我が命をかけるヒーローアカデミア 作:変身成功おじさん
世界総人口のおよそ八割が『個性』と呼ばれる不思議な特殊能力である力を持つ超人社会。
世界は闇と光に別れ、一見調和のとれている世界も、裏では様々な困難と直撃していた。増加する個性を使った悪党……敵、ヴィラン。
飽和していく個性と言う力を持ってヴィランを退治することを生業とした英雄、ヒーロー。
未だに埋まらない異形型とよべる人と異なる形を持つ個性を持った人々への差別、偏見。
年々力が掛け合わさり、増大していく強力な個性……その個性の終点が語るオカルトじみて、尚且つ嫌な説得力を持つ個性終末論。
ふと足を止めたら、足元にグズグズとくすぶる暗部に足を取られそうな世界だ。
そんな世界で、俺は……俺はヒーローになりたかった。泣いている誰かに手を伸ばせる存在でありたかった。例え、それが叶わない夢だとしても……
俺は生まれつき個性をうまく身体に発現できない体質だった。理由は不明……身体の構造的に、個性が宿っている可能性は高いと言うが、何年経っても俺の身体に個性は現れなかった。
個性が宿っているかもしれない、個性を持っているかもしれない。医者の語る希望論や推測に宙ぶらりんにされて、俺は毎日毎日個性が現れるかもしれないと希望を持ち、毎晩その気持ちを砕かれて過ごして来た。
個性が宿っている可能性がある。
その可能性だけがあっても、傍から見れば何の能力も持たない俺は無個性と呼ばれる人達と同然…………それが原因で良くいじめにも合っていた、それが悔しくて身体を鍛えたりとかもしてみたりしたが……やはり、何年経っても個性は現れなかった。
完全に無個性と言い切れたのならきっと、運が悪かったと諦めがついたのだろうか?そんなIFはわからないが……俺はやりきれぬ思いに歯痒さを覚えながら日々を過ごしていた。
そんな俺が中学生に上がり、生活が変わり始めたある日の事だ。学校の健康診断で、気合いの入ったことに血液検査をする日があった。
すると、その血液検査の結果を見てある研究者が俺に会いたいと言ってきたのだ。
なんでそんな事になるのか俺には想像が付かなかったが……何でも、俺に流れる血液、その遺伝子の一部にその研究者が求める物があったらしい。常人にはけして現れるはずのないもので……曰く、その遺伝子が俺の個性の正体……らしい。
折角宿っていた個性も、血液が少し特殊……とことんヒーローになることを拒まれているのかと持っていた。チャンスすら当てあれないなんて……ってな。
そんなある日、その科学者が俺のもとを訪ねてきた。彼は、俺の持つ個性に酷く興味があるという。君ならこの力を扱えるかもしれない……と、彼は俺に対して「とある取引」を持ち掛けた。
『君……変身したくないないかい?』
曰く……彼の研究には俺の持つ個性、それによって生まれ体内を流れる因子が必要不可欠であると、そう語る。もしも自分に協力してくれるのであれば、その研究成果を逐一俺に預けてくれると、……願ってもない相談だが、あまりにも怪しすぎる提案に、俺は訝しんだ。
だから、彼は選別として俺に二つのアイテムを預けてくれた。俺の中の個性と反応し、力を授けてくれるというベルトとスタンプを。
『これは?』
『デモンズドライバー、そしてこっちのハンコはバイスタンプ。私の研究成果の一端さ……これを君に預けよう。』
曰く、常人では本来使いこなせないアイテムだが……俺の持つ遺伝子の呼応させて力を用いれば、本来のデメリットを大幅に軽減して使うことが可能らしい。
手渡されたベルトとスタンプは、見た目こそ玩具のようであるが、その重みや雰囲気の業業しさは玩具のそれではない。自分の中のナニカがピリピリとそのアイテムと呼応するように叫ぶ様だ。
俺は手にした力をギュッと握りしめる。これさえあれば、個性を使える……ヒーローに……成れる……
俺がそんな事を思って顔を顰めていると、研究者の彼は俺の頭に少しデコピンして言う。
『だけど、油断はNOT。その力は隙あらば君を喰らおうとしてくる。君自身のステップアップが必要不可欠……逆に言えば、君が変身し続ければ、その力は絶えず君に答えてくれるはずさ。』
変身……妙に聞き馴染みの良い言葉だ。俺は手渡された力……デモンズドライバーを見つめる。すると、研究者の彼は少し考える素振りを見せると、とある名前を俺に預けてくれた。
『そうだな……CODENAMEは
『仮面、ライダー?』
『YES!!超人社会黎明期、いや、それよりも遥か前に存在した……世界を蝕む悪と戦ったHEROの名前さ。私の憧れでもある。』
すると、彼は俺の頭に軽く手を置いて少しワシャワシャと撫で回すと笑顔を向けて話す。
『最ッ高にCOOLだろ?…………その名に恥じないHEROになってくれよ――御門ヒロト』
この何処か胡散臭いくたチャラい男『研究者カリザキ』そして『デモンズドライバー』との出会いが……俺、御門ヒロトを大きく変えて、ヒーローへの道の第一歩を踏み出させてくれた。
そして、俺は誓う……我が命を掛けて、
――――
時はそれから3年……俺は今、絶大な受難に立ち向かおうとしていた。周りから迫りくる機械人形……仮装敵であれども、その動きは機敏であり、油断したらやられてしまいそうだ。
俺の弱点……変身しなければ弱いと言う点を上手く突かれてしまう。だが、これでも俺は鍛えている。単調な動きしか見せない仮装敵なら攻撃をいなす位はできる。
俺が立つのは、倍率300倍を誇る国内最高峰のヒーロー養成学校、雄英高校の実技入試の場……俺がかねてより憧れていた舞台だ。市街地をそっくりそのまま映したような演習場は、気分を乗らせてくれる。
「標的―――ブッコロ……!!」
「っ!」
俺は身を振り返して後方からの攻撃を避ける……こうすれば、俺を囲む度仮装敵との間にある程度の距離ができる。俺は手にした赤いドライバー……デモンズドライバーを腰に巻き付ける。
デモンズドライバー
そして俺は懐から一つの大型のスタンプ……その名も『スパイダーバイスタンプ』を取り出し、天面のスイッチ『アクティベートノック』(普通にスイッチでいいのに固有名をつけたがる)を押す。……一言、覚悟を示すセリフを呟いて。
「我が命を掛けて……この受難に打ち勝つッ!!」
そして、デモンズドライバーの上部にある朱肉のような『デモンズレッドパッド』にバイスタンプを押印。
仰々しいコーラスが流れ、何処からか糸を吊るして銀色の蜘蛛がぶら下がってくる。バイスタンプをゆっくりと前に突き出し……受け継がれた目覚めのを放つ。
「変身ッ!」
正面のモニター『オーインジェクター』にバイスタンプを再度押印…………俺の周りを蜘蛛の巣が覆いながら変身のコーラスが響く。
(仮面)
繭のように縛り上げる糸を振り払い……俺は変身を完了させる。真っ赤で筋肉質なアンダーラインから、紺色で、横から蜘蛛の巣を張られたような装甲を身にまとう。
ゆっくりと、俺の顔にある8つの瞳が、蒼く点灯した。
「良しッ!先ずは……」
俺御門ヒロトこと、仮面ライダーデモンズは目の前の仮装敵へと向かい合う……この入試、目の前の仮装敵を倒してポイントを稼ぐことが大前提。他の受験者に取られる前に倒さなくては……
そんな事を考えて向かい合い、一歩踏み出そうとした瞬間……
「たっ、助けてくれぇぇぇぇ!!!」
「ッ!?」
誰かの助けを呼ぶ声が聞こえた。罠だろうか?……いや、罠だろうとなんだろうと関係ない……助けを求められたのなら、その声が俺の耳に届いたのなら、手が届くのなら……
「ッッッ!!大丈夫ですかぁぁぁ!?」
俺は咄嗟に蜘蛛の糸のような特殊繊維デモンストリングを壁に貼り付け、まるで大昔に作られた蜘蛛のヒーローのように飛び上がり、声の下へと向かった…………ポイントのある仮装敵完全無視で……
この後も仮装敵と接敵しては同じ様な事の繰り返しで……結局殆どポイントを稼がず終わってしまったのだった。ちゃんちゃん。
――――――
「カリザキさァァァァァん!!!!」
「Oh!どうしたヒロト!」
俺は自宅の一軒家に帰宅するやいなや、同棲している…………と言うか、親を早くに失った俺を引き取って住まわせてくれてるこの家の家主であり、俺の大恩人……デモンズドライバーの開発者、カリザキさんへと泣きついた。
「うううううううあぁぁぁぁぁ!!!!」
「にゅ、入試上手くいかなったのかい?」
「す゛み゛ま゛せ゛ん゛て゛し゛た゛ァァァァァ!!!」
「うん、とりあえず涙を拭きな!その顔ですり寄ってこないで!」
俺は涙と鼻水でズルズルになった顔をタオルで拭いて……事のあらましを話す。全く持って実技入試が上手く行かなかった事と、その理由を……それを聞けば、カリザキさんはゲラゲラと笑ってくる。
「HAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!!ちょっと面白すぎるよBOY!」
「笑い事じゃないです……!!」
俺としてはかなりこたえて居るのにこんなに嘲笑われるとは……結構ショックだ。俺とカリザキさんのデモンズが強いと言うところを見せられなかった。
だけど、カリザキさんは満足気に頷いて呟く。
「うん、俺としてはBetterを越えたBestだね。」
「べ、ベスト?」
何がベストなのだろう……このままだと落ちるのほぼ確実なのだが………
「そうは言っても君、これで落ちたとしても後悔しないだろ?」
「そりゃそーですよ。受験で全員がライバルとはいっても、それが助けない理由になんてならない。そんなので受かるヒーロー科なんて入りたくもない。」
「GOOD!!そんな君だからドライバーを託したんだ!」
そう言って、満足そうに俺が取り出したデモンズドライバーを見つめる。そして、急に立ち上がり両手を広げながら叫ぶ。
「やっぱり、君こそが私の求めた仮面ライダーだ!!素晴らしい!!」
(ビックリした……)
カリザキさんとは一緒に住み始めて3年だが……相変わらずこの人のこういう所はいつもびっくりしてしまう。
「ま、ヒーローを目指す道は他にもある。気負わず全力で行けば良いさ。」
「はい……はいッ!」
「所でヒロト、新しいバイスタンプを開発したんだ、今度使って見せてくれないか?」
「新しい奴ですか!?是非是非―――――」
この出来事から暫くして、届いた合否通知には、『人を助けたポイント数』を刻みこんだレスキューポイントなるシステムが、明らかにされ……怒涛のどんでん返しで雄英高校へと入学する事になる御門ヒロトだったが……それはまた、別の話だ。