アール・ヌーヴォーの亡霊   作:燃える氷

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銃であって銃ではない

 

 

 

どうして、あの大戦争の後に人類は内紛を止めたのだろう。

通説では、人口爆発による人類の増加による悪魔の全体的な強化。世界各国は、加速度的に強さを増す悪魔に対しての団結を示した。今までの数千年間、戦争と束の間の平和との堂々巡りを続けた我々人類は、共通の強敵が生まれた瞬間にいとも容易く手を取り合った。

 

───果たして、本当にそうだろうか?

 

ドイツは大戦争後の経済恐慌に長く苦しんだが、何故か彼等は再び拳を振り上げる事はなかった。

 

ソ連は工業化に成功し、強国としての地位を確立したが、自分達の理想を広める事に興味を示さなかった。汚職と腐敗が蔓延すると予想されていたが、強力な悪魔の出現により彼等は未だに結んだ手を離してはいない。

 

まるで戦争をしてはいけないと定められたかのように、世界は大戦争を避け、80年近くが経った。

 

しかし、俺は覚えている。この世界の外から物語に書き加えられた存在として。大戦争には2回目があった事、そしてその発端となったドイツの────

 

 

 

 

 

 

 

「マキマさん、説明してください」

 

襲撃事件から2日程経ったか、マキマに呼ばれて出勤した途端に本気の目をしたアキにとっ捕まえられた。

そのままマキマの前に引きずり出され、俺の前にはマキマ、後ろには怖い目をしたアキ。そんな目をして私を見つめないでくれ。そういう目は苦手だ。自分の目のようで。その目が嫌で、視線を前に向けると今度はマキマと目が合う。何を考えているのか分からない。やはり恐ろしい。そんな具合の布陣になった。この状況で自分の口から説明をするのも面倒なもので、逆にこれは都合が良いかもしれない。ここはマキマに説明役をしてもらおう。

 

「……彼は昔に【銃の悪魔】と契約し、その心臓を持っています。つまりデンジ君や今回の襲撃犯と同じような存在です」

 

「……銃の悪魔が、何故そんな契約を…?」

 

「彼が契約したのは80年近く前と記録に残っています。その頃は未だ銃に対する恐怖も薄かった為、人間一人がそういった契約を結ぶ事も可能でした。」

 

「80年近く前…!?」

 

「銃の悪魔による人類の大量殺害が起きたのは13年前。しかし銃の悪魔自体はそのはるか前から現世に存在していたのです」

 

半分正解、半分間違い。正しくはアキやマキマの言う【銃の悪魔】と俺の心臓になっている【銃の悪魔】は違う。よく分からないかもしれないが、それは本当であり真実であるから困っている。

 

「しかし、銃の悪魔と契約しているというのは危険では……」

 

「公安の監視下で、彼は一度も悪魔に身体の主導権を握られた事、一般市民を攻撃した事はありません。魔人のように暴れ出す事も勿論ありませんでした。我々はデビルハンターとして、使える武器は最大限活用する事を優先しました」

 

「……そう、ですか」

 

なんとか心の中で納得に持っていこうとしている雰囲気を感じる。しかし家族が銃の悪魔に殺されているという事実がそれを阻んでいる事も伝わってくる。彼等を殺したのは実際には俺と殆ど無関係な別の悪魔なのだが…それは。

 

「…そう簡単に許せる事ではないのは分かっている。ただ、本当に銃の悪魔を倒したいのであれば、俺と協力する他ない。こんなのでも戦力にはなるぞ」

 

「………」

 

後ろに立つ人からの返答は無かった。沈黙ばかりが部屋に流れ、息苦しさが身体を取り巻いている。その反対に、差し込む朝日ばかりが美しく見えた。

 

「……そんなに警戒されるのか。弱ったな…」

 

こうなってはどうにも話が進まない。前にこわいの(支配の悪魔)がいる中では余計に話を進められない。和解までは何千里あるのだろうか。清々しい朝なのに、この部屋だけは嫌に重たい雰囲気が充満していた。沈黙が10秒、20秒と続いて。

 

「…取り敢えず、今日は安里さんは私と来てもらいます。アキ君は京都から呼んだ人達に指導を受けてもらいます」

 

部屋中に貼り付いた憂鬱を剥がしてくれたのはマキマだった。サンキュー、サンキュー。

 

 

 

俺が配属されていたお陰で姫野の死とアキの負傷を避ける事には成功したが、やはり守れる所はそこ以外なかった。他の班は俺の知る物語と同じように死人を大量に出していた。一人ではどうしようもない範囲だと自分に言い聞かせても、やはりやるせない。

そんな心中だが、これからが一番恐ろしい世界だ。

俺は、ここから先の物語を知らない。本来ひとつだけしかない絶対不変の未来、それを俺という存在が捻じ曲げてしまった。

聞いた事の無い言葉、見た事のない悪魔、知らない天井。過去の事は現在に収束しているから良いが、未来が闇の中に突入した事はまた別の恐怖。しかしながらマキマに支配された世界が俺は気に入らない。その時点でこれは覚悟していた。それでも実際目の前まで来ると…やはり、怖い。その感想以外が出てこない。より豊かに感情を表現したいところだが、そうとしか言えない。年のせいだろうか。

 

アキが京都の二人に連れられ退出して、この部屋には俺とマキマの2人になった。相変わらず同心円の瞳孔が俺を縛るように捉えている。やりにくい。

 

「…わざわざ呼んで、あんたは俺に何をやらせるつもりだ?あのテロリストどもの殲滅?それとも報告書の作成?もしや要人の抹消が必要に…」

 

「今日はデンジ君とパワーちゃんに指導者を紹介します。特にデンジ君はその心臓を狙われているので、刺客を撃退できるように指導が必要でしょう」

 

「その役目を、ちょうどよく暇をしている俺にか?確かに我ながら適任じゃあ「いえ…岸辺さんにお願いしようと」

 

「………あぁ、そう…ですか……なら何故俺を呼ぶ必要が?」

 

「それは…」

 

そう詰まると、

 

「命令です。私に従いなさい。」

 

支配の悪魔が、本性を表した。

 

「……これで5回目か?答えは、嫌だ。幾ら何でもそんな命令は何回もせがんだら折れてくれるもんじゃない」

 

「…残念です」

 

なんだ、なんなんだこの悪魔は。全く、人を怖がらせるのがお得意なようだ。心の中で冷や汗が滝の如く溢れて恐怖以外の感情を押し流していくのを感じる。

 

「あんたが公安の、この国の…いや、人間と協力関係にある内は余程がなければ命には従う。そう契約を取り決めた事の何が不満で?こんなでも俺の心臓は【銃】。未だ世界中の人間がコレを恐れてくれているお陰であんたは俺を支配できない。自由、平等、友愛。いい言葉だとは思いませんか、マキマさん?(支配の悪魔さん?)

 

「………」

 

嗚呼、まずい。まずいぞ。怒らせたかもしれない。表情は普段通りだが、普段よりも俺を見る目が狩人の目をしている。色んな目を見てきたから分かる。これは危ない目だ。

 

「…では、俺は巡回にでも」

 

こういう時の身の引き際も、生きる為のテクニックだ。

足早に去っていく俺の背中を見送る2つの目は、いつもと変わらず同心円状で、しかしいつにも増して冷ややかだった。

 

「あの人との仕事、やりにくいな…」

 

悪魔の口から、妙に人間臭い言葉が漏れた。




・オリ主くん
支配効かないマン。その上職務態度がよろしくない

・マキマさん
オリ主くんにストレスを押し付けられている。京都のお偉いさんなんかよりオリ主くんのほうが面倒だと思っている
更新遅めになった割に内容量が薄いのは許してください。
あれもこれも眠気の悪魔が仕組んだことなんだ
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