アリウスと原罪   作:パエリアさん

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先生の書き方がむずい………くそう。
なんか気になるところとかあったら言ってくださいね。





第18話 罪の報酬は死である。しかし、神の賜物は永遠の命である

「サ…サオリさん…」

 

「…リーダー」

 

「…………」

 

私は今、目の前で横たわっている男のことを眺めていた。死んだような顔をしている。とても縁起が悪い。

 

目をつぶり、口を閉じ、仰向けに横になっている。疲れているのか、ちっとも身体を動かさない。

 

「リーダー、…サオリ!」

 

…?なんで声を荒げるんだ?ミサキ。なんで、目に涙をためているんだ?

 

ただ、家族が寝ているだけだろう?好きに、させてやろうよ。寝ることぐらい。

 

ミサキはなぜかブルブルと震えて、自身の肩を抱いている。その目は酷く細かく揺れながら、私を曖昧に捉えていた。

 

 

 

 

「ハジメは…もう…もう、生きては…いないんだ……」

 

弾かれた弦のような声。それは小さくあったのに、空間を確かにギタギタに切り裂いた。

 

「なんてことを言うんだ!!ミサキ!!」

 

そんな不謹慎な言葉に、私はミサキを叱った。何を言っているんだ?コイツは?そんな事を、冗談でも言ってはいけない。私は、そう教えたはずなのに…。

 

「見ろ!爆発を受けたのに、外傷もなくて、服も何もなっていない!!これで死んでいるなんて、あり得ない!!」

 

そうだ、ありえないことなんだ。何を言っているんだ?こいつら。疲れているのだろうか。明らかに異常だ。だが、無理もない。ここ最近は色々とありすぎた。私がもっとちゃんとしてたら、防げたことだ。

 

「でも…事実だよ、ハジメの心臓は…動いては、ない。そのことは…」

 

ミサキが声を淀ませながら、そう言った。それは、とても言いづらそうであった。初めて一輪車に乗るときのように、うっすらとしか、言葉が見えてこなかった。

 

「嘘だ…嘘だ!さっきまで、なぜか傷がすぐ治って、そんな不思議な能力があったじゃないか!!」

 

「さっきも、死んだと思ったらケロッと生き返ったじゃないか!これが証拠だ!!なぜ嘘を付く!!」

 

自分自身に言い聞かせる。そうだ、死んでいるなんてあり得ない。

 

私達のハジメが死ぬなんて、そんなことあってはならない。もしそうだったら、救いがなさすぎる。まるで誰かにつくられたみたいじゃないか。私達は、私達で道を作り出すんだ。

 

「…その爆弾は、『ヘイローを破壊する爆弾』でしょ?だから…何か、理解できない現象が起こったのかもしれない」

 

「そんなことない!見ていろ、今にでも起き上がる!死んだなんて言わせない!心臓が動いていないのは、偶然だ!」

 

そう言うと、私は心臓マッサージを始めた。応急処置は習った。だけど、ヘイローがないハジメは脆いから、慎重に…。

 

「……!…」

 

「姫…?なにを、しているんだ?」

 

ドンッとアツコに押され、ハジメから距離を取らされた。今すぐに心臓マッサージをしないと命が危ないかもしれないのに。

 

「何をしているんだ!ハジメが危ないかもしれないんだぞ!!」

 

アツコにこんな怒鳴りつけるのはいつぶりだろうか。感情のままに、言葉を振り絞る。なぜ、なぜ皆、私を分かってくれないんだ?これでは、私がおかしいみたいじゃないか。

 

「……(本当は、サオリも分かってるんでしょ?)」

 

アツコは手話でそう伝えた。しかし、その手はかじかんだように無作法で、亀のように酷く遅かった。しかし、それが作用して、私の心に跡を残す。

 

「ッッッ!?…何がだ?」

 

嫌だ、いやだ。認めたくない。知りたくない。

 

「…(ハジメが…もう、死んでいること)」

 

その瞬間、水晶が砕けるように、私の中の何かが壊れる。なんでだろう?何回も苦しみを味わって、でも、そのたびに大丈夫で…。

 

でも、今回は大丈夫じゃなくて、取り返しがつかなくて。

 

「違う……違う!!」

 

勝手に涙が零れ落ちる。違う、なんで涙を流す?ハジメは、死んでなんかないのに。こいつらは、嘘つきなのに。おかしいのは、こいつらのほうなのに

 

「違わないんだよ…サオリ…」

 

いつもより光がない目で、ミサキが私のことをしっかりと見た。

 

「ハジメはね、死んだんだ。私達のせいで、私達が、…巻き込んだから」

 

そう言ったミサキは、ぼろぼろと大粒の涙を出し始めた。きっと、彼女も今理解したんだろう。それを思うと、さらに心がきゅっと締まる。きっと、耐えられない苦痛がミサキを襲っているんだろう。

 

「辛い…ですね、苦しい…ですね」

 

いつもの口癖を、いつもと違った雰囲気で言うヒヨリ。それは暗く、死んだ花のように枯れていた。

 

「どうしてでしょう?私達みたいな者が生き残って、ハジメさんみたいな人が死ぬ理由は」

 

涙こそ流さないものの、顔は死んでいる。その顔は、残念ながらみんな一緒だった。

 

沈痛が流れる。全員が己の背負う罪について考えている。だが、少なくとも私は、贖罪の方法がついには思いつかなかった。

 

「ああ…神はいないんだろうな(gott ist tot)。きっと」

 

それが答えなんだ。それが真理なのだ。神は、いない。いたとしたら、それは滅さなくてはならない。他のものが崇拝していたとしても、それな光であって、絶対であったとしても、私は、私だけは抗わなくてはならない。

 

「それでも…救世主(メシア)はいたよ…」

 

ハジメだ。思えば、ハジメは私たちにとっての救世主だった。

 

いつも笑顔で、希望を呟いて、私たちをより良い方へ導いてくれる。そんな存在だった。

 

アイツと出会って、私達の人生の色は変わった。寂しいモノクロから、多様な色を含む鮮やかな彩りへと。

 

私達は、返しきれないほどのものを受け取った。楽しさ、知識、教訓、そして…『恋』。これは、きっと恋と呼ぶのだろう。今、はっきりと分かった。私の恋心が、珈琲のように苦い、初恋が。

 

エデン条約の作戦が始まった時から、ハジメはボロボロになっていった。これは、返すチャンスだと、私達はより一層努力した。

 

それが、ハジメに対するお返しとして、適している気がした。

 

でも、それは違った。ハジメと会う機会は減って、ハジメは不安定になって、悪魔になって、最終的に、こうなった。

 

私たちのせいなんだろう。ハジメの心を見破れなかった、私達の。いや、私の。

 

 

 

 

 

 

 

 

私の。私の。私の。私の。私の。私の。私の。私の。私の。

 

 

 

 

 

 

ああ、全部、私のせいじゃないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんにも…なんにも分からなかったじゃないか…分かろうとも、しなかったじゃないか!!」

 

言い訳じみた言葉に反吐が出る。私という存在を、殺すだけではない。消し去りたくなった。

 

「なんで!なんでしなかったんだ!!錠前サオリ!!」

 

己の拳によって、自分で自分の身体を傷つける。それは、決して正しい方法ではないことは知っている。けど、それしかできないから。贖罪は、思いつかなかったから。ああ、どこからか流れる血液でさえ、私のものと知ると、握りつぶしたくなる。

 

「姉さん…やめて…お願い」

 

ミサキが蚊が鳴くような声で要求してきた。ああ、そうしよう。これは、無意味なことだから。贖罪にはならないから。でも、それがミサキの光になるなら、もう迷いはない。今の私こそ、究極の利他的なのか?…いや、こんな私が、そんな事をできるわけがない、か。

 

「これから…私達、どうしましょうね…」

 

ヒヨリが力なく呟く。つかんでおかないと、どこかに消えていってしまいそうな、空気をたくさん詰め込んだ風船のような、そんな声で。

 

再度沈黙が場を包む。だれも、気力もない、生きる気力さえも、意味さえも、見失っている。

 

「…トリニティを、攻撃するぞ」

 

その場を破ったのは、私だった。何かをしないと、焼き尽くされそうだった。こんなになっても、一丁前に苦痛に嫌悪を感じる私が、とてつもなく嫌いになった。

 

「全ては虚しいけど…精一杯やろう。それが、きっとハジメの願いだから…」

 

「ああ、そうだね。そんな事、言ってたね」

 

懐かしむ声でミサキが言った。ヒヨリも、もう立ち上がっている。しかし、その足は綿のように儚かった。

 

「……(皆がそうするなら…私も、そうするよ)」

 

皆、同じ目をしている。その目は、アリウスでは一般的な目だった。ただ、虚無に溢れた、そんな目。私達が変えようとした、その目。

 

「目標…古聖堂。アリウススクワッド、行くぞ」

 

ハジメの身体に毛布を被せ、丁重に保存する。次に会う時、思い出せるように。再度会う場所だけははっきりと分かる。そこは、地獄なのであろう。

 

 

 

例え、今日が辛くても、歩むしかないんだ。残された道は、光は、それしか見つからないから。それが、本当の光かは、誰にも分からないけど。

 

____________________________________________________

 

"じゃあまずは、それに相対してくるよ"

 

私は目覚めた。体のあちこち…特に、頭が痛む。これは、折れてるかな。いやあ、久々の感覚だ。中学生ぶりかな?

 

「先生?!起きられたのですか?まだ動いちゃいけません!」

 

私を見つけた救護騎士団の2人…セリナとハナエが私を止めてくる。それでも、私は進まなくてはいけない。大人として、先生として。

 

救うべき生徒が、ごまんといるから。思い浮かべるだけで、それが茨であることが分かる。

 

"まずは…あそこかな"

 

ピンクのお姫様を目指して、私は恐怖に震える体を理性で抑えて歩き始めた。

 

…私は、まだ恐怖から脱せないのか……。

 

……………

…………………………

 

「…駄目ッ!それは違う!」

 

「聞かないやつだ…それなら…」

 

「待って…この子、どこかで…」

 

トリニティの地下の牢屋の中で、口論の声が聞こえる。だから、私はそこへ向かう。生徒の喧嘩を仲裁するのは、先生の仕事でしょ?

 

"コハルは補習授業部の、私の生徒だよ"

 

「ッ先生!」

 

「何ッ!シャーレの先生!?意識不明の重体のはずじゃ…」

 

あはは…驚かれちゃったな。ミカは…すごい顔をしているな。驚きのような…なんていうんだろう?

 

"お願いだから、暴力だけは辞めてほしいな"

 

私は、ティーパーティの傘下の子かな?に睨みをきかせる。頼む、これで行ってくれないと武力を使わないといけなくなる。それは嫌だ。

 

「ちょ、あの先生の表情やばいって…」

 

「ああ…行こう」

 

そう言うと、さっきの子達は帰っていった。結構ギリギリだったな、今の。

 

「せ、先生…先生」

 

"コハル、エリートみたいでかっこよかったよ"

 

…コハルも、成長したな。そして…

 

"ミカ…"

 

「…先生」

 

"大丈夫、だったかい?"

 

この子も、被害者だったんだな。本来は、セイアが言ったように優しい…。

 

その後、ミカの話を聞いた。悲しい、悲しい話だった。これは、必ず私が解決しなければいけない。必ず、ハッピーエンドにしなければいけない。明るくて、光で満ちた、そんな青い春のような終わり方に。

 

「私…どうすればっ」

 

"…任せて、ミカ"

 

私は決心を固める。必ず解決してみせる。そのために、私は先生になったんだ。使命に燃える。

 

 

 

 

「せっ先生!!」

 

決意を胸に、使命へと歩もうとすると、ミカに呼び止められる。一体なんだろう?

 

「あの…この前いた男の子、覚えてる?」

 

"…もちろん。忘れたくても、忘れられないよ"

 

私に傷をつけた子でもある。でも、あの目は忘れられない。悲しみが、憎悪がこもった。人がしちゃいけない目をしていた。だからこそ、気がかりだ。

 

「あの子…悪い子じゃないの。今は化け物みたいになってるけど、私みたいな子にも仲良くしてくれる。そんな男の子なの!」

 

「だから…あの子も…救ってあげて」

 

"もちろん。言われなくても。先生は、いつだって生徒の味方だからね"

 

また会うことの恐怖心ももちろんある。蛇のような恐ろしさで、膝が笑いそうになる。私も人間だから、それはしょうがないことだ。でも、それより先生の使命を果たさんとする気持ちのほうが大きかった。

 

私は皆の下へ歩きながら考える。これからのこと、アリウスの生徒たちのこと。補習授業のこと。ミカのこと。セイアのこと。

 

考えればきりがない。パンクしそうになる。それでも、絶対に救ってみせる。私は先生だから。たとえ死んでも、たとえ消えても、私は使命を果たさなきゃいけないんだ。

 

 

 

 

 

 

…そのものは、あまりにも多すぎるものを抱えていた。そのものは、自分の能力を信じ切っていた。

 

ああ、それらの中に蛇が入っているとも知らず、手を突っ込んでいくのだろう。

 

そのものは、あまりにも、あまりにも寛大な故…。絶望に至るのだろう。

 

To be continued







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曇らせきもちぇ〜
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