アリウスと原罪   作:パエリアさん

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自分で書いててなんですが、この小説、ちょっと分かりづらい点があるかもしれません。それを一人で考察するもよし、筆者に聞くも良しなので、どうか楽しんでください。
それでは、始まります






第21話 神の怒り

私は、2人の光の前に立ち尽くす。光を滅するため、闇を救うため。それは悪であろうか、しかし、それが私の使命そのものであった。

 

「アズサ…死んでくれ」

 

私達に光は適合していない。だから滅するのだ。だから闇を救うのだ。

 

 

 

ガラッ

 

 

 

静寂の空気に、崩れる瓦礫の音が染み渡った。それは、まるで家族の関係が崩れ去っている、私達を暗示しているかのようだった。

 

「ちょっと〜『私達』のリーダーに、何してるのかな〜」

 

ふわふわとしているが、しっかりとした敵意を持っている。そんな、どこか冷たさをも感じさせるような声が聞こえる。

 

声の方向へ体を向ける。すると覆面?…のようなものを被る、小柄で、宝石のような瞳が見える、少女が立っていた。

 

他にも、多数の覆面が、そこに立っていた。

 

ヘラヘラと笑いながら、変な格好でふざけている。だけど…。

 

「姉さん…気をつけたほうがいい」

 

「ああ、分かっている。」

 

こいつらは相当やり手だ。立ち方、銃の持ち方、どれも隙がない。あの態度も、そこから来る圧倒的な自信が原因だろう。

 

特に、桃色の覆面を被っている、少し小柄な者。アイツはものすごい。恐らく、私より強い。もしかしたらスクワッド全員がかりでも倒せないかもしれない。

 

「…ところで。君達に質問があるんだ」

 

そんな奴が口を開いた。覆面を取り、桃色の髪が現れる。その顔はまるで般若であった。

 

緊迫感が風とともにこだまする。私は本能的に、愛銃へと手をかけた。

 

「先生をあんなにしたのは…誰?」

 

ヤツは冷たい、それでも、燃え盛る大きな憤怒を込めた声で、その質問をした。

 

その恐怖に逆らえず、私達は体を震え上がらせた。本能が恐怖している。命の危険を私に嫌でも知らせてくれている。

 

でも、私達は恐怖を乗り越えて進まなくてはならない。それしかもう、することがないから。

 

「今はいない…そこにいるヤツが、殺したから…」

 

何とか、言葉を振り絞った。言葉を発する。それだけであるのに、それは茨のように感じた。

 

「…ふーん。死んじゃったの?そいつ」

 

軽い感じで言った。喜びと同時に、残念さも含ませている。

 

私は怒りを覚えた。ハジメの死が愚弄されている気がして、ハジメが拒絶されているような気がして。

 

唇をかみしめる。他の皆も同じだ。血の味が、舌上にじんわりと伝わる。まるで、波紋のように。

 

「ああ、死んだ。心臓が動いていなかった。呼吸をしてなかった。もう、声を聞くことすらかなわない」

 

その言葉を聞いていたアズサは顔を俯かせ、少ししたら、また顔を上げた。

 

「お前がやったんだ。アズサ。それなのに、どうして前を向く」

 

憎い、悔しい、悲しい。アズサは私達よりも大切なものを見つけたんだ。その感情は罪であるのか。そうであったら、私は恐らく、悪魔なのだろう。

 

「…どんな子だったの?その子」

 

さっきとは違い。殺意はない。むしろ少し申し訳なさそうにあの桃色の人はいった。

 

「そうだな…ああ、普通だった…だけど、私達の希望だった」

 

ハジメの顔が見えるようだ。もういないのに。もう、枯れてしまって、安堵すら感じられずに、虚無へと落ちたのに。心がきゅうっと、棘によって締め付けられるようだった。

 

「何かすごいことができるわけでもない。力が強いわけでもない。それでも、私達にとっては特別だった」

 

「キラキラした笑顔。楽しそうな目。希望を与えてくれる口…その全てが特別だった」

 

自然と涙が出てくる。枯れたはずの涙が。

 

「だから好きだった…だから愛していた!!それを奪ったのが…お前だ、アズサ」

 

出し尽くしたはずの怒り沸々と再燃する。全てを燃やし尽くさんと暴れる。

 

「だから…殺すんだ。分かったか?」

 

桃色のヤツにそういった。ヤツは、哀れんでいたのだろう。一人に執着する私たちを。

 

「…おじさん、気持ちは分かるよ。きっと、本当に大切な人だったんだね」

 

偽善からではない、心からの言葉であることが節々から読み取れた。

 

「それでも、だからと言って君たちをおいそれと置いとくわけには行かないんだよ」

 

ショットガンを構え、ヤツは決意と弾丸を込めた。

 

「ああ、そうだろうな。きっと私もそうするし、誰でもそうするんだろう」

 

私も銃を構えた。セーフティは、もとから外れている。

 

「姉さん…気づいてる?」

 

「気づいている。恐らく前よりも大規模な数だ」

 

正義実現委員会、風紀委員会、ティーパーティ傘下部隊、その他諸々が私達を包囲している。

 

ユスティナ聖徒会があるとは言え、客観的に見れば絶望的だ。

 

それでも、それでも…。

 

「Vanitas vanitatum… et omnia vanitas…例え私達が死に就こうと、全ては虚しいんだ。」

 

そう、全ては虚しい。だから、私達は戦う。ただ、ひたすらに、戦いを続けるんだ。たとえ、その結果として闇で死んだとしても。

 

「行くぞ、アリウススクワッド。全てを愛するものに捧げるために。私達の想いを果たすために」

 

マダムのためでも、アリウスのためでもない。ただ、私達のために、いまから戦うんだ。風は、私達を祝福するようだった。

 

「覚悟しろ、今日、楽園が一つ、消えることになる」

 

私達は再び、目に活力を奮い立たせた。

 

____________________________________________________

 

 

 

心地が良い、気持ちが良い、ここは、俺の全てを理解してくれる。

 

ここがどこかも曖昧で、意識は歩いてることしか示さないけど、とにかく良い気持ちだった。

 

何も考えなくていいから、何も妬まなくていいから。ただ、進むだけでいいから。

 

言葉で表すなら、夢見心地であった。

 

『ハジメ…ハジメよ…』

 

蛇の声が聞こえる。やはり、暖かく、優しい声だ。俺は、その声に完全に魅入られていた。

 

『すまない…ハジメよ。汝にはすることがあるのだ。辛いとは思うが、頼まれてはくれぬか』

 

そうだ、忘れていた。心地よさに身を任せていた。俺はもう『特別』なんだから、流されちゃいけないんだ。俺はもう、尖っているのだから。

 

『汝は必ずや天誅を与えなくてはならない。汝を追い詰めた者に、汝を認めてくれなかったものに』

 

ああ、嫉妬に支配されそうになる。しかし、この感情ももう終わりだ。歓喜に鼻歌を歌う。ああ、ひたすらに、いい気分だ。

 

 

そうでしょう、蛇。どうやって天誅を与えようか?

 

 

蛇は俺のことを認めてくれる。蛇は、俺のことを助けてくれる。だから、忠誠を誓うのだ。

 

『我が力を汝に振り込もう。不死だけではない。もっと特別な力を授けよう』

 

蛇は俺を特別にしてくれる。蛇は俺に力を分け与えてくれる。

 

『さあ、我とともにこの世を作り直そうではないか。原罪をともに贖罪するのだ』

 

蛇は俺とともに来てくれる。蛇は常に俺とともにある。

 

蛇よ、ともにいこう。蛇よ、ともに歩こう。貴方が這うと言うなら、私も這っていこう。

 

俺は歩いた。不思議と、ヤツラの場所は感覚で分かった。視界が開いた。きれいだった。

 

蛇とともに、憎悪とともに、嫉妬とともに。歩いて、歩いて、歩いた。そして、這った。

 

____________________________________________________

 

動いて、動いて、動き続けた後。

 

「なんなんだお前えええ!!」

 

うるさい。こいつも、天誅である。

 

目の前の正義実現委員会に、俺は手を振るった。蛇が現れ、まっすぐに首へ噛み付いた。

 

「ぐあっ!あ…ああ…あ、()()…め…」

 

力なく倒れた。死んではいない。殺す対象は、先生のみだ。

 

理由ない殺しはしない。それは正義ではない。それは俺の望みではない。俺は、俺の望みを果たすのみだ。

 

俺は進み続けた。より罪が濃い方へ。

 

立ち向かったものは全員倒れた。けれど、全員が希望を持っていた。

 

やはり、先生である。先生が原罪である。

 

俺の衝動は、先生を殺すことによってのみ抑えることができる。

 

再び嫉妬を強くした。許せない。ああ、忘れたはずなのに、やはり、先生は俺の癌だ。取り除かなくては、ならない。

 

そんな事を考えると、罪が一番濃いところへ着いた。目の前では信じられない光景が広がっていた。その光景は、まさしく楽園であった。

 

 

 

 

「私には好きなものがあります!!」

 

希望を撒き散らして、少し離れた場所でそう言う少女がいた。妬みがさらに強くなる。妬みがさらに支配する。

 

「平凡で…大した個性もない私ですけど、好きなものに関しては譲れません!」

 

何を、言っているんだ?コイツは…。どこが平凡なんだ?コイツが普通だったら、俺はどうなってしまうんだ?

 

「友情で苦難を乗り越え」

 

友情…確かにあった。俺だけかもしれないが、スクワッド達には確かに感じていた感情だった。

 

でも違った。俺はスクワッドの一人に殺された。友情はなかった。俺は捨てられた。

 

それがいくらどうしようもないことであっても、俺は嫌だった。俺の存在意義が失われる気がした。

 

「努力がきちんと報われて」

 

努力はした。したんだ。普通だった俺ができる努力は、なんだってやった。泥水を啜るようなことも、痛いことも、なんでも、なんでも。

 

でも掴めなかった。でも何もできなかった。何をしても、決して報われることはなかった。

 

特別じゃないから、俺は普通だったから。報いは、特別に与えられる祝福だったから。

 

「辛いことは慰めて、お友達と慰めあって」

 

辛かった。それは俺もそうだし、周りもそうだった。でも、慰めはできなかった。俺は、人を上手に慰められるほど器用じゃなかった。

 

できなかった。慰め会えるのは、俺は、慰めを求めるほどの勇気もなかった。なにか、なくなってしまう気がして。

 

でも、先生はできた。それがアズサだ。光を取り戻し、芯を取り戻した。それがアズサだ。それが俺ができなかったことだ。

 

「苦しいことがあっても…誰もが最後は笑顔になれるような!」

 

「そんなハッピーエンドが、私は好きなんです!」

 

その全てが組み合わさってハッピーエンドというなら。きっと俺はそんな事できないだろう。

 

ああ…俺は、ハッピーエンドには向いていないんだ。

 

分かった。なんで俺がこんなに苦しいのか、なんで俺がこんなに辛いのか。

 

この世界はハッピーエンドを望んでいるんだろう。バッドエンドは、嫌いなんだろう。

 

それだったら。俺はこの世界にはいちゃいけないじゃないか。俺は、ハッピーエンドにはいれないから。

 

 

 

 

『そんな事、あってはならない。そうだ、ハジメよ』

 

声が聞こえる。

 

『汝だけが追われるなぞ、あってはならないのだ』

 

そうだ、俺は決めたんだ。俺のために生きるんだって。

 

 

 

「終わりになんてさせません。まだまだ続けて行くんです!私達の物語…」

 

やめろ、黙れ。これ以上、俺を否定するな。

 

「私達の、青春の物語を!!」

 

雲が晴れる。汚らしい青に空が染められる。世界は、どうやらハッピーエンドの味方だそうだ。

 

ああ…そうなのか。世界は、俺を否定するのか。そんなに、ハッピーエンドを望んでいるのか。

 

仮説が真実へ変わる。残酷に、俺の気持ちなど考えずに。俺を否定するように。

 

それだったら…俺は、俺は、世界を殺してやる。

 

世界が俺を認めなきないんだったら、俺が作り変えてやる。ハッピーエンドなんてない。暗い世界に。

 

『ハジメよ、我は汝とともに行こう。世界を作り変えてみせるのだ。楽園を否定しろ』

 

ああ、やってみせるさ。きっと俺は、特別になれたから。きっと、敵が強大でも、そなたがいれば乗り越えられるでしょう。

 

俺は嫉妬に心を任せた。殺してやる。壊してやる。全部、全部。

 

希望を撒き散らすやつ。その希望に従うやつ。その希望にすがるやつ。全員が俺を否定している。

 

それが楽園か、それなら。俺は楽園を落とす。

 

それが、俺のやりたいことであり、使命であり、義務である。

 

憎たらしいほどに澄み切った青い空に、殺意を向けた。俺の世界に青春は要らない。

 

友情も、愛も、希望も、嬉しみも、全部、全部、全部。要らない、要らない、妬ましい。

 

俺は叫んだ。全て壊すために、全て虚しいことを証明するために。

 

己のために、親愛なるもののために。

 

 

 

 

 

 

 

御子を信ずる者は永遠の生命をもち、御子に従わぬ者は生命を見ず、反えって神の怒、その上に止どまるなり。

 

To be continued

 







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