ウマ娘一口短編集   作:草之敬

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タキトレの舌が肥えた話

 

なに、「久しぶりに食べたコンビニ弁当が全然美味しくなかった」だって?

ああ、そういえば君、最初の頃は毎日飽きもせずに有難そうにコンビニ弁当を食べてたねえ。

 

私の食事には問題はない様子だけど、自分のことだからって杜撰な管理をしてもらっちゃあ困るよ。君は君だけの体じゃないんだ。そうだろう、モルモット君。

 

まさかとは思うけど、私の試験薬やら実験やらの影響を疑っちゃあいないかい?

……いない?そう。ならいいけどね。

だがまあ、面白そうなアプローチではある。いわゆるストレス耐性テストかな。味覚……この場合は特に食事だねえ。

口にするものすべてが食べられたものではないような味がするとなったら、肉体にどういう変化をもたらすか……。

アッハ。いいぞ!

インスピレーションが湧いてくる!

 

え?

そんなことより原因がわからないのが怖いって?そんなこととは聞き捨てならないが……ふぅン。

質問だがね、君、どう美味しくなかったんだい?

君の舌そのものがおかしくなっているとしたら、私の昼食にも影響が出ていたはずだが、それもなかったんだろう。

 

ふむ、ふむ。

 

あー、それは、なるほどね。

それは君。なんだ。

いや、聞きづらいことではあるが一応聞いておこうか。君、そんなに私の食事に必死だったのかい?

意味がわからないという顔をしているが、つまり「舌が肥えた」んだよ。それまで美味しく感じていたはずのコンビニ弁当程度では満足できないくらいには。

 

あれだろう、君が好きなコンビニ弁当というと唐揚げ弁当だったろう?

 

時間が経ってじとっと油の回った衣に、小麦粉だか片栗粉だかわからない出来損ないの層と、鶏肉に至ってはゴムみたいに固くてアゴが疲れるやつ。

 

それに比べると、以前、君に出されて食べた唐揚げは衣はザクっと歯触りが楽しくて、その先にはほどよい弾力で抵抗するモモ肉、ぶつりと噛みきるとじゅわあっと溢れる油と脂の調和……。まるで唐揚げを「飲む」ような体験と言うべきか……。

 

つまり、天と地ほどの差があるわけだね、味に。

 

え?なに、なんだい。

何を急にそんなにそわそわしてるんだ、君は。今日の夕飯は唐揚げでいいかって、いやそれは構わないがなんだ?なんでそんなに嬉しそうなんだ。

気持ち悪いよ、モルモット君。

 

…………あーーーー。

いや。いやいや?

そういうアレじゃあないぞ。

確かに今、君の唐揚げのレビューみたいなことは口にしたかもしれない。で、それがなにか?あくまでも客観的事実を述べたにすぎないじゃないか。そうだろう?

 

……う、うう~!

その勝ち誇ったような顔をやめないか!

ああ、そうだ、そうだとも。

君の唐揚げは美味しかった!!

これで満足かい?満足だろう。

だからって夕飯にまで唐揚げをねだるような浅ましい子供じゃないんだよ、私はね!

 

はあ!?

誰が食べないって言ったんだい!!

君には義務がある!私のトレーナーとして、モルモットとして、助手として、今日の夕飯に腕によりをかけた唐揚げを出す義務があるんだ!!

 

ほら、わかったなら駆け足!

ブラジル産やタイ産の安い鶏肉を使ったらタダじゃおかないぞ。だが安易に地鶏を使えという意味でもない。私も若鶏と地鶏で肉質が違うのは承知しているからな!

君がこれぞという料理を作りたまえよ。

 

ほーらー、はーやーくー!

かーらーあーげー!!

 

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