池のほとりで、のび太は小さな石に腰を下ろし、スパークを見つめた。
「ねえ、生き物を作るには、何を使えばいいの?」
「へっへーん、よくぞ聞いてくれた!」
スパークは得意げに、頭の三角帽子の中をごそごそとまさぐると——
「出たっ! これが『ねんどロボ』だ!」
ぴょこっ。
帽子の中から、小さな粘土だまのような物体が飛び出して、のび太の前にぽすんと落ちた。見た目はただのふにふにした塊だが、よく見ると、表面に微かにロボっぽい目がついている。
「え、これがロボ……?」
「ま、姿は粘土そのものだけどな。こいつは『ねんど型生物メーカー』、通称『ねんどロボ』。お前が手でこねて、形を作れば、それがそのまま生き物になるって仕組みだ」
「ほんとに……? こんなふにゃふにゃで?」
「甘く見るなよ? 強さは作った人の『イメージ』と『実力』次第で決まる。だから……試されるぞ、センスと根性!」
「イメージと……実力かぁ……」
のび太はごくりと唾を飲み、ねんどロボの粘土をそっと手に取った。ふにふにしてて、温かくて、なんだか生きてるような感じすらする。
すぐ横では、ドラえもんが腕を組んだまま、むすっとした顔で池を見つめていた。時おり視線をチラッとのび太に向けるものの、言葉はかけてこない。まだ怒っているのだろう。その背中が、なんだかいつもよりずっと遠くに見えた。
スパークはくるりと宙で一回転しながら、楽しげに言った。
「さあ、好きに作ってみな! 最強でもいいし、カワイイのでも、なんかよくわかんないのでも!」
「最強の生き物かぁ……」
のび太は一瞬、ジャイアンが作りそうな、トゲトゲで強そうな怪獣を思い浮かべた。でも、すぐに首を横に振る。胸の奥が、まだチクリと痛んだ。
(違う……ぼくにとっての『最強』は、そんなんじゃない……)
のび太は、さっきケンカしてしまったドラえもんの、寂しそうな後ろ姿を思い出しながら、粘土をぐにぐにとこね始めた。
(ごめんね、ドラえもん……あんなこと言うつもりじゃなかったんだ……)
丸い頭、大きなお腹、短い手足。一つ一つのパーツに、「ごめんね」と「ありがとう」の気持ちを込めて、一生懸命形を作っていく。不器用だから少し歪んだけど、口元は、精一杯笑っているように見せた。
完成したのは——
「できたっ!」
青くて、もちもちしていて、ドラえもんみたいな見た目の、ぽよぽよ生物。だけど目はまんまるで、口は大きくて、何とも言えない愛嬌があった。
スパークが眉をひそめた。
「……それ、なんだ?」
のび太は少し照れながら、でも、まっすぐにドラえもんの目を見て言った。
「えへへ……ケンカしちゃったけど……それでも、ぼくが一番頼りになるって思ったのが、ドラえもんで……。どんなに強い力よりも、どんなに賢いAIよりも、泣いてる時にそばにいてくれる優しさが、ぼくにとっては一番の『最強』なんだ」
その瞬間、ドラえもんの肩がぴくりと震えた。
「のび太くん……」
腕を組んでいたドラえもんの手が、ゆっくりとほどかれていく。むすっと固まっていた表情はみるみるうちに崩れ、ほんのり赤くなった頬と、潤んだ瞳がのび太に向けられた。
ドラえもんは、消え入りそうな声で「ぼくのこと、そんなふうに……」と呟く。
そして、照れくささと申し訳なさをごちゃまぜにしたような顔で、今度はしっかりとのび太を見て言った。
「……もう、怒ってないよ。ぼくの方こそ、ごめんね」
のび太は心から嬉しそうに、にっこり笑い返した。
だが、次の瞬間——
「……って、おいおいおいおいおい!! なぁにこの生き物!? ぷにぷに!? ふにゃふにゃ!? 目ぇ開いてる!? 自分の存在、認識できてんの!?」
スパークは爆発したように笑い転げ、地面をバンバン叩いた。
「最強!? ウッソだろ!? これ、アリにすら負けるわ!! スズメのフンとタイマンしても負けるだろコレ!!」
「うるさいなぁっ! ぼくは、ぼくなりに真剣に作ったんだもんっ!」
のび太が顔を赤くして叫ぶ横で、問題のスライム生物は、ぺしゃんと地面に座り込むようにして小刻みにぷるぷる震えていた。まるで、「やっぱりボク、ダメなのかな……」と言いたげに。
ドラえもんはそっとそれを見つめ、ふっと口元をゆるめると、のび太の方に視線を移した——。
「よーし、じゃあぼくも作るぞ!」
ドラえもんもムキになって粘土を手に取る。
こねこねこねこね……
「完成っ!」
ぽん、と手を離すと、そこには……
どら焼き型の生き物。
ふわふわの皮の間にあんこ……のすき間から、にょろっと糸のような手足が出てきて、ぴょこぴょこと跳ね回る。
「どらやきんマン、参上~♪」
「なんで名前つけたの!? ていうか、そのまんまじゃん!!」
池のほとりに、二体のゆるゆるパートナー生物が並ぶ。
「のび太くん、どっちが強いか、勝負する?」
「やめてぇぇぇっ!」
そんなこんなで、のび太の箱庭に、ちょっぴり弱くて、でもあたたかい『いのち』が、はじめて芽吹いた——。
箱庭でぷにぷに生き物がのんびり跳ねる中、スパークがふんぞり返って、あきれたように言った。
「おーい、のび太! おまえとドラえもんだけじゃムリムリ! センスが絶望的すぎて、このままじゃ文明どころかドングリの村だぞ!!」
「ええっ!? ドラえもんとぼくのセンス、そんなにダメ!?」
「見りゃわかるだろ!? 一体はぷにぷに、もう一体はどら焼きだぞ!? このままじゃ『もちもち王国』で終わるっての!」
スパークは空中でぐるぐる回りながら、頭を抱えた。
「このままじゃ歴史どころか、おやつしか生まれねーぞ!!」
「せっかく箱庭なんてすげー世界なんだ、もっと人呼ばなきゃソンソン!」
「たしかに……ひとりじゃ難しかったし……」
のび太はドラえもんをチラリと見る。
ドラえもんはどらやきんマンを撫でながら、楽しげに笑っていた。
「ねぇ、ドラえもん。みんなも誘ってみようよ!」
「もちろん。みんなで作ったほうが、きっと楽しくなるからね!」
「……よし、しずかちゃんを誘ってくるよ!」
現実世界に戻ったのび太は、さっそくしずかの家へ向かった。
ちょうどピアノの練習が終わったところだったらしく、しずかは玄関でタオルを首にかけて出てきた。
「のび太さん? どうしたの?」
「え、えっとね、すっごく楽しい遊びがあるんだ! しずかちゃんもきっと好きだと思う!」
「楽しい遊び?」
のび太は、箱庭での出来事を身振り手振りで語りはじめる。
「土とか木とか、全部自分で作れて、生き物も作れて、それでね、ボクの生き物はぷにぷにで……」
「ぷにぷに?」
「で、でも、ドラえもんのはどら焼きで……!」
「どら焼き!?」
しずかは思わず吹き出した。
「ふふっ、なにそれ、ヘンなの。でも……ちょっと興味あるかも」
「じゃ、じゃあ、来てくれる!?」
「うん、着替えたら行くわね」
のび太は小さくガッツポーズを決めた。
(よーし、いい感じ……)
が——
のび太としずかが家に戻ってくると——
「ただいまー。箱庭、いっしょにやろ……」
ガタッ。
……と、部屋の扉を開けたその瞬間。
「よっ、のび太。遅かったな!」
「オレさまが来てやったぜぇ〜!」
そこには、床にべたっと座り込んでいるジャイアンと、その隣でランドセルを背もたれにしながら、ドラえもんのどら焼きを勝手に頬ばるスネ夫の姿が!
「えっ!? なんでふたりが!? ぼく、まだ誘ってないのに!!」
のび太が口をぱくぱくさせていると、奥からドラえもんがひょこっと顔を出した。
「どら焼き買いに行ったら会っちゃってさ。話すつもりなかったんだけど、スネ夫が『なんか面白いことない?』って聞くから、つい……」
「ドラえもーん!!」
「まあまあ、せっかくだからいいじゃない。にぎやかなほうが楽しいよ」
スネ夫がニヤリと笑う。
「そーそー、のび太だけだと百年経っても雑草しか生えてなさそうだしな〜」
「なっ……!?」
ジャイアンがドンと腕を組む。
「ぷにぷに生き物とか、どら焼き生き物とか、文明の『ぶ』の字もないだろ〜」
「うるさいなぁっ!」
しずかはくすっと笑いながら、みんなを見渡す。
のび太は、ジャイアンとスネ夫を見て、ドラえもんにだけ聞こえるように、こっそりため息をついた。
「はぁ……また、めちゃくちゃになりそうだなぁ……」
そんなのび太の様子を見て、ドラえもんはふふっと、どこか懐かしそうに笑った。
「なんだか、思い出すなぁ」
「え?」
ドラえもんは、腕を組んで騒いでいるジャイアンたちに目をやりながら、少しだけ遠い目をする。
「昔、ロボット学校にいたころ、ぼくにもいたんだよ。あんなふうに、乱暴で、ワガママで、いっつも無茶ばっかりする仲間たちがさ」
「ドラえもんにも?」
「うん。しょっちゅうケンカもしたし、あきれることもたくさんあった。……でもね、いざっていう、本当に困った時には、なぜか一番頼りになったりするんだ。不思議だよね、友達って」
ドラえもんは、少しだけ寂しそうに、でも優しく微笑んだ。
「彼ら、今ごろどこで何してるのかなぁ……」
のび太は、ドラえもんの言葉を聞いて、もう一度ジャイアンとスネ夫を見た。さっきまでとは少しだけ、その背中が違って見えた気がした。
その静かな空気を破ったのは、しずかの弾むような声だった。
「さあ、準備はいい? みんなで箱庭、やってみましょ!」
「おう!」
「任せとけって!」
ジャイアンとスネ夫の威勢のいい声に、のび太も頷く。
にぎやかな5人の冒険が、今、始まろうとしていた。
「じゃあ、いくよ!」
のび太が床に置かれた箱庭を指さすと、全員が顔を見合わせた。
「へぇ……これが噂の『わくわく箱庭ランド』……意外と地味ね……」
しずかが少し首をかしげた。
「ま、どうせゲームみたいなもんだろ? ぼくにまかせときなよ」
スネ夫は得意げに鼻を鳴らした。
「じゃあ、みんな……さわってみて!」
のび太が箱庭をそっと床に置き、声をかけた。
「ほんとにこれ、入れるのかよ……?」
ジャイアンが眉をひそめる。
「なんだか……不思議な箱ね」
しずかがそっと手を伸ばす。
そして——
「うわっ!」
まず、しずかの指先が吸い込まれるようにスッと消えた。
「えっ……わああああっ!!」
あっという間に、全員が次々に吸い込まれていく!
「まって! わぷっ!」
「え、ちょっ……まっ——」
まぶしい光がふわっと包みこんだかと思うと——
世界が、ぱあっと開けた。
ふわりと足が地面に着いた瞬間、全員がそろって目を見開いた。
そこは、まるで絵本の中のような世界。
ひろびろとした草原に、なだらかな丘がぽこぽこと続き、中央には丸い池がきらきらと光を反射している。空には、綿菓子のような雲がふわふわと漂っていた。
「……ここ、ほんとに、あの箱の中なの?」しずかがぽつりとつぶやく。
「うわっ、まじかよ……なんだこの景色!」ジャイアンがどんと一歩踏み出す。
「こ、これ、現実……だよね?」スネ夫が足元を何度も確認する。
のび太は少し誇らしげに言った。
「ね? すごいでしょ。ここ、ぼくが作ったんだ!」
「ぷにぷに生き物と、どら焼きで?」
「そ、それは今は関係ないでしょ!」
そのときだった。
池のほとりに、いつの間にか小さな小屋が建っていた。
屋根は三角、扉は赤くて、壁には『スパークの秘密基地』という看板が下がっている。
「え、あんなの前はなかったよね?」
のび太が戸惑いながら言った。
すると——
バァン!!!
勢いよく扉が開き、何かが中から飛び出した!
「ようこそ、再びスパークランドへっ!!」
くるくると宙を舞いながら、チカチカ光る小さな妖精のような存在が現れる。
「な、なんだアイツ……!?」
ジャイアンが目を丸くする。
空にドドン!と音が響き、まるで花火のようにカラフルな星型エフェクトがはじけ飛ぶ。
「……誰?」
スネ夫が素直すぎる疑問をつぶやいた。
「オイラの名はスパーク! この世界のガイドにして、創造の守護者、そしてこの小屋を1時間で建てた天才建築家妖精でもある!」
「は、はあ……」
「お前がのび太の言ってたヘンな妖精か」
ジャイアンが腕を組んでにらみつける。
「ヘンなって言うな! オイラは格式あるナビゲーターなの! ヘンな妖精じゃないの!」
スパークはぷんすか怒りながらも、興味津々といった様子で全員を見まわした。
「おおっ! 仲間が増えてるじゃないか! よし、順番に自己紹介をお願いしよう!」
「えっ、そんなのいるの?」
のび太が首をかしげる。
「当然! オイラは名前と顔を一致させて、ちゃんと管理したいの!」
「RPGの村人かよ……」
スネ夫がぼそりとつぶやいた。
「いいから! はい、まずはお嬢さん!」
しずかが丁寧にお辞儀をする。
「源しずかです。お風呂と自然が好きです」
「ナイス自己紹介! じゃあ次、筋肉担当!」
「筋肉!?」とジャイアンがツッコミつつも、「剛田武! 歌とケンカなら任せとけ!」と胸を張った。
「頼もしそうでちょっと不安! そこのチャラ男は?」
「チャラ男!?」とスネ夫がむせたが、「骨川スネ夫、情報通です。戦略は任せて」とウィンクした。
「うさんくさっ!」
「スパーク、ひどい!」
のび太が笑いながら言うと、スパークはふわっと空中に飛び上がった。
「よーし、これでみんな顔は覚えたぞ! さあ、創造主チーム『ドングリの会』のみなさん!」
「だから名前がヘンなんだってば!」
「ともあれ、これで本格的に——」
スパークが一回転して空に光を描いた。
「箱庭ライフ、開幕だーーーっ!!」
キラキラの光がはじけ、丘の上にカラフルな風が吹き抜けた。
「はいはーい! お待たせしましたっ!」
スパークが空中でぐるりと回転しながら、手をかざすと、粘土のようなふにふにした塊が宙からぽとぽと降ってきた。
「これが! 『ねんどロボ』! こねればこねるほど夢がふくらむ、未来の知育テクノロジー粘土〜! みんなで好きな生き物、かってに作りやがれ!」
「わ、なんか動いてる……」しずかがそっと手に取ると、粘土がもぞっと動いて「ぷよん」と鳴いた。
「よしっ、まずは……オレからだ!」
ジャイアンが前に出ると、スパークは腕を組んでニヤリと笑う。
「きたな、パワー系男子! 期待してるぞ、ゴウダ・ザ・クレイジー!!」
「名前勝手に増やすな!!」
ジャイアンは言いながらも、粘土を手に取り、豪快にこね始めた。
「オレのはな……火山みたいにドッカーン!と爆発して……メラメラで……燃えてて……!」
「具体性ゼロなのに迫力だけ伝わるぅ〜!」とスパークが拍手。
粘土が赤く光り、ゴツゴツと盛り上がっていく。
「できたっ!! 名づけて……バクゴン!!」
ドンッ!! まるで地面が震えたような音とともに、黒い岩肌にマグマのような紋様が走り、頭からは炎のたてがみが立ち上る、怪獣みたいないでたち!
「ギャオォォオッ!!」
「うわぁぁあっ!!」
スネ夫が後ろに転がる。
「ちょ、ちょっと強すぎるかも……」とドラえもんも尻もちをついた。
「よしよし、ナイス火力! 文明崩壊まっしぐら!」
スパークが嬉しそうに空中でくるくる回る。
「次、わたし……行くわね」
しずかが優しく微笑んで粘土を手に取ると、スパークはハッと表情を変えた。
「おっとぉ!? この空気感……出たな、癒やし系お嬢様クリエイター!」
「なにそれ……」
のび太が小声でツッコむ。
「ふわふわで……緑で……お花が咲いてて、そよ風が吹いてるみたいで……」
しずかの手の中で、緑の毛がふわふわと広がり、まるで動く芝生か草のぬいぐるみ。体のあちこちにかわいらしい花が咲きはじめる。
「できたわ。モサモサン!」
「……モサ……モサ……!? モサモサでモサモサン!!」
スパークは両手を頭に当ててぐるぐる回る。
「シンプルイズベスト! ネーミング賞候補きた!!」
モサモサンはにこっと笑って、ぺこりとおじぎ。
その横で、バクゴンがちょっと距離を取る。
「……かわいい……」と、ドラえもんが感動して涙ぐむ。
「さて、最後はこの男だ! 文明の語り部・スネオパティアス、いざ登場!!」
「誰だよそれ! てか雑ゥ!」スネ夫が粘土を構えながら返す。
「ふっふっふ……火も草も出た。なら次に来るのは……知恵だ!」
「その流れ、ほんとかぁ〜?」とスパークが片目を細める。
「見てろよ……ボクのハニワ魂を!」
スネ夫が素早く粘土をこね、まるで細工師のように丁寧に形を整えていく。
「くびれを整えて〜、目を空洞に〜、模様をなめらかに〜……はい、完成!」
「その名も——ハニワル!!」
トンッと立ったのは、土色の体に無表情な顔、のっぺりとした目……そして異様な存在感。
のび太がそっとつぶやいた。
「……うわっ、地味……なのに、なんか強そう……」
「知性のかたまりって感じ……」
しずかがつぶやく。
「無言でスコップ持ったぞ……」
ジャイアンが一歩下がる。
「よっしゃあああっ!! みんな完成っ!! 文明度:上がったような、上がってないような!!」
スパークは宙で三連バク転を決める。
こうして三者三様の生き物たちが誕生し、箱庭は、にぎやかでちょっぴり不穏な「新しい息吹」に満ちはじめた——。
「ところでさ……アレ、なんだ?」
ジャイアンがあごで指した先に、小さな青い生き物がぽつんと座っていた。まるくて、ぷにぷにしてて、ぽよんとした体。
「……のび太、あれが最初の生き物か?」
スネ夫がニヤニヤしながら近づいていく。
「いやぁ〜、なんというか、進化のスタート地点にすら立ってないっていうか……」
「まるでゼリーじゃない……」
しずかが心配そうに見つめた。
「ちがっ……ぼ、ぼくが最初に作ったやつで……」
のび太は慌てて弁解するが、すでにその生き物は小さく震えていた。
「ほら、逃げたぞ!」
ジャイアンが笑う。
その生き物は、ぷにぷにと跳ねながら、草むらのほうへ一目散に駆けていった。
そのとき、のび太が思わず叫んだ。
「あっ、まって! そっちは森——!」
「お、おいおいおいおいおい!! そっち行ったらヤバいってば!!」とスパークがバク宙から着地し、青ざめた顔で宙を蹴った。
「先に行ってくる! 創造主が責任持てって言ったけど! 今回はオイラが臨時代行だぁぁぁ!!」
きらきらと光をまき散らしながら、スパークが草むらの奥へ猛スピードで消えていく。
「なんか、めっちゃ取り乱してない……?」
ドラえもんがつぶやく。
「スパークって、あんなに慌てるのね……」
しずかがぽかんと口を開けた。
「と、とにかく追いかけよう!」
のび太は不安げに草むらに飛び込み、その背を追ってドラえもんも駆けこんでいった。