アール・ヌーヴォーの亡霊   作:燃える氷

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意外とアンケート結果がほぼ拮抗しててびっくり。
12/17時点で勝手に決定、平和ルートで書きます。良かったねレゼちゃん


異邦人

 

 

 

 

「不味い事になったね」

 

『敵か味方か、恐怖デンノコ悪魔!』

 

これを読む者に馴染みがあるか分からないブラウン管の中、頭と両腕からチェンソーを生やした人外がスプラッターショーを開催している場面が映っている。

 

「公安で報道規制をかけてたけど今回はダメだった。被害が大きすぎてテレビ局を止められなかったみたい」

 

妙に暗い部屋に放たれる元気な報道の声を他所に、マキマとその後ろの大勢の顔は部屋と同じく暗いまま。

 

「電車でデンジが戦っておる!」

 

「テレビに映るってのはいい気分ですねぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

「ボムちゃん…仕事は果たしたってワケか」

 

「え?」

 

呆気に取られるデンジに構いなく、マキマの言葉が続いていく。

 

「報道のせいでデンジ君が日本にいる事を世界中に知られた。アメリカと中国あたりはデンジ君を欲しがるだろうね。デンジ君のような悪魔でも魔人でもない存在はすごく貴重だから」

 

「ボムはソ連の刺客でしたよね?なんでわざわざ欲しがる敵を増やすんですか?」

 

「……デンジ君が私の手にさえ無ければいいって事だろうね」

 

 

「江の島かぁ……江の島って島か?」

 

「実はワシの別荘が江の島にある」

 

ここまで来ると最早それが強みですらある2人を除いた面々の面持ちは、やはり暗い。

 

「デンジ君、旅行は延期」

 

「え………?」

 

「宮城公安の対魔2課から日下部と玉置を呼んで。「はい」京都公安対魔1課からはスバルさんを。こっちにいる安里ケンゾウの休暇を1ヶ月抹消*1。あと、民間にいる吉田ヒロフミを一月雇っておいて」「はい」

 

「旅行……延期………?」

 

やった〜〜〜!

 

「これからしばらくはいろんな国の刺客がデンジ君を殺しに来る。しばらくは自由がないと思ってね」

 

 

 

 

 

「ゴタゴタが続いているけど来年には銃の悪魔と戦うから、早川君も作戦に参加してもらう。今回の作戦で死なないように。銃の悪魔……

 

安里ケンゾウを殺す為には、みんなの力が必要だからね」

 

 

 

 

 

 

 

何処か欧州、白銀の雪が積もった山中にて。

 

「師匠、キツネ狩りになんの意味が…?」

 

「トーリカ、命を殺した感覚はありますか?」

 

「そうですね……弦の振動しか感じませんね」

 

「そうですか」

 

例えそれが、動物ではなく、悪魔でもなく、人間を相手にしたとしても。自分の心は揺らぐまい、そうトーリカは答えた。

 

「お上の方々が約束してくれた、次の仕事が終われば師匠はデビルハンターをやめられる……師匠はあと3()()()しか生きられないんです、余生は平穏に過ごしてほしいんです俺は」

 

「トーリカ…………」

 

 

 

 

 

 

 

は、と目が覚めた時には、いつも横ばかりを向いていた物。しかし、今回も久しぶりの天井。こう振り返ってみれば、人生の中で随分珍しい目覚めをしているのだと確認できる。

 

一体どうして俺は変身のトリガーを失ったのか、そしてその代わりのようにどうして遠い昔に一瞥しただけの存在だった心臓が再び実体を持って俺を惑わせてくるのか、更にどうしたら意識の主導権をその存在から取り戻せるのか。実際、どうやってあの悪魔から俺の意識を取り戻したのか。

聴きたい事案が山のように積み上がって仕方ないのに、何か知っているだろう悪魔さんはその回答を控えてきた。なんと酷な上司だろうか!労働環境は地獄の只中である!

 

「世界各国から色々と刺客が来るようです。中国からはクァンシ…恐らくドイツのサンタクロースも」

 

さて、過去を語ったとて仕方なし。今は1ヶ月休暇抹消などというあんまりにも酷な暴挙を聞かされた直後、その理由を説明されている。

 

「その他は?」

 

「まだ確定していないので……なんとも」

 

そう言うが、絶対にあと一人は心当たりがある。こっちにあるのだから、あちらにだって無ければおかしいだろうに。

 

「中国が本気で来る割に、アメリカは控えめな様子で?」

 

「私達に、貴重なデビルハンター(戦力)を減らされる事を恐れているのでしょう」

 

「なるほど、他の各国が消耗すれば相対的にかの国は強力になるもの…あのアメリカが、随分狡猾になったもんだ」

 

「数十年前と比較すれば、そうでしょう」

 

 

「ん〜〜〜……あぁ、そうだ。マキマさん、俺に一日…いや、半日で十分。自由行動を許可しちゃくれませんか?」

 

「……それは、どうしてですか?」

 

「勘、と言いましょうか……嫌な感じがしましてね。京都から来るって三人の事、こっちで迎えに行っても?」

 

「…………良いでしょう」

 

久しく整備をしてやれていないけれど、あいつはしっかり動くだろうか?

 

 

 

 

 

山道沿いの開けた場所に、一台の車が停まっている。

 

「そもそもその〜……デンノコ悪魔君っていうのんは、素顔は誰も分かってへんのやろ?だったら大人しく家に拘束させときゃええんちゃうか?」

 

「あ〜〜……ま〜〜………言われてみればそうやなぁ。スバルさん、そういう事なんすけどなんでですの?」

 

「悪魔は人よりえらい鼻が利くからなぁ。悪魔と契約してる奴から隠すのんはややこしいやろうな」

 

彼の手に持つ煙草が燃え、その灰が重力に引かれ落ちるか落ちないかの瀬戸際。

山道の奥からエンジンのうなり音が響き、一台のバイクが迫って来た。前が開けられたモーターサイクルコートの間から公安の制服を覗かせ、風に流されたネクタイがマフラーの様に靡いているそれは、停まっている車を認めると速度を落とし、その脇に停まった。

 

「なんや、客人かいな?」

 

「でもあいつ、うちの制服着てますよ」

 

三人が懐疑の目を向けている相手は、そのヘルメットを乱暴に頭から引っこ抜き、それを左のハンドルに掛けた。

 

「なんとか間に合った…マキマさんに言われて君らの護衛に来ました、特異4課の安里言います。よろしく」

 

「………特異課にあんなの居ました?」

 

「さぁ?覚えとらんわ」

 

(やはり、事務仕事を選んだのは失敗だったか…?)

 

とにかく、俺は間に合った。あっちがどのルートで東京に来るかも分からない、その上こっちは身一つしかないのだから山の辺りを通るルートを祈るように走っていたのだ、自分の事が覚えられていない事など最早取るに足らない。

 

「……とにかく、そっちは俺らの護衛すんのに来たんやろ?俺らももう東京向かおう思っとるから、とっとと用意せい」

 

「東京観光する暇は〜〜……」

 

「あらへん、あらへん」

 

そう言って、三人は車に乗っていく。おや、女にハンドルを握らせるとは。俺は意地でもしない、できない、自分で自分を許せない事だ。

 

「……後は俺がすっこけなければいい。もしもの時は、許してくれよ」

 

日本でなんとかヴィンテージ品を拵えたこのバイクが、久しぶりに動いて早速壊れなければいいのだが。

 

 

 

長ったらしい割に代わり映えがないから、小さい頃は山道が嫌いだった。しかし今は、身体で風を感じられる。速度を好きに上げられるから、山道が好きになった。

 

(どこで来るかな?)

 

前に車を走らせ、自分はその後ろから追走する。開け放ったコートの後ろが、風を切る感覚が心地よい。

 

そうして数kmを走っていた所、車の前にスパイクが突然敷かれた。法定速度は守っているのに、どうして止められる必要があろうか?

 

パンクした車がハンドルの制御を離れ、急ブレーキの音が辺りに放たれる。

それを合図にこちらもブレーキとクラッチをかけ、停止したとわかった直後バイクを地面に押し倒す様にして離れる。許せ。

 

、と激突音がして、あちらは思いっきり事故を起こしている。急ぎヘルメットを放り捨て、コートの中から得物を取り出して叫ぶ。

 

「待てよ異邦人ども!アルベール・カミュを読んだ事はあるか!?」

 

見ると、目標の三人組は狙っていた獲物と良く知らぬもう一人に困惑し、こちらに未だ銃口を向けられていない。それでは命を散らすだけだ、と叱りたいが、あちらは敵。情けも何もかけてはいけない。

 

バン、と放たれた銃弾が一人の首元を抉り、鮮血が飛び出す。

 

「なっ……!」

 

それを見て別の一人がやっと銃口を向けるも、遅い。

 

バン!!

 

「アルベール・カミュを読んだ事は!?」

 

今度は脳天に直撃し、棒を弾いたように倒れ、二度と起き上がっては来なかった。

 

「……え……あ……」

 

最後の一人、顔に傷のある刺客は顔を酷く青くしてへたり込んでしまった。これが本当に刺客なのか?

 

「聞こえなかったかな!?アルベール・カミュを読んだ事はあるか!!??」

 

そう叫びながら、一歩、一歩と距離を詰めておく。ついでに、首元にしか銃弾が当たっていない奴に追加で一発を。

 

「お……おあ………」

 

距離を詰めていく内に、あちらの顔の青さは加速していっている。まさか吐こうとしているのではなかろうな?

 

「読んだ事が無さそうだなァ!?不合格!死ね!!」

 

一発が脳天を穿ったのは、吐瀉物が溢れるよりも先だった。こっちだって吐き気を堪えているのだから、そう簡単に吐かれては困る。

 

 

 

 

 

「君ら、災難だったな」

 

木の幹に頭から突っ込んだ凹みの残る車を他所に、俺は押し倒した車両の一応の点検をしていた。

 

「…あんた、あいつらが来るの分かってたんか?」

 

顔に横一文字の傷が有る男──名前は黒瀬ユウタロウと言ったか。が俺に問いかけてくる。

 

「いいえ、俺にそんな未来予知なんて出来やしません。ただ……勘と、マキマさんが仕事を振っただけです」

 

そう言いながら、俺は一応の点検を終えた。結構値が張ったのだから、そう簡単に壊れては財布が薄くなって仕方ない。

 

「そっちの車もエンジンはかかったし、取り敢えず東京まで行きましょう」

 

「いや……ウチら襲われてんですよ!?先に身を守った方が……」

 

さっきまでドライバーをしていた女の人──こちらは天童ミチコだったか?にそう、拒絶混じりに言われた。

が。

 

「どうして?別に上司に死にに行けと命令された訳では無いでしょうよ。東京に行ったら死ぬ呪いですか?」

 

こっちには死にに行けと命令されて、それをやりきった経験があるのだ。そう簡単に泣き言など聴く優しさはない。

 

「……は、はい」

 

俺の声に威圧されたのか、意外にも素直に従ってくれた。凹んで醜くなった車は再び東京まで上る道を走り出し、その後ろを一台のバイクが追いかけ始めた。

*1
「この業界は労働基準法すら忘れたのか!?」




・オリ主くん
13話にしてようやく下の名前(偽名だけど)が分かった。今や二人で一人状態。別にハーフボイルドでもダブルがボイルドでエクストリームでもないから。
・仮称機関銃の悪魔
最悪のパートナー。奇跡は起こってるかも。
・マキマさん
多分TのメモリやらCのメモリを持ってる。
・黒瀬ユウタロウ
命拾いできた。良かったね。ハッピーだよね?ハッピーって言えよ。
・天童ミチコ
曰く「今まで戦ったどの悪魔よりあの人の方が悪魔に見えた」。
殆どの部分を勢いで書いてるので誤字脱字やプロットの穴などあったら是非誤字報告や感想をお願いします。

サンタクロースは…

  • 総統!シュタイナーが来ました!
  • サンタ?大ッ嫌いだ!バーカ!
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