【遊戯王OCG×セトキサ】魔竜閣ドラルヴァイスを救う白き龍   作:生徒会副長

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前編/魔竜閣との戦い

 重々しい曇天の下、毒々しい紫の霧が立ち込める中、その竜は荒野を征く。

 その名は『魔竜閣ドラルヴァイス』。絶望の闇を思わせる黒と紫の鱗に全身が覆われ、痛々しい棘が全身から生えた巨竜である。この竜は、黒蝕病という疫病の元凶となっていた。

 黒蝕病に罹患すると、黒い痣が皮膚に現れる。やがて病が進行するにつれ、その痣が全身に広がり、最後には燃え尽きた炭のように真っ黒な死体と化す。

 いま複数の岩陰から、魔竜閣ドラルヴァイスの様子を伺う者達がいる。老若男女が混合し、その数は合計で30人ほど。黒蝕病で住んでいた村が存亡の危機に陥り、その後村が竜の軍勢に襲われて滅び──そんな悲劇に遭ってなお、幸か不幸か生き延びた者達だ。

 リーダー格の屈強な男──旧ノクスヴィル村の村長が、側近の男に小声で告げた。

 

「征くぞ。我らノクスヴィル村の意地を示す。病魔や魔竜に殺された家族や朋友の仇を討つ。悲劇の幕を、ノクスヴィルにて下ろすのだ」

 

 側近の若い男が頷き、「ピィー!」と口笛を鳴らした。それを合図に、ノクスヴィル村の生き残り達は、魔竜閣ドラルヴァイスの前に踊り出た。1人は剣と盾を持つ青年。1人は槍を構えた老兵の男。1人は弓を携えた少女。1人は魔杖を手にした若い女性であった。

 魔竜閣ドラルヴァイスは「グォォオオオオ!!」と天地を震撼させる咆哮を上げる。女性を中心に半分近くの者の足が竦むが、何人かの男達は勇気と憎悪を振り絞ってドラゴンに斬り掛かった。人と竜、分かり合えぬ者同士の死闘が始まったのだ。

 槍を竜の足に突き出しながら、老兵の男は過去に思いを馳せる。

 

(ヴァルナちゃんが生きておったら、もう少し楽に戦えたものを……!)

 

 ヴァルナとは、ノクスヴィル村が誇る一番の美少女にして、一番の剣客だった。村の男の誰よりも強かった。

 ヴァルナとの結婚を望む男は多かった。しかし──。

 

『あたしから一本取れないような男とは結婚しないもんね!』

 

 そう彼女から明るい笑顔で言われ、決闘に敗れる男が生傷をつけて帰ってくるのが、ノクスヴィル村の平和な日常だった。

 黒蝕病が村で流行り始めた頃、ヴァルナは旅に出た。黒蝕病を治す霊薬──その材料である、竜角を狩猟する為だった。

 

『待ってて! あたしが竜角を、いっぱい獲ってくるから!』

 

 それっきり、彼女は帰ってこなかった。彼女が帰って来る前に、村は竜の軍勢に焼かれて滅びた。ヴァルナは竜に食われて死んでしまったのだろう──と、村の生き残り達は考えた。

 

(ヴァルナちゃん……。お前の仇は取る!)

 

 老兵は憎しみと怒りを込めて、槍を突き立てた。5回も、10回も。そして20回目で、槍は竜の鱗を貫き、青い血が大地を濡らした。

 

「グォォオオオオン!!」

 

 その突きが初めての有効打であった。魔竜閣はたまらず悲鳴を上げる。振り回した顎と尻尾から、接近戦を引き受けた者達が必死に逃れる。

 リーダー格の男が叫んだ。

 

「この数で囲っているんだ! 倒せない相手じゃない! 時間がかかってもいい! この竜を殺せ! ノクスヴィルの意地を示せ! 仇を討ち、悲劇を断ち切れ!!」

 

 他の者達は「おおぉぉぉぉ!!」と、その声に応じた。

 もっと勇気を! もっと怒りを! もっと憎悪を!

 旧ノクスヴィル村民が更に攻勢を強めようとした──その時だった。

 

『こぉぉらぁぁぁぁああああーーーーっ!!』

 

 戦場とは場違いな、可憐な乙女の声が、天から響いた。

 未だ曇天が続く中、空から急降下するその白き龍だけが、キラキラと光輝いていた。

 流星のように飛来したその白き龍は、紫の龍に強烈な頭突きを食らわせ、更に太くしなやかな尾で魔竜閣ドラルヴァイスの巨体を叩き飛ばした。

 白き龍は、老いた神官と若い神官、二人の男を乗せていた。老いた神官の左目には黄金の義眼が埋まっている。若い神官の手には黄金の錫杖があった。

 白き龍の、澄んだ空のように青い眼が煌めいたのを見て、男達が叫んだ。

 

「おお! あれは伝説の……! 時空を超え、勝利をもたらす至高の龍! 青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)!!」

「黒き竜は可能性をもたらし、白き龍は勝利をもたらす! 伝説は本当だった!」

「正義は我らノクスヴィルを見捨てなかった! 悪しき病魔と竜はここで滅びるのだ!」

 

 わぁっと歓声を上げるノクスヴィルの民。しかし、白き龍はくるりと振り返り……彼らを叱った。

 

『事情を知らない貴方がたに言っても詮無きことですけどね! あの竜を襲うのはやめてあげてください! 貴方がただけは……貴方がただけは、あの竜と戦ってはいけません! 憎んではいけません!』

「な……何故です!? 白き龍よ!?」

 

 リーダー格の男が、さっと平服してから、続けて訊ねた。他の者達も白き龍と神官に平服していた。

 

「白き龍よ。それに神官とおぼしきお二人方。あの竜──魔竜閣ドラルヴァイスは、疫病を撒き散らす恐ろしい竜です! それに、あの竜とよく似た棘や鱗を持つ竜の軍勢に、我らノクスヴィルの村は滅ぼされました! ここで奴を殺さねば、悲劇は繰り返されます! どうかあの竜に死の裁きを!」

 

 すると、若い神官が口を開いた。

 

「ノクスヴィルの民よ。私のことは神官セトと呼ぶがいい。お前達の怒りと憎しみは分からぬでもない。だが終わらぬぞ、お前達があの竜を殺すだけでは。かように憎悪に呑まれた心であの竜を殺してしまえば──」

 

 すぅっと、セトは一呼吸置く。余りの理不尽に対して燃えそうになる、自身の怒りと憎悪を抑えるように。そして彼は真実を告げた。

 

「あの竜が纏う怨念に取り憑かれ、お前達が次の魔竜閣ドラルヴァイスに成り果てるだろう。あの竜とて──怨念に呑まれた、竜角の狩猟者ヴァルナであるのだしな……」

 

 民達はハッと顔を上げた。竜角の狩猟者ヴァルナ──その名が、神官セトの口から出ると思っていなかったのだ。

 リーダー格の男が聞き返した。

 

「いま……。ヴァルナが……なんと……!?」

 

 カッと目を見開き、セトは再度告げた。

 

「あの魔竜閣ドラルヴァイスが! お前達がノクスヴィル村で共に生きた! 女剣士ヴァルナの変わり果てた姿だと言っている!!」

 

 ざわざわと、民達は騒ぎ始めた。

 

「あの可愛いヴァルナちゃんが……あの恐ろしい魔竜閣に?」

「信じられない……」

「何かの間違いじゃないかしら……」

 

 すると、白き龍が淡い光を放ちながら思念波で伝えた。

 

『私のもう一つの姿を見れば……少しは信用なされますか……?』

 

 すると、白き龍の巨体が透けて消え、代わりに銀髪の女性が現れた。その女性は白き龍の思念波と同じ声色で言った。

 

「白き龍……青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)のもう一つの姿……キサラと申します。古今東西、女が龍に、龍が女になるお話など、幾らでもあるのですよ」

 

 それでもなお民達は首を傾げる。すると老神官が言った。

 

「我の名はアクナディン。お前達に我が千年宝物(アイテム)である、千年眼の力を見せてやろう。そうすれば流石に信じるであろう」

 

 アクナディンくるりと振り返りは、身悶える魔竜閣ドラルヴァイスを千年眼で見据えた。

 

「我が千年眼の力によりて──その竜の記憶と真実をここに示す!」

 

 カッと、日が差すように千年眼が輝くと、その先で何かの映像が投影され始めた──。

 

 ──その映像の中で、大剣を持つ女剣士が、竜を狩り殺していた。映っているだけで3匹。返り血で濡れながら、その少女は明るい笑みを浮かべた。

 

『この調子で竜角を集めれば……。霊薬を作れる……! ノクスヴィルの皆を救える……!』

 

 ──映像が切り替わる。黒い炎がプスプスと燻るノクスヴィルの村の前で、竜角の狩猟者ヴァルナは膝をついていた。呆然とした表情で。

 

『なんっ……で……。村が……ドラゴンに……?』

 

 すると彼女の身体に、青白く不気味なものが絡みついてきた。

 それは今まで、彼女が狩り殺してきた竜の怨念だった。

 

『うっ……うぁ……っ!?』

 

 故郷が滅びた絶望──心の闇に、竜の怨念が入り込み、彼女の心に直接語りかけた。そして彼女は真実を知ってしまった。

 

『あたしが……あたしが……竜を狩ったせいで……? お前達は……あたしから逃げるために……ノクスヴィル村まで……?』

 

 すると、彼女の鎧が生物のように蠢いた。

 

『えっ……? なに……? 鎧……が……』

 

 カビが広がるように、鎧は表面積を広げ、根を張り、彼女の白い肌を侵食していく。さらに、鎧から痛々しい棘まで生え始めた。

 それはまさに、魔竜閣ドラグヴァイズとよく似た形状で──。

 

『うぐ……うぅっ……。や、やめろ……! だ、誰かぁ……。誰か……助け……て……!』

 

 当時、村人達はとっくに逃げた後だったのだ。故に、その最後の願いは誰にも届かなかった──。

 

 ──映像が切り替わる。痛々しい棘が生え、グチュグチュと蠢く鎧を身に纏った女剣士が、ひたすら殺戮を繰り返していた。虚ろな眼をしたままで。

 ある時は獣を。

 ある時は旅人を。

 ある時は竜を。

 殺した後は、その死肉をガツガツと貪り食った。本能が赴くままに。

 

『憎い……ニクイ……』

 

 口から鮮血を垂らしながら、その化け物──竜核の呪霊者は、人間に似た言葉を発する。

 

『竜を殺す……! ドウホウのカタキをウツタメに……! ニンゲンをコロス……! 故郷の仇を討つために……!』

 

 そこまで言い切ってから、ふと、竜核の呪霊者はカクンと首を傾げた。

 

「人間……? リュウ……? 故郷……? ドウホウ……? 分からない……ワカラナイ……。クハ……クハハ……はははっ……」

 

 壊れた人形のように、彼女は泣きながら笑っていた。その涙も、笑い声も、誰も見てはいないし、誰も聞いてはいなかった──。

 乾いた笑い声が続く中、彼女の全身が黒い靄と蠢く鎧に覆われていく。

 おぞましい転生が始まっていた。今まで剣を握っていた、ほどよく引き締まって美しい筋肉がついていた腕は──黒い爪が生え、岩のような鱗に覆われた剛腕と化した。大きめのヒップラインに見合う悩ましい女体の曲線美を描いていた脚は、巨木のように太くなった。小さめで端正な顔が竜の肉と鱗に覆われた後に生えてきたのは──大蛇のように長い首と、人の上半身ぐらいは丸齧りできるであろう大きな顎だ。

 

 ──こうして竜角の狩猟者ヴァルナは、竜角の呪霊者を経て、魔竜閣ドラルヴァイスと化したのだった。それが、千年眼が見せた真実だった……。

 

 

 ノクスヴィルの民達は皆、泣いていた。自分達の大切な仲間、大好きだったヴァルナに降りかかった、悲劇と理不尽に想いを馳せて。

 リーダー格の男が言った。映像と魔竜閣に目を向けていた、三人の背中に。

 

「神官セト様……! アクナディン様! キサラ様! どうか……どうか……。ヴァルナを救ってください! あの子は私達を……村を救う為に竜を狩っていただけなんです! 人が人を救う為に戦い歩んだ道が、何故悲劇や絶望に至らねばならないのですか!? もう……間に合わないのですか!?」

「間に合う」

 

 はっきりと、即座に、セトは断言した。

 

「竜が人を蝕み、人が竜を狩る運命を、我らがこの手で粉砕してやる」

 

 セトが千年錫杖を構える。魔竜閣はよろよろと立ち上がりかけているが、その身体とズレるように、半透明なもう一体の魔竜閣がうっすらと見えた。

 千年錫杖が神聖な光を放つ。

 

「千年錫杖の力によりて、魔竜閣ドラルヴァイスの肉体と霊体を切り離す! なれど、竜角の狩猟者ヴァルナの魂のみ、その肉体に残れ!!」

 

 すると、半透明な魔竜閣はすぅっと煙のように浮き上がり、そして実体化した。実体化した霊体のドラルヴァイスは、ズンッと音を立て、生身のドラルヴァイスと並び立つ。

 魔竜閣ドラルヴァイスを殺せばヴァルナも死ぬという八方塞がり。だがそれは、霊体の魔竜閣だけを倒してから、生身の魔竜閣の中に残ったヴァルナの魂を救えばいいという活路ある道に姿を変えた。

 但し、魔竜閣ドラルヴァイスが2体になったという問題はあるのだが。

 

「キサラ! 頼む!」

「はい! 任されました!」

 

 アクナディンとセトは魔竜閣ドラルヴァイスが2体という状況を維持する為に力を費やさねばならない。戦う役回りはキサラだ。

 キサラの身体が透けていき、光り輝く。太陽を思わせる光の中から、その龍は再び召喚された。

 

『我が名は──強靭にして、無敵にして、最強の龍! 青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)! いざ尋常に勝負です、魔竜閣ドラルヴァイス!』

 

 飛び出した白き龍は、勢いそのまま霊体の魔竜閣に体当たりをぶつける。

 本能の赴くまま噛みつこうとする生身の魔竜閣に対し、カウンターで白い尻尾を打ち据える。

 生身の魔竜閣にはヴァルナの魂が入っているが、肉体が宿す本能が強過ぎてヴァルナには制御が出来ない。そもそも肉体をまともに制御できるほどの精神力が、今のヴァルナの魂にはない。

 また、青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)には強烈な必殺の破壊砲撃──滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)があるが、今は撃てない。撃てば生身の魔竜閣を巻き込んでしまう。

 キサラは必殺技を封じられたまま、2対1の戦いを演じるしか無いのだ。

 片方の魔竜閣と取っ組み合いをしていると、もう片方の魔竜閣が白き龍の翼に噛みついてくる。

 

『痛いですねっ! このぉ!』

 

 尻尾で薙ぎ払おうとするも、そちらに注意と力を取られ、取っ組み合いは押し負けてしまう。

 倒れた白き龍に対し、魔竜閣2体は猛毒のブレスを浴びせかける。紫色の暴風に蝕まれ、数枚の鱗と、足の爪が一本腐り落ちた。

 

『もう! 属性反発作用じゃあるまいし!』

 

 白き龍が尻尾で薙ぎ払って反撃する。一進一退の攻防が続いた。

 

「頑張れ! ブルーアイズ!」

「ヴァルナちゃん! お願い! 目を覚まして!」

 

 ノクスヴィルの民が応援していた。キサラを、魔竜閣の肉体に囚われたヴァルナを。

 しかしその応援も虚しく、決着の時は訪れる。

 腐食に苛まれる白き龍が、片方の魔竜閣の突進で突き飛ばされたときだった。

 もう片方の魔竜閣が、タイミングよく、黒炎のブレスを発射した。それは白き龍の身体を呑み込み、黒く燃やしていく。

 

『くっ……ううううぅぅっ!!』

 

 キサラが攻撃に悶える思念が漏れる。その隙に、もう片方の魔竜閣がブレスの溜めを終えてしまった。黒炎のブレスが更に上乗せされ、白き龍の全身を包んでしまう。

 

「う、うわぁ! 負けるなブルーアイズ!」

「勝ってくれぇ!」

 

 ノクスヴィルの民が更に応援するが──しかし。

 ドゴォォォォン……と。それはまるで、城が崩れ去る時のような悲しい音。無情の音。後には黒い火柱が、油を燃やしているかのように、強くしつこく燃えていた。

 

「あぁ……そんな……」

「ブルーアイズが……負けた……?」

 

 ノクスヴィルの民に絶望の色が広がっていく。

 しかし──。

 

「ふぅん……。それはどうかな?」

 

 神官セトは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

 そんな彼の身体が、淡く青い光を纏い始めた。

 彼は静かに、詩を紡いだ。

 深淵の愛を、究極のドラゴンを喚ぶ詩を。

 

「無窮の時──その始原に秘められし、白い力よ……。鳴り交わす魂の響きに震う羽を広げ、蒼の深淵より、蘇れ!」

 

 セトの背後から、1体の龍が舞い上がった。暁の陽光のような5枚の優雅な翼。その翼と背びれには、巫女の鈴や魔除けのピアスや貴婦人のネックレスを思わせる輪状の羽根が連なる。龍でありながら、その腰回りは人間世界の女神像のような曲線美を描く。

 人の常識、龍の限界、世の条理を超越した愛の力が、そこにはあった。その龍の名は──。

 

「ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン!」

『無敵! 破壊! 大喝采! 真の光は──不滅ですっ!』

 

 青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)と共に滅びたかに見えたキサラも、ディープアイズに魂を移してまだ生きている。まだ戦える。

 ディープアイズの優美な翼に白く輝く光が収束していく。その光の正体を、セトは宣言した。

 

「ディープアイズの効果発動! 生体(盤面)を無視し、霊体(ライフ)に直接ダメージを与える!」

 

 セトが千年錫杖を向け、その光の名を明かすと、輝く奔流が2体の魔竜閣を呑み込んだ。

 

「深炎の昇霊龍爆撃(エクストリーム・アニマ)!!」

 

 片方の魔竜閣は身を屈めて怯むだけだ。だがもう片方の魔竜閣──霊体の方は、棘という棘が折れ、黒い鱗が木の葉のように散り、聖なる光に圧倒される。そして──。

 

「グォォオオオオン!!」

 

 断末魔の雄叫びを上げて、怨霊と憎悪で塗り固まった霊体の魔竜閣は──その身を白い灰へと変えて滅び去った……。

 

「グッ……グ……ゴ……」

 

 後に残ったのは半死半生の、“生身の”魔竜閣だ。軽やかに翼をはためかせたディープアイズは、寄り添うように魔竜閣の傍に降り立つ。

 そしてその親鳥のような、優しげで温もりを感じさせる白い翼で、ディープアイズは魔竜閣を包み込んだ。

 魔竜閣の中で苦しみ続けているであろう、竜角の狩猟者ヴァルナを救う為に──。

 

 

 

 

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