12月12日
主人公side
三度目の練習が終わると、結月から昼休憩を取るように言われた。練習に夢中になっていて12時になったのを気付かなかった
「ふぅ。意外と気づかない物だな。それに結月に言われた通り、水中での鍛練は疲れているのが分かり辛いな」
「まあ、そうだね。水中での練習は地上とは違って使ってる筋肉からして違うからわかりにくいのよ。だから、あんなルールがあるの」
結月の言う事がよくわかった。最初は休憩時間が長いと思ったけど、正しく疲労を理解できないのは危険だな。それに1時間以上の水中での活動は初めてだったからか、わからないけど休憩を挟んでも疲れるものだな。身体能力が上がってる体ならもっと余裕があると思ってた
「智也君。私達はこれからお昼にするけど、一緒にどうかな?」
午後の練習はどうするか悩んでいたら、唯華から昼食に誘われた
「ああ、それは大丈夫。弁当を持って来ているから、俺の事は気にしないでいいよ」
「あっ、うん」
俺が断ると唯華は残念がる
「いいじゃない。お昼を一緒に取るぐらい。ほら、着替えてから部室に来なさい。君にはいろいろ聞きたい事があるんだから」
そう言って結月が強引に俺を誘い、水泳部と一緒に食事をすることになった
「それにしても、食事は保存食じゃないんだな」
俺は水泳部の昼食を見て不思議に思った。ぶっちゃけ俺の弁当って嫌味にならないか心配だったんだけど
「白咲学園は米を玄米で仕入れとるから、もともと米に関しては備蓄が豊富なんや」
「へえー、それじゃあ他のは?」
米以外でも野菜や肉も保存食には見えないし、めっちゃ豪華だと思うが
「ああ、この食材?これはね。学園長が大量に仕入れてきたから、今だけはこんな豪華な食事が出来るのよ。まあ、殆どが保存食に加工したけどね」
「そうですよ。あれは大変だった。いくら切っても切っても、終わりが見えない。お肉の塊が」
なにやら、詩奈の目から光が消えてるように見える。トラウマになってるようだけど大丈夫なのか?
「そうなのか。まあ、1000人分の食糧を集めるって、あの学園長はすごいな」
「そうやね。そこは長い歴史がある学園だから、いろいろと頼れる縁があるんやで。とは言っても、半年ぐらいしか持たんけど」
「でも、それだけ時間があれば打開策を考えるには十分です。幸い、智也君のおかげで食糧の事を心配しなくてもよくなりましたし」
「そうそう、玲奈も智也の事を救いの神、みたいなこと言ってたし」
目に光が戻った詩奈が玲奈をからかってる
「なっあ、私はそこまでの事は言ってません」
「でも、似たようなことは言ってじゃん」
「それは・・」
玲奈と詩奈が言い争っているが、そこに理奈が
「はいはい、そこまでや。今は食事の時間やで」
「「ごめんなさい」」
食事が終わったら、結月にいろいろと質問された
「智也。少しいいかな?」
「何?」
「いくつか質問があるんだけど、いいかしら」
「いいけど」
「それじゃあ、まず一つ目の質問はスキルを他人に教えるのはどうやって教えるのか。これが凄く疑問なの。スキルに関して、ほとんどが言語化が出来ていない状態で、他人にどうやって技能を習得させることが可能なのか」
ああその話か、そうだよな。普通は言葉だけで農業や浄化といった能力系を覚えれるとは思わないか
「俺は陰の9だから陽の人には使用が出来ないが、陰の人には結合を使用して感覚的に教えることが出来る」
結合に関しては話す気はなかったけど、白咲学園の力を見て白咲学園には外部に頼らなくてもやっていける存在になった方がいいと思うし、白咲学園との関係を強固にするために結合を使ってスキルを教えることにした。公園での農業を教えてるが、あっちは全部口頭での指導しかしてない。ん?何にやら俺の言葉に皆は疑問があるみたいだけど
「ええっと、まずは陰の9が何なのか教えて欲しいんだけど」
結合じゃなくて、陰の9が気になるのか?
「?陰陽の事は理香から聞いていないのか」
「うちらは陰陽が互いに反発するのと陰陽のどちらに所属してるかしか知らへんで」
まじで、あの後に理香を説教してから、いろいろと確認をしたんじゃないのか
「それじゃあ、陰陽の説明から始めるけど」
「お願いするわ。理香には改めて説教が必要そうだけど」
「そやね。大事な事を話していない、なんてことがまだありそうやし、今度はとことんやったるで」
結月と理奈が理香に対して怒っているけど、俺には関係ないことだし話を進めるか
「陰陽は針時計をイメージしたらわかりやすい」
「針時計?そこにある?」
詩奈が水泳部の壁にある針時計を見る
「そうだ。1~6が陽で7~12が陰になる。陰陽の関係はお互いに反発するから、結合が使っても効果がない。例外があるとすれば、効果が下がるけど2つ隣までは効果がある。例えば陽が6なら、陰の7と8までは効果がある。とは言っても半分以下の効果しかないけど」
「そなんや。だから、智也は陽の人に教えれないって事やね」
「言葉だけでエネルギーの使い方を教えれるとは思えないし、他人に伝わりやすい言語化も出来ない。大雑把にしか教えれないから最初からやらない方がいい。だから、結合有りきの指導になる。まあ、公園の方は結合無しの指導だけど」
「なんで公園の方の指導はその結合を無しでやってるんや?それにスキル知識はあんまり期待できそうにないけど大丈夫なん?」
理奈が取引の事を聞いてくる
「結合は指導に関してはチートスキルだと思っている。それにいろいろと悪用出来そうだし、だからあまり教えたくないんだ。当然、白咲学園には結合のスキルに関しては黙っててもらうが、スキル知識に関してはあまり期待していない。概要を理解できるならそれでいい。技能を覚える足掛かりになればいいとしか思ってない」
そう言うと、皆は驚く。俺の言う事に疑問を持った玲奈は
「それなら、あの取引に何の意味があるのですか?」
「ぶっちゃけ俺は白咲学園に求めていたことは、ここの利用しかないんだ。他はおまけで、将来的に何か役に立てばいいとしか考えていなかった」
「それじゃあ、今は違うの?」
「詩奈の言う通り考えが大きく変わった。俺が考えてたより、白咲学園の戦闘能力が高すぎるからな。一区の戦力はここが一番高いと思う。それに、水中戦力が期待出来るから取引の内容も当初考えていた物から変えた」
「最初と違うの?」
「ああ、最初は農業をするのは、短くて1年、長くても3年ぐらいにする予定だったんだ。それまでに、10人ぐらい農業Hランクを覚えることができたら上出来かな。としか考えていなかった」
「今はどう考えているの?」
「白咲学園以外でBランク以上の適性が見つかってないから、ここがどう機能するかが、一区の命運を分けるってぐらい重要だと思ってる」
俺の言葉に結月は
「まあ、その話は一旦、置いておいて。次の質問はさっきから言ってる結合について教えて」
「結合の効果は二種類ある。一つは名前通りの物質の結合、そしてもう一つはエネルギーの結合、この二つ合って今回使うのは後者のエネルギーの結合だ。これを使うことによって、他者とエネルギーを一時的に共有出来て、技能を使う時のエネルギーの動かし方を感覚的に教えることが出来る便利なスキルだ」
「ああだから、言語化を出来てないスキルを教えることが可能なのね」
結合がないと、とてもじゃないが教えれるとは思えない。農業に適した土を作るだけで1年は掛かりそうだし、肥料の事や作物の成長促進などを教えようとしたら三年は掛かりそうだ。というか、結合がないと農業の授業だけで手一杯になりそうだし、術式なんかは意味も分からずに使ってるだけだからな
「それに、結合には意思も込めれるから、技能を覚えるのに時間が掛からないんだ」
「聞いてるだけで、便利なスキルや」
「結合は本当に便利だ。技能習得に時間を短縮してくれるからな。母さんには感謝してる」
「ん?智也が選んだスキルやないん?」
「ああ、結合のスキルは俺の母さんが覚えたのを結合で学んだ。だから、俺は結合を使える」
「それなら、智也のお母さんに感謝せんとあかんな」
「それで、どのくらい習得時間の短縮が出来そうなの?」
結月の疑問に俺は
「そうだな。適性があることが前提で、基礎だけなら三年ぐらいは掛かりそうなところを結合を使えば一ヶ月以内に覚えれそうかな」
「はっ?」
それを聞いた皆は驚いて言葉が出ないみたいだ。そりゃそうだスキル知識なんて反則がないなら、簡単な基礎だけで三年ぐらい必要なのが、習得時間が30分の1にするなんてチートと言える神スキルだからな。驚くのは無理もない