ドラえもん のび太とAIの子   作:マタタビネコ

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第9話 グリーンガーデンレイク

 しずかの森と湖エリア『グリーンガーデンレイク』に、ドラえもん、のび太、ノア、スパーク、ヨワリンたちが到着した。

 ところが——

「うわっ、なんだこれ……!?」

 のび太が思わず足を止める。その目の前で、草むらのあちこちが、まるで波のように「わさわさっ」と揺れている。よく見ると、それぞれが根っこで歩きまわる、草型の生き物たち!

 腰の高さほどもある草たちが、おしくらまんじゅうみたいに押し合いへし合い、ときどき「ボサァッ」と一斉にジャンプ! どこか楽しそうに動き回る。

 ヨワリンは驚いて、ノアの足にぴとっとくっついて離れない。ノアもきょろきょろしながら「生きてる草……?」と目を丸くする。

 スパークは眉をしかめて三角帽子をおさえ、

「ちょ、ちょっと! これ、完全に『もふもふ雑草ランド』じゃん! 昨日まで花畑だったのに、どういうことだよ!?」

 と、ぶつぶつ言いながら宙をくるくる。

 ドラえもんも「花がどこにもないよ……」と、心配そうに辺りを見回した。

 その時、しずかがみんなに気づき、奥から困り顔で駆け寄ってきた。

「来てくれたのね……ごめんなさい、ちょっと大変なことになっちゃって」

 しずかは心細そうに、足元の草の生物たちを見下ろした。

「どうしたの?」と、ドラえもんが心配そうにのぞき込む。

「急に『くさっこ』が増えすぎて……モサモサンたちも、数を減らしていったの。最後に残ったモサモサンも、どこかに紛れちゃって……どこにいっちゃったの……」

 しずかは、ちょっと涙目でうつむいた。

「そっか……しずかちゃん、すごく困ってたんだね」

 のび太はしずかの顔を見て、そっと言った。

「でも大丈夫! モサモサンもぼくたちがみんなで探せば、きっと見つかるよ!」

「よし、こういう時こそ!」

 ドラえもんが『たずね人ステッキ』を地面に立てた。……けれど、わらわら集まったくさっこたちが、競ってステッキに体を絡める。

 軽快な音とともに、ステッキは倒れるどころか、すっかり生きた草むらの一部に!

「うーん、まるで使い物にならないなぁ……」

 ドラえもんも苦笑い。

「それにしても、この子も、あの子も、似てるようで全然違うんだなぁ……」

 のび太が、花飾り付きのくさっこをそっと持ち上げると、

「それ、『おめかしくさっこ』だよ!」とスパークが得意げに説明。

 しずかは、ふわふわの体の生物を手に取り、

「これ……もしかして、モサモサンかも?」と首をかしげる。

「えーっと、それは『ふわふわくさっこ』だな」とスパークが即答。

 そのとき、ノアが周りをきょろきょろ見渡して——

「ヨワリンがいない……!」と慌てて声を上げた。

 気づけば、ヨワリンの姿もくさっこの山の中に紛れていた。

 ノアは大急ぎで近くのもさもさ頭のくさっこを抱き上げてみる。

「ヨワリン……? あれ?ちがう……?」

 頭からパラパラと種を落とすくさっこが、ノアの手の中で揺れていた。

 ノアがくさっこを抱えたまま困っていると、スパークがぴょこんと浮かび上がり、

「ノア、それヨワリンじゃなくて『たねくさっこ』だってば!」と、得意げに解説。

「もう、どこ見てもくさっこだらけ……名前つけるのも追いつかないぜ……」

 スパークは帽子をぐるぐる回しながら、あきれ顔。

 しずかがくさっこの中からひょっこり顔を出す。「みんな、こっち手伝って〜!」

 みんなで、かき分け、すくいあげ、ときには頭からくさっこまみれになりながら、夢中で探すこと数十分——

「いたっ! モサモサンだ!」

 ノアが叫ぶと、くさっこの影から、まるまるしたモサモサンがちょこんと顔を出した。

「よかったぁ〜〜!」

 みんなでモサモサンを囲んで、無事発見を喜ぶ。思わず拍手と笑顔がこぼれる。

「やっぱり、みんなで探せば見つかるのね!」

 しずかもほっと胸をなでおろし、にっこり微笑んだ。

 みんなの目の前には、くさっこジャングルの中から、ようやく姿を見せたモサモサン。

 ——けれど、まだ終わりじゃない。

「ヨワリンは……?」

 ノアがふと、不安げにあたりを見回す。

「そうだ、ヨワリンがいないよ!」

 のび太も慌ててくさっこの中を覗き込んだ。

 くさっこだらけの草むらを見回しながら、のび太がぽつり。

「ねえ、どうしてこんなことになっちゃったんだろう……?」

 スパークは、得意げに三角帽子から『適応度ライト』を取り出してみせた。

「ほれ、コイツの出番だな!」

 銀色ボディの適応度ライトが、モサモサンとくさっこを同時に照らす。

 ピカッ!

 くさっこには、まぶしい赤いスポットライト。頭上には「15」と高い数値がピカーンと浮かぶ。

 一方、モサモサンは黄色いスポットライトに照らされて「5」しか出てこない。

「えっ、こんなに違うの!?」

 のび太も、しずかも、ドラえもんもびっくり。

 スパークが深刻な顔で言う。

「これじゃバランス崩壊だな……このままだと、モサモサンも、ヨワリンも消えちまうぞ」

「えっ、ヨワリンも……?」

 ノアは顔色を変えた。

「だめだよ! ヨワリンがいなくなったら……いやだよ!」

「どうやって見つけたらいいんだろう……」

 のび太があたりをキョロキョロ。

 ドラえもんが腕を組んで、

「うーん、いっそ全部、くさっこ引っこ抜いちゃう?」

 とつぶやく。

 すかさずスパークが、ニヤッとしながら、

「いや、それなら除草剤で全部枯らしちまえば早いぜ!」と乗っかる。

 ノアが慌てて首を振る。

「だめだよ、そんなの! かわいそうだよ!」

 みんなの意見がバラバラになってきて、しずかはそっと目を伏せる。

「……くさっこも、生きてるんだもの。みんな生きてほしいのに……」

 スパークはため息をつき、くさっこジャングルを見渡した。

「けどな、このままだと、本当に絶滅しちまうぞ——」

 ノアはきゅっと拳を握りしめて、涙目でみんなに訴えた。

「おねがい……ヨワリン、ぜったい、いなくなってほしくないよ!」

 静かな湖畔のそば、みんなの胸に、焦りと優しさがじわりと広がる。

 そんななか——

 しずかは、くさっこをそっと見つめ、小さく震える声でつぶやいた。

「ごめんね、みんな……本当は、くさっこも好き。でも、このままだと、モサモサンもヨワリンも消えちゃうなんて……」

 ノアも心配そうに、「……ヨワリン……」と声を落とす。

 そのとき、スパークが帽子のてっぺんをチョンとつまんで、ニヤリ。

「いいこと教えてやるよ。自然のバランスには『天敵』が欠かせないんだ! たとえば、雑草を食べるヤツを作れば……!」

「天敵……?」

 しずかが目をこすりながらつぶやく。

「そう。くさっこが増えすぎないように、食べちゃう生き物がいればいいってワケさ!」

 しずかは両手でそっとくさっこを抱きしめ、ぽろりと涙をこぼした。

「本当は……みんな、生きてほしいのに……」

 震える指先で涙をぬぐうと、しずかはうなずき、ねんどロボの前に座り込む。

「ごめんね……くさっこさん、ごめんね……」

 涙をこぼしながら、でもしっかりとした手つきで、やさしい形のウサギをひとつひとつ、ねんどで作り上げていく。

 ——ぽよん!

 ふわふわの天敵ウサギが、やわらかい光とともに草むらに誕生した。

「ふわふわ〜!」「ぴょんぴょん!」

 ウサギたちはくさっこに近づくと、パクパクと葉っぱを食べ始めた。

「きゃー!はやっ!」

 スパークが慌てて飛び回る。

 ドラえもんも「おお、これはなかなか……」と感心。

 くさっこがどんどん減り、草の隙間がどんどん広がっていく。

 そこで、スパークが「適応度ライト」でチェック!

 ウサギとくさっこの頭上には、今度はどちらも「8」と「9」みたいな、ほどよい数字がピカッとスポットライトのように当たる。

「おおっ、バランスいいぞ!」とスパークが指を鳴らす。

 そのとき——

 くさっこの間から、「ぷに……」とかすかな声がした。

「ヨワリン!?」

 ノアが駆け寄ると、もじゃもじゃのくさっこの隙間から、泥だらけで丸くなったヨワリンが顔を出した!

「ヨワリン、みつけた!!」

 ノアは嬉しそうに、そっとヨワリンを抱き上げた。

 ヨワリンはノアの腕の中で「ぷにぃ!」と、ちょっと恥ずかしそうに首をすりすり。

「よかった、無事だったね!」

 しずかも、みんなもパッと笑顔になる。

 花畑には、モサモサンも、ヨワリンも、くさっこも、天敵ウサギも、いい感じに共存。

 ようやくエリアに、色とりどりの穏やかな風が戻ったのだった。

 そんな中、しずかはまだどこか不安そうに、モサモサンをそっと撫でながらつぶやく。

「本当に……これでよかったのかな。誰かを減らすなんて、ちょっとつらいよ……」

 ドラえもんが、そっと隣に座ってやさしく言った。

「うん。だけど、強いものばっかりが増えすぎると、結局みんなが困っちゃう。だから『バランス』が大事なんだよ」

 のび太は、花の間でくさっこをつまんで見せながら、

「いろんな生き方があった方が、絶対に楽しいし、安心だよね」と、にっこり。

「ま、自然界は『バランス命だぜ』!」

 スパークは、くさっこの頭にピョコンと飛び乗ってウインク。

 ヨワリンとモサモサンは、花畑の真ん中で仲良く寄り添っている。

 くさっこたちも、ほんの少しだけ花の間に顔を出して、もさもさと穏やかに揺れていた。

 ——そのとき。

 バサバサ……と花畑をかき分けて、ボロボロになったフワミルクが一頭、よろよろとやってきた。

「も……も〜……」

 今にも倒れそうな声で、みんなの前にへたり込む。

 スパークがすかさずフワミルクの耳にぴょんと飛び乗り、通訳スタイルでみんなに向かって叫ぶ。

「緊急速報〜! 『スネ夫のオアシスで、とんでもないことになってる……助けて〜!』だってさ!」

「えっ!? 僕のフワミルクが!?」

 のび太は一気に顔を青ざめさせ、慌ててフワミルクに駆け寄る。

 泥だらけのフワミルクは、ぺたんと座り込んだまま、かすかに「も〜……」と鳴き、つぶらな瞳でじっとのび太を見上げた。

 そのまま、力尽きたように小さく身を丸め——

 ふわっとミルクの香りの風とともに、花びらのようにスッと消えていった。

「フワミルク……!」

 のび太は目を丸くし、ぎゅっと拳を握る。

 ドラえもんがそっと肩に手を置き、「急ごう、きっと助けられるよ」と静かに声をかけた。

 しずかも心配そうに寄り添う。

「のび太さん、フワミルクのこと……お願いね。私は、ここでみんなのこと見守ってるから」

 その優しい声に、のび太はうなずく。

「うん、絶対助けてくる!」

 涙をこらえて、のび太はみんなと顔を見合わせる。

 こうして一同は、胸に決意を秘めて、スネ夫の『オアシスシティ・サバクゾーン』へと走り出していくのだった——。

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