アリウスと原罪   作:パエリアさん

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第14話 天から火を降らせて、彼らを滅することをお望みですか

トコ、トコ

 

張り詰めた緊張感の中、私達アリウススクワッドは、作戦の目標であるトリニティの古聖堂へ足を運んでいた。

 

「皆、準備はいいな?」

 

作戦の確認を行う。…よし、エラーはなさそうだ。

 

「…ついに始まるんですね。いやだな〜ヒナさんと戦うの…」

 

「………」スッスッー

 

「……………………」

 

辺りには些か重たすぎる雰囲気が広がる。食べればすぐに吐いてしまうような、そんな雰囲気が。

 

皆の目が本気だ。アズサが裏切ったこと、そして…ハジメが撃たれたこと。このことが、さらに作戦の重要度を上げた。

 

ハジメが撃たれたと聞いたあの日、アリウススクワッドは混乱状態に陥った。いつもはやかましいヒヨリも、衝撃によって言葉が出ておらず、『ウソですよね…』としかつぶやけなかった。

 

普段は感情を見せないミサキも、その日ばかりは心配からか、涙を流した…ように見えた。

 

ふと思い立って、首にかけてあるペンダントを開ける。そこには、楽しかった頃の6人がいた。

 

…あの頃は、いろんな話をした。希望があった。でも、今は…。とにかく、何もなかった。

 

光と、闇。それは、今の私たちを喩えるのに、残酷なほどに適切だった。

 

なあ、ハジメ…アズサ…。私は、私たちは、どうやって生きていけば…。

 

「Vanitas vanitatum et omnia vanitas……」

 

私は、逃げるようにアリウスの教えを呟き、現実を忘れるように任務に向けてに集中を高めた。しかし、私は知っていた。それが、何の救いにもならないことを。

 

____________________________________________________

 

エデン条約調印式当日、私は、『シャーレの先生』として出席していた。

 

…あの時は、いろんなことが起こったなあ。皆で試験を受けようとして、アリウスの生徒たちと戦って、…ミカが立ちはだかってきて。

 

だけど…一つ、不明な点があった。あの、『少年』のことだ。

 

キヴォトスでは珍しい男の子で、私と同じく、ヘイローはついてなかった。

 

血まみれで、隻腕で…とても、見るに堪えない見た目だった。そして…恐らく私に、大きな殺意を抱いていた。

 

あの目は、何かに取り憑かれているような…。そんな感じの目だった。言い方は悪いが…人がしていい目ではなかった。

 

だが、彼をそんな目にした原因は…私だ。私が、何も確認せずにアズサに指示を出したから、あの時、私がアズサを止めていられたら、私が、しっかり見極められていたら。

 

後悔の念が、傷つけられ、流れ出てくる竹水のように止めどなく溢れ出す。しかし、水であるというのに、流れ落ちることはなく、水たまりのごとく、とどまり続けていた。

 

防げない事故だったとしても、私は生徒に怪我を…それも、重症を負わせてしまった。もしかしたら、命に関わるかもしれない。

 

そんなことをするだなんて…私は…先生失格だ。

 

「大丈夫ですか?だいぶ考え込んでいるようですが…」

 

あのことを思い出しながら肩を落としていると、誰かが声をかけてくれた。

 

"ああ、ヒナタ。いや、今晩のご飯のことを考えていてね"

 

「へえ…決まったんですか?」

 

"う〜ん…ゼリーとかかな"

 

「…体を大切にしてください…」

 

よかった、うまく誤魔化せたみたいだ。

 

「それより…先生、そろそろ調印式が始まりますね」

 

"そうだね…上手くいくといいけど"

 

何か、心の中の焦りが取れない。まだ課題はあるぞ、まだやることはあるぞ。そんなことを告げられてるような気がする。

 

ふと外を眺める。それには何の意図もなかった。しかし、どうしようもなく外が見たかっただけだ。…?何か光って…

 

 

 

その瞬間、閃光が、粉塵が、熱が、煙が、絶望が、痛みが、周囲に広がった。

 

それは、まるで天から降った天誅のような、人間への罰のような。そんな印象を私に思わさせた。

 

炎の矢が降り注ぐ、その一つ一つが、私を崩していく感触がある。

 

だれかからか、『お前はやりすぎたのだ』とでも、言われたのかと感じた。バベルの塔のように、私は崩壊していった。

 

「先生ッ!」

 

しかし、そんな事に気づいた時には、私の意識は、既に闇に堕ちていた。

 

____________________________________________________

 

「…壮観だな…」

 

古聖堂から少し離れた小山の上から、燃え盛る業火とともにある古聖堂を見て、俺はそう呟いた。

 

もっとしっかり見るために、『()()()』ガスマスクを外した。

 

ああ、やはりものすごい。紅蓮の業火、誰のかも分からない血液。…衝撃に耐えられず倒れ伏す者、何が起こったか分からず立ち尽くす者、冷静に分析し、即座に行動を起こそうとする者、混乱に陥り、叫ぶことのみしかできなくなった者。

 

まるで、世界が急速に終末に向かっている時のような、そんな世紀末的な雰囲気が、辺り一帯に漂っていた。

 

俺はそれを、美しいとおもった。ルーヴル美術館でモナ・リザを初めて鑑賞したときのように、ただただ、圧倒され、畏怖の念を抱くことのみしかできなかった。

 

「…行くか」

 

芸術的な魅了を、人らしい理性で振り切り、俺は覚悟の言葉を呟いた。俺は、ただの人であることを自覚した。

 

サオリには必死になって止められたが、やはり俺の欲望は抑えることはできない。俺は、『先生』を殺さなければならないのだ。

 

それが俺の使命で、それが俺の今の生きる意味だ。俺は、そう決めている。

 

「ごめんな、サオリ、皆」

 

ちょっとした懺悔をしながら、再度ガスマスクをつけて、俺は古聖堂へと駆け出した。

 

…………

 

………………

 

「すごいな…」

 

ここに来てから感心しかしてないように感じる。当然だ、信じられない光景がペラペラと繰り広げられているのだから。

 

「ッッッ!多すぎる!」

 

黒を基調とし、赤を所々に入れた制服…正義実現委員会か、が数百ほどいる霊的な存在と交戦している。

 

あの青白い奴らは…そうだ、複製(ミネシス)か。

 

マエストロさんが嬉々として報告してた記憶がある。これこそが芸術だとか言ってたな。俺にはあまりわからないが。

 

そしてその奥には…みつけた

 

 

 

『先生』だ。

 

 

 

 

その瞬間、また心の中がどす黒い感情に支配され、それと対応するように暖かな声が聞こえる。

 

 

『おお…ハジメよ。今こそ汝が行動を起こすべき時である』

 

 

言われなくても…使命は果たす。

 

ブチ、ブチ

 

全速力であいつの下に向かう。筋肉がちぎれる感触があるが、気にしない。気分は大海に漂う船を襲う気分だ。

 

「……!12時方向!!なにか来ます!総員、先生の安全を確保してください」

 

一際背の高い生徒が叫ぶ。…へえ…随分とVIP待遇じゃないか?先生。

 

それもそうか、あなたは『特別』だったんだな。きっと、その子たちのことも救ってきたんだろう。

 

 

 

 

…妬ましい。妬ましい。妬ましい。妬ましい。妬ましい。妬ましい。妬ましい。妬ましい。妬ましい。妬ましい。妬ましい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺す

 

 

 

 

 

 

 

「なっ…速ッ…!」

 

「相手は…私だ!」

 

俺の前に赤い目をした生徒立ちはだかる。確か…剣先ツルギ、だったな。

 

「邪魔だ」

 

俺は目の前のヤツに対して貫手を繰り出した。

 

しかし、奴は簡単そうに避けて、ショットガンを俺の顔面に向ける。

 

ドンッドンッ!!

 

二発の銃声が、戦場に轟く。鮮血があたりに飛び散った。

 

「な…な、に?頭…が?」

 

…声が聞きづらい。視界も真っ暗だ。なんでだ?

 

 

 

………………な…に……?頭…が…ふっとんで

 

 

 

………ああ、よかった。すぐ戻った。

 

「な、なんだ!?頭が…消し飛んで、再生してっ?!」

 

動揺している目の前の女の頭をつかむ。その勢いのまま、膝で顔面を思い切り蹴った。

 

メギャッ

 

痛い。俺の膝のほうが壊れちまった。でも、まだ戦える。

 

もう一度、今度は逆の膝を、今度はつま先を、交互に奴の顔にぶちまけた。

 

「…キィエエエエ!!」

 

グアッ!

 

拘束を解かれた。その事に気付いたあと、一瞬遅れて手先に痛みが降りかかる。

 

…ん?指が…ない?

 

まあ…いいか。

 

俺は目の前の、俺の目的を阻止しようとするやつに向けて、歩みを進めた。

 

「はあ、はあ…こ、この化け物……悪魔がっ!」

 

鼻血を垂らし、呼吸も荒くげて、気持ちが悪いようなものを見る目で、俺のことをみてきた。化け物?悪魔?…お前らの方だろ?

 

「ぐああああああ!!」

 

高速で移動しながら、ショットガンを撃ってくる。当たるけど、なぜか傷が治る。『()()』になったみたいだ。

 

ガンッ!ゴンッ!

 

十分に近づけた俺は、万力の力を、殺すのに十分な殺意を込めて、奴の頭を殴打した。拳はもはや拳骨ではなかった。それは、肉と骨の塊となって、彼女へと降り注いでいた。

 

「ぐっ!?ぐううう!」

 

バランスを崩したヤツは、地面に倒れ伏した。俺は、ヤツにマウントをとって、ヤツの顔を殴った。

 

抵抗してショットガンを撃ってくるが、止まらずに殴打を続ける。10発、20発、30発と、続けて、続けて殴り続ける。

 

拳が折れる。手首が折れる。それでも、殴り続ける。使命のために。俺の、憎しみのために。

 

「ツルギッ!」

 

後ろからも撃たれる。痛い。脳がシェイクされる。それでも攻撃は続ける。

 

"……あの子は、もしかして…"

 

こんな雑音の中だが、鮮明に先生の声が聞こえる。

 

…もしかして、先生は俺のことを覚えてたりするのか?それはそれで…いい気味だ。

 

そんなこと考えていると、バサバサと何かの羽音がする。

 

「正義実現委員会っ!先生をこっちによこして!」

 

「ッッッ!クアッ!」ダダッ

 

甲高い声が響く、俺がそっちに気を向けると、すぐに正実委員長が俺の拘束から抜け出した。

 

あいつは…ゲヘナの風紀委員長。最重要人物として登録されていたな。確か、戦闘力が異様に高いんだったな。

 

「ッッッ!空崎ヒナ!!先生を頼むぞ!」

 

さっきの奴が、声を振り絞って、何か言ってる。随分と必死そうだ。

 

「…いいの?」

 

「ああ…こいつは危険だ。私がここで、倒す必要がある!」

 

俺が危険ですって。心外だ。お前のほうが化け物じみてるじゃないか。自分のことを棚に上げやがって。

 

「…私からもお願いします。風紀委員長。先生まで何かあっては、もう収拾がつきません」

 

「…………」

 

「風紀委員長……!先生を、よろしくお願いします!」

 

「…任せて」

 

そう言うと、先生はゲヘナの風紀委員長に背負われて、去っていった。

 

 

 

まて。まだ殺してない

 

 

 

脚に力と憎しみを最大限込め、追いかけようとする。その瞬間。

 

ザザッ

 

「言っただろ?お前の相手は、この私だ」

 

剣先ツルギがまたしても俺の前に立つ。…クソ、害獣みたいな動きをしやがって。

 

「邪魔を…するな!」

 

「ハスミッ!お前は他の奴らを頼む!私は、こいつを…責任を持って倒す!」

 

二丁のショットガンを持って、ヤツは俺へと接近する。上等だ。お前も特別なやつなんだろ?俺には持ってない、俺にはできないことを、簡単にできるんだろ?

 

だから……俺も責任持って、お前を殺す。普通の人間として、罪を持っている人間として。

 

拳を握りしめ、感情を殺意で充電して、彼女に向けて走った。

 

 

 

 

 

 

 

遠く、近い、どこかの道で……

 

「アレは…ハジメ……?」

 

『どうしました?ミサキさん?…ハジメさんが、どうかしたんですか?』

 

「いや…なんでもないよ、ヒヨリ」

 

(そう…アレがハジメなわけない…。あんな、あんなに憎悪に染まった目は、しないし、できないはず…)

 

「それより…風紀委員長が先生を連れて行った。ルートは送るから、早く追いかけるよ」

 

自分に言い聞かせるように言った。アレがハジメだったら、耐えられない気がしたから。

 

(大丈夫だよね…きっと、いや絶対、ハジメは無事だ。そうでなきゃいけない)

 

ペンダントを握りながら、はかなげな少女が一人、使命のために走り出した。それは、少女が背負うには、大きすぎる罪であった。

 

To be continued








さあ、ハジメくんはこれからどうなっていくのでしょうか…救いか、それとも……

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