アリウスと原罪   作:パエリアさん

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フユの絆ストーリー読まなきゃ


第2話 自己紹介

なぜか実銃を持ってる顔面偏差値鬼高5人組から、俺はあるはずのない肺の筋肉を動かしながら、とにかく必死に逃げる。

 

…っぐあ!なんなんだクソッ!人助けしたってのに。お天道様は俺を見てるんじゃなかったのかよ!

 

心の中でひとりごちる。こんな状況になったことの不安、悲しみ、疑問、それらは怒りへと塗り替わり、俺の精神を支配していった。

 

ガラス片を力いっぱい踏みしめる。それは靴を貫き、チクチクとした痛みを足裏に思わせる。極めて不快だ。

 

しかし、そんな痛みよりも、辺りの焦げた恐怖の匂いが痛みを凌駕し、俺の脚を勝手に前へ前へと足を進ませる。

 

 

 

ドン

 

 

 

「うあっ?!?」

 

太ももが撃たれた。焼かれたような激痛が走るが、ここで止まったら死ぬということは本能で理解できている。そのため、体中をドクドク流れるアドレナリンに身を任せて、俺はとにかく走った。

 

「なにっ?!銃弾一発で失血?!」

 

何を言っているんだアイツラは。「人」は打たれたら血が出るものだろ。本当に、人の皮をかぶった悪魔なんじゃないか。その皮を剥いだら、角と皮膜が飛び出て、炎でも吐くんじゃないか。そんな考えを、逃避するように行った。

 

…ああクソ、でももう限界だ。足がもう動かねえ。痛みと疲労が重なって足枷がついてるような錯覚に陥る。

 

もう3分くらい全速力で走り続けてる。人が全力で走り続けられるのは40秒くらいって聞いたから、それがホントならもう限界は超え続けてる。

 

なんでアイツラはあんな余裕そうなんだ?ビュンビュン飛ばしてくる。人じゃねえだろ……くそったれが。

「うおっ?!」

 

そんな文句を心の中で叫んでいると、突如現れたへこみに足を取られる。

 

視界が急に落下し、痺れるような痛みが伝わる。やべえ、転んじまった。足場悪すぎだろここ。

 

 

 

………顎打っちまった。もう意識が……。

 

 

 

後悔、渇望、嫉妬、憤怒、…最後に覚えるのがこの感情とは。俺は泣いた。人らしい最期だけは一丁前に望んでいたのに、それすら叶わなかったのだ。なにか、踏みつけにされているような気さえした。

 

ああ、クソ、クソクソクソ!せっかく、せっかく、やっとやっとやっと

 

 

 

「特別になれたのに……」

 

 

 

俺の意識はそこで暗転して、ただ、終わった。どこか、闇の中の隅っこで。

 

「「「……………」」」

 

最後にほんの少しだけ見えたのは、こちらを見下す十個の冷たい瞳であった。

 

 

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ぱちり

 

「う……うん?」

 

知らない天井だ。ひび割れて、照明は壊れていて、今にも崩れてしまいそう。あーっと…なにがあったか…確か俺は誰かを助けて…ん?誰かって誰だっけ?

 

「あ……やっと起きましたか」

 

隣にいた緑色の髪の子が話しかけてきた。…そうだ、こいつらに襲われたんだ。さっきの事を思い出して、すくむ足に喝を入れながら、咄嗟に逃げようとするが……。

 

「ぐうううっっ?!」

 

太ももに激痛が。さっきこいつらに打たれたという記憶が、脳の片隅から滲むようにだんだんと広がる。それとともに、突然得体のしれない恐怖が、足の傷とともにじわじわと広がる。

 

「ああああ!大丈夫ですか?痛いですよね…苦しいですよね……」

 

…なんでだ?コイツラが俺のことを撃ったのに心配されてる。あべこべじゃないか。しかし、何者かによって空気が熱され、ほんの少しだけ冷たい恐怖の塊が溶けるような錯覚に、俺は陥った。

 

「とりあえずみんなを連れてきますから……逃げないでくださいね」

 

彼女は少し含みを持って言った。おそらく逃げたら……死ぬかもな。

 

ざわり、と鳥肌が立つ。俺は巣に担ぎ込まれた食料だ。もはや、抵抗することさえできない、そんな、所謂底辺の存在であるのだ…そんな事を自覚すると、やはり、心が荒み、痛み…だけど、何故か嬉しかった。

 

 

 

とりあえずあの子が言った「みんな」を待つしか無さそうだ。

 

 

 

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無機質な木製の椅子に、俺は座らされていた。尻には恐ろしく冷たい感触がこれでもかとつたわる。

 

「まず……お前は何者だ?」

 

鬼のように低く、闇よりも冷たい声で尋ねられた。質問というより尋問、少しも笑えないような雰囲気の中でヤツらとの会話が始まった。さっき俺を追いかけ回したヤツらが勢ぞろいだ。

 

インタビュアーはおれの太ももを打ち抜いた張本人。藍色の髪を持つスタイルバツグンクールビューティーな女の子だ。…こんな状況じゃなかったら喜びがわいたかもな。

 

「……佐藤ハジメ。〇〇高等学校に通う、嫌になるほど普通な一年生だ。」

 

俺は正直に答えた。嘘をついてもいいが、バレたら殺される雰囲気がある。

 

「〇〇高等学校?そんな高校聞いたことないぞ。どこの自治区にある学校だ?」

 

藍色の子は眉間にしわを寄せ、困惑しながら聞く。茶髪の子がカチャリと、後ろで銃を構えているのが聞こえた。俺は、思わず冷や汗をかいた。

 

「自治区…?はしらないけど、神奈川県ギリ横浜にある学校だ」

 

「カナガワケン?ヨコハマ?……何を言っているんだお前は」

 

心底理解できないというような表情になりながら言った。日本語を話しておきながら神奈川県も横浜も知らない……?そんなのあり得るか?

 

「なんなんだあんたらは……まさか……日本人じゃないのか?」

 

この状況とは矛盾するが、俺は少し()()を持って聞いた、もしかしたら、もしかしたら……そんな気持ちは、おそらく希望というのだろう。なんと、それは初めての経験だった。

 

「何を言っているんだお前は……そうだな、あえて言うなら……キヴォトス人……となるのか?」

 

ここで俺は完璧に理解した。ここは異世界だ。お天道様はちゃんと見ていたんだ。俺はついに、

 

特別』を得る事が出来たんだ。

 

 

 

「ふふっ…ははははは!」

 

「なっなんだ!?気でも触れたか?!」

 

警戒を強められたことが、今の俺にも分かった。しかし、歓喜は止まらない。海の中を泳ぎ続けるマグロのように、誰にも、決して、止めることはできない。

 

こんなに嬉しいことはない。普通に生まれ、普通に死ぬと思っていた俺に、ついに特別がやってきたんだ。

 

新たな存在意義、それが俺を優しく包む。天にでも昇ったかのような気分であった。

 

「くっっ!こいつ!」ガチャ

 

 

 

あっ死ぬのは嫌です笑うのやめます。

 

 

 

 

〜少年説明中〜

 

 

俺は異世界から来たこと、異世界では銃は『普通』

ではなかったこと。頭にある『ヘイロー』 ?というものも、存在しないことを説明した。

 

「信じられないな……そんな事。嘘ついて身分を偽ってるんじゃないんだろうな」

 

藍色の子が凄みを出して言う。その表情はまさしく般若、まさしく悪魔。つまり、恐怖であった。

 

「……………!…………」

 

恐怖で顔を引き攣らせていると、薄紫の仮面をかぶった子が手話?で何かを伝えている。少しコミカルな動きで、この状況の中、俺の頬肉を刺激した。

 

「信じるのか…アツコ……まあ確かに、マダムもいるし、そんな事もあるかもな……」

 

なんか納得した感じだった。手話はさっぱりだが、悪いことは言われてない気がした。

 

「とりあえず、あなたたちからも説明をくれないか?えーっ…キヴォトス?だっけ?のことも何もわからないんだ」

 

当然の質問だ。こんなことになって気が狂ってないだけマシだと思ってほしい。

 

「そうだな……お前だけ説明するのも平等ではないから……」

 

意外と話は分かるようだ、良かった良かった。

 

 

 

〜少女説明中〜

 

 

 

・ここはキヴォトスという学園都市であること

・ここはアリウスというキヴォトス内の学園の中の一つであること

・人間はヘイロー?という天使の輪っかみたいな物を持っていること

・ほぼ全員が銃弾に耐えるほど頑丈なこと

・男は珍しいこと

 

など、多くのことを教えてもらった。…信じられない。ここは、本当に異世界なのか。

 

そして、一つ気になったことを質問した

 

「ちょっと質問だ。何故ここはこんなに廃れているんだ?話によると、栄えているところもあるにはあるらしいじゃないか」

 

藍色の子が答える

 

「……昔はアリウスはある分派の1派だった。それなりに栄えていたらしい。しかし……分派を連合に統一するということに1派だけ反対し続けた結果、それ以外の分派から総攻撃を受け……こうなったらしい」

 

声をしぼませながら言った。その声は、雲が立ちこめる日の夜空のように、少し朧げであった。

 

「へぇ、それは可哀想に。だけど、そしたら何でまだアリウスと名乗っているんだ?統一されたんじゃ?」

 

「逃げ込んだんだ……ここならヤツら……トリニティらにバレない。いつかヤツらを消すため、ここで戦力を蓄えているんだ」

 

そんな事を言っているにも関わらず、意外にも彼女の目は憎悪には染まっていなかった。

 

それどころか、自分の言ったことに疑問を持っているような目だった。

 

「じゃあ、誰が戦うんだ?まさか学生が?」

 

流石にこれはないだろう、いくら追い詰められているとはいっても、学徒出陣はn「そうだが?」

 

……は?

 

「それ以外にあるのか?」

 

当然のようにいう。まさか……この世界には大人がいないのか?学園都市だからか?とんでもないところだ。

 

俺は驚愕に身を震わせた。襲いかかってくる『特別』に卒倒してしまいそうになる。しかし、どこか期待も膨らませている自分もいた。

 

「あ……あぁ…そうか、ところで、あんたらの名前を聞いてなかったな。俺だけ教えてるのは不平等だろ?」

 

しかし、深く聞くのはやめにした。……戦争とか怖いだろ?

 

「なんでお前に……でもそうだな……みんな、自己紹介だ」

 

「まず私から、錠前サオリだ、歳は……十五だ」

 

藍色の子がいった。おそらくリーダー格だろう。覇気が滲み出ている。獅子のようなそれは、俺を従順にするには十二分であった。

 

「………戒野ミサキ……十四」

 

黒マスクと茶髪の子。無気力という言葉が似合うほど、顔に生気はなかった。おそらくだが、俺も日本にいた頃には、あのような表情をしていただろう。

 

全てが虚しい、全てが退屈。でも、それを打開するほどの力も、才能も、知恵も、何もなかった。だから、何もかもを諦めるしかなかった。惰性で生きるしかなかった。そんな過去が思い出されるようで、俺は少し嫌になった。

 

「白州アズサ。十四歳だ」

 

白髪の子。…冷たい、しかし暖かい…そんな矛盾を、矛盾と思わせないような、そんな力をもつ目をしている…。心の中で、痛みが叫ばれる。こいつは、俺とは違う、何かを持っている者…そう思うと、落ち込んでしまった。

 

「あーっと…槌永ヒヨリです…十四歳です」

 

緑の子。さっき一緒にいてくれたから、少し好印象。けどちょっとオロオロしてるな。

 

「………………」スッスッ

 

手を動かしているが……わからん。

 

 

「すまない、それは手話か?…そんなに学がなくて、わからないんだ」

 

 

自分で言ってて悲しくなる。手話が分からないのは『普通』のことだが、この場では俺がおかしい。誰も何もしていないのに、疎外感を勝手に感じていた。

 

「あっ…そうですか……じゃあ私がかわりに……」

 

槌永さんがかわりにやってくれるそうだ。

 

ん?初対面に苗字呼びは普通じゃないか?しかも女子だぞ?

 

「こ、この子は秤アツコちゃんで、十三歳です……みんなからは姫って呼ばれてます」

 

…姫?なんでだ?顔が隠れているから分からないけど、顔がとても可愛いのか?…まあ、どうでもいい。今大切なのは、俺が変化の最中にいるという、事実だ。

 

「おーけー。ありがとう。…ところで、俺はどうしたらいいんだ?食う寝るところに住むところもない」

 

切実な悩みだった。流石にドンパチがすぐに起きるところで野宿はできない。俺は『普通』なんだ。死んでしまう。

 

「そうだな…とりあえずマダムのところに連れて行くか」

 

「マダム?」

 

「ああ……アリウスの最高権力者……といえばわかるか?」

 

 

 

……………なんか嫌な予感が、頭痛となって顕現する。しかし、その『嫌』さえも、今はとにかく、愛おしかった。

 

 

 

To be continued




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