コドクな軍隊   作:カオスセイバー

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よろしくお願いいたします!


プロローグ

□王都アルテア 獣魔師ギルド ホール・ライト

 

 

「むぅ、無いな」

 

 

 王都アルテアの従魔師ギルドの一角で俺は唸っていた。

 原因は目の前にあるジュエルだ。

 

 世間で〈Infinite Dendrogram〉が発売されて少し経ち、その圧倒的なリアリティと完成度で大きな衝撃を与え一大ムーブメントとなり、始めは様子見していたがゲーム好きの俺は頑張って手に入れようとして、第二陣の再発売を購入しようとしたが手に入れることが出来なかったのだが、友人の一人が始めたは良いが戦闘がトラウマになったらしく、もうしないからと売ってくれたのだ。(定価と同額)

 

 そうして〈Infinite Dendrogram〉を始めたのだが俺は今悩んでいる。

 

 俺はタワーディフェンスゲームやSRPGの様なゲームが好きなのもあって、事前に下調べした結果【従魔師(テイマー)】になろうと思ったのだ。

 

 〈Infinite Dendrogram〉はジョブと呼ばれる職業に就いてレベルを上げることで強くなれるゲームなのだが、その中で【従魔師】とは人以外の生き物、〈Infinite Dendrogram〉内で非人型範疇生物と呼ばれる動物やモンスターを使役、強化して戦うジョブなのだ。

 

 そして俺がいる従魔師ギルドは【従魔師】を含めたジョブの人間に仕事の斡旋やサーポート、それに【従魔師】のジョブに就くための設備があり、その中には当然初心者向けのモンスターを売っているのだが、今は在庫を切らしているらしいのだ。

 

 よく考えれば分かるのだが、俺が始める少し前から第二陣のプレイヤーがそれなりの数やって来ているのだ。

 フルダイブ型のVRゲームは〈Infinite Dendrogram〉以外にも存在こそしているものの、使用者への健康被害の発生等あり、実際にフルダイブ型のVRゲームをやるのは初めての人も多いだろうし、何なら俺もそうだ。

 一応初期開始地点となる国は七か国から選べることは出来るが、全世界で同一サーバーでやっている関係で下手すれば万に近い数のプレイヤーがこの地を訪れて、その中の一%でも百人、実際に体を動かして戦うのに不安があり、モンスターに戦って貰おうと考えれば、調べた限り此処アルター王国ならば【従魔師】か【召喚士(サモナー)】になるのが一番簡単であろう事も加味すればもっと多くの人が訪れていてもおかしくはない。

 

 そうして多くのプレイヤーが【従魔師】になればそれだけ初心者用のモンスターも売れるということだ。

 

 つまり、第二陣の出遅れである俺に売れるモンスターは残っていないのだ。

 

 一応金額的には買えるモンスターが無い訳ではないのだが、ここで〈Infinite Dendrogram〉のルールとして従属キャパシティなるものが存在する。

 

 従属キャパシティとはステータスの一種で、モンスターには種族とレベルを参照したコストがあって従属キャパシティのステータスの数値の範囲内でモンスターを戦闘に参加させられるのだ。

 一応従属キャパシティの範囲内に入って無くても戦闘に参加させることは出来るのだが相応のデメリットがあるのだ。

 

 だから最初は低い従属キャパシティ内に収まる程度のモンスターを連れて戦ってレベルを上げるのだ。

 

 そして、今買えるモンスターはそこそこレベルの【ブラックウルフ】が一頭だけいる。

 

 ギルドの店員さんの話では【ブラックウルフ】は【ティールウルフ】が進化したモンスターで初心者が戦うには無謀だが一対一で戦うなら合計レベル百以上の戦闘職なら問題なく戦える程度の強さらしい。

 

 普通なら初期の資金である五千リルでは買えないらしいとの事だがこの【ブラックウルフ】は老齢かつ戦闘での怪我で片目が見えなくなっておりこの値段との事。

 元の主人に捨てられた訳ではなく老衰で死亡して親族が居なかったらしく遺言でギルドに流れて来たとのこと。

 

 このまま買って【従魔師】になってしまうと従属キャパシティの範囲内を超えてしまうのだが、先程も言った通り従属キャパシティ以上のモンスターを戦闘に参加させる方法がある。

 それはパーティー枠を利用して参加させるという方法だ。

 

 たがこの方法にはデメリットがある。

 従属キャパシティ内で戦闘した場合、モンスターが獲得する経験値の半分は【従魔師】に流れるのだがパーティー枠を利用した場合は全てモンスターが獲得する。

 

 〈Infinite Dendrogram〉のシステムでは経験値は等分ではなく貢献度制であり従属キャパシティ内のテイムモンスターを強化して戦う【従魔師】でこのまま【ブラックウルフ】を買っても、ほぼほぼ俺が案山子位にしかならず貰える経験値も雀の涙程しか貰えない。

 

 腹案は幾つかあるがさて、どうするか。

 

□イースター平原 【指揮官(リーダー)】ホール・ライト

 

 結局俺は誘惑に勝てずに【ブラックウルフ】を買う事にした。

 

 ジョブの方は【指揮官】を選択した。

 このジョブは《部隊指揮》でパーティー枠を拡張したり、パーティーメンバーを強化するスキルが使える後衛よりのジョブではあるが戦闘系のジョブである為、そこそこのステータスの上昇も見込めるものだ。

 まぁ、器用貧乏な分どっちつかずな印象を受けるが色々と調べた結果、取り敢えずこのジョブに決めた。後、指揮官ってソシャゲの主人公っぽいってのもある。

 

「《喚起(コール)》黒曜」

 

 現在はレベル上げの為に、王都アルテアを出て直ぐのイースター平原と呼ばれているフィールドに出てきている。

 エンブリオが付いている左手とは別に買ったばかりの【ジュエル】が着い右手を掲げて、俺は購入したばかりの【ブラックウルフ】を呼び出す。因みに名前通りの黒い毛並みから、黒曜石にちなんで黒曜と名付けた。

 

 一応フィールドに出る前にスキンシップを取ってみたが、それなりに年を取っているからかとても落ち着いた性格の様ではあるが撫でると目を細めて嬉しそうにしていた。

 反応を見るに前の飼い主は中々に良い人物だったのかもしれない。

 

「ではこれからについての情報を共有したいと思います」

 

 これはゲームであって、黒曜は飽くまでも使役するユニットの一体でしかないが、正直既にこの〈Infinite Dendrogram〉がただのゲームとは思っていない。

 

 他の追随を許さない圧倒的なリアリティにゲーム内の時間を現実の三倍にする時間加速、全世界統一サーバーと他にもあるが、実際に体験して有り得ないの一言に尽きるだろう。

 正直このゲームは宇宙人が未知のテクノロジーで作りましたと言われた方がまだ納得出来る程だ。

 

 だが多くの創作等に出て来た完全なフルダイブ型のゲームを得体の知れないからと、このままやめるか? と聞かれれば俺はすぐさまにNOを突きつけるだろう。

 

 そして黒耀を含めてモンスターやNPCに高い知能があるのなら情報の共有はきっと戦闘をスムーズにするだろう。

 

「基本的に戦闘は俺が戦いつつ、黒曜は周囲の警戒と俺がピンチの時や相手の数が多い場合に参戦する方向で俺のレベルを上げをメインにやっていこうと思います」

 

「ワフ」

 

 理解しているのかどうかは分からないが、こうやって話の区切りでしっかりとした相槌があるとありがたい。話を聞いてるかどうか微妙な態度で適当な返事をする人間より余程素晴らしい。

 

「よし、それじゃあ早速行ってみよう」

 

 尚、結果から言うと上手く行かなかった。

 

 初期装備の特に能力のない鎧と槍で【リトルゴブリン】と戦ったのだが散々だった。

 戦闘経験のまったくない一般人がちゃんと戦えるはずがなかった。

 

 これが【剣士(ソードマン)】や【戦士(ファイター)】の用な純戦闘職ならまだ最初からセンススキルと呼ばれるシステムアシストのあるスキルを習得出来てそれなりに戦えたのかも知れないが残念ながら【指揮官】の初期のスキルにはない。

 

 へっぴり腰で放つ突きは当たらず、最終的に内側に入られた所で横から黒曜が【リトルゴブリン】に体当たりをしてそのままHPがゼロになったのか光の塵と化した。

 

「ありがとうな、黒曜」

 

 助けてくれた黒曜にお礼を言いつつ、アイテムボックスからご褒美としてジャーキーを取り出して与える。

 

 ゆっくりと噛んで味わいながら食べる黒曜を眺めつつこれからについて考える。

 すなわち、このまま戦闘を続けるかどうかだ。

 

 一度戻って別の戦闘系のジョブに変えてから出直してくるか、そのまま今の【指揮官】のままレベル上げを続けるかどうか。

 

「まぁ、何とかなるだろ」

 

 少し考えた末に、俺はそのまま続けることを選んだ。

 先程の戦闘で黒曜なら【リトルゴブリン】位なら簡単に倒せるのだから、このまま続けても問題ないだろと判断した。

 

 とは言え、このまま先程と同じ様に戦って苦戦するのが目に見えているので戦い方を変える必要があるだろう。

 

 そう考えながら次なる獲物を探しだし一体で行動している【リトルゴブリン】を見つけた。

 

「じゃあ、黒曜は警戒頼むな」

 

 返事はなく、黒曜は何となく呆れた顔をしているような気がする。

 

「実際に戦ったことがないのに賢しく戦おうとかするから駄目なんだよな。戦い方も知らない、訓練とかして基礎を作っているわけでもないんだから先ずはガーと行ってバーンってやってそれから色々と試して試行錯誤して最適解を探して行けばいいんだよ」

 

 これは俺のタワーディフェンス系のゲームにおける信条だ。

 好きなキャラを使ってどうすれば攻略出来るのか試している時が一番楽しい。

 何かしら一番を目指している訳ではないのだから時間がかかってもやりたいようにやるのが一番なのだ。

 

「なので、どっせーい!」

 

 近づいてきた【リトルゴブリン】に対して槍の石突きのギリギリの部分を掴んで横方向に振り回す。

 

「ギャア⁉」

 

 予想外だったのかは分からないが、避けられなかった【リトルゴブリン】の首に槍はクリーンヒットし、メキャメキャと生物が出しては行けない音を出しながら転がっていき光の塵と化した。

 

「ヨシ!」

 

 ドロップした素材を拾いながら思う。

 小柄で特別早いわけでもない【リトルゴブリン】なら槍で突くよりも振り回す方が戦いやすい。

 勿論、大振りな攻撃はそれだけ反撃を貰いやすかったりするが、今の段階なら黒曜からフォローで充分に対処可能だろう。

 

 【指揮官】が憶えるかは把握していないが槍のセンススキルである《槍術》を習得すれば戦い方を変えても良いだろう。

 

「ガンガン狩って行こう!」

 

「ワフ」




さぁ、あらすじを読んだ皆、もしよろしければ皆も下の活動報告に性癖を詰めた非人型範疇生物(モンスター)を書いてくれるともしかしたらストーリーに出てくるかもしれないぞ。
種族、容姿、能力の方向性を書いてくると私が喜びます。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=334174&uid=150679
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