謹・賀・新・年!!
少し遅くなりましたが、更新することができました。ここまで続けてられるのも、見てくれる皆様のお陰です!本当に…。
今年の目標はまずはエタらせないこと!そしてこの小説のクオリティを上げて、赤バーを取ることです!ぜひ皆様応援してくださると、感激の極みでございます。良ければ応援してやってください…。
それでは始まります。どうぞ!
第55話 日々
ガサ、ガサ
まだ少し暗い、ほんのりと蜜柑畑のごとく彩られた東雲の空に、紙と紙が擦れあう音が鶏鳴する。
朝を告げる音。それを俺…佐藤ハジメは発していた。目的は、と聞かれれば、それは生理現象のためである。その名は食事。それを今から俺が用意する。
「お…あった」
ちょっぴり黒ずんだ、菌のような模様をしている麦パンを二枚分見つけた。俺はそれを、鈍い光を放つトースターへと放り込んだ。それが焼ける間に、何処かで買った、ひんやりとした苺ジャムの瓶を掌へ乗せる。
少し力を入れて、ジャムの蓋を開ける。…かったいな。そんな事を思いながら。
チーン!
一際大きい金音とともに、トースターから、
ここはどこであろうか。と言われれば、キヴォトスのどこかの外れ。およそ学生が住むところではないが、俺…いや、俺達はここに居住していた。
「ふわああ……おはよう、ハジメ」
欠伸とともにやってきたのは、藍の枝毛を気にしている、錠前サオリだった。
そう、今現在のところ、俺はこの錠前サオリと共に住んでいるのだ。
「おお、おはよう、サオリ。ご飯できたぞ」
「いつもいつも…すまないな」
サオリは目を擦りながら、吸い込まれるように床へと座った。お金の関係で、ここにはテーブルしかないが、それで十分だ。
ジャムを塗りたくられただけのトーストを、無機質な紙皿へ乗っけて二つ置く。同時に、俺も床へと座る。
まだ冷たい絨毯の感触が滲みのように伝わる。これでも良いほうだ。アリウスにいた頃は絨毯も何もなかったから。贅沢はいってられない。
「「いただきます」」
食事の掛け声をして、俺たちはパンを囓った。やはりと言うべきか、石のように硬いパンだ。ごりごりと歯から軋む音が聞こえる。
「…すまないな、ハジメ。こんなものしか買えなくて…」
シュンとした顔でサオリはそう言う。どうやら、最近バイトで金を踏み倒されたらしく、収入がパーになったそうだ。そのせいか、すっかりと落ちたような顔は、さらに暗くなっていく。俺はそれを、見ていられなかった。
「いやあ、そんなこと大丈夫だ。これから稼いでいけばいいし…」
パンを噛りながら、俺はサオリを慰める。ほんの少しだけ、光が灯った気がした。そこですかさず、俺はある要求をしようと口を開いた。
「それでなんだが…サオリ。俺もバイトをするっていうのは…」
そう、それが俺の要求。サオリだけに働かせて、それで金が無いと言うのはおかしい。であるから、俺もできることなら働きたい。
しかし、サオリの顔は再び暗くなり、もはや怒気すらをも感じ取れる。持たれたパンから、ミシミシと折るような音が冷たく聞こえる。
「だめだ!……お前はヘイローがないんだぞ?!わかっているのか…!!」
サオリはそう言うと、無言で、再びむしゃむしゃとパンを貪り始めた。…気の所為か、先程よりも噛む力が強い気がする…。そう、最近の悩みはこれだ…過保護にもほどがある、ということだ。
サオリの同伴がなければ、家の外へと足を踏み出すことは不可能だし、あったとしても、それは好まれない。すぐに帰らせれてしまう。
確かに、俺は一発でも弾丸を受けたら死んでしまう、キヴォトス内では恐ろしいほどの脆弱だが、それでいてもこれは不自然だ。
…やはり、あの出来事が関連しているのだろう。俺が一回死にかけた…というより、死んでしまったから。
どうして生き残ったのかは、自分でも良くわからない。どこかで漂っていたら、急に引き揚げられたような感覚だった。
だけれども、こうして生き残ったのだから、誇らしく生きていく必要がある、と俺は思う。…自分でも、俺は変わったなと思った。
そうしながら、無言で紅ジャムの強い甘さに舌鼓を打ち続ける。なんとも素朴な味だ。今の現状を表すようだ。俺は悲観した。
「よいしょっ…と。ごちそうさま」
俺はふわりと紙皿とともに立ち上がって、さらなる仕事…お弁当の用意のために、形容するならキッチンと呼べるであろう箇所へと向かう。
最近は、料理しかしていない。いや、これも十分いいことだが…やはり、俺の願望、全てを見たい、という願望からはどうしても離れている。
こんな感じで、俺が家事、サオリがバイトという感じで生活は回っている。まあ不満点はない…というと嘘になるが、上手く回っているとは思う。
途中までできた弁当の完成に取り掛かる。おにぎりはもう作ってあるから…あとはおかずだけだ。
サオリが採ってきた野草をまな板の上へ出す。これはヒヨリの知識だ。あいつの食い意地にはいつも驚かされる。
寂れた一室に際立つ、銀にまたたく包丁を持つ。日本にいたときから自炊はしていたので、何の抵抗もない。
トン、トン、トン
野草を刻みながら、これからについて想う。このサイクルで、俺の生活は終わるのか、ということを。でも、それでもいいかもしれない。…
でも、俺は強欲なんだ。俺は見てみたい。このキヴォトスという世界の全てを、そして、真実を。そんなどうしようともない欲求が、噴水のように溢れて、そして周囲に浸り落ちるのだ。
ぱらりと、ぐつぐつ沸き立つ鍋に刻まれた草を入れる。同時に、作り置きしていた煮豆を取り出し、一つ手に取って、口へと放り込んでみた。
甘すぎるでもない、程よく、優しい甘さが舌を触る。成功だ、よくできていると思う。
それらを弁当箱に詰めながら、俺は計画を立てる。そう、少し悪い計画を、だ。
そうこうすると、アリウスの白いコートを羽織ったサオリが、まだ目を擦りながら近くへと寄ってくる。…罪悪感が出てくる。俺も、もっとサオリの助けになりたい、そう思った。
「ほら、サオリ。弁当だ」
そんなサオリに、弁当を手渡す。彼女はそれを、ぎゅうっと抱きしめた後に、背負われたバッグへと静かに送り込んだ。
「ああ、ありがとう、ハジメ」
いつもの日常の風景。もう繰り返されたことであるのに、頬が自然と、初桜のような初々しい赤に染まる。それは両方とも、同じことだった。
「いってきます、ハジメ」
「いってらっしゃい、サオリ」
サオリはそう言うと、惜しむように粘っこく、ドアに残りながらここを去った。空の色は、薄明の茜色に、幽然と彩られていた。
俺はその儀式を済ませると、ほんの一分程度、玄関に立ってぴしりと動かなかった。
「…よし!」
サオリの足音が聞こえなくなったことを確認して、俺は久し振りの身支度を始めた。そして、密かに隠してあったバッグを持ち、確認を行った。
気分はるんるんだ。なんせ、この世界に復帰してから始めての、自由な外出だ。ずっと考えていたこと、それが実行できると思うと、躍動は止まることはなかった。
ほんの一握りのお金、ぼろぼろにひび割れている黒いスマホ。黄ばんで、ところどころ破れている地図…ああ、あのアリウスの生活が思い出される。
しかし、それは悪い意味ではない。ただただ、楽しかった記憶が、再生するように想起させられていた。
…それを思うと、心残りの事があった。アリウスのことだ。残っている生徒はいる筈だ、一体、どう過ごしているのだろうか…いや、もはや関係ないとわり捨ててしまうのも、一応可能ではある。しかし、俺の魂はそれを真っ向から否定していた。
向き合え、立ち向かえ、話し合え、と、魂言が追い風のように押し寄せる。俺はそれを、心地よいと感じた。
それに押されるようにして、俺は生の光へと足を踏み入れた。何者も介していないその光は、とても明るかった。
フードを被る。身元を隠す意味もあるが、光から身を隠す意味のほうが強かった。俺には、あまりにも眩しすぎたのだ。
「それじゃ…いってきます」
誰に言うわけでもない独り言が、解放の象徴である晴空へと、跳び上がるように溶けた。俺は思った、残されたものも同じく、こんなに強い光を放っている大空を見あげているのだろうか、ということを。
俺は駆けた。気持ちが良かった。
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ブラックマーケット。それは、キヴォトスの奥底に存在する、何でもある商店街である。
何である、というのは誇張ではない。銃弾という目新しくもないものから、煙草、酒、危険な薬など、本当に様々なものが、様々なルートで仕入れられている。
これが意味するのは、ここは合法ではないということである。つまり、治安が悪い、とも言い変えられる。
キヴォトスは確かに治安が悪い。しかし、それは罰せられるし、なにせ良識を持つものが多い。だから、なんとかしてキヴォトスは学園都市としての体裁を保っていられているのだ。
だが、ここは別だ。良識のないものが、法外の地で大人しく買い物なんてするわけがない。…やはり、後ろの方から騒音がやってきた。
「やめてくださいいい〜!!」
「まて!金出せ!トリニティのお嬢さんやい!!」
いかにも俗っぽい、不良らしい生徒達が、群をなして、トリニティの校章をつけている、奇怪な人形を持った一生徒を追いかけ回している。
ちょうどこんな風に、カツアゲなどもはや日常茶飯事。特に珍しくも何ともない光景。しかし、それを見て、目を輝かせているものが一人、隅からそれを見守っていた。
それは、逃げている少女がこちらに来ることを確認した後に、その少女のみだけに見えるように手招きして、こう言った。
「ほら、こっちだ」
高揚を抑えきれない声。それは少女のみをこちらへ注目させるに十分だった。
「ふえ!?…わかりました」
少女はそう言うと、粘着質な蜘蛛の巣で飾られている、狭く、そして暗い、路地の間へ入っていった。しかし、不良達は気づいていないのか、明後日の方向へと、バタバタとした足音と、きめ細やかな埃を立てながら消えていった。
「あ、ありがとう…ございます」
ぱたりと尻もちをついた彼女は、その純白の制服の裾で汗を拭い、人形を目視で確認してから、男の方へと向いた。
男の顔は、よく見えなかった。深くフードを被っており、さらに周囲も、日の光があまり当たらず、陰となっていたからである。
「いいってことよ。お嬢……さん?!」
男はそう得意げに言いかけたが、少女の顔を見て、噛まれたかのような声を上げた。その勢いとともに、被られたフードがふわりと脱げた。
少女の目に映ったのは、黒い髪、黒い瞳、それらが光沢を保ちながら、暴風に吹かれる林のようにざわめく様子だった。
その顔は、あの時に見た、悲しい顔と良くにていた。
「阿慈谷ヒフミ!?」
「アズサちゃんの…アレ!?」
甲高い、そして重低音が、ブラックマーケットの一角にじんわりと響いた。
それらは、出会いの春のような曲を、極めて
To be continued
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