ドラえもん のび太とAIの子   作:マタタビネコ

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第7話 みんなにはナイショ!

 青空がまぶしく広がる、のび太の箱庭エリア。池のほとりに、ふかふかの草が広がっている。

 スパークが宙にぷかぷかと浮かびながら、にやにやとみんなを眺めていた。

「おいおい、なんだその顔! 朝から全員、電池切れ寸前って感じだぞ?」

 のび太もドラえもんも、しずかもジャイアンもスネ夫も、全員ぐったり。

 服や顔には泥はねや汗のあとがついて、髪もぼさぼさ。

「はぁ〜……ちょっと、色々ありすぎて……」

 のび太が思わずへたりこむ。

「でも、せっかく箱庭なんだから、今日はリフレッシュデーだぜ! しっかり遊べよ!」

 スパークが無理やり元気づけると、「じゃ、またあとで!」と、しずか・ジャイアン・スネ夫はそれぞれ笑いながら、タケコプターをつけてぴゅーっと空へ飛んでいく。

「みんな、元気だなぁ……」と、のび太が苦笑した。

 残ったのは、ノア、のび太、ドラえもん、そしてスパーク。

 ノアは、大切に抱えていたサッカーボールをじっと見つめて、首をかしげた。

 その足元では、ヨワリンも「ぷにぃ……?」と小さく首をかしげている。

「これ……なんだろう?」

 不思議そうに両手で持ち上げて、くるくる眺めたり、ほっぺにくっつけてみたり。そのうち、両ひざでボールを挟んで、うさぎみたいにぴょんぴょん跳ねてみせる。

 ヨワリンも、その横でポヨンポヨンと真似っこしていた。

「違う違う、それはね、転がして遊ぶものなんだよ!」

 のび太はノアの前にしゃがみこみ、「見てて——」と自分の足元にボールをそっと置く。

「こうやって蹴るんだ。えいっ!」

 勢いよく蹴ったボールは、派手なカーブで池の中にドボーン!

「ひえええっ! やっちゃったぁ!」

 ノアとドラえもんは一瞬きょとんとしたが、ノアが「まってて!」と元気よく池のふちに駆け寄った。

 しゃがみこんで手を伸ばすが、ボールはちょっと遠い。

「うーん、もうちょっと……」

 ノアは片足だけ池に踏み出して、つるっとすべって——

「わっ!」

 そのまま池にドボン!

「とれたー!」

 ノアは、全身びしょぬれになりながら、それでも満面の笑みでボールを高く掲げる。

 ヨワリンも、池のほとりで「ぷにぃ~!」と、うれしそうに手をふっていた。

「ノア、大丈夫!?」ドラえもんがあわてて駆け寄る。

 のび太も、「うわぁ、びしょびしょだよ……でも、すごいなぁ」と苦笑いしつつ、ちょっと感心したようにつぶやいた。

「もう一回やろう!」

 ノアはびしょ濡れも気にせず、ボールを草原にポンと投げた。のび太も一緒になって、思いきりボールを追いかける。

「きゃはははっ! のびた、ころんだー!」

「ノアの方が転んでるよーっ!」

 はしゃぎながら何度もボールを蹴り合い、とうとう息が切れるまで遊んだ。

「ふぅ、ちょっと休憩しようか……」

 のび太がズボンのポケットをごそごそ。

「見せたいものがあるんだ、じゃーん! これが『のび太スペシャルぱちんこ』!」

「ぱちんこ……?」ノアが目を丸くする。

 のび太は手作りの道具をノアに見せた。

 Y字の木の枝の両端に、輪ゴムがぴんと張ってある。

「こうやって、ゴムに小石をはさんで……」

 のび太はゴムを指でぎゅっと引っぱった。

「えいっ!」

 ぱちん! 小石がビューンと飛んでいき、遠くの小枝に見事命中!

「すごい! かっこいい!」

 ノアが目を輝かせて拍手。

 ヨワリンも「ぷにぃ!」と、のび太の足元をぐるぐる回っていた。

「のび太くん、これだけは百発百中なんだよ〜」とドラえもんがニヤニヤ茶化す。

「なんだよ、他にも得意なことあるもん!」

 のび太はちょっとムッとしながらも、ノアにぱちんこを差し出した。

「ノアもやってみる?」

「やりたい!」

 ノアはぎこちなくゴムを引っ張って放つが、全然違う方向に飛んで行ってしまう。

「あれっ、むずかしい……!」

「大丈夫、もう一回!」

 のび太が手を添えて教えると、今度は少し的に近づいた。

「やったー! 当たったかも!」

 ノアは飛び上がって大喜び。

 うまくできなくても、二人とも顔を見合わせて、もう一度大きく笑った。

 そんな姿を、スパークとドラえもんが目を細めて見守っている。

「楽しさって、うつるんだな……」と、スパークがぽそりとつぶやいた。

 草原には、子どもたちの笑い声が、今日も元気に響きわたっていた。

 

            *

 

 のび太のエリアは、平和そのもの。

 そんなのどかな草原の少し向こうでは——

 どら焼きマンたちが、なぜかみんなでくるくる輪になって踊っていた。

「どらっ、どらっ♪ どらっ、どらっ♪」

 ぷるぷるボディを左右に揺らし、あんこからにょろっと伸びた手足をぶんぶん振って、見よう見まねの盆踊り状態。

 そのまわりを、ガードマンロボットが真剣な顔で、無言でぐるぐると巡回している。

 ……それなのに、どら焼きマンのひとりがちょいっと足でガードマンロボットの足を引っかける。

 ガードマンロボットはバランスを崩して、コロンとひっくり返る。

 そのたびに、どら焼きマンたちは「どらっ!」と大はしゃぎ。

 さらにそのさらに遠く。

 草むらの影から、小さなおためし生物のネズミたちが、じーーっとどら焼きマンたちをうかがっていた。

 その様子に、ドラえもんはそっと顔をひきつらせてつぶやく。

「……うぅ、あいつらだけは……絶対こっち来ないでよぉ……」

 そんなちょっとドタバタした空気のなか、のび太とノアのまわりでは、ふわふわ真っ白なフワミルクたちが「も~っ」「も~っ」と優しい声で鳴きながら、仲間同士で寄り添っている。

「なんだか……増えてない?」

 のび太が首をかしげると、ノアも「いっぱいだねぇ!」と目を丸くする。

 と、そのとき。近くのフワミルクが、日なたで気持ちよさそうにゴロンと寝転がった。

「ふも〜……」と鼻を鳴らして目を細めると、ふいに鼻先からぷくっと小さな泡を膨らませている。

 隣のフワミルクも真似して、「も〜」と鼻から泡をふくらませ、まるで誰が一番大きい泡を作れるか競争しているようだ。

 ノアが思わずクスッと笑う。

「かわいいね、あの泡……」

 のび太も「ほんとだ、風に乗ってふわふわ飛んでる」と見とれている。

 そんな中、別のフワミルクがとことこ歩いてきて、おなかに持っているミルク瓶をそっとのび太に差し出す。

「え? これ……飲んでいいのかな?」

 のび太がおそるおそるキャップを開けると、ミルクはほんのり甘い香り。ノアも受け取ってじっと見ている。

「せーのっ……」

 ごくごく、ごくごく。

「おいしーっ!!」

 二人は思わず顔を見合わせて、にっこり。

「ねえ、もうひとつもらってもいい?」とノアがたずねると、他のフワミルクたちも「も~っ!」と次々に瓶を運んできてくれる。

 のどかで、でもちょっとだけ不穏な、のび太エリアの昼下がり。

 

 そんな平和な草原の向こうから——

「おっ、のび太。お前んとこ、ずいぶん賑やかじゃん?」

 スネ夫が、両脇にハニワル三体を従えて、草原にやってきた。ハニワルたちは、いかにも得意げに、同じポーズで肩を組みながらのっしのっしと歩いてくる。

「ふわふわ生物の動物園でも開く気? それとも弱い生き物コレクション?」

 スネ夫が鼻で笑うと、ヨワリンは「ぷにぃ……」と不安げにノアの後ろに隠れた。

 ノアは、ふわっと笑って「ヨワリン、かわいいのにねぇ」と小さくつぶやく。

「なぁスパーク、餌もっとくれない? うちのハニワルたち、そろそろ腹ぺこなんだよね〜」

 スパークは帽子をくるりと回して、「いいよいいよ、どうせ山ほどあるし! じゃんじゃん持ってっちゃいな!」と陽気に返した。

「おーっ、じゃあ遠慮なく!」

 スネ夫は、小屋の方へてけてけ歩き出す。

 残ったハニワル三体は、のび太たちのフワミルクたちに近づいた。

 すると、一匹のフワミルクが、お腹のミルク瓶をそっと差し出して「も〜っ!」とご挨拶。

 ハニワル1号は、びっくりしたように首をかしげたが、やがて瓶を受け取り——

「ハニ……ハニハニ!」と、感激したように両手をぱたぱた。

 他のハニワルたちも「ハニ!」「ハニハニ!」と口々に声を上げる。

 そこにスパークがコミカルに身を乗り出して、

「え〜、ただいまのハニワル語を訳しまーす! 『ねぇ君たち、すごく優しいね! ぼくと友達になろうよ!』だってさ!」

 もう1体のハニワルは、両手でフワミルクの頭をやさしくなでながら、にこにこ顔で「ハニ、ハニハニ!」

 もう1体も、「ハニハニ〜!」と体をゆらして嬉しそう。

 スパークがすかさず通訳モードで身を乗り出す。

「はいはい、続いてハニワル語訳いきまーす!『おいしいご飯もあるし、楽しい遊びもできるんだ。よかったらうちのエリアに遊びにおいでよ!』……だってさ!」

 フワミルクたちは「も〜っ!」「も〜っ!」と大喜び。

 ノアも、フワミルクたちが嬉しそうにはしゃぐのを見て、「なんだか楽しそうだね」と目を細める。

「うんうん、みんな仲良しだね!」とドラえもん。

「冒険も友情も大事だもんね。みんな、いっぱい遊んでおいで!」とのび太も背中を押す。

 そのとき、ハニワル3号だけが一瞬、ギラリと意地悪そうな顔をして——

 ……でもすぐに、ニコニコ顔に戻っていた。

 そんな中、小屋の方からスネ夫の大きな声が響いた。

「ちょっと、みんな! 来てよ! もう、信じらんないんだけど!」

 スネ夫の大声に、スパークは思わずピクリと肩をすくめて目を丸くした。

「うわ、なんか騒ぎになってきたぞ……?」

「なんだなんだ?」とドラえもんも心配そうに駆け寄る。

 のび太も「な、なにごと!?」とバタバタ小屋へ走っていく。

 ノアだけが、ぽつんと草原に取り残された。そのそばには、ヨワリンも小さく座っている。

「……えっと……」

 ノアはおもむろに足元のサッカーボールを手にとって、軽く蹴り始める。ぽーん、ぽーん、ぽーん……と、どんどん遠くへ転がっていく。

「もうちょっと……遠くまで!」

 ノアは思いきり足を振り抜いた。すると、ボールはものすごい勢いでビューンッと空中を飛んでいく。

「えっ、うそっ……」

 ヨワリンもまんまるの目でぽかんと見つめている。

 そのまま、ボールは見事なクリティカルヒットで——

 ガシャン!!

 どら焼きマンたちの輪のそばで警備をしていたガードマンロボットに直撃。

 ガードマンロボットは「ピ、ピ……」という間もなく、パカン!と真っ二つ。中からネジやバネがビヨンビヨンと飛び出していく。

「どらぁっ!?」「どらどら!?」

 どら焼きマンたちはビックリして、丸い体をぷるぷる震わせたり、あんこから伸びた手足をバタバタさせたりして大騒ぎ。

 ノアの顔から血の気が引く。ヨワリンも思わず口をパクパクさせて、ノアの袖をそっと引っぱった。

「う、うそ……。どうしよう……ドラえもんのロボット……!」

 頭の中で、さっき怒鳴られたドラえもんの鬼の形相がフラッシュバックする。

 ——また、あんなふうに怒られたらどうしよう。

 遠くでみんなの声がする。

「ノアー! おーい!」

 ノアはパニックになりながら、壊れたガードマンロボットのパーツを慌ててかき集める。

「バレちゃダメ、バレちゃダメ……!」

 ガチャガチャ音を立ててネジやバネもつかみ、二人で必死に草むらへ。

「……はぁ、はぁ……」

 呼吸も落ち着かないまま、ノアは遠くから聞こえる声にドギマギしつつ、ヨワリンと目を合わせる。

「しーっ、絶対ナイショだよ……!」

 ヨワリンも「キュー……」と、内緒のポーズ。

 その後、ノアは何食わぬ顔で草原を走ってみんなの元へ。

「ノア、どうしたの?」と、ドラえもんが振り返る。

「え、えっと……なんでもないよっ!」

 ノアは顔をひきつらせて笑う。

 ヨワリンはその隣で、もじもじさせながら、落ち着かない様子で草むらをチラチラ振り返る。

「なんか、様子ヘンじゃない?」とスパークがジト目で見てくるが、ノアは目をそらす。ヨワリンも一緒にそっぽを向く。

「ふ〜ん……」

「なんでもないってば!」

「ほんとにぃ?」

「ほんとにほんと!」

 ——冷や汗が、額から止まらない。

 そんなノアとヨワリンの前で、スネ夫がぷんすかしながら訴え出した。

「でさ! 結局『チカラ』の餌、全部ジャイアンが持っていったってわけでしょ! 困るよ、ホントに!」

 スネ夫がのび太をじっと見て、「のび太取り返してきてよ!」と指を向ける。

 のび太は「ええっ、なんでぼくが……」と情けない顔で後ずさり。

 のび太はしぶしぶ肩を落とし、スパークとドラえもんも顔を見合わせてため息。

 こうして、のび太たちはチカラの餌を取り返すべく、ジャイアンのエリアへ向かうことになったのだった。

 

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