何やかんやあったけれど、無事にシャーレが発足した訳ですが。
「依頼ありませんね」
「そうだね」
曲がりなりにも連邦生徒会だった私やミレニアムのセミナー所属のユウカちゃんですら知らなかったシャーレの発足。そんな組織にいきなり仕事が舞い込むはずもなく、リンちゃんが置いていった現在のキヴォトスの状況を記した書類を確認したり、用意されていなかった物品などを用意するくらいしか仕事がなかった。
そんな中でも書類に目を通している先生は、仕事には真面目なんだろう。
何かしたいがやることがない、古巣に戻って仕事を貰ってくるか?そんなことも思っていた時。
「アキ、ちょっといいかな?」
「はい、何ですか?」
先生が書類から目を離し私に声をかけてきた。なんか書類に気になることもで書いてあったのかな?そう思っていたんだけど。
「まだキヴォトスに来て数人しか生徒に会っていないんだけど、私を見る時驚いたり訝しむ目をすることが多いんだ。何か理由を知らないかな?」
「あ〜」
先生の言葉にそういやそれがあったな、と軽く頭を抱えそうになった。これに関しては先生は全く無罪ではあると思うんだけど、全く関係ない話じゃないんだよね。
「話しづらいことな無理に話さなくてもいいよ」
「いえ、先生は知っておいた方良い話ですし」
私はそう言い話すことにした、一年ほど前の転生者達の大騒動について。
※※※
前にも話たけど私が転生者であると確信を持てた切っ掛けがある、それは小学5年生の時だ。それまではこの世界の常識に振り回されながらも何とか過ごし、少しずつ嫌でも慣れて来た時そいつらは私たちの周りにやってきた。
正確には私と一緒にいるリンちゃんの周りなのだが、最初は教室の外から覗いてきたりリンちゃんのことを聞いたりしていた。少し気になりはしたけど、1番の被害者であるリンちゃんが無視しようと言うので倣っていたんだけど、その時はやって来た。
「ねえ貴方七神リンさんでしょ、私と友達にならない?」
1人の女の子がいきなり話しかけて来た、凄い綺麗な子だけど私の最初の感想はなんだコイツ?だった。全く知らない子が突然友達になろう?って怪しいにも程があるだろう。
それはリンちゃんも一緒だったらしく。
「貴方は誰ですか?」
少し不機嫌そうにそう聞くリンちゃん。それに対し、
「私は…」
なんか自信ありげに自己紹介をする女の子、良くもまぁ長ったらしく自己アピールできるなと思えるほどの語りっぷり。仕舞いには自分といればもっと良い未来を迎えられるなんて宗教じみたことすら言い始めたのだ。
横で聞いてた私も呆れるんだから、直接聞かされてるリンちゃんは。
「…」
あっマジでキレちゃう数秒前だ。幼馴染としてその後のフォローの大変さを知ってる私は、
「えっとさ、そろそろ良いんじゃないかな?」
何とか穏便に済まそうと思ったんだけど。
「えっなにアンタ、モブは黙っててくんない」
ブチ!
私は何かが切れる音を聞いた、それは幻聴ではなかった。
そんな久しぶりのリンちゃん大噴火があった後も直接間接を問わずそんな輩がリンちゃんの周りに現れた。私も何とかしようと思ったけど、あの人たち無駄に頭が良かったり秀でた部分があるらしく対応も著しくなかった。まぁそんな問題をまだ連邦生徒会生徒会長になってないあの人が解決してくれたんだけど、それでリンちゃんはあの人にデレ始めたんだよね。
そんな騒動の中で私はある事が気になって、気付かれない様に聞き耳を立てたりして情報を集めていた。そう最初の騒動で私に言った。
『モブ』
と言う言葉。ゲームとかアニメの話ならまだしも日常の会話では使うとは思えない言葉。でも彼女は私の事をモブと言った、もしかしたらと思い怪しい子達の話に耳を向けた。そうしたら、
『原作』『ぶるあか』『生徒会』『先生』
など特定の言葉が多かった。特に原作と言う言葉、多分彼らはこの世界の事を知ってる転生者なんだと思う。ぶるあか?は多分何かの略語だと思うんだけど思いあたりはない。生徒会はあの連邦生徒会だと思うけど、先生ってこのキヴォトスにそんな人いるのかな?
ただ彼女達のおかげで私はある世界に転生した転生者で、私以外にも転生者が数多く居る事を知った。そして私が決めたことは、関わらない様にするだ。はっきり言って彼女達の目は気持ち悪かった、リンちゃんを見ている目は好奇心や優越感それ以外にも色んな欲望が詰まった瞳だった。そんな人と関わりたくないし、同じに思われたくない。
そんな訳であの人の信奉者になったリンちゃんはあの人を追って連邦生徒会に行くって目を輝かせてるし、もう少し我慢すれば連邦生徒会に入ったリンちゃんはアイツらとは大半は離れられるだろうし、私もちょっと寂しいけど他の学校でエンジョイライフを満喫できる。そう思っていたんだけど、
「さぁ行きますよ」
「えっ?」
私たちの前にあるのはキヴォトスの中心であるサンクトゥムタワー、私はリンちゃんに腕を掴まれた状態でその前に立っていた。えっえっ?なに?あれか不安なので面接会場前まで着いて来てくださいとかだったり?
そんな思いも虚しく。
「これからよろしくお願いします」
「…」
何故か連邦生徒会の制服を来ているリンちゃんと私。いや途中で何かおかしいと思って帰ろうと思ったよ、だけどさリンちゃんが。
「えっ…」
って言って凄く悲しそうな顔をするんだよ。色々困ったちゃんなリンちゃんだけど、幼馴染として友情を育んでたしそんな顔をされたらさ〜
「アキ、これかも一緒に頑張りましょうね」
「お〜そうだね」
こうしてお仕事に追われる灰色の青春が始まったのでした。
まぁその後もなんやかんやありながら、リンちゃんは行政官として私は法務室の使いっ走りとして忙しい日々を送っていたんですが。
そのせいですかね、すっかり忘れていたんですよ。アイツらの事を。
これは後で知ったことなんですが、アイツら転生者は大きく3つのグループに分かれていたらしいんです。
1つは原作介入派、文字通りアイツらが知る原作に積極的に介入しようって言う奴らの集まり。理由はそれぞれあったみたいだけど、3つの中で1番行動派で過激なことも多かった奴らです。
そしてそれに対抗する原作遵守派、原作通りに物事を進めようって集まりで一見マトモそうに見えるんですけどそうじゃないんですよ。過激派に対するドンパチだけじゃなく、仲間同士の内ゲバも酷くて私たちから見たら過激派と迷惑度は変わらないんですよね。
最後は自由派、原作に介入するも遵守するもその時次第。傍観するもよし、何するも個人主義な連中です。その為か行動が読めなくて防衛室の人たちが頭を抱えてましたね。後、個人への迷惑はコイツらが1番酷かった。
最初はね連邦生徒会長も放置してたんですよ、なんせ銃声が聞こえない事がないキヴォトス。アイツらの小競り合いを気にする程もでもない、そう思ってたんでしょうね。
なんですが、切っ掛けはよく分かってないんですが。この3つのグループが全面戦争をやりやがったんですよ。
最初はすぐに終わると思った抗争ですが、その数はどんどんと膨れ上がり最終的には数千規模にまで膨れ上がった大抗争に至ってしまったんです。しかもアイツらの中には各学園の中枢に近い生徒もかなりの数がいたらしく、それが3大学園も例外ではなく各学園のトップも大慌て。
そんなキヴォトスでも類を見ない大規模な抗争に連邦生徒会長も重い腰を上げたと言うか、静かにブチぎれましてね。STRやヴァルキューレを全動員どころか、各学園の治安部隊も動員させて徹底的にアイツらを殲滅したんでよ。
その時に会長が各学園に首謀者から末端に至るまでの生徒名簿を送りつけたみたいで、いつの間にそんな物用意してたんだと驚きと共に、自分も捕まるんんじゃないかと内心生きた心地がしませんでしたよ。
まさか奴らも連邦生徒会長どころか、ゲヘナの風紀委員にトリニティの正義実現委員会。ミレニアムのC&Cや百鬼夜行の百花繚乱など今じゃ絶対にお目にかかれないキヴォトス混成部隊に敵うはずもなく全員拘束され緊急で作られた絶海孤島の収容所、コキュートスで厚生と言う名の無期限の懲役刑になることになりました。
一応更生が認められれば出られることにはなっているんですけど…出れる人いるんですかね?
まぁそんな訳でこのキヴォトスに私以外の転生者は、多分居なくなった訳なんですが。アイツら最後に困った置き土産を残していったんです。
それが、
『このまま先生が来たら、キヴォトスがどうなるか分かっているのか』
『あの変態な先生が来たら、嫁が汚されてしまう』
『あーーあの子の足が涎まみれになってしまう』
『先生じゃなく、私がワンワンプレイするはずだったのに』
などなど、謎の先生と言うフレーズと共にその危険性と変態性を各地にばら撒いて行ったんですよね。勿論全ての生徒がそれを完全に真に受けた訳じゃないんですが、アイツらの中にはそれなりに優秀な奴らも居てシンパな子達も居たので…。
本当ならそれも時間と共に風化するはずだったんですが、来ちゃったんですよね。その先生が。
しかも連邦生徒会長が失踪した大ニュースと同時に設立されたシャーレなんて組織の責任者として。
そうなるとぶり返す訳ですな、そしてあの騒動を経験し今では各学園の中枢にいる人たちは嫌でも警戒しちゃうんですよ。
※※※
「えっと…」
転生者な部分など省き、出来るだけ分かりやすくオブラートにお伝えしたんですが先生は困惑してるご様子。ですよね、1年も前に会った事もない連中からお前は生徒の足を舐めたりワンワンプレイをする変態だなんて言われてた訳ですから。
それにしても、なんで特定の行為を名指ししたんですかね?
「…先生、もしかしてそんなご趣味があったりします?」
一抹の不安から聞いてみるが、
「ある訳ないよ!あっ叫んでごめん」
強く否定される、まぁこれで肯定されたら拘束してアイツら所に放り込んだでしょうが。とは言え、今は先生の言葉を信じるしかないんですよね。
「でもその彼女達は一体どんな理由でそんな事を…」
「それについてはよく分かってないんですよね。集団ヒステリーとか色々言われたんですが、最近は質問も答えないみたいで」
収容された最初は色々喚いていたそうですが、最近は惰性に生活してるみたいなんですよね。なんかあったのかな?
「彼女達と話を「それは出来ません」…そうか」
そこに行くのもかなり大変な事もありますが、アイツらを尋問した子達が何人もノイローゼになったんです。そのため今じゃ監視はするもアイツらから情報を探ろうとするのは皆無になったんです。なんでそんな所に先生を連れて行く訳にもいかないし、行ったら行ったで色んなところで煙が上がるのが目に浮かぶんですよ。
「でもそうなるとどうするべきか」
そうなんですよね、実績を上げれば自ずと先生をちゃんと評価をしてくれる生徒も増えると思うんですが。今はその実績を上げるにも一苦労な状態なんですよね。
なので、
「先生」
「何かな?」
「まずはインタビューを受けて見ませんか?」
「えっ?」
癪ではありますが、アイツらの力を頼るしかないんですよね。
ハァ〜気が重い。