アリウスと原罪   作:パエリアさん

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ストーリーがすすまんよ〜。…早く、早くスバルを実装してくれ!!






第11話 双翼

暗く、冷たい雰囲気の部屋で、俺は『先生』の写真を見ていた。恐らくその目は、他の人から見ると狂気を感じる目であっただろう。しかし、俺から言わせてみればそれは普通だ。腹が減ったら食べたいと思うぐらいに、普通の欲求であった。

 

しかし、それが他の人から見たら普通ではないのだとしたら、それは特別なのであろうか?そうであったら、どれだけいいことか。

 

俺は、丸いのが嫌いだ。なぜなら、それじゃなんにもならないから。丸いと、転がってしまう。丸いと、必要な隙間に入れない。それが、どうしても嫌で、嫌で、たまらなかった。

 

だから、俺は尖ってるのが好きだ。それが、人生の到着点だと信じて、今日まで人生を歩んできたんだ。

 

 

「…妬ましい」

 

 

ついに声にも出るようになってしまった。最近、心の中で理性を保てないでいることが増えた。胸のむかつきが、我慢出来ないほどに膨れ上がるのだ。

 

そのむかつきが、自然と手の末端へと送られる。俺の中の何かが、甘い囁きをしてくる。その囁きは、とても美しかった。優しかった。暖かかった。それは、増幅して、手をぷるぷると震わせた。

 

 

 

ビリッ

 

 

 

むかつきに支配されないため、解放されるため、快楽を味わうために、原因となっている写真を真っ二つに破いた。ちょうど、先生の首と胴体が離れるような形になっている。

 

それを見て、俺は自然と口角が上がった。ざまあみろ。そう思った。

 

だが、それは客観視すると、あまりにも幼稚であった。何の解決にもなっていない行動に満足し、気持ちの悪い笑顔を張り付かせている自分が、とても憎くて、糸が切れたかのように顔に力が入らなくなった。

 

「…クソが」

 

…止まらない嫉妬と、そんな感情を出す自分に対する失望を抑え、…いや、抑えられては居ない。見ていないだけだ。…俺は、ある人物に会うために、俺はいつもよりも重いドアノブに手をかけた。

 

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「やっほー☆ハジメくん!」

 

「やあ…聖園さん」

 

聖園ミカ。トリニティのティーパーティーに所属している…実質的なトリニティの支配者の一人だ。

 

桃の髪、森から見える星の様に、煌びやかな目。俺なんかが見てもいいのかと、恐れるほどに白く、どこまでも輝いている、明星のような翼。

 

そのどれもが、天上人であることを峻烈に表していた。

 

そんな人物が何故アリウスなんかに来ているのか?理由は単純。アリウスと仲良くしたいから…らしい。

 

少なくとも、最初に来た時はそう思っていたんだと思う。懐かしいな…トリニティにはこんなのがある。私の友達はこんな事をしている。アリウスではどんな事をしてるの。だなんて、まるで外国人が転校したときみたいに、楽しそうに語っていた。

 

そんな聖園さんを、スクワッドたちは少なくとも悪い目で見てなかったと思う。あの時は、本当にトリニティと和解できる…。くっだらない憎しみを、晴らすことができる、そんな灯りにまみれた希望があったな。

 

「ん〜早くゲヘナを潰したいな〜。あんな角つきども、存在するだけで迷惑じゃんね☆」

 

けど、アズサが…百合園セイアを殺害した日から、何かに取り憑かれたように変わった。

 

ゲヘナへの恨み、エデン条約への恨み、…桐藤ナギサへの恨み。そんな事を、まるで現実から逃げるように喋るようになった。

 

そう…まるで罪から逃げるように…。

 

「そうだな…聖園さんが言うなら、そうなんだろうな…」

 

ああ、また人のためにもならない、ただ自分が満足するだけの言葉をかけてしまった。…俺は、どうやったって先生みたいにはなれないんだな…。俺自身が、俺を否定する。俺は自分の闇を感じ取った。

 

「ふふ〜ん。あっそれでね、話の本題なんだけど」

 

なんか上機嫌みたいだな…良かった良かった。俺なんかで笑顔が得られるなら、それに越したことはない。

 

 

 

「…アズサちゃんが、ナギちゃんに狙われてる」

 

 

 

「何ッ!?」ガタッ

 

なんてことだ、まさかバレてしまったのか?これじゃ計画がおじゃんだ。いや、別に計画はどうでもいいんだが、失敗すれば、アズサは…スクワッドは…。

 

想像もしたくないことに心を震わせながら、聖園さんの次の言葉を待つ。

 

「まだ疑いだけだけどね。でも…もしかしたら、『退学』することになっちゃうかも」

 

「仲間が犠牲になるのは…耐えられないでしょ?だから…よろしく頼むね。ハジメくん」

 

雨の日の川のように、濁ったような覚悟を決めた顔で、俺に頼んできた。

 

きっと、こいつも…俺も…もう、あとには引けないんだ。

 

俺は、久しぶりに対等な存在を見つけた気がした。

 

____________________________________________________

 

「…???」

 

「だ、大丈夫ですか?アズサちゃん…」

 

さんさんと降る日光をぼんやり感じながら、私、白州アズサは勉強なるものをしていた。

 

今、確率をやってるのだが…何を言っているんだ?この本は?どっちも並べてるんだからPもCも変わらないはずでは?

 

「ふふふ…それはですねアズサちゃん。Pには番号がふられていると考えると…」

 

鮮明な光が、刺すように脳を彩る。ズバッと、でてくるアイデアをペンで書き込む。

 

「なるほど!ありがとう。ハナコ」

 

「ふふふ…P、Pですか…♡」

 

「ちょっと!変なこと考えてるでしょ!!エッチなのは駄目!死刑!!」

 

「あはは…落ち着いてください、コハルちゃん…」

 

桃色の可憐な髪を揺らす、ちょっと変だけど頼れるハナコ。

 

おなじ髪色だけど、ハナコと全然違う、努力家だけど空回りすることが多いコハル。

 

皆のまとめ役で、いつも力なく笑ってるけど、一番芯が通っているヒフミ…。

 

ああ…楽しいな、皆と過ごして、皆と笑って、皆と頑張って…。こんな日々が、一生続けばいいのに…。

 

だけど、私には家族がいる。家族というものは、どこまでいっても切れないものだ…裏切ることは、決してできない。

 

でも、補習授業部のみんなも、同じくらい大切なんだ…。どうすればいいんだ…?

 

『何も捨てることができない人には、何も変えることはできないだろう』なんて言葉があるけど、私は強欲なんだ。

 

Vanitas vanitatum et omnia vanitas…全ては虚しい、だからこそ、最善を尽くすんだ。

 

私は、その言葉を聞いたときから、そうやって生きるって決めたんだ。だから…私ができる限りの人を、私ができる限りの存在を、救ってみせる。

 

きっと…そのことが、私の使命だから。

 

無意識に私はペンダントを握っていた。皆とのつながりを象徴するものである…一筋のきらめきを放つ、黄金のペンダントを。

 

"そのペンダント、大切なものなの?"

 

カーテンから降る柔らかな光と合わさって、どこか神々しい雰囲気を醸し出している先生が、私に尋ねた。

 

「そうだ。これは私の宝物だ…。『皆』との、つながりでもある」

 

"…本当に大切なんだね、見たことない顔してるよ。アズサ"

 

「なっ…そうなのか?先生?」

 

"うん。…私も、アズサが言う『皆』に会ってみたいな。"

 

慈愛を込めた声色で、先生はそう言った。…本当に、同じ人間なのかと怪しくなるほどの、安心する、心地がいい声だ。

 

「ああ…きっと気に入るはずだ。皆いい奴で、皆個性があって、皆、皆…」

 

補習授業部の皆と、アリウスの皆と、先生で会うのを想像する。きっと楽しくなるだろう。皆でカフェに行ったり、海に行ったり、カラオケに行ったり。

 

…そんな未来を想うと、自然と恐怖がこみ上げてくる。私に、どっちも救うことができるのか、最善を尽くしても、救えなかったらどうしよう。誰の味方をすればいいんだ、と。

 

津波のように絶え間なく押し寄せてくる恐怖に耐えながら、私は覚悟を決めた。

 

…何があろうと、自分がどうなろうと、…救ってみせる。と。

 

____________________________________________________

 

大雨で着る服がなくなったり、水着パーティーをしたり…まあ、なんやかんやあって、補習授業部の皆と夜の散歩に繰り出していた。

 

普段は出歩かない時間帯のトリニティ、妖しい光を放つ、満月の月の下で、私達は闊歩していた。その中でも、目を引くものがあった。

 

「ここは…カフェ、か?」

 

「うーん?どうなんでしょう?スイーツ屋さんではありますが…カフェと言っても差し支えないのではないでしょうか?」

 

「ふふ…アズサちゃん。ここに興味があるんですね。それじゃ、入りましょうか♡」

 

カフェ…ハジメが話してくれたな。友達と一緒に行ったり、1人で和んだりする場所らしい。

 

ああ…ハジメ。お前にも観てほしかった…私にも、大切なものを…与えられるだけじゃなくて、作ることができたよって。

 

今すぐにでも帰りたくなる。しかし、指名がそれを拒否する。心がゆい思いが、私を支配した。

 

ふと私は、この前みんなに話した、ハジメの事を思い出した。

 

____________________________________________________

 

「っえーー!アズサちゃん、男の子の知り合いがいるんですか?!」

 

ヒフミの心底驚いた声が、暗く、それでも活力あふれた部屋にこだまする。

 

"そういえば、キヴォトスでは男の子は全く見ないね"

 

私こと…()()は、素朴な疑問をつぶやく。

 

「そうですね…もしかしたら、キヴォトス唯一の男の子かもしれませんね」

 

冷静に、しかし興味深そうにハナコが考察を膨らませた。珍しい、いつもならもっと変なことを言ってるはずなんだが。

 

「…つまり、ハーレムということですね♡きっとその男の子も、いろんなコトを想像してるはずですよ♡」

 

ほらやっぱり

 

「な、なんてことを言ってるの!?いろんなコトって、どんなコトよー!?」

 

いつものコントを繰り広げる二人。もう補習授業部のお約束となっている。

 

"それで…その子は、どんな子だったの?"

 

「そうだな…」

 

空気が変わる。例えるなら、居酒屋から葬式に切り替わった時のようだ。

 

さっきまでコントをしてた2人も、今は黙ってアズサの言葉を待つ。ヒフミも同じだ。やっぱりみんなは女子高生。そういうことには興味があるのだろう。

 

「まず…身長は私より高くて…先生よりちょっと低いくらいだ。髪の毛はふわふわしてる。触ると気持ちいぞ」

 

ワキワキと手を動かしながらアズサが答える。

 

「顔は…そうだな、優しい顔だ。いつもニコニコしてて、でもやる時はキチッとやって。そんな顔が、皆好きだった」

 

思い出しながらアズサが語る。少し顔を紅潮させ、かみしめるように微笑んでいる。私たちには見せたことがない顔だ。その顔は、まるで…。

 

「性格か…優しくて、いろんなことを教えてくれて、いろんなことを考えてくれて、…とっても尊敬できて、とっても強くて…あいつといるのは…とっても楽しかった」

 

「だけど、ちょっとだけ無理をしすぎる癖があって…。限界になって、一緒に帰ってる時に、ぶっ倒れた事があってな…。その時は、一緒に家にいたりしてやったな…」

 

まるで、恋する乙女のような顔だった。

 

周りもそれを察したのか、顔を真っ赤にさせて、アズサのことを凝視している。あのハナコですら、今はただのありふれた女子高生となり果てている。

 

「…皆どうしたんだ?そんな顔して…?」

 

そんな雰囲気に気づいたのか、アズサが彼の話をやめる。…はあ、良かった。私はともかく、他の皆には刺激が強すぎるよ。

 

"アズサは、本当にその子のことが大好きなんだね"

 

「…!まあ…そうなのかも、しれないな。私は…。大好き…か」

 

顔をボンッと赤くしながら、アズサは蚊の鳴くような声で、そう言った。

 

…罪づくりな子だなあ、その男の子。

 

皆、各々の想像を膨らませながら、ただただ、座り尽くしていた。

 

To be continued






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