終末戦争   作:涼翠

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宣言

 

 目の前で、己ではーーライオネル=グランシャリオスではどうにもならない規模の話が展開されていた。

 

 一通り話終えた主神が背もたれに体を預ける。

 

 初めて見せる疲れ切った表情は本当にただの老婆にしか見えなかった。

 

 「重要なことをまだ聞いていなかった。」

 

 「何だい?」

 

 「ギガンテス級、あるはテュポーン級以上のモンスターが更に生み出されている可能性はあるかい?」

 

 もはや今日何度目かも分からない戦慄。

 

 確かに当然の疑問、ただあまりにも恐ろしくてその思考を無意識に避けていた。

 

 「その可能性はあるね。」

 

 返ってきたのは最悪の答えだった。

 

 「ただ、テュポーン級以上ってことはないだろうね、あれは完全に覚醒していたガイアが全力で創りあげたものだ。半分以上眠っていて、尚且つ迷宮に力のリソースを割いている現状で生み出せるものではないよ。偶々できて1000年人類を苦しめた迷宮が人類最大の希望ってのもおかしな話でけどねぇ。」

 

 聞き捨てならない言葉に慌てて尋ねる。

 

 「迷宮ができたのって偶然なんっすか!?」

 

 「そうだよ。ガイアが奈落に通じる大穴に封じられたとき、ガイアから少しずつ漏れ出た力が溜まってできたのが迷宮さ。だからガイアから離れる程、つまり浅い階層である程、モンスターは弱くなる。でなきゃ少しずつ敵が強くなるなんて生ぬるい仕様、ガイアが許すはずないだろう。」

 

 「は、はは・・・」

 

 地獄に例えられる迷宮が生ぬるいとは・・・。視線を向けると2人は納得したように頷いている。

 

 そしてこれまで一度も口を開いていなかった姐さんが手を挙げた。

 

 「ギガンテスと同様ににテュポーンも成長するのでしょうか?」

 

 どうしてそんなことを言うんすか?

 

 「あれは特殊でね。成体の状態で生まれ落ちたもんだから大きく成長はしないよ。

多分ね。」

 

 そこは嘘でも断定してほしかった・・・。

 

 「・・・10年前、どうしてゼウスとヘラは隻眼の黒竜に挑んだのかな」

 

 「分かってて言ってるんだろう。ガイアの覚醒が近いのさ。だから黒竜を倒し、誕生した最後の英雄達を旗頭に最古の女神との決着をーー終末戦争(エスカトルマキア)を世界に宣告する。それこそがゼウスが導き出した唯一の勝ち筋だったんだ。」

 

 静寂が場を支配する。

                                                   

 実を言えばライオネルは、この後【ロキ・ファミリア】と【ギルド】の連名の応援要請(・・・・・・)のために向かわなければならかった。

 

 太古の精霊の力を持ったモンスターにオラリオが消し飛ばされようとしていると言われれば、流石に無視するわけにもいかない・・・はずだったのだが、まさかそれが些事に思える程の危機が水面下で進行していたとは。

 

 「どうかしたのかい?ライオネル」

 

 ビクンと体を震わせた後、体を縮こまらせながら恐縮そうに話しだした。

 

 「実はですね・・・」

 

 

 

     

 「成程・・・」

 

 「話しておいて何ですが、お二人の力を借りずともこの程度の危機を乗り越えれなきゃ、戦争?が始まっても話になりませんよ。」

 

 これは本音だ。

 

 「いいや、君たちには悪いけどこの件利用させてもらおう。」

 

 「はい?」

 

 アトラは主神にまるで答え合わせでもするかのように問いかけた。

 

 「ラケシス。テュポーンと、そしてガイアの打倒には神々の協力が不可欠。

  そうだね?」

 

 「ああ」

 

 「そして気分屋の神々を、世界中から戦力として駆り立てるには、万神が称えるような偉業が要る。だろう?」

 

 「然り」

 

 「ならば、オラリオ救済を足掛かりに隻眼の黒竜を討ち、それをもって

 ――終末戦争(エスカトルマキア)の開戦の狼煙とする!」

 

 

 

 

 

 ・・・なんてことだ。

 

 ライオネルは畏敬に身を震わせる。

 

 これだからこの【ファミリア】を離れられなかったんだ。

 

 見回せばネフィリスは陶酔を、ラケシスは歓喜と悲哀の眼差しで見つめていた。

 

 たった一人の決意、ただその一人は世界を変える『力』を持っている。

 

 ライオネルは確信する。

 

 神々が渇望する未知の世界は、すぐそこまで迫っている。

 

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