちで角を曲がったドラコは、鉢合わせた人物を見てさっきまでの表情が嘘のようにしかめっ面になった。

 

 

 

 

 

 

ハーマイオニーは、医務室への階段を上ろうとした時に角から出てきたドラコを見て顔をしかめた。嫌な奴に会ったと素直に思った。ホグワーツが始まってまだ一週間しかたっていないが、ドラコがいけ好かない奴だとは感じていた。

いつもジンの隣にいるので、最初は良い人なのかと思っていたのだがむしろ逆だった。

どことなく傲慢な感じがして、よく人を馬鹿にする。その度にジンにたしなめられていたが、やめる気配もない。特に、今日の合同授業でそのことがよく分かった。ハリーが叱られたり、グリフィンドールが減点される度にニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべるのだ。どうしても好きになれない。

 

「おい、グリフィンドールがこんなところで何やってる?」

 

幸いか、ドラコはハーマイオニーのことを詳しくは知らない。知っているのはグリフィンドールということだけ。もしハーマイオニーがマグル生まれと知っていたらまともに会話すらできなかっただろう。

 

「あら、見てわからない? 医務室に行こうとしているのよ。」

 

「医務室? 今はジンしかいないはずだ。ジンに用があるなら僕が言っておく。さっさといなくなれ。」

 

予想通り、マルフォイもジンのお見舞いに来ているようだった。しかし、こちらも約束をしている身。行かないのは失礼だし、何よりマルフォイの言いなりになるのは抵抗を感じた。

 

「私はこの後、ジンと会う約束をしているの。自分で言うから結構よ」

 

「君が約束? ハッ、何かの間違いじゃないかい? この後は僕が会うのだから」

 

「ふーん。まぁいいわ。じゃあ、先に行くから。さよなら」

 

「なっ!? おい、待て! 人の話を聞け!」

 

相手にするのも無駄だと決めつけたハーマイオニーは足早に階段を上っていく。後ろの方でなんだか喚くような声が聞こえるが、すべて無視した。階段を上り終え、扉の前に立つとマルフォイが肩を掴んできた。

 

「おい! 話を聞け! 大体、グリフィンドールのお前がなんでジンに会う約束をするんだ?」

 

「それは、私が彼の友達だからよ! もうほっといてくれないかしら? 私はさっさとジンに会いたいんだけど?」

 

ハーマイオニーの言葉を聞いて、マルフォイは少し呆けた顔をした。が、すぐに嫌味ったらしい顔になり、声を出して嗤い始めた。

 

「何よ。何が可笑しいのよ。」

 

「フフフ…。 いや、何も。へぇ、そうかい、君が友達………。ハハッ!」

 

「だから! 何が可笑しいのよ!」

 

「いやいや、まさか、君みたいのが、友達だなんて。ジンがかわいそうだなぁ」

 

「………何よ。どう言う意味?」

 

「君みたいな礼儀知らずで頭でっかちに、他寮の友達なんて普通はできるのかい? いたら教えてくれよ。ああ、ジンがお友達なんだって? じゃあ、僕たちもお友達かな? 仲良くしようか」

 

「………あなたに何がわかるのよ」

 

馬鹿馬鹿しいとばかりに頭を振りながらため息を吐く。ジンに人は選ぶべきと忠告しなければと心にとめておいた。

 

「いや、そういえばお友達なのに何も知らないなぁ。これは失敬。君のお名前を教えてくれませんかねぇ」

 

「………もういいわ。なんであなたがジンの友達なのか、さっぱりわからない。」

 

「それはこっちのセリフだ。君にジンの何がわかるって言うんだい? まともに話したことすらないだろうに」

 

「お生憎様。ジンとはホグワーツに来る前から仲良くしていたわ。」

 

「………まて。もしかして、君、マグル生まれかい?」

 

「だったら何だって言うのよ?」

 

これ以上は言葉の無駄遣い。そうとしか思えないこのやりとりを終わらせるために背を向けたが、耳に付く嫌な笑い声とそれに伴う言葉がそれをさせなかった。

 

「ハハハハハ! まさか、マグル生まれがジンの友達だなんて、悪い冗談だ。君はジンのこと何も知らないんだな。」

 

「………何を言ってるの?」

 

「いや、マグル生まれが僕たち純血に関わりを持とうなんておかしくてね」

 

「ジンはそんなこと気にしないわ」

 

「へぇ、そうかい。じゃあ、確かめてみなよ。「あなたは、純血主義じゃないわよね?」って、スリザリン生に。まあ、ホグワーツに来てからの彼を知らないんじゃ、何も言えないか」

 

これに対しては何も言えなかった。マルフォイはホグワーツでのジンを知っている。

対して、自分はホグワーツに来る前の、それもほんの少しの時間しかジンと話していない。

それでも、ジンが自分を拒絶すること、ましてや純血主義を唱えるなんて想像もできない。

 

「いいわ。聞いてやろうじゃない。彼が純血主義を少しでも肯定しているなら、二度と彼の前に現れないわ」

 

そう言い切ると、目を丸くしたマルフォイを無視して、医務室の扉を押しあけた。

 

 

 




どうも、エックンです。

この小説を読んでくださって、ありがとうございます。

評価してくださった方、ありがとうございました。嬉しかったです。

今回から、にじファンにも投稿できなかった範囲になりますので、にじファン時代から読んでくださっている方にとっては最新話ですね。

更新は、不定期更新となってしまいますが、これからもよろしくお願いします。

あと、感想、質問、願望などありましたら、ぜひお願いします。大変励みになりますので、
「やってもいいよ(・∀・)」
な方は、ぜひ、お願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。