『恩恵』を与えれらた時、彼らの力は殆ど変わらなかった。
恩恵は1の力を持つ者に10の力を与えるが、10000の力を誇るものにも10の力しか与えない。
でなければ、生来の『
「全ての種族に未知の可能性を」それが神達の総意であった。
こと『恩恵』において怪物の『1』も弱者の『1』も同じなのだ。
故にレベルが上がれば上がるほど、『魔力』に特化するか『技』に特化するか等の方向性の違いはあれど、総合的な差は少なくなる。
・・・但しそれは、神々の想定通りの成長をした場合に限る。
◆
薄暗い夜の道をラケシスとアトラは肩を並べて歩いていた。
常ならばバベルに通じるこの大通りは、その日の『冒険』を終えた者達が疲れを知らぬように騒ぎ立てているのが常なのだが、今は驚く程閑散としている。
オラリオでモンスターと常に隣り合って生きてきた彼らは感じていたのだ。
立て続けの神の送還、見慣れぬモンスターの出現、変容する迷宮、どこか慌ただしい大派閥の連中。
ここまで揃って何もないと考える方が不自然。
自分たちの知らない所で何かが起こっていると直感していた。
「随分不満そうだね」
「当たり前だよ。仲間達に戦いを預け自分は呑気に神と話し合い。気に入る筈がない。」
「自業自得さね。あんた達は
見透かしたように言うこの老女神はやはり油断できない。
「あんたを連れて
「・・・ただ、ここまでが全部貴女のシナリオ通りということが少し気にくわなかっただけさ。」
「ああ、成程ね。更に『格』を高めてからあんたには私が自分の運命を手の平の上で転がせる
「違うか?」
「全く違うよ」
変わらず透き通った目で見つめてくる。
かつて『神威』を開放した神にも怯むことはなかったのに、この目だけは身を後ろに引きたくなるような心持ちにさせてくる。
「かつてあんたと同じ思いを抱いた奴らがいた。一柱はゼウス。若き日のあの男は運命を恐れ、私達『運命の三女神』をその管理下に置いた。もう一体はテュポーン。奴は神々に勝利するため自身の分身を差し向け、その力を利用しようとした。他の神々がそんなに重視しない運命をどうしてこいつらが恐れたか分かるかい?」
しばし考えるも答えは出ず、やがて首を横に振る。
「運命ってのは無数の糸で束ねられた大きな『流れ』なのさ。力ある者ほどその糸は太く、強靭で何より『流れ』の中軸に位置する。だからその周囲や時には『流れ』そのものに絶大な影響を齎すんだ。けどね『流れ』の中心に位置するこいつらは『流れ』から、運命の中から逃れることができないのさ。」
「力に劣る俺ではその心配は不要だと?」
「そうじゃない。あんた達は当時のそいつらと遜色ないくらい強い糸を持っているさ。そいつらとあんた達の違いはたった一つ、あんた達が人であると言うことさ。」
想定外の言葉に思わず目を見開く。
「人は時にその脆弱な糸からは考えられない力で『流れ』に波紋を起こすことがある。それこそが神々には理解しえない下界の未知そのものなんだ。だから私はお前たちを選んだのさ。怪物足り得る力と人の未知を兼ね備えたお前たちを・・・。つけ加えるとね、今の私には大まかな『流れ』の様子とお前さん達みたいな強い糸を感じとるくらいがせいぜいで『流れ』を変えることなんてできやしない。私が居なくともあんた達はいずれ出会って、勝手に『世界の敵』と戦っていたさ。」
ここまで聞いてようやく理解する。
ここから先は神々やテュポーンを筆頭とする怪物達を巻き込んだ『流れ』の引っ張り合いになる。
そして恐らくその勝算は限りなく低い、少なくともこの神が人類の未知という奇跡を頼りにするほどには・・・
気づけばギルドがすぐ目の前にあった。
ギルドもこの事態に慌てているのだろう、常ならぬ緊迫感を漂わせている。
「ほんじゃ、ウラノスの居る【祈祷の間】まで侵入するから、運んでおくれ。」