□イースター平原 【
あれから休憩を挟みつつ幾つかレベルを上げた。
【リトルゴブリン】相手なら二体までなら大振での一撃で倒せるから問題ないが、それ以上だと倒せなかったり力が足りなくて途中で止まったり、他のモンスターである【パシラビット】だと結構簡単に避けられるので、数の多いときは黒曜にも倒させたり、【パシラビット】は小突いて貰って動きを止めてからから槍で突いたりして倒した。
スキルに関してはパーティーメンバーのSTRを上げる《パーティーブースト・パワー》とパーティーメンバーの全てのステータスを強化する《部隊強化》を習得した。
《パーティーブースト・パワー》はアクティブスキルで、パッシブスキルの《部隊強化》よりも強化率は高いが、その分MPの消費が結構高く気軽には使えそうにない。
《部隊強化》はDEXとLCU以外のSTR、END、AGIの三種のステータスを上昇させるが《パーティーブースト・パワー》と比べると強化率その物は低いが常に発動している。
どちらも倍率の強化なのでレベルが低くステータスが低い、俺への強化はかなり微妙であるが黒曜はレベル三〇を超えており、STRは二〇〇をAGIに至っては三〇〇を超えているので俺よりも強化の影響が多いだろう。
そんなこんなでデンドロを楽しんでいたら、とうとう俺のエンブリオが孵化した。
左手の甲には禍々しい壺とその口から出る虫や動物の絵が付いていた。
エンブリオ。
この〈Infinite Dendrogram〉の目玉のシステムでありプレイヤーの行動や内面に対応してそれぞれ独自の能力を持つ武器やアイテム、モンスターに乗り物、果ては建物まで多種多様なオンリーワンな能力を得られるとのことだ。
ネットでも話題になり能力開示している人は流石に極少数だったが、装飾の施された格好いい武器は愛らしいモンスターの画像が上げられており、俺もどんな能力を得られるかとワクワクしていた。
【創造壺 コドク】
TYPE:アームズ
到達形態:Ⅰ
ふむ、名前を見る限り壺のようだ。てっきり俺がやりたい事を考えるとガードナータイプのエンブリオが来ると思ったのだが、どうやらアームズのエンブリオのようだ。
ネットとゲームを始めるのチュートリアルで聞いた情報では大まかに五種類のカテゴリーに分かれるらしい。
先ずは俺のエンブリオと同じプレイヤーが装備出来る武器や道具型のTYPE:アームズ。
プレイヤーを護衛するモンスター型のTYPE:ガードナー。
プレイヤーが搭乗できる乗り物型であるTYPE:チャリオット。
プレイヤーが居住できる建物型であるTYPE:キャッスル。
プレイヤーが展開する結界型であるTYPE:テリトリー。
この五つに上位カテゴリーやレアカテゴリーと呼ばれる物があるらしいが始めたばかりだし俺にはあまり関係ないだろう。
しかしコドクか。
コドクと言えば中国の呪術である蠱毒が思いつくが多分合っているだろう。
蠱毒とは沢山の毒を持つ虫や動物を壺の中に入れて殺し合わせて、最後に残った一匹がより強力な毒を持ち、それを操り対象を毒殺する呪術だ。
そこまで一般的な知名度があるわけではないが、サブカルチャーを履修していれば結構出てくるので知っている人は知っている位の知名度かな?
名前の前半に創造とか壺とか着いているから間違っていないだろう。
取り敢えずコドクを出してみる。
左手の甲から現れたのは一mを超える装飾の無い大きな壺だ。
下の部分が少し細くそこから徐々に太くなり口の部分が少し細くなっている。
中を覗いて見ると真っ暗で中は見えなかった。
外見を見たので次はスキルを確認してみる。
《呪力を貯める壺》
常時自身のHPとMPとSPの上限の1割を吸収し貯蓄する。
また保有するHPとMPとSPを指定した数値分を特定のスキルに投入可能。
《素材を入れる壺》
モンスターの素材アイテムに限りアイテムボックスとして機能する。
《蠱毒生成》
《素材を入れる壺》に入っているアイテム一○○個と《呪力を貯める壺》に貯めたHPとMPとSPを使って蠱毒を行う。※以下ヘルプに続く。
三つのスキルに《蠱毒生成》は更に幾つかヘルプで説明があったのだがそれを読んだ感想は、これガチャだ! だった。
より正確に言うなら、某艦隊擬人化ゲームの建造に近い物だろう。
《呪力を貯める壺》は《蠱毒生成》を発動する為のエネルギーを貯蓄するスキルでこのスキルのお陰で今の俺のHPとMPとSPが九割になっておりステータス上だと一割は黒くなっているが、スキル欄の《呪力を貯める壺》ではかなりゆっくりだがHPとMPとSPが増えていっている。
《素材を入れる壺》はモンスターの素材アイテム限定のアイテムボックスだ。容量は%表示になっていてたので、取り敢えず今までにドロップしたアイテムであるゴブリンの腕とか足とか骨を入れたのだが表示が一%だったので、かなり容量が有りそうだ。
そして二つのスキルで貯めたコストを使って蠱毒を行いモンスターを作り出す。
コストとして投入した一○○個の素材アイテムにHPとMPとSPを注ぎ一○○体の簡易モンスターを作り、殺し合わせて最後に残ったモンスターは晴れて蠱毒種なるモンスターとして生まれ変わるそうだ。
そしてこのスキルはモンスターを作るまでで、テイムする機能はなく最後に俺自身が壺の中に入って、産まれたばかりのモンスターをテイムする必要があるようだ。
この際、入れるのは俺と従属キャパシティ内のモンスターとパーティーメンバーは一緒に入れるようだ。
「うーん、まぁ取り敢えずは様子見かなぁ」
色々と検証したりしたいが、スキルの性質上として多くの素材となるアイテムが必要ではあるが、まだ始めたばかりの俺ではアイテムも足りなければHPとMPとSPも足りないので、先ずはレベル上げをしつつアイテムを集めしていこう。
他にプレイヤーやティアンとの交友だろうか。
作られたモンスターをテイムする際に戦闘が発生する可能性を考えると手伝ってもらえるとかなり楽になるだろう。
倒すだけならそこまでではないだろうが、某RPGの様に倒してしまえば仲間になる訳ではないようなので無力化するなら相応の戦力は必要になるだろう。
取り敢えず先ずは、スキルの性能を確認する為にも【リトルゴブリン】の素材を千位は確保したいところである。
同じ様な条件で性能に違いが出るのか? HPとMPとSPの量も調整出来るようなのでそれによる違い等と検証する項目は多くありそうなので楽しみではあるが素材の量を考えると軍団を作るには時間がかかりそうだ。
「しゃー!ゴブリン狩りまくるぞぉ!」
兎にも角にも、モンスター素材を集めないことにはスキルを使う事さえ出来ないのだから、レベル上げ兼素材集めを再開する事にしよう。
幸先よく目の届く範囲にいた【リトルゴブリン】に突貫する。
「死に晒せぇ!……あ!!!」
先程までと同じ様に大振りで振るった槍は【リトルゴブリン】を捉えたのだが、それと同時に槍は当たった場所を中心に二つに折れてしまった。
「ノォォォォ!? な、何で! 初期装備とは言えこんなに早く壊れるものなの!?」
後で分かったことだが、大振りで鈍器の様に扱ったのが問題だったようだ。
普通に穂先や石突を使うならまだしも、特別な加工をしていない槍の柄部分で殴るのはかなり耐久度を減らしていた様でこの短時間で折れてしまった。
「ワン……」
心なしかコチラを見つめる黒曜の目が生温い気がする。……いたたまれない。
「武器……買いに行くか」
そうして俺は武器を買うべく、アルテアに戻って行った。