□サウダ山道 【
アルター王国の南に位置するサウダ山道にて俺は戦闘を行っていた。
決闘都市ギデオンへ向かう主要な街道から外れた山道で俺の目の前ではゴブリン達が争いあっていた。
片方はこのサウダ山道に生息するゴブリン。
リトルゴブリンから進化したであろう、レベルが一〇から一五位の個体が十体を超えて三十体に迫るほどの数が棍棒や錆の浮いた、手入れのされていない剣や斧を手に、こちらに迫っている。
迎え撃つは、こちらもゴブリン。
ただし、《看破》のスキルを使えば種族名の最後に蠱毒種なる、通常の個体とは異なる名が付いた、則ち俺のエンブリオであるコドクによって産み出されたテイムモンスター六体とその少し後ろに控える俺と黒曜だ。
初めてエンブリオを使用して翡翠をテイムしてからリアルで一ヶ月、ゲーム内で三ヶ月が経って更に五体の蠱毒種のモンスターをテイムした。
色々と検証とかもしたので作ったモンスターはもっと多いが良さげな奴以外は経験値に変えて今の俺のレベルは【指揮官】四九と【
テイムスキルが【従魔師】でないと使えない関係で普段は【指揮官】のレベルを上げつつコドクを使う時は【従魔師】に変えたりしたのでどちらも中途半端になっているが【指揮官】はそろそろカンストするだろう。
そういう訳で、新たな仲間達を紹介しよう。
先ずはゴブ郎。
翡翠と同じ様にリトルゴブリン素材100%にHPMPSPをマックスまで投入して造られた個体。
種族は翡翠と同じく【ゴブリンウォーリアー・蠱毒種】であるがこいつは翡翠の様に人間の見た目ではなく普通のゴブリンの容姿だ。因みに性別は雄。
ステータスは翡翠と比較して二割程低いので素材の質による差は結構大きそうだ。
ゴブ郞は前衛で大きめの盾とメイスに革鎧(全て安物)を装備して盾役として活躍してもらっている。
二体目はゴブ次郎。
こいつも【ゴブリンウォーリアー・蠱毒種】であるが敢えてMPだけを少なくした状態で造った個体だ。
MPを少なくしてSPを多くするとフィジカル高めになる様でSTRやENDが高くなる傾向にあるようだがMPがかなり低くなっている。
こいつもオスで体格だけなら一番よく両手斧(安物)でアタッカーをしてもらっている。
三体目はゴブ弓。
彼は名前が示す通り【ゴブリンアーチャー・蠱毒種】なんだがコイツはなんと生まれた当初から弓を持っていた。
調べた限り普通は【リトルゴブリン】とかの前段階から弓を使い《弓術》のスキルを獲得する等の条件を満たすと 進化するらしいが別に最初から弓を持っている訳でもないので謎だ。
多分使ったアイテムの中に《弓術》のスキルを持ったゴブリンのドロップアイテムがあったのではないかと思うが真偽は不明だ。
四体目はゴブ
コイツは【ラビットゴブリン・蠱毒種】。
【リトルゴブリン】と【パシラビット】の素材で生まれた個体で体のベースはゴブリンであるが長い耳や濃い目の体毛等のウサギの特徴が随所に出ており、ステータスも比較的にAGIが高めになっている。
最後にゴブマジ。
【ゴブリンメイジ・蠱毒種】でなんと魔法攻撃が可能な貴重なゴブリンだ。
SPを少なめにしてMPを多くするとMPを使うスキルを覚える傾向にあるらしが、その分ステータスその物は低めになっているが、それを差し引いても魔法攻撃は強力なので十分お釣りが来る性能だ。
馬車が二台通るには厳しい山道の上でゴブリン達が争い合う。
前衛のゴブ郎とゴブ次郎が相手を抑える。
とは言えゴブ郎とゴブ次郎の二体にはヘイトを管理するスキルはないが道がそこまで広くないのもあって声を上げているだけで注意を引けている。
盾を構えて耐えるゴブ郎と斧を振り回すゴブ次郎と対照的な二体に対して防御するゴブ郎の方にゴブリン達が集まるが、山道の狭さのお陰で囲われることなく戦えている。それでも横をすり抜けようとするゴブリンに対しては遊撃のゴブ兎とゴブ弓が牽制して深入りさせないようにする。
「そろそろかな、ゴブマジあのゴブ郎の後方に集まっている所に《ファイアーボール》」
「ゴブ、ゴブゴブゴーブ、ゴブゴーブ!」
《ファイアーボール》
俺の指示を聞き、何かよく分からない呪文を唱えたゴブマジから放たれた火球は山なりに投下され、指示しただいたい所に着弾と同時に爆発する。
「たーまやー」
それなりの衝撃を伴った攻撃は、まだ殆どダメージを与えていなかったのもあって倒せてはいなが多くのゴブリンに大きなダメージを与えている。
今ゴブマジが使った魔法は《ファイアーボール》。
炎属性の最初に覚える魔法で特別に火力の高い魔法ではないが今回は2つのスキルで強化した結果がこの光景だ。
一つ目は《号令》
【指揮官】のアクティブスキルでパーティーメンバーを一人選んで発動すると次に使うスキルが強化される。
二つ目は《詠唱》
魔法スキルを発動する前に追加のMPを消費することでスキルを強化するスキルだ。
今回はほぼ全てのMPを注ぎ込んで効果範囲の拡大に当てている。
この2つの強化で通常のスキルもりも多くのゴブリンにダメージを与えている。
「一気に畳み掛けるぞ!《
ここで切り札となる翡翠を投入する。
最初から戦闘に参加させても良いが、翡翠は手持ちのモンスターの中でも強さが頭一つ抜けている。
デンドロの経験値獲得は均等割りではなく貢献度制になっているので、最初から戦闘に参加させると経験値の大部分を吸われて、俺を含めてレベルアップが遅くなるのでタイミングを見て投入させるようにしている。
それに余りに実力差があると今回の様なゴブリンの群れとかだと途中で逃げられたりする事があるので強い奴はジュエルに入れておく方が良かったりするのだ。(5敗)
召喚され俺からのバフを受けて飛び出す。
軽鎧に剣と小さめの盾(そこそこのお値段)を持った翡翠は颯爽とゴブ郎とゴブ次郎の間をすり抜けて、更にゴブリン達の間もすり抜けていく。
「ゲギャア」
そうしてすり抜けた後に反転してゴブリン達の剣を向けて一声鳴くとそのまま襲い掛かる。
今まで数を頼りに攻めていたゴブリン達が今度は多くが負傷している状態で挟み撃ちな状態になり混乱する。
元々指揮官個体がいない事もあり、統率が取れていなかった彼らはバラバラに行動し始める。
多くが一人しかいない翡翠に向かっていくが、彼女の強さを感じ取ってか、破れかぶれでこちらに向かって来るもの、どうしたら良いか分からずに狼狽えるものと反応が分かれるが手加減する理由はないので経験値になってもらおう。
「ゴブ郎は防御継続、敵を後ろに通すな! ゴブ次郎は前に出て殲滅しろ! ゴブ兎とゴブ弓はそれぞれゴブ次郎の援護をしつつ倒すの優先! ゴブマジは俺のそばで肉盾な」
「ゴブ!?」
俺の指示にそれぞれ動きつつもゴブマジが驚愕の声を出す。……仕方ないじゃないか、先程の攻撃でゴブマジのMPは殆ど尽きているのだから。MPのない魔法職に置物以上の価値はないのだ。
弁明させて貰えるならば、俺が死んだら全員ジュエルに戻って戦闘終了になってしまうが、テイムモンスターは設定すればHPが設定値以下になった際に自動でジュエルに送還される仕組みになっているから、同格のゴブリンなら余程のことがない限りは今の状態から全損しないから万が一の保険として近くに置いておくのだ。
そう心の中で釈明している間に戦闘は進んでいく。
今は簡単な指示ならちゃんと言うことを聞いて戦ってくれるがテイムしたばかりは、言うこと聞いてもらえないというか理解してもらえない事があり、戦闘の前に教育する必要があり中々レベル上げが捗らなかった。
教育の為に色々と本を買ったが、一番役に立ったのはゴブリンでも分かるテイマー指南書と同じくゴブリンでも分かる戦闘指南書で専門用語が少なく分かりやすくゴブリンにも教えやすかった。
今後はもっと複雑な指示を出して包囲殲滅とか釣り野伏せとかしたいな。
俺の指示を受けたゴブ郎達は指示通り戦っていくが、翡翠の方はと言うと圧倒的だ。
既にゴブマジの魔法でHPをかなり減らしているとは言え向かって来るゴブリン達を一、二回攻撃するだけで倒していく様は圧巻だ。
翡翠の戦い方はスピードに物を言わせて、相手よりも速く動き攻撃を受ける前に倒すか離脱するヒット&アウェイ。
俺のテイムモンスターのメンバー内で比較するとゴブ兎以上のスピードでゴブ次郎よりも力強く、防御力もゴブ郎以上のトンデモスペックだ。
更にはこれまでのレベルアップの結果、《剣術》を含む幾つかのスキルを獲得した事で動きの切れが増している。
剣を振る一撃でゴブリンを倒すと、返す刃で更に一体。そこを好機と捉えて突っ込んでくるゴブリンを今度は逆の腕に装着している盾の縁で殴り飛ばしてから、そのまま頭を踏み潰す。
瞬く間に三体がやられて二の足を踏めば、今度は翡翠の方から襲いかかる。
剣を振り、盾で殴り、蹴り飛ばす。
とてもお上品とは言えない
そうこうしている間にゴブリンとの戦闘は終わっていた。
俺自身は直接戦っていないが、コドクの能力とかを考えるとサポートととか、バッファー方向に能力を伸ばしたいなとは思っている。
なので【指揮官】がカンストした次のジョブは指揮官系統の別のジョブかドロップアイテムが増える《解体》のスキルを獲得出来る【
それから何回か戦闘をして【指揮官】がカンストしたので休憩をしている。
それぞれ食べながらリラックスしてもらってる。
基本的にみんなジャーキーだがゴブ兎だけはパシラビットの特性なのか人参スティックを齧っている。
「えー、皆さんに重要なお知らせがあります」
ある程度、休憩してから俺は切り出した。
とは言っても、俺の声に反応してくれたのは黒曜とゴブマジの二体だけで残りは食べる方を優先している。
まぁ、この辺の俺の発言は口に出すことで自身の思考を整理する意味合いが大きいのでそこまで真剣に聞いてもらえなくても問題ないが、ゴブマジは魔法使いだからか。、翡翠やゴブ郎とかの他のゴブリンよりも賢いのか性格なのかちゃんと話を聞こうとしてくれる。
黒曜? 彼はレベルこそそこまで高くないが経験豊富なので、ゴブリンの百倍は賢いです。
「このままですと我々は金欠で破産いたします」
「ゴブゥ?」
俺の発言に黒曜は黙って聞いてくれて、ゴブマジはよく分かってなさそうな顔をしている。まぁ、ゴブリンに破産の概念なんてないだろうし仕方ない。それに翡翠を含めた他のメンツは聞いてすらないしな。
それで金欠についてだが、流石に今すぐ破産ということは無いのだがこのままいくと遠からずそうなってしまうかもしれない程度の懸念だ。
現状に置いて、収入は倒したモンスターのドロップアイテムの売却のみになるのでが、ドロップアイテムの内モンスター由来の素材はコドクの《蠱毒生成》に使用する為にとっておいているので、それ以外の不要な装備品等になっているので倒した数ほど稼げていない。
それに今俺が狩場にしているエリアはマスター増加の影響でドロップアイテムの流通が増えていることがあり値下り気味で余り美味しくない。
更に俺は既に五体以上のテイムモンスターを連れており、その為に相応の食費に装備品やそのメンテナンス費用が掛かり所持金は緩やかにであるが減りつつある。
これが一般的なマスターであれば、食費は自分の分だけで更に武器のエンブリオであれば、最悪は防具がなくてもエンブリオだけでどうにかする事が出来るが俺はそうも言ってはいられない。
一応モンスターを入れるジュエルには時間を停める機能もあるのである程度数が増えても劇的に食費は上がらないが今のままでは手持ちのモンスターを売らねばならなくなるだろう。
エンブリオで作った変ったモンスターなのでそれなりに高く売れるだろうが、ゴブリンとは言え一緒に戦った仲間を売るのは少し躊躇われる。
正直言って現実と遜色ないこのデンドロが普通のゲームと言うには無理がある以上は、後々後悔する選択は取りたくない。
まぁ、最悪売るなら相場としては【ゴブリンメイジ】が頭一つ抜けているのでゴブマジになるだろう。
「ゴッブゥ!?」
翡翠もかなりの値が付くだろうが、流石に現状は彼女の代わりはいないので売るのは無しだ。
その上で掲示板やティアンへの聞き込み等で金策の手段模索して幾つかのプランを建てた。
「そう言う訳で明日からは<旧レーヴ果樹園>に行きます!」
前書きに続きストックが切れましたので次からは不定期更新になります、ご了承ください。