ドラえもん のび太とAIの子   作:マタタビネコ

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第8話 火山ドームエリア

「火山ドームエリア」に、一行がやってきた。

 地面はゴツゴツ。火口はゴウゴウとうなり声みたいな音を立て、あちこちからマグマの川がグルグル流れ出している。

 ゴツゴツした岩肌が、マグマの赤い光を照り返してなんともスリリング!

「うわぁ……これ、本当に山!?まるで地獄の火山だよ……」」

 のび太は、マグマの熱気に思わずあとずさる。

「うっ、これじゃ僕のひみつ道具も、すぐ焦げちゃいそうだよ……」

 ドラえもんも汗をぬぐいながら、じっとマグマを見つめている。

「こりゃ温泉たまごも3秒でできそうだな……」

 スパークもヒュッと頭を引っ込める。

 ヨワリンは、のび太のズボンのすそにピトッとくっついて離れない。

 ノアは、キラキラした瞳でぐるぐる流れるマグマを見て「きれい……」とつぶやいている。

 そのとき、火山の溶岩の真ん中で、ジャイアンが大きな声を上げた。

「おーい! おーい! お前ら、こっちだーっ!」

 でも、なんだかジャイアンの声には元気がない。

 よく見ると、汗をダラダラ流して、顔も真っ青。

 のび太が恐る恐る一歩前に出て、

「……あ、あのさ、ジャイアン。『チカラ』の餌、返してくれない?」とおずおず尋ねた。

 するとジャイアンは、思いのほか素直に「わかった」と頷いた。

「えっ!? いいの?」

 のび太もびっくり。

 が、次の瞬間、ジャイアンは深刻な顔で叫ぶ。

「その代わり……助けてくれよ!!」

 いつもよりしょんぼりしたジャイアンの頼みごとに、みんな「ええぇ〜〜っ!?」と目を丸くするのだった。

 

 ジャイアンに案内されて、のび太たちは火山ドームエリアの中心へ。

 そこには、グツグツ煮えたぎるマグマの川と、湯気をもうもうと立てる巨大な溶岩風呂があった。

「うわあ……まるで怪獣映画のセットみたいだ……」と、のび太が目を丸くする。

 ——その前で、2体のバクゴンが、

「ガルルル……!」「ギャオオッ!!」

 と、ものすごい迫力で取っ組み合いの大ゲンカ!

 バクゴンの体の炎がバチバチ弾け、今にもマグマに落ちそうな勢いだ。

「おい!やめろってば!やめろーーっ!!」

 ジャイアンは必死に腕を振り回して止めようとするが、バクゴンたちはおかまいなし。

「ちょ、ちょっとジャイアン、危ないよ!」

 ドラえもんが慌てて引き戻す。

 ジャイアンは額に汗をかきながら、振り返る。

「おれ、最強の生き物を作りたくてさ……バクゴンには『チカラ』の餌だけ、いっぱい食べさせたんだ! 最初はどんどん増えて、すげーかっこよかったのに……気づいたら、みんなで溶岩風呂の取り合いになっちゃって……。それで、こんな大ゲンカに……!」

 2体しか残っていないバクゴンを、ジャイアンは申し訳なさそうに見つめた。

 スパークは宙にぷかぷか浮かびながら、腕組みしてふんっと鼻を鳴らす。

「やれやれ……ほら見ろよ、言わんこっちゃないってやつだぜ……。箱庭のトラブル、全部『力まかせ』が原因って、もうお約束じゃん……」

 その瞬間——

 バクゴンたちが取っ組み合いをやめ、どちらも譲らぬ顔で口を大きく開ける。

「ボケェェェ〜〜〜ッ!!」

「ギャギャアァァ〜〜!!」

 ……なんと、超絶オンチな大音響の歌バトルが始まってしまった!

 火山ドームじゅうに響き渡る『音波』で、天井からはドサドサと砂や石が落ちてくるし、マグマはグツグツ波打つし、みんな「み、耳が……!」と大混乱!

「オイオイオイ、箱庭がカラオケ会場になっちまうぞ!?」

 スパークが頭を抱え、耳をふさぎながら叫ぶ。

「ぐわあぁあ! やめてーっ!」

 のび太が頭を抱えてしゃがみ込む横で、ヨワリンがブルブル震えながらパニックで逃げ出した。

「ヨワリン、あぶないっ!」

 ノアが叫んだその瞬間、ヨワリンはパニックのまま、バクゴンの間に突っ込んでいってしまった。

「だめー!」

 ノアはあわててヨワリンを追いかける。転びそうになりながら、夢中で手を伸ばす。

「ぺちゃんこになっちゃうー!」

 ノアはギリギリのところでヨワリンに飛びつき、必死に覆いかぶさった。

 そのとき——

「お前ら、歌下手すぎ! やめろ下手くそぉー!!」

 ジャイアンが自分のことは棚に上げて、火山の中に怒鳴り声を響かせた!

 のび太とドラえもんは顔を見合わせて、「それ、ジャイアンが言う?」とボソッ。

 ジャイアンの大声に驚いたバクゴンたちが、ピタッと歌をやめて振り返った——そのはずみで、ブン!と2本の尻尾が勢いよくしなり、

 バシッ!!!

 ノアとヨワリンは「わっ!」

「ぷにぃ!!!」と声を上げて宙を舞い、溶岩風呂の上へ一直線!

「た、大変だ〜〜!!」

 ドラえもんが真っ青な顔で、四次元ポケットをガサゴソガサゴソと大慌てで探り始める。

「わ、わ、どこだ!? どこだっけ!?」

 ポケットからは、なぜか下駄やそろばん、どら焼きの包み紙や、使いかけの消しゴムまでポロポロ飛び出していく。

「ええ〜!? こんな時に限って見つからないなんて! ……あった! 『かるがるつりざお』!!」

 やっとお目当ての道具を見つけると、ドラえもんは息もつかずに竿をぶんっと振った。

 釣り糸の先に付いた吸盤が、まず空中のノアの背中にピタッ!

「えいっ!」

 シュルシュル〜〜ン!

 ノアは吸盤で勢いよく引っぱられ、ぐるんと宙を回って地面に「ポンッ!」と着地。

「ヨワリンも!」

 ドラえもんがもう一度、すばやく竿を振る。今度はヨワリンの背中にピタッ!

「それっ!」

 シュルシュル〜〜ン!

 今度はヨワリンが、びよーんと釣り上げられて、のび太たちのすぐそばに「ポフッ!」と無事着地。

「はぁ〜……間に合った……」

 のび太も、スパークも、ドラえもんも、全員が胸をなで下ろす。

 ノアとヨワリンは、何が起きたのかわからず、ぽかんと顔を見合わせていた。

 ……そのすぐそばでは、まだ2体のバクゴンが「ガルル…!」「ギャオオ…!」と、今にも再び取っ組み合いになりそうな雰囲気。

「このままじゃまた大ゲンカだよ!」

 ドラえもんが慌てて叫ぶ。

「ったく、どいつもこいつもパワー系はこれだからよ! おい、みんな、無駄に体張ってでも引き離せーっ!」

 スパークが空中でバタバタ手を振りながら叫び、ドラえもん、のび太、ジャイアンが必死にバクゴンたちの間に割って入る。

「バクゴン、もうやめなよ!」「うわっ、重いってば!」

「ジャイアン、こっちも押して!」「よし、そっち持った!」

「わっ、ごめん、しっぽ踏んだ!?」

 みんなでバタバタ、ドタドタと右往左往しながら、なんとかバクゴンたちをズリズリ引き離すことに成功。

 しかし、バクゴンたちはまだ火花を散らしながら、お互いをにらみ続けていた——。

 ジャイアンが、頭を抱えてドスンと座り込む。

「なんでだよ〜! 最強の生き物作ったはずなのに! どうしてこうなっちゃったんだよ!」

 そこでスパークが、ぴょこんと空中でターン!

「へっへっへ。ちょうどいいところで新兵器の出番だな! 見てな、ジャイアン!」

 スパークが自慢げにくるりと宙返りし、頭の三角帽子をごそごそ。

「お待ちかね、今日の目玉アイテム〜!」

 帽子の中から、ピカッと銀色に光るメカニカルなピストルを引っ張り出した。先端には、まるで二つの光線砲みたいなレンズが並んでいる。

「名付けて『適応度ライト』! こいつを使えば、その生き物がこの世界でどれだけ勢力を広げられるかが、バッチリまる見えだ!」

「勢力……?」のび太が首をかしげる。

「たくさん子どもを作るのはもちろん、仲間をふやしたり、他の生き物を支配したりしてもスコアが上がるんだ。とにかく『将来ののさばり度』を測るってわけ!」

「のさばり度って……」とドラえもんが眉をひそめる。

 スパークは「のび太、そこのボケーっとした……それ、犬?猫?ま、どっちでもいいや、連れてきてー!」と指さす。

 のび太が慌てて、近くでぽや〜んとしているおためし生物を捕まえ、バクゴンの横に並ばせた。

 スパークは銃口をぐいっと2匹に向ける。

「いっくぞー!」

 トリガーを引くと、銃の先端から2本のまぶしい光線がビシッ!

 バクゴンの全身に情熱の赤いスポットライトが照らされ、その頭上には「10」という数字がくっきりと浮かぶ。

 隣のボケ生物には、ふんわりとした青いスポットライトが当たり、頭の上に「2」の数字。

「やっぱバクゴン最強じゃん!!」とジャイアンはドヤ顔で親指を立てる。

 次に、スパークは自信満々でバクゴン2体の前に立つと、ガンマンみたいに「適応度ライト」を構えた。

「さーて、今度はバクゴン同士で勝負だ! いっくぞ〜!」

 バシュッ!

 2本のスポットライトが、バクゴンの体にビシッと同時に当たる。

 ……けれど——

 バクゴンたちの体は、さっきの赤や青じゃなく、今度はなんと怪しげな紫色に染まった。そして頭上には「−5」の数字が!

「えっ!? マイナスだとぉ!?」

 ジャイアンが素っ頓狂な声をあげた。

「さっきは10だったのに、なんで減っちゃったの?」と、のび太も目をパチクリ。

 スパークはにやりと笑い、帽子をくいっと持ち上げた。

「それそれ! これが『力自慢が2人集まると、ケンカばっかで損しちゃう』現象ってやつさ! つまりこれは、『勢力広げ力』マイナスってことさ!」

 みんな、ぽかーん。

「……おっと、未来の教科書的に言うと、これは『進化ゲーム理論』における典型的なタカ戦略のジレンマってやつだな! 習わなかったか? え、習ってない? こりゃ失敬!」

 スパークは得意げに宙で一回転すると、話を続ける。

「つまりな、力だけで張り合うと、どっちも傷だらけ! ケンカのエネルギーで『−5』、バクゴンも消耗、溶岩風呂もボロボロ、いいことナッシング!」

 ドラえもんが「ケンカは損だって、昔から決まってるもんねぇ」とため息。

「だから、分け合うとか、他の『頭の良さ』とか『タフさ』も必要ってワケよ! 力だけじゃ、ホラこの通り!」

 バクゴン2頭は、紫色のスポットライトの中で、まだしつこく睨み合いを続けている。

 ジャイアンはがっくり肩を落とし、手にしていた「チカラの餌」を見つめた。

「……チカラの餌だけじゃ、だめなのかよ……」

 ドラえもんがふわっと優しい声で言った。

「うん。どんなに強くても、ケンカばかりじゃいいことないんだよ。いっしょに仲良くやっていかなくちゃ」

 のび太も「うん、みんなで力を分け合えば、ちゃんと幸せになれるんだね」とうなずく。

 スパークは「やっとわかったか〜! 『強さ自慢』より『仲良し自慢』が最強ってね!」とおどけて、みんなを笑わせた。

 火山ドームには、ちょっぴり大人になった空気と、またいつものにぎやかな声が戻ってきた。

 ……と、そのとき。

「ん?」

 ノアがふと、地面の端っこで何かがもぞもぞと動いているのを見つけた。

「ねえ、みんな、あそこ……」

 ノアが指差す先をみんなが見やると、ゴツゴツした岩の隙間から、もじゃもじゃ頭の小さな雑草みたいな生き物たちが、ぞろぞろと列をなして歩いてくる。

「なんだ、アイツら……?」ジャイアンが目を丸くする。

「かわいいけど、なんか変わってる……」のび太もつぶやく。

 スパークが帽子をぴょいっと持ち上げ、

「おっと! あれ、しずかのエリアにいたやつだ! どうしてこっちに?」

「えっ、ほんと?」と、ドラえもんも興味津々。

「もしかして……なにかおきてるのかも!」ノアがわくわくと身を乗り出す。

「よし、じゃあ今度はみんなでしずかちゃんのエリアに行ってみよう!」とのび太が声をあげる。

「冒険はつづくってやつだな!」と、スパークがにやり。

 こうして一行はジャイアンを残し、火山ドームをあとにして、次の舞台へと足を踏み出した——。

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