終末戦争   作:涼翠

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お祭りの予感

 

                   

 久しぶりに顔を見せた男は乱雑に餌という名のゴミ(・・・・・・・・)の入った器を放り投げた。

 

 ゴミを与えにきたのは建前で、様子見が本命だろう。

 

 そして多分もうここに来ることはないような気がする。私を見る目には堪えきれない恐怖があったから・・・。

 

 それを証明するように、足早に戻っていった男が地上で魔法を行使したのを感じた。

 

 地下への入り口を封鎖したのだ。

 

 正直そんなことはどうでもいいけど、これからどうするべきか少し迷う。

 

 あれから彼女は大量の精霊を喰らい続けた。

 

 波長を変えた魔力を周囲に放出し、精霊を誘引して・・・後は全部同じ。

 

 その過程でいくつか発見もあった。

                          

 属性を持つ中位精霊は、魔力を与えて実体を持つ頃にはになる。

 

 これはその精霊が既に自然の魔力を取り込んでいたことに起因する。

 

 自然発生した大精霊が見目麗しい女性の姿を取るのは、自然を生み出した大いなる地母神の影響を受けるからだ。

 

 しかし、その魔力が神ならざる人の物であればそのような影響が現れることはない。

 

 故に元が『無垢』な下位精霊なら人からかけ離れた球体に、ある程度自然の魔力を取り込んでいれば、少しだけ人に近い姿に変じたのだ。

 

 また、精霊は同じ属性の精霊であっても特性、色、そして味において全く同じものは一つもいない。

 

 同じ炎に属する精霊であっても、例えば朱色なら高い火力が出しやすく酸味があり、躑躅色なら消えにくくほんのり甘い。

 

 それに気づいた彼女は好奇心と食欲の赴くまま、たくさんの色を集めた。

 

 紅色、珊瑚色、向日葵色、山吹色、空色、水浅葱、コバルトブルー、マゼンタ、藤紫・・・・

 

 たべてたべてたべてたべてたべてたべてたべてたべてたべてたべてたべて食べ続ける。

 

 色を取り込むごとに髪色がその色に少し染まる。あらゆる色は重なり続けた果てにやがて黒になった。

 

 その頃になるとあれだけ美味しかった精霊をどういう訳か体が受け付けなくなっていた。

 

 冒頭に話を戻そう。

 

 精霊を食べれなくなったのなら食糧はどうしようか?

 

 今後の方針に頭を悩ませていた彼女は、ふと上を見上げる。

 

 炎の魔力の気配。しかもやけにその数が多い。

 

 エルフは火を灯すのに魔法を使わない。

 

 森を友とする彼らは、わざわざ暴走の危険のある魔法を着火に使ったりしないのだ。

 

 様子を見ていると、エルフ達の魔力が拡散していく。

 

 これは死だ。

 

 魔力を持つ者が死んでもその魔力が急に消失する訳ではないが、魔力をその身に留める役割を成していた魂が天界に行くことで、魔力は死体から抜けていきやがて周囲と均一になる。

 

 どうやら尋常ならざる事態が起こっているらしい。

 

 小さく笑みがこぼれる。

 

 居心地が良くて気に入りはじめていたこの場所ともお別れのときが来たようだ。

 

 周囲の岩檻に目を向ける。

 

 初めてここに入れられたときより岩槍は3倍近くに増えていた。

 

 あの男は未だにこんなもので自分を閉じ込められているとでも思っていたりするのだろうか?

 

 彼女が視線を向けるだけで、魔獣の命をも断つ岩槍が一瞬にして全て塵に変わった。

 

 立ち上がってなんとなく檻の中に一礼。

 

 すでに炎の魔力は森全体を覆っている。

 

 彼女は楽しい『お祭り』の予感に鼻歌を口ずさみながら、地上に向けて歩み出した。

 

 

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