ちょっと地の文短い気がする。改善していくう
私たちが初めてハジメと会ったのは、秋風が校舎を揺らし、少し肌寒く感じさせる季節だった。
それはいつもと同じ日常であった。薄暗く、目をしっかりと開けることすら叶わな、いつものアリウスの路地の中で、私達ただただ歩いているだけだった。
しかし、その日常は崩れた。私達は久しぶりの驚愕に口を身を震わせた。なんせ生まれて初めての外部の人間を見たのだから。純白のシャツと、灰色の、少しチェック柄が入ったズボン。そのどれもが新鮮であった。
そして、最も特徴的だったのは、キヴォトスではおそらく唯一の、ヘイローがない男だったという点だ。それは、私たちにとって、とても『
少し裏返っている声、焦点が合っていない目、そのどれもが明らかに不審だったので威嚇射撃をしたところ、変なことを叫びながら獣のように逃げていったので、私達は確保するために後をついた。
ヘイローがない影響か、体力がなかったので追いかけるのは楽だった。しかし、あいつの足を撃ったときは驚いた。なんせ一発で血が出て、すぐにパタリと動けなくなったのだから。
その後適当に近くのとこで寝かせたんだが……なに?なぜ生かしたか?…私は、撃たれて動かなくなったあいつを見て、生にしがみついているあいつを見て、思ったんだ。かわいそうだと、死なせたくないと。
それはエゴなのだろう。しかし、それが醜い偽善であっても、甘い善であっても、私は猛烈に、それをしなければならないと感じたんだ。
その場では情報提供という名目で治療をしたが、やはりそのような同情の感情があったのだと思う。
その感情が湧くことに、私たちはまだ安心できた。まだ、私達は人間なのであると。
それからヤツ…ハジメの話を聞くと、到底信じられない事を喋っていた。
カナガワケン?ヨコハマ?なんてこの世界にはないし、それによく見てみると、トリニティでも、ゲヘナでも、ミレニアムでもない、何処かも分からない制服を着ていた。
到底信用なぞできない。……しかし、私は奴を信じてみることにした。
奴を信じることが、アリウスに立ちこめる暗雲を晴らす方法だと信じて。
そこからはトントン拍子に話が進んだ。紆余曲折あったが、マダムから正式にアリウスの生徒と認められた。
しかし、それから謎の集団にハジメは接触を取るようになった。黒い異形、木人形のような異形。それら全てに、私は人間性を感じることはできなかった…。だから、いつもハジメに忠告をしてるんだがなあ…。
まあ、それは置いておいて…『人には衣食住が必要だろ?』といったあいつはすごかったな。私たちを巻き込んで作り上げていった。最初はとても大変そうだったな…。
野草を探すために睡眠をとらないなんてことは日常茶飯事で、朝になっても見つからない。なんてことはざらだった。
特に家はすごかった。あいつが『一緒に住ませてくれたり……?』って言ったときは、ミサキがすごい目でアイツのことを見ていたな。別に私はいいと思うんだが…。
あとでミサキに話を聞くと、『男の子があんな事言うときは下心しかないんだよ』と言っていた。…下心ってなんだ?
でもそこから住むところがなくなったハジメは努力した。それはもうすごかった。ささやかにハジメの手伝いをしてたが、よほどいいところに住みたかったのか、地下を掘って水道を引いたり、壁を補強したり、いろいろなことをしていた。
今では私たちの家より快適なぐらいで、あんなにハジメと住むのに反対していたミサキも、今は高い頻度でハジメの家に通っている。まあ、かくいう私も週1程度では通っているが……。
そこから一月くらい経った頃。アリウスの生徒として、ハジメも訓練を始めた。
訓練はとてもつらそうで、負荷を減らしているところも見られた。一応私はあいつの上に立つ存在であるので叱らなければいけないが、ハジメにはヘイローが無い、自分の身を守るため、賢明な判断だと思う。それはそれとして叱るが。
しかし……疑問なのだが、ヘイロー無しというのは
模擬戦でも、銃弾もそこそこ当たっているはずで、かなり血を流しているのも見られたが、聞いても
「いやいや、当たってないさ。証拠として、ヘイロー無しの俺が当たったらもっと辛く振る舞うはずだろ?そんな俺を見たことがないだろ?」
と言っていた。……私の目がおかしいのだろうか?少し休暇を考えてみる。まあ、取れる未来は見えないが。
ハジメがアリウスの生徒になってから、色々と変わった。アリウスの生徒らはトリニティらへの憎しみや、アリウスで教えられる虚無に染まっている。
だけど、奴は違うところから来た者だ。私たちが色塗られた画家のアイデアブックだとすると、ハジメは空のキャンパスであった。つまり、私たちから見るとハジメは『特別』だった。
そのことをハジメに言うと、あいつはとても喜ぶ。だけど、何か普通の喜びと違うんだ。料理が上手にできた、うまく狩りができた、とは全然違う。言葉では言い表せないけど…。
なにか、熱狂的で、狂信的な…《《不気味》な》影を感じてしまった。
…とにかく、ハジメはいろいろな事をしてくれた。私たちに料理を振る舞ってくれたり、外のお話をしてくれたり、訓練の愚痴を聞いてくれたり、そんな事をしてくれていて、私たちはとても嬉しかった。
私達は、やっと『青春』ができた気がした。友達と笑い合って、努力して、達成して…。
ハジメがやってきてから半年、もう暖かい風が私たちを迎える季節、アリウスの空は変わらず曇りだが、いつもより明るい気がした。
「………い………おい!錠前さん?」
「ん?ああ、ハジメか」
少し今までのことを振り返っていると、私、……いや、私たちに光を与えてくれたハジメがいた。噂をすれば何とやら……だな。
「はあ……言っただろう?いいかげんサオリと呼べと……」
私はちょっと語気を強めた。予想通り、ヤツは一瞬で溶かされた飴のように小さく、萎縮していた。
「あっと……すいません。錠……サオリさん」
「『さん』はいらない。…これも、この前言っただろう?」
私はジリジリと間を詰めて言ってやった。
この前この謎に距離をとるやつに言ったんだ。他人行儀な話し方はやめろ。と。ハジメと私たちはもう赤の他人と言える仲ではないはずだから、そんな話し方をされるとなんか……心がモヤモヤするんだ。
「あー…わかったわかった………サ…サオリ?」
獅子に睨まれた蛇のように、ぷるぷると震えながら、蚊の鳴くような声でハジメがそう言った。
「………まあ80点って言ったところか」
もっと堂々と、大きな声で。…まあ、及第点だ。
「なにが!?名前呼ぶのに点数もクソもある!?」
けど面と向かって言われるとちょっと……なぜか顔が熱くなるな。なんでだろう?
まあそんなことより、今日はアリウス分校高等部の入学式だ。ついにアツコが入学する。そんな記念するべき日に向けて、私とハジメ「あ、いた」「リーダー!ハジメさーん!」「仲間外れはダメだぞ」……皆で準備を始めた。
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今日はめでたい日、なので、普段はトリニティに潜入しているアズサも、この日ばかりはアリウスに戻ってきた。…あのことがあってから、かなり雰囲気が変わった…。
どのように、と言われると難しい。…芦毛の馬が、黒鹿毛に染まったような感じ…?か。…でも、『アレ』は必要なことだったんだ。気持ちは分かるが、気を落とさないでほしい。
それはそれで、これはこれなんだから。
アツコへのサプライズに向けて、私たちは準備を始めた。アツコが好きな花をたくさん用意したり、甘味を用意したり。これらは全てハジメが見つけてくれて、本当に頭が上がらない。
「アツコちゃん喜んでくれるかな…」
うつむきながらヒヨリがいう。自信がなさそうだ。
「おいおい、今更そんな事をいうのか?槌な「ハジメさん?」………ヒヨリ?」
そんなヒヨリを心配したのか、ハジメが声をかけた。……この前、私たちアリウススクワッドであんなに詰めたのに、まだ他人行儀な呼び方をするのか。これはまた再教育が必要だな。
「まあとにかく……きっとはか……アツコも喜んでくれるさ。あいつがあんなに好きな花をこんだけ集めてきたんだぜ?」
自信満々にハジメが言った。その言葉に濁りはなく、金剛石のように純粋であった。同時に、ハジメは飾られた花束を見せびらかした。
そこにあったのは多くの種類の花であったが、目を引くのは白百合であった。それは、他のものよりも、一際輝いていた。それはまるで、夜空の頂上に輝く星のようであった。
「ああ……ふふ、そうだね。ハジメの
ミサキがいたずらっぽく、少しにやりとして言った。
「いやミサキィ、
「いーや。ハジメじゃないとダメだよ。私たちがやっても姫は喜ぶだろうけど、ハジメがやったらもうたまらないだろうよ」
さらに口角をあげながらミサキはまくし立てる。珍しい。まあ、かくいう私も
「いやいや……失敗しても知らないぞ?」
ハジメは信じられないものをみるような目で私たちを見つめた。相変わらずこの男は自己評価が低い。謙虚というのはいいものだが、もう少し直してほしい。
「おい、もうそろそろ入学式が始まるぞ」
アズサの一言で、私たちに少し緊張が走った。特に私は一段と強いものが走った。なぜなら、今から新入生たちにアリウススクワッドのリーダーとして、スピーチを行うからだ。
これが初めての演説。失敗したらどうしよう、かんだらどうしよう、そんな事が頭をよぎって、真っ白にさせる。
「おい、サオリ」
足のすくみとともに百会*1の方へ昇る緊張感に抗っているとき、ハジメが声をかけた。
「頑張ってこい」
励ましの言葉をかけてくれた。その言葉は、暖かく、力強く、いっぱいの薪のような言葉であった。
「………そうだね。サオリ姉さん、いってらっしゃい」
「サオリさん、頑張ってきてください!」
「ああ、サオリ。かましてやれ」
「かましちゃいけないだろ…アズサ」
皆が私に激励をかけてくれる。………本当に、いい仲間に巡り合ったものだ。心が浮つく。
「ふふっ…それじゃ、いってきます」
もう、緊張はない。不安もない。これからも、皆が揃えば何でもできる気がした。
そんな言葉に心を弾ませ、私は演台に向かってかかとを強く蹴っていった。
To be continued
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あと、気づいた人もいるかも知れませんが、この小説はキリスト教をモチーフとしています。少し知っておいたら、この小説はもっと楽しめるかも知れません!