アール・ヌーヴォーの亡霊   作:燃える氷

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初投稿になります。レゼに脳みそをBOOMされた事に収集をつける為にやってみる事にしました。
私に流麗なる文を書く力無し、原作の要素を拾ったりしなかったりするので原作既読の人向けです。


新人歓迎会?

 

 

 

俺に好きな物は二つある。一つ、酒。

酒とは素晴らしいものだ。出来るものならば、自分の脳味噌を取り出してアルコール漬けにしてみたい。絶対に最高だ。

 

もう一つ、それは撃鉄(トリガー)。俺が背負った災厄にして、俺の二つ目の心臓。自分の後頭部に生えたそれを手で下げると、そいつは跳ね返って後頭部を叩く。そうすれば、俺は銃の武器人間になる。俺はこいつのせいで大量の苦を抱える事になったが、唯一嬉しい事は────

 

 

 

 

「カンパーイ!」

 

それは永遠の8階に幽閉されてから久しくない日、公安対魔特異4課の新人歓迎会の音頭だった。

酒を呑む者、飯を食う者、甘いものばかり注文する奇妙な者。

さっきまで道に迷っていた者、魔人、人外。世にも奇妙な歓迎会が、そこには開かれていた。

 

「あの…キスの件は…」

 

そこに、食欲ではなく情欲を求めている者が一人。チェンソーの武器人間、デンジ。

 

「んん〜?あぁ〜…」

 

それに対する姫野の反応。言葉の抑揚が妙に上機嫌になって、頬の火照りが見られて、明らかに減っているジョッキの中身。

既に姫野の身体中に酒が回っていっているのは明らかだった。

 

「シラフじゃ恥ずかしいからさ〜…もっと酔ったらしたげる」

 

その返答にデンジの口角は上がった。胸の奥に隠した期待が、胸の高鳴りと共に風船のようにどんどんどんどんと膨らんでいく。

 

「濃いやつかましてやるからさ〜、デンジ君をみんなで殺そうとした事許してね…?」

 

「ああもう超許すよ!超!!」

 

明らかに調子の上がった様子を見せるデンジの肩を、隣の席にいた恰幅の良い同僚の男が止めに入った。

 

「新人歓迎会なんだから、新人は立って自己紹介!」

 

「公共の場で契約している悪魔を言うな、手の内は信頼した人間にしか見せちゃいけないぞ。」

 

同僚の男を更に止めに入ったのは、デンジのバディであり、──また、教育係のような役割まで持たされた苦労人、早川アキ。

 

「相変わらず固いヤツだな〜〜〜!」

 

食い下がる同僚の男に対して、姫野は楽観的だった。

 

「まぁ大丈夫!大丈夫でしょ!すいませ〜〜〜ん!生一つ〜!あと枝豆‼」

 

姫野に肩を組み寄せられたデンジの顔が浮ついている。

これから起きる運命を知らずに。

 

そうして自己紹介の時間が始まっていった。初めにデンジが、次に荒井ヒロカズという男、そして東山コベニという怯えた小動物のような女が。

普段の血と死がこびりつくようなデビルハンターの職務とは対照的に、そこには和やかな雰囲気があった。

 

「コベニちゃんは9人姉妹なんだよ、凄いよね」

 

そう女性の課員が言った後、姫野が一人の新人がいない事に気が付いた時。その事を、口に出そうとしたその時に。

 

「あ〜〜…俺も自己紹介、必要かな?」

 

姫野の座る席の後ろ。特に何もないその空間に、音もなくいつの間にか一人のスーツを着た…割に屋内にもかかわらずフード付きコートを着てそのフードを被った、茶色い髪をした男が立っていた。

 

「あ…えっ?」

 

その疑問を言おうとして、口を開いていた姫野から理解を通り越したかのような声が漏れた。

その瞬間に動ける者達は戦闘を覚悟して顔つきが変わっていくが、音もなく現れる相手との戦闘に恐怖して先制攻撃を仕掛けようとする者はいなかったし、その対象となる男にもそのような気はなかった。

 

「あ〜〜〜ちょっと待ってちょっと待って、すまない。俺もあんたらのメンバー。メンバーだよ。ナカマ。」

 

男は気怠げなのを隠そうともしない、抑揚のはっきりしない声で弁明を図ろうとする。両腕を上げて武力行使の意思は無いと表そうとしているが、それだけで警戒を解かれる筈もない。

ある者は自らの胸のスターターに手をかけようとし、

ある者は悪魔の力を行使しようとし、

またある者は座ろうとしていたところを突然現れた命の危機に襲われ直立不動のまま死んだ顔をしていた。

 

「…特異4課の?」

 

初めに口を開いたのはアキだった。勿論彼らの中では今居る者たちで4課のメンバー全員であり、他にここへ来るとすればマキマ1人くらいのものだ。かの男は不審者も不審者、それに自分達がそこまでの接近を許しているのだ。

アキは警戒心を剥き出しにしながらも、質問を続けた。

 

「俺等の事を、知っているのか?」

 

「そりゃあ、ここにいる中で俺が一番の古株なんだからな。

あんたは早川アキ。狐だったかと契約してた筈。

そっちは姫野。契約してるのは幽霊…だったか?

そこのはデンジ。確か…」

 

男は座ったまま下手に動けなくなっているメンバーの皆様を目で追いながら知っている情報を開示していると、その後ろからもう一人、今度は赤髪の美女が来店した。

 

「遅くなったね。」

 

「んっ!?」

 

マキマが到着した。一触即発と化した新人歓迎会のムードを救う為のヒーローは、遅れてやってきた。

 

「この人には裏方での作業をお願いしているんだ。関わる機会が無いから、皆に教えていなかったね。」

 

マキマによる説明を経て、やっと新人歓迎会は息を吹き返した。

しかし、既にテーブルが空いておらず、男はテーブルから締め出されていた。一人で呑むのも悪くない……たぶん。

 

「──改めて、公安対魔特異4課の…んー…事務。安里です。契約してる悪魔は…秘密で。趣味は酒。こんなでも戦えるが、理由あって本当に危機になった時以外の戦闘はしたくない。申し訳ないね」

 

「酒?師匠みた〜〜い」

 

姫野の呂律は怪しくなってきた。しっかりアルコールが脳に届いているようである。

 

「師匠…?もしや、岸辺のヤツ?」

 

「そ〜!!あの人もお酒大好きだし〜……」

 

「こいつの目、嫌な目をしておる!死んだ獣の目じゃ!」

 

そんな会話を尻目にして、その頃チェンソー人間の心の中では、情欲のエンジンが再始動しようとしていた。

 

(マキマさんに褒めて貰って、ついでにキスも貰えねーかなぁ…マキマさんと…キス…!!)

「マキマさん!俺さぁ!銃の悪魔のなんちゃら拾いましたよ!!」

 

「うん、聞いたよ。デンジ君はすごいね」

 

(効果ねぇ!!!)

初心な青年のアプローチは儚く砕けた。

が、それをきっかけとして話は進んでいく。

 

「前までこんな早いペースで肉片を持つ悪魔は現れませんでした。この間のデンジを狙った悪魔といい最近少し悪魔の動きが怪しいですよ。」

「マキマさんはデンジの事何か知ってるんじゃないですか…?」

 

アキの問いかけに対して、マキマはジョッキを煽った後に言った。

 

「私より飲んだら教えてあげる」

 

「…すいません、生二つ」

 

「アハハ私もそれやるぅ〜!生もう一つ〜!」

 

対決が始まろうとしているのを聞いて、酒呑みとしての意地が出たようで、隣のテーブルからも参戦者が現れた。隣のテーブルに一人腰掛け、わざわざもう反対のテーブルが見える位置に座っているので、距離は非常に遠い。疎外感を感じて、安里の心の中で寂しさが孤独に吠えている。しかし、それを感じさせる訳にはいかない。

 

「乗った。生三つ。」

 

それを皮切りに、やってくるのは注文の嵐だった。

 

「馬刺し!からあげ!馬刺し!!」

 

「コベちゃんと荒井君は甘いお酒でいいの?」

 

「芋焼酎」

 

「からあげ!!」

 

まだまだ、歓迎会は長そうである。

──────

 

アキと姫野がノックダウンした後も、安里とマキマの一騎打ちが続いていた。だが…

 

「すいません、生もう一つ……あと……グラス片付けてもらっていいですか?」

 

「あ〜〜………無理………」

 

隣のテーブルにて、最後の挑戦者がぐえと呻いて突っ伏した。

終了。勝者、マキマ。アルコールが効かない人間など、果たして人間なのだろうか?

 

そうして飲みの話はIQになっていった。そこで安里は金槌の如く重くなった頭をグッと起こして、内臓から溢れるような倦怠感の中向こう側のテーブルの景色を眺める。一人だって寂しくないさ。

その時、嫌な予感が背筋を掛け巡った。いや、これは予感ではなく、自分が知っている『ストーリー』だ。

(この後、ゲロキス…!?)

…そう、安里は俗に言えば『転生者』だった。

ただ、時代が早すぎた。待ち続けた。待ち続ける道中で、地獄の只中すらも突き進んだ。待ちすぎて、記憶も霞みきり、殆ど忘れてしまっていた。それが、突然見知った光景に終着した瞬間に帰ってきたのだ。

 

記憶の帰還が天から来た瞬間には、既に身体が動いていた。

韋駄天の如く身体が動き、だっと駆け出し、一番近くにあった適当な深皿を手に取って…

 

「んあ?」

 

そう、不注意をしているデンジと頬を染めた姫野の間に。

 

 

その皿を、滑り込ませた。

 

 

結果は、成功だった。デンジの口に地獄の滝ができる事も無く、姫野が限界に近そうであるという事で新人歓迎会はお開きとなった。

 

その頃、安里…いや、【アンリ・シュター】は、自らの古ぼけた記憶の突然なる復活に驚愕し、自らの数十年前に定めた目標を懐古していた。

 

『マキマの暗躍を止めてやる』。

八十数年前、転生して最初に決めた目標。それを何故忘れていたのか、思い返すこともできない。理由をつけるのならば、この業界に関わりすぎたが為なのだろうとしか。

ただ、今の自分に与えられたのはこの世界のストーリーの知識と、その体に宿した【機関銃の悪魔】の心臓。

【支配の悪魔】の能力が自分に未だ牙を向いていないのは好都合だった。この世界で、あれは無法だ。

この身一つを用いて、この世界の未来を変えてやる。

そう心の中で繰り返していると、マキマが呟いた。

 

「あれ…?、デンジくんは?」

 

答えたのは伏だった。

 

「安里さんがファインプレーしたのは良いんですけど、皿でデンジ君の頭を打っちゃいましたからね…確か姫野先輩が背負って連れて行きましたよ?」

 

「…は?」

 

…なんてことだ。




・オリ主くん
100歳は超えている。70を過ぎた辺りからよく数えなくなった

・マキマさん
実はオリ主くんの大被害者。何故かオリ主くんの顔を覚えている
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