遅くなってすいません。
俺こと桜琳は今、山にいる。理由は簡単だ。桜琳が左腕を犠牲にしてまで封印した『奴』の、状態を確認しに来ているのだ。が、桜琳は、一人でそこにいくつもりであった。しかし、
「なあ~、まだなの?」
「ちょっと黙ってろ、辰起。」
と、余計な物まで付いてきてしまっている。
山に入ってから10分くらい歩いた頃だろうか、突然、グシャと言う音と共に足の裏に心地悪い感触が、走る。下を向き、自分が踏んだものを確認する桜琳。腐って少し異臭を放っている。だがそれは、果物のようなものでなく、血生臭い肉の塊だ。
動物かなんかの肉だろ、と辰起は言っているがこれは違った。元は自分達と同じような存在だったもの。つまり人間の肉だ。おそらく、俺が封印する前に『奴』に殺された人達だろう。
「オイ、......なんだ、これ」
辰起が声を発しながら、血生臭い肉の塊を調べていた桜琳の肩を揺する。我に帰った桜琳は、辰起の顔を見上げる。驚愕の表情をしている辰起に話しかけようとして、.....止める。今まで、自分の足元の肉塊しか調べていなかったので、気付かないのも無理なかった。
桜琳と辰起の回りには、多数の死体が転がっている。無論、言うまでもなく、それは人のものだとわかった。原型は残っているものの頭がない死体、バラバラになっている死体、さらには、体の至るところがあり得ない方向に曲がり、折れている物まである。
「.....地獄絵図だな。」
「ああ、俺もそう思うよ。」
その言葉を交わした後、数秒、あるいは数分、いや、数十分と思えるほどの沈黙が、二人をつつんだ。
「とりあえず、俺が封印した『奴』のところまでいこう。」
「.......ああ、わかった。」
未練がましい声で辰起が返事をする。もう一度辰起の顔を見ると、怒りと悲しみの混ざりあった複雑な表情をしている。
あれから、また10分ほど歩いたところで木々がなくなっている場所に出た。そこには幾重にも封印を掛けられた妖怪の姿でなく、唯の封印の後だけが残っている。
「逃げられた、か。」
「そうみたいだ。でも....」
どうやって、といいかけてその言葉を飲み込む。今は、脱け出す方法を考えても仕方がない。
「とりあえず帰って、上層部のほうに伝えよう。対策を考えなければ。」
都に帰り、上層部との会議をしている。
「...と、ここまでが『青神』に関する情報だ。手元の資料にも書いてある。よく見ておいてくれ。」
そう言われ、資料に目を通す。そこには、『奴』改め『青神』となずけられた妖怪の情報がのっている。といっても、書いたのは俺なのだが、小さいことはきにしない。
さて、話しを戻すと、『青神』がどんな妖怪なのかが資料に載っている。
まず、と説明が始まる
「青神は体長約3メートル前後で、手足は異様に長い。また、人間に近いかたちをしているが、体の構造は全くと言っていいほど違っている。それに加え、妖力が異常に高いため大半は気付けない。なので、迂闊に山に入ったりしないように。以上、解散。」
会議が終わった後も、桜琳の頭の中は『青神』のことで一杯だった。
「(奴は何故封印から逃れることができたのか?いや、奴はその後どこへいったのか?誰かが外から封印を解いたのか?くそ、なんなんだ!)」
度重なる不運により、たまっていた不満が爆発しそうになる。が、自分に、落ち着け、と何度も言い聞かせる。
月移住まであと3日......