終末戦争   作:涼翠

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決着

 

 

 ネフィリスは深く息を吸った。

 

 ケラウノスは炎と雷、2重の『付与(エンチャント)』を行っている。

 

 自らを雷の化身に変える『雷霆(ライトニングボルト)』、その両腕に白炎を纏う『灼碗(イグナティル)』

 

 その理外の『力』が更に強化されるのだ。

 

 こちらも同等以上の事をせねば、抗することさえ不可能。

 

 血液を介して魔力を体内で循環させ、『付与』の効果を細胞1つ1つに行き渡らせる。

 

 体内でここまで精緻な魔法の行使は、ネフィリスに取っても容易ではない。

 

 制御を誤れば、死は避けらまい。

 

 更なる魔法を行使する。

 

 炎雷を避けるための風の『付与』。

 

 高度な『付与』を施しながら、やはり『詠唱』がなかった。

 

 第一同じ対象への2つ同時の『付与』など、体が保つ筈がない。

 

 その非常識をケラウノスは頑強に過ぎる肉体をもって、ネフィリスは神懸かった魔法制  

  

御と魔に親しき肉体(・・・・・・・)により実現させた。

                            

 肉体活性の『付与』に割くリソースが大きすぎて、これ以上同時に(・・・・・・・)魔法行使はできない。

 

 武器は聖鋼銀の曲刀とそれをもって放つ『斬撃』のみ。

 

 今の状態ならあるいは奴の命脈を絶てるだろか。

 

 生じる不安を心の奥底にしまう。

 

 互いに戦闘態勢は整った。

 

 奴はこちらの状態を正確に把握しているらしく、「今度はそっちから来い」と目で言っていた。

 

 事実長期戦になって困るのはもはやこちらの方。

 

 フッと小さく笑みをこぼし、怪物に向けて駆け出した。

 

 

◆

 

 

 あれから凡そ5分経った。

 

 階層に刻まれた斬撃痕は万を優に超えている。

 

 それでも未だ決着はついていない。

 

 万物滅却の両腕の攻撃を、ネフィリスは徹底して『斬撃』で撃ち落としていた。

 

 ケラウノスは苛立ち紛れに呻く。

 

 攻めきれないのは黒いのの攻撃力が想像以上に上がっていたからだ。

 

 先程までの攻撃程度なら、百度切られようとも命には届きえなかった。

 

 ならば、僅かな負傷など無視して雷を超える速力でもって追い詰め、白炎にて滅殺すればよい。

 

 今はどうか。

 

 奴の攻撃は己の命に届きえるのではないのかと思わせる程に高まっている。

 

 故にこの膠着。

 

 だがそろそろケラウノスの我慢も限界に達していた。

 

 黒いのの戦術は終始一貫している。

 

 己の力が十全に振るわれないように狡猾に立ちまわっている。

 

 思うように戦えぬ苛立ちは積りに積もりついに爆発する。

 

 「ブモオオオオオオオオオオオオォォォォッ!!!」

 

 憤怒の咆哮とともにケラウノスが恒星の如き赫灼たる光を放つ。

 

 闘いが始まって最速となる突進、白炎を利き腕に集中させ大きく振りかぶる。

 

 黒いのも片腕に『風』を集中させている。

 

 奴が制御しきれる限界を超えたいるのだろう。

 

 その『風』に込められた魔力が。

 

 込められた魔力量はケラウノスをして肌が粟立つほど。しかし、

 

 --笑止。

 

 もはや脆弱な風如きで防げるものではない。

 

 それに見よ。

 

 巨大な嵐を想起させる程の『付与』は奴の皮膚を削り、その下にある肉を露出させている。

 

 ようやく見えた敵の底。

 

 勝利の確信と共に、巨拳を放つ。

 

 それに対し黒いのはーー前に出た。

 

 巨拳に嵐を纏った拳を側面から打ち付ける。

 

 ケラウノスの腕にダメージはない。

 

 一方相手は片腕が消失していた。

 

 『風』で防ぎきれなかった『白炎』が打ち付けた腕そのものを消し飛ばしたのだ。

 

 その代償に敵が得たのはたった一度の回避。

 

 ーーそして勝機。

 

 黒いのは既に懐に潜り込んでいる、白銀の剣の切っ先を己に向けている。

 

 『斬撃』ではない、初めて見せる『刺突』の構え。

 

 その剣もいつの間にか曲刀から直剣に変わっている。

 

 『変形』の特性を有する特殊武装。

 

 神速の突きは寸分たがわず、内奥の魔石を貫いた。

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