新エリー都を翔ぶ黒き鳥   作:謎多き作家

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仕事を終えて

仕事を終え、レイヴンはカルラ達の元に帰還した。

 

ACではなく生身とは言え、久しぶりにそれ相応の相手との戦闘に疲れを感じるレイヴンはカルラの隠れ家まで帰ってくるとヨタヨタと歩く。

 

それを見たカルラはレイヴンに声を掛けた。

 

「レイヴン。疲れたのか?」

 

「うん……久しぶり……に……」

 

「なら、早めに休め。差し支えるからな。機体はいつも通りに八咫烏工造に回しておく」

 

カルラのその言葉にレイヴンは頷くとそのまま寝室へと向かう。

 

「ハンドラー。暗号化通信で連絡があります」

 

「繋げ。リュトロテスからだろう」

 

カルラはそう言って通信を繋げると通信相手はカルラの予想通りリュトロテスからだった。

 

《良くやってくれたハンドラー。おかげで我々の作戦は成功した。報酬は足りてるか?》

 

「あぁ、足りてるさ……それよりもリュトロテス。例のACだが……たかが一機潰して何になる?防衛軍は多数の機体を確保した可能性がある。それを同じ様に修復されれば同じ事の繰り返しだぞ?」

 

《防衛軍は既に同機の修復を多数達成している》

 

リュトロテスのその言葉にカルラは目を見開く。

 

《驚いたか?未知とは言え、防衛軍には技術はあるからな。あのホロウの外のガレージにはその修復を終えた機体が山程あった。ACはあまり無かったがMTと呼ばれる兵器。それが大量にな》

 

「……つまり、陽動は陽動でも我々がそれだったと言うのか?」

 

《すまないなハンドラー。防衛軍は我々の動きを知っていた。だから奴らはあのACを戦場のど真ん中に放置した。たかが一機のACに新人。莫大な金を掛けてまで修復した投棄されていた大量の兵器を失うのと比べたら軽い代償だろう?次いでに精鋭名高いオボルス小隊をそこに派遣してノコノコやって来た敵も潰す。そんな考えが出たのは透けて見えていた。あれは防衛軍に見捨てられるだけでなく釣り餌代わりにされた哀れな奴さ。だが、我々は勝った。防衛軍がオボルス小隊の様な精鋭部隊を置いてまで後生大事に守っていた兵器は今、我々の手の中だ》

 

リュトロテスのその宣言にカルラは何とも言えない雰囲気を見せる中、リュトロテスは続ける。

 

《お前の猟犬を利用した事は謝罪しよう。だが、これも……シルバーの悲劇を繰り返さない為の布石だ。分かってくれとは言わん。だが、私は……二度と戦友を喪いたくないからな……》

 

リュトロテスはそう言って通信を切り、残されたカルラは溜め息をつきながら置かれていたソファーに深く座った所でフリージアが水を持ってきたのに気付き、受け取った。

 

「だそうだぞフリージア。戦友を喪いたくないから防衛軍から強奪したそうだ。シルバーはもういないと言うのにな」

 

「……大胆な事をしますね。あの兵器を使って紛争を拡大させるつもりなのでしょうか?」

 

「さぁな……だが、防衛軍も黙らないだろう……フリージア。近い内にまた仕事が来るだろう。備えを怠るな」

 

「反乱軍からのですか?」

 

フリージアのその言葉にカルラは水を飲んだ後、遠くを見つめる様に窓の外を見る。

 

「何となく……だ」

 

カルラのその言葉にフリージアは困惑するのだった。

________

______

___

 

カルラとフリージアが話し込んでいる中、レイヴンはベットに横になっていたが寝付けなかった。

 

疲れはある……だが、眠れない。

 

眠れば戦友、友人、恩人を死なせる夢を見てしまう。

 

そんな不安をレイヴンは抱き、苦しんでいた。

 

だから、レイヴンはその時に決まってある物を聞いていた。

 

ヘッドフォンを付け、繋がれた機器を操作すると音声データが流れる。

 

《……621、仕事の時間だ》

 

それはACに残されていたハンドラー・ウォルターの音声データで、レイヴンは不安を抱いた時、眠れない夜があればウォルターの音声データの声を聞いていた。

 

《戻ってこい、621……仕事は終わりだ帰投しろ……》

 

レイヴンの不安はウォルターの声に書き消され、消えると同時に目蓋が徐々に重くなっていく。

 

《621、お前は戻って休め……》

 

優しく語り掛けてくれるウォルターの音声データにレイヴンは癒されていく中、眠気がピークに達していく。

 

《良くやった、621……》

 

最後にその言葉を聞いたレイヴンは嬉しそうに微笑みながら眠りについた。

________

______

___

 

レイヴンが眠りについたその頃、防衛軍の基地にある執務室では防衛軍の大佐であるイゾルデが頭を眉間に皺を寄せながら机を指で叩きながら目の前の通信と話していた。

 

「あれが君の話していたAC使い……レイヴンの実力か……記録を見せて貰ったがいくつかの襲撃やオボルス小隊との戦闘を考えれば確かに納得はいくな。おかげで鬼火はカンカンだ。少なくない被害が出たうえにシードが負傷したからな」

 

《ふん。予め忠告した筈だ。"G13"を侮るなとな。奴は貴様達の思う100倍は強いと何度も言った筈だ。生半可な戦力では殲滅されるのがオチだとも言ってやった。奴を追い詰めたいのなら少なくとも送り込んだ馬鹿共の50倍の戦力を追加で用意するべきだったな》

 

通信相手のその言葉にイゾルデは怒る事はなく、確かにとばかりに笑って見せる。

 

「文句を言うなら上に言って貰いたいものだ。反乱軍から押さえた情報から得たたった一機の敵を侮ったのはその上層部だ」

 

《何処の世界でも融通の利かん奴はいる様だな。それで反乱軍とやらはACやMTを何処に運んだ?》

 

「報告によると郊外の放棄された基地の様だな。そこを改修して基地として機能させたらしい。砲台やら現存の機械ユニットを多数配備している。恐らくはACは分からないがMTも投入してくる可能性はある。出来るか?」

 

《うちの役立たず共には良い運動になるだろう。送り込むメンバーは此方で考えるが条件がある》

 

「条件か……あまり無理な事は言わないでくれるか?」

 

イゾルデは何を言い出すのかと面倒事の予感を感じながら聞くと通信相手は当然の様に条件を提示した。

 

《今回の作戦にG13を加えろ。奴を加えれば役立たず共と貴様の部下だけでやるよりも作戦効率は高まるだろう。それが条件だ》

 

やはり面倒事だった。

 

イゾルデは眉間を押さえながら考える。

 

敵対してまだ間もないと言うのにG13ことレイヴンを加えるのはオボルス小隊との考えると最悪だし、何なら上層部だって大損害を与えてくれた者の一人に良い顔をしないだろう。

 

だが、通信相手の戦力の事を考えればシードの抜けた分の穴を補填するには十分だし、拒否されて戦力を著しく低下しても面倒なのだから困るのだ。

 

イゾルデは熟考した末に結論を出す。

 

「分かった。だが、上層部が許可をすればの話だ。却下されたら私でもどうにもできん。オボルス小隊には……まぁ、私から話を通しておこう。鬼火が納得するかしないかはともかくな」

 

《期待しないで待ってやろう》

 

通信相手はそう言って一方的に切ってしまい、残されたイゾルデは椅子に深く座って深い溜め息を吐いた。

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