目を開くと、そこは終わりのない様な草原が広がっている。だが、そこは普通の草原ではない。
空は色を失い、緑色の筈の草原は灰色が混じったような緑色をしている。さらに、おかしいのはそれだけではない。自分を取り囲むように、七つの玉座がおかれている。その七つの玉座には全て鎖が巻き付いており、1つの南京錠で、ロックされている。
玉座はそれぞれ色が違い、自分が向いているところから時計回りに黒、白、紫、深緑、黄、青、薄緑、だ。
俺は黒の玉座に巻き付いている鎖に触れる。と同時に、鍵が音をたてて外れる。そのさいに、強烈な光が発生し一瞬目を閉じる。再び目を開くと、そこには黒髪で緋色の眼をした青年が座っていた。
「......き..みは?」
うまく声がでないが、その質問は出来た。
質問はしたが、訊かなくても大体わかっていた。もしも、もしもこの世界が死後のものでないのなら、今俺の前に座っているのは、俺だろう。少し詳しく言えば、俺の一部。と言うことは、もちろん人間では無いだろう。何せ自分の中には悪魔がいるのだから。が、確信までには至らなかった。それは最初に言ったとうり、ここがどこなのかがわからなかったからだ。
「俺?俺はお前の中にいる7人の中の1人だ。」
やっぱり、俺の一部だ。だが、少し引っ掛かる。それは.....
「7人の中の1人?それは、まだ6人居るってことか?」
「まさか、知らなかったのか?お前は人間の割合の方が少ないことを。」
「なっ!まさか!」
「そうだ。お前は人間が三割で、悪魔が七割だ。が、お前はまだ悪魔の力を使えていない。だから、あんな妖怪ごときに負けるのだ。」
「あんな......妖.....怪。」
その言葉を聞いた瞬間、全てを思い出す。
辰起たちをおいて来たこと......
あの妖怪に手も足も出なかったこと......
永琳と約束をしたことを........
「いいのか?こんなところでのんびりしてて?約束したンだろ、友人や大切な人と。負けたンだろ、一発もあたえられずに妖怪ごときに。」
「.....戻ら....ないと。」
「約束のためにか?」
「それもあるが、せめて一発でもあいつを殴らねーと気がすまねえ。」
「.....出来ンのか?さっきまでボロボロだったのによぉ。」
その通りだ。左腕がない上に圧倒的な力の差があった。だがそれも、人間としてだ。人間として負けたなら、悪魔として戦えばいい。
「......力、.......力をかしてくれ。」
「..........かしてくれ、ねぇ。仮にも自分の一部だぞ。ま、一様俺のマスターだしな、マスターがそう言うンならかしてやるよ。だから........
石のよう重いまぶたを開き、辺りを見回す。そこは先ほどとは違い、色あせた空もなく、草原もなく、玉座に座る青年の姿もなく、あの妖怪もその妖怪から受けた傷も消えていた。
(おい、聞こえてるか?マスター。)
「おう、聞こえてるぞ。ええと.......」
(サタン。そう呼べ。)
「分かった。......じゃあ、行こうか。」
そう言って、都を目指す。いつの間にか背中から出てている翼を使い、空へと体を游がせ、飛翔する。いつの間にか、都はすぐ目の前まで迫っていた。
そこには、圧倒的な力で自分をねじ伏せた一匹の妖怪とそれと対峙する1人の姿が見える。俺は一気に加速し、妖怪を目掛け下降する。段々と距離が近づき......
「オラァ!」
「ガァッ!」
後ろから拳を叩き込む。その拳を吸い込まれるように青神の背中へと向かい、鈍い音をあげながら、奴の巨体を飛ばす。
「.......待たせたな、辰起。」
「............ああ、遅刻だ、バカ野郎。」
暫しの沈黙がながれるが、それはすぐに破られる。殴られた青神は怒りに染まった目を此方に向け、奇声を発する。
「(おい、サタン。できるか?)」
(できるが、横の彼を巻き込んではいけないだろう。)
「チッ。おい、辰起。お前は先に戻ってロケットの準備をしろ!」
「駄目だ、次は「いいから速く!」っ。.....分かった。すぐに戻れよ!」
「その前にこれを!」
そう言って、桜琳は辰起に何かを渡す。それは.....
「録音機?」
「持ってろよ!」
分かった、と言う暇もなく、桜琳は奴の方へ足を進める。辰起も桜琳が必ず戻って来ると信じ、ロケットへと足を進める。だが、遠ざかって行くその距離は簡単に埋まるものではなくなってしまうことに、彼らは気付けなかった。
彼らが再び言葉を交わすのがずっと先になってしまうことに、彼らは気づけないまま離れて行く。
少しずつ、少しずつ、少しずつ.......
全てが無に帰すまであと約25分を切った.......
これから少し更新出来ない時があると思います。