レイヴンは機体を操作して白祇重工との合流地点である黒雁街跡地へと向かっていた。
《もうすぐで白祇重工との合流地点だ。合流した後、具体的な捜索計画を聞く。それと現地にいる間は機体から極力降りるな。お前の姿を覚えられる訳にはいかないからな》
《今、噂の傭兵の姿を見たとなればどんな対応に走るか分かりませんからね。白祇重工は評判の良い会社と聞きますし、もしかしたら治安局に通報なんて事も》
《それもあるが白祇重工が口を滑らせなくとも雇われたプロキシがレイヴンの情報を掴み他の勢力に売るかもしれない。もし、そのプロキシに見られれば……やむ終えないことになるだろう》
カルラはそう言ってどんなプロキシが来るのかと疑念を抱いているとレイヴンが目的地となる白祇重工との合流地点である黒雁街跡地の工事現場へと降り立った。
着地の際にブースターと着地の勢いによって生じた土煙が包み込み、辺りを隠してしまう。
「な、なに!?」
「何だ何だぁ!?」
「何が落ちてきた!?」
レイヴンの着地に騒ぎが起こる中、レイヴンは気にせずに機体を安定させると土煙が晴れ、依頼者となる者達を視認した。
白い作業服を着た眼帯をした子供、筋肉質な男、熊と背丈の高い女そして何故かビデオ屋の女がそこにいた。
「……なん……で……?」
レイヴンは首を傾げていると眼帯をした子供がレイヴンの前に仁王立ちで立って指を指してきた。
「コラァッ!誰だか知らねぇが急に空から現場に降りたりしたら危ねぇだろうが!しかも地面を無駄に抉りやがって!直すのはあたしらなんだぞ!」
「そこなのか社長!?」
怒られた。
レイヴンはわざとではないが怒られてシュンとするとそこへとんでもない速さで走ってきた長身の女が目をキラキラとさせてレイヴンの機体の前に来た。
「これって今話題のACって奴じゃないか!精巧な加工とコーティング!無駄の無いパーツ一つひとつの組み合わせ!無骨な見た目だけどなんて洗練された機械なんだい!光明も人が悪いよ!こんな素晴らしい技術の塊の子を隠してたなんて!」
長身の女は興奮気味に素早い動きでレイヴンの機体を見てはたまに触ってくる。
鬱陶しい。
レイヴンの第一印象はまさにそれを占め、機体をベタベタと触られるのは嫌なので腕を軽く振っても長身の女はその動き一つに興奮して余計にまとわり付いてきた。
「おい姉貴!いい加減にしねぇか!そいつ何か困ってる様に見えんぞ!」
「そうだぞグレース。そんなにまとわり付いたら鬱陶しく思われるぞ。いや、多分思ってる」
眼帯の子供と熊が長身の女ことグレースを諌めるも全く聞いてないグレースに眼帯の子供がそのまま力強くで引っ張って引き離した。
レイヴンはこれが光明の言っていたグレースだと知り、光明よりもおかしいタイプだと認定した。
グレースは未だに手を伸ばして惜しむ様な視線と表情を見せる中、筋肉質な男がカオスと化していた状況から話を戻した。
「話は戻るけどよ。こいつがグレースの後輩が言っていた助っ人って奴じゃねぇのか?」
「そうみたいだね。光明からスマホで助っ人を頼んだから邪魔してくる奴がいたら遠慮なくブッ飛ばしてもらえって言ってたよ。光明にしては気が利くねぇ。後でじっくりと見させて貰うよ」
グレースはそう言ってレイヴンが了承もしてないのに何か決まった様に言う発言にレイヴンはグレースを更におかしな人認定していく中、熊が口を開く。
「ブッ飛ばすって……こいつの武装を見ろ。下手したら死ぬぞ?それにテレビで見たんだがこいつはいろいろな騒ぎを起こしてるそうじゃないか。大丈夫なのか?今の俺達は立場的に不安定なんだぞ?」
「ベンの懸念も確かだ。だが人手が欲しいのは確かだ。こいつのガタイなら万が一、重機を力強くで引っ張っていく事になっても大丈夫かもしれねぇしな」
眼帯の子供はそう言ってベンに言った所でレイヴンの機体を介する様にカルラが話す。
《結論は決まったか?早く本題に入りたいのだが》
「しゃ、喋れるんだ……」
ビデオ屋の女がレイヴンが話さなかった事で話せないのかと考えていたのかカルラの声を聞いて驚く素振りを見せた。
《今、話しているのはこいつじゃない。私はハンドラー。プロキシだ。そして今、この場にいるこいつはレイヴン。私の猟犬だ》
「ハンドラー!?あの伝説の!?」
「知ってんのか?」
「うん。ハンドラーは私達よりもずっと前から伝説のプロキシとして有名な人だったんだ。ハンドラーの関わった依頼は多岐に渡ってて特徴的なのは依頼達成率がとても高いって事と猟犬と呼ばれるエージェントを抱えてるって事。自分の猟犬を率いて依頼を遂行して成功に導く。それがプロキシ、ハンドラー。でも、確か数年前に行方を眩ませて引退したとか死んだとか色々な噂が流れてたんだんだけどまさか此処で会えるなんて」
《伝説か……別に大した事はしていない。私はプロキシとしての役目を全うしただけだ。今の伝説はパエトーン。ホロウ内においてタイムラグ無しで通信と援護を成し、難易度の高い依頼をこなしてきたと聞いている。そうだろ?プロキシ、パエトーン》
カルラのその言葉にビデオ屋の女は驚いて固まった。
「え?いや何の事か……」
パエトーンだと言われたビデオ屋の女は焦せりを見せつつ否定しようとするとカルラは溜め息をついて指摘した。
《次からはそこの男のスマホのセキュリティを強化した方が良い。今しがた私の補佐がハッキングを仕掛けたら簡単に入り込めたそうだぞ?》
「うおッ!?まさか俺のスマホか!?」
筋肉質な男はそう言ってスマホを手にして確認するも何処もおかしな所はなかった。
《私の補佐は優秀なんだ。ちょっとしたハッキングもそうだがその痕跡を残さない様に立ち回れる。次は油断しない事だ。相手はどんな手段を使ってくるのか分からないんだからな》
カルラはそう言って本題に入っていく。
《それで?私達は何をすれば良い?重機の捜索だと聞いたが?》
「あぁ、そうだ。あたし達の重機が三機が行方不明になったのは聞いてるな?。行き先が絞り込めただけでもホロウ中だと分かったからプロキシに依頼したんだが思いの外に腕利きが二人もいるなら何とかなるだろう」
「その分、高く付きそうで恐ろしいが今は問題を解決する他ない。捜索の件、引き受けてくれるか?」
ベンの不安の混じったその言葉にカルラは返答する。
《引き受けるも前金を光明に無理矢理に払われたんだ。受けるしかない。レイヴンも了解済みだ。問題はない》
カルラはそう言って依頼を事実上、受諾したと言う発言に眼帯の子供は満足そうに笑う。
「なら、よろしく頼む。あたしはクレタだ。この白祇重工の社長だ。傍にいるのはグレース、ベン、アンドーだ」
「あ、私はリンって言うの。一応、プロキシとして来たからよろしくね」
各々が名前を名乗り、挨拶を終えるとレイヴン達は仕事に取り掛かるのだった。