コドクな軍隊   作:カオスセイバー

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【ゴブリンファイター・蠱毒種】

□ノズ大森林 空き地

 

「これ、ライトの趣味?」

 

「いや、違うわい!」

 

 先程終わった、三回目の《蠱毒生成》にて生み出されたモンスターを見てエリザは開口一番にそう言った。

 

 今回は使った素材は一回目や二回目と大差ない質の物だが、HPとかを入れられる最大値で入れた為か最初のインスタントモンスターの時点で通常の【リトルゴブリン】と大差ない見た目と体格の物だった。

 

 それ自体は想定の範囲内であったが、予想外が起きたのは蠱毒が終わった後だ。

 最後の一体になった【リトルゴブリン】が進化したのか大きく見た目が変化したのだ。

 

 進化かどうかは分からないが戦闘の後に大きく体格等が変化したのできっと進化したのだろう。

 

 何故進化したのかは、今後の検証対象として調べればよいとして、問題はその姿だ。

 

 普通、【リトルゴブリン】の進化は【ゴブリン】で憶えているスキルによってはファイターとかマジシャンにライダーの様な種族に進化するのだが、あくまでもゴブリンであり体が大きくなるだけで、その容姿にはそこまでの変化はないのだが今回の進化はそうではなかった。

 

 身長は【リトルゴブリン】との比較になるが、おおよそ一五〇センチ程でゴブリンに良く居るような腹の出た猫背ではなく、スラッとした体ながらもしっかりとした筋肉が付いており戦う者の風格が出てある。

 顔つきもゴブリンではなく人間に近いもので身長相応の顔つきで、セミロングの真っ白な髪が無造作になっている。

 

 そして性別はメスだ。

 

 スラッとした肉体にあった程好い膨らみが何処から出てきたか分からない粗末な布切れで隠されており、筋肉や無造作になっている白い髪で神秘ささえ窺える。

 

 肌がゴブリンの緑でなければエルフと間違えてもおかしくない容姿だ。

 

 つまり、エリザはこの少女と女性の中間の様なゴブリン(仮)の容姿は俺の性癖だとか抜かしたいわけだ。

 

 そんな訳あるか!

 

 いや、別に美少女が嫌いな訳ではないのだが、俺はカッコイイも可愛いもケモもイケるのであって、って違う違う! そうじゃない! 《蠱毒生成》においては容姿の指定は出来ないし、仮に俺の性癖だったとしても、それなら一回目と二回目がそうでなかった理由は説明出来ないだろう。

 

 途中で「えっ、ゴブリンもイケるの?」と更なる誤解を受けかねなかったが何とか俺の性癖でないと納得して貰った。

 

 いや、それにしてもあれは良い筋肉してるな。

 

 そうして俺達はエンブリオの中に入った。

 

「ゲェアアアアア!」

 

「速っ、がぁ!!」

 

「ライト!」

 

 中に降り立つと同時に少女の様なゴブリンは先手必勝とばかりに一番近くに居た俺に襲いかかってきた。

 振るわれる拳に何とか槍を合わせてガードするも、その上から槍毎吹き飛ばされる。

 

 吹き飛ばされる前に一瞬だけ見えた種族は【ゴブリンファイター・蠱毒種】であった。

 いや、俺の調べた限り【ゴブリンファイター】はあんなに人間っぽくないのだが、エンブリオのせいなのだろうが決して俺の性癖ではない。

 

 ガードの上からでも二割以上減ったHPに戦慄しつつ状況を確認する。

 

「セイッ!」

 

 エリザの掛け声と共に放たれる槍の突きを【ゴブリンファイター・蠱毒種】は大きく跳んで躱し、そこから追撃する黒曜の体当りも同じ様に躱して俺からかなり距離が離れている。

 なので俺は落ち着いてアイテムボックスからポーションを取り出してから飲み干して回復する。

 

 HPが回復したことを確認して戦闘に復帰する。

 

「すまん、油断した」

 

「ライト、こいつかなり強いから」

 

 槍を構えながら謝るとエリザは【ゴブリンファイター・蠱毒種】から目を離さずに言った。

 

「どんな感じ?」

 

「特殊なスキルとかなさそうだけど、兎に角普通のゴブリンと比べて速いし力強いでステータスが高いわ。

 少なくてもフィジカルは全部こっちの上をいってると思うわね」

 

 答えながら突き出されたエリザの槍を【ゴブリンファイター・蠱毒種】は跳んで躱してそのままエリザに襲い掛かるが、横から跳んで来た黒曜が腕に噛み付きそのまま軌道がそれてエリザへの直撃は免れる。

 俺はそのまま着地を狙って攻撃しようとするが、腕に噛み付いた黒曜をあっさりと引き剝がし俺に投げ飛ばして来た。

 

「うわっ!?」

 

 投げ飛ばされた黒曜を咄嗟に受け止めるが、勢いを押し殺せずに尻餅をつく。

 

「ギャァア!」

 

 そこに追撃を仕掛けようとしてくるので隠し持っていたアイテムを投げる。

 

「《ファイアーボール》」

 

 投げたアイテムを起動させるワードを唱えると火の玉が出現する。

 全くの予想外の現象に【ゴブリンファイター・蠱毒種】は避けることが出来ずに火の玉もとい《ファイアーボール》突っ込み火達磨になる。

 

「ギィヤアァァァアアア⁉」

 

 俺が投げたアイテムは【ジェムー《ファイアーボール》】。

 設定されたワードを唱えることで《ファイアーボール》の魔法を使う事が出来る、使い捨ての攻撃アイテムだ。

 

 そこそこの値段がするが想定より強いモンスターが出来た場合に備えて幾つか準備したが上手く使えた様だ。

 

 受け止めた黒耀を降ろし構える頃には火も消えて、警戒しているのか距離を取ってこちらの様子を窺っている。

 

 変だ。

 

 火達磨になったので【ゴブリンファイター・蠱毒種】の纏っている布切れが無くなっていない。

 多少燃えて布の面積が少なくなっているがそれでもまだ健全と言って差し支えない状態だ、もっとサービスしろこの野郎!

 

「で、コイツどうするのライト」

 

「出来る事ならテイムしたい」

 

 エリザに聞かれたら全力でドン引かれそうな事をおくびにも出さずに聞かれた事に答える。

 

「あの強さをただ経験値に変えるのは流石に勿体なさすぎる」

 

「本当に勿体ないだけ? 他にも理由あんじゃない? 例えば、あの子が可愛いからとか」

 

「そんな訳ないだろ」

 

 図星である。

 

「今の時点で俺や黒曜よりもステータスが高いとかテイムしない理由はないだろ。

 まぁ、テイムが難しい時は遠慮なく倒しても良いけどな」

 

「まぁいいけど、それでさっきの【ジェム】みたいな隠し玉とか何か作戦とかあるの?」

 

 それっぽい理由を並べて納得してもらえたようだ。

 

「さっきの《ファイアーボール》とは別の拘束系の【ジェム】があるからそれで動きを封じればテイムのチャンスも出来ると思う。

 ただ、今の攻防でかなり警戒してるみたいだから、何とかして隙を作らないといけないから前衛よろしく」

 

 地属性の魔法である《マッドクラップ》という地面を泥沼化して動き阻害する魔法の【ジェム】を使って動きを止めればテイムする隙も出来るだろう。

 ただ、必要ではあったが今の攻防で一度使ったのもあり警戒している様で、距離を取って警戒しており簡単には行かないだろうから、相手のステータスを考えると前衛を務めるエリザにはかなりの負担になるだろうが。

 

「ええ、いいわよ。ただし終わったら黒曜ちゃんを一時間はモフリ倒すからね!」

 

 そう言ってエリザはこちらの返事を聞かずに【ゴブリンファイター・蠱毒種】に突撃して行った。

 

「クゥーン」

 

「まぁ、頑張れ……」

 

 黒曜が悲しそうな顔をして鳴いているので励ますと、恨めしそうな表情をしたのでジャーキーを与えてご機嫌を取ってから戦闘を再開する。

 

 

「《パーティーブースト・パワー》」

 

 現状は前に出たエリザがメインで戦い、黒曜が牽制し、俺は【ジェム】を持ってタイミングを見計らう。

 

 一応見ているだけではなく、【指揮官】の強化スキルでエリザ達を強化しているので置き物にはなっていないはず。

 

 戦闘はエリザにかなり負担をかけた状態で進んでいる。

 

 基本的なフィジカルのステータスが高く動きが速いのもあって、戦闘の主導権を相手が握っている為にかなり押されている。

 

 武器を持って無いためリーチが短い事と、先程受けた《ジェム》での攻撃を警戒してか攻め自体は消極的なのがプラスの要素だろうか。

 

 それでも前に立って戦っているエリザは直撃こそは無いものの、かなりのダメージを受けている。

 俺であれば五回位は全損する程のダメージを受けているだろうにパーティー画面に表示された彼女のHPは八割を下回っていない。なんなら今もHPのバーは増えている。

 

 これが彼女に前衛を任せた理由であり、彼女のエンブリオである【吸血槍 カーミラ】の能力だ。

 

 typeアームズのエンブリオであるカーミラの教えてもらった能力は主に二つ、吸血と回復だ。

 

 槍の穂先で攻撃した際にHPというか血を吸収する《吸血》と血をHPに変換して回復する《血液変換》を使って回復しながら戦える、とても頼りになる前衛だ。

 

 相手が格上ではあるが消極的な攻撃のお陰で戦闘に時間が掛かり、その時間の分だけ《血液変換》で回復しているので戦闘を続けられている。微力ではあるが俺や黒曜の牽制も効いているとは思う。

 

 そうして攻撃しているのに倒れないエリザに対して【ゴブリンファイター・蠱毒種】は焦りを見せ始めている。

 

 俺の《ジェム》等を警戒して緩急だったり、こちらを気にした状態から、どんどんと荒っぽく、そして直線的な動きになっていく。

 

「《フラッシュ》《マッドクラップ》」

 

 そうしてタイミングを見計らい二つの【ジェム】を使う。

 

 一つは《フラッシュ》。

 光属性の魔法で効果は単純で、一瞬だけ強力な閃光を発する、所謂フラッシュグレネードの様な魔法だ。

 直接的なダメージを与える魔法ではないが、強い光りは相手の目を焼き、一時的な失明状態する。

 ちなみに、使う時に閃光とエリザの間に入っているので、眩しくはあるが直接は光りを受けていないばず。黒曜は既に戦術として共有と実践しているので受けていないが、一回目は失敗したのもあって噛まれた。

 

 二つ目は既に説明した《マッドクラップ》。

 閃光が止んで確認すれば発動した魔法しっかりと効果を発揮して【ゴブリンファイター・蠱毒種】の動きを阻害している。正直、エンブリオの内部でちゃんと発動するかは気がかりであったが、問題なく発動して一安心である。

 

 【ゴブリンファイター・蠱毒種】が動けないのを確認してアイテムボックスから【ジョブクリスタル】を取り出して使用しメインジョブを【従魔師(テイマー)】に変更する。

 

 【ジョブクリスタル】はメインジョブをサブジョブと入れ替えられるアイテムで、デンドロのシステムとしてジョブで覚えるスキルは、大まかにどのジョブをメインにしていも使える汎用スキルと特定のジョブをメインにしていないと使えない系統別スキルに分別され、モンスターを仲間にするスキルである《テイム》は【従魔師(テイマー)】系統の様なモンスターを使役するジョブでなければ使えない。

 

 テイム自体は思ったよりも簡単に出来た。

 最初こそは警戒されていたが、従魔師ギルドで餌付け用に使われるという肉を食わしたら一発で懐いた。

 恐るべし、何か怪しい成分入ってない?

 

 何は兎も角、無事テイム出来たので俺達はコドクの中から脱出した。

 




布が無くならいのはコドクのさり気ない気遣いです(適当)
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