新エリー都を翔ぶ黒き鳥 作:独立傭兵ピヨピヨ
ホロウ内での仕事を終えたレイヴンは八咫烏工造にある近くの資材に腰かけてパタパタと足を交互に動かしながら自身の機体の整備を見守っていた。
世話しなく動く八咫烏工造のボンプ達を見ている中、光明とカルラがやって来た。
「レイヴン。機体の整備だがまだ少し時間が掛かるそうだ」
「貴方の機体はこの新エリー都には無い技術の塊ですからね〜。部品一つ作るのも苦労してましてね。安定して作る方法は模索しますがね。まぁ、要するに時間がすこーし掛かると思っていてください」
「と言う事だ。暫くは仕事は無い。今は休め」
カルラはレイヴンにそう言って側から離れるとカルラの懐に入っているスマホが鳴る。
カルラはスマホの画面を見れば名前の無い番号が記されている。
「……奴か」
カルラはそう呟くとスマホを手に人気の無い場所まで来るとスマホの電話に出た。
《やぁ、ハンドラー。久し振りだね》
「何の用だ?今更、私に連絡を寄越す理由を話せ」
カルラは不機嫌とばかりにそうスマホ越しの人物に言うとスマホ越しの人物もそれを見越した様に軽く笑う。
《相変わらずだね君は……本題に入ろう。一連の騒動……機械人の起こした事件は君の新しい猟犬が起こしたものだね?》
「そうと言ったら?お前の番犬共を寄越すつもりか?」
《いや……今はそこまでの事をする必要は無い。だが、言わせて貰うが君のしようとしている事は私は容認できない。それだけは言わせて貰おう》
「私が活動を再開すれば先に警告か。随分と肝の小さい事だ。この新エリー都を長く支配している一族の長とは思えんな」
カルラはそう言って嘲笑う様に言うとスマホ越しの人物はそれを物ともせずに会話を続ける。
《君の猟犬達。エージェント達は残念に思っている》
「ふざけた事を言うな。お前が寄越した刺客だろ。彼奴らの命を奪った事を必ず後悔させてやる。お前が市長だとしてもだ」
カルラのその言葉にスマホ越しの人物からの軽い溜め息が吐かれるのが聞こえた。
《まぁ、良い。今の君に私の言葉は届かないだろう。だが、忠告はした。これで君が立ち止まってくれることを祈るよ》
「祈られたくもないなメイフラワー。私は必ず彼処に行く。友人の真実を知る為にな」
カルラはそう言ってスマホの電話を着ると溜め息をついた。
その頃、レイヴンは暇を持て余していた。
仕事は無く、ACは整備中、やる事が大幅に減った事でレイヴンに残されたものはクロスケを膝に乗せてムニムニと弄り回す事だけだった。
「やわ……らかい……」
「ンナ~……(気持ちいい~……)」
レイヴンはクロスケを弄ってるとカルラが疲れた様子で戻ってきた。
「……休めと言ってもやる事はないだろうな」
カルラのその言葉にレイヴンは首を傾げるとカルラはレイヴンの頭をそっと撫でる。
レイヴンの見た目は無垢な少女そのもの……だが、ACにほこれば驚異的な猟犬となる。
カルラは自身のエージェントとしての高い価値と無垢な少女にこれからも重い役目を与える事になるであろうと言う思考に挟まれながら歩む事を決めたのだった。
________
______
___
その頃、とあるホロウの内部では武装した人間が慌ただしく活動していた。
「技術班は解析を急げ!」
「警戒を怠るな!侵食を受けてエーテリアス化する恐れがある!万が一にエーテリアス化した場合は速やかに排除できる様にしろ!」
武装した集団、新エリー都の組織の一つである防衛軍はホロウで発見された未知の機械を発見し、解析と回収の為に動いていた。
「これが例の未知の機械ですか?」
「わぁ、まるでビックシードみたいだねぇ」
防衛軍の面々が忙しく動いているその中でやって来た者達がいた。
オボルス小隊。
オブディシアン大隊に属する部隊であり、隊長の鬼火を筆頭に主に反乱軍の制圧や式典の防衛を主に活動している。
オボルス小隊がやって来た理由は今回、ホロウ内で"再び"発見された未知の人型機械の輸送護衛任務を命じられ訪れていた。
「どのデータベースにも照合しなかった人型の兵器でありますか?」
尻尾や巻き角の生えた少女、オルペウスがそう言うとオルペウスの尻尾に取り付けられている銃型の知能構造体であり、オボルス小隊の隊長である鬼火が答えた。
『そうらしいな。機械の規格、装備から明らかに民間の物ではないと判断したそうだ。そして何よりも特徴として挙げられるのはこいつは自律型の機械ではなく、有人機だと言う事だ』
「有人……つまり、これは人が乗る事を前提としていると?」
鬼火のその言葉に特徴的な黒いバイザーを付けた女性、トリガーが疑問に感じて言うと鬼火は答えた。
『そうだ。最初に発見されたこいつの同型は酷く損傷し、もはや動く事すら叶わない状態だった。回収され、中を解析する為に分解を試みた際に見つかった。……人間の死体をな』
「人間の死体……戦闘で死んだと言う事ね」
鬼火のその言葉を聞いた暖色のゴーグルを付けた少女、11号はそう言って目の前の機械に視線を向ける。
「この中にも人間の死体があるのかしら」
「ち、ちょっと!怖い事を言わないで欲しいであります!」
『狼狽えるなオルペウス!仮にも貴様は軍人だろう!死体の一つや二つに何を臆している!』
「そ、それでもいきなり出てきたらびっくりするでありますよ!何も入っていないと思いきや中から死体が出てくるなんて!」
オルペウスはそう言って鬼火に抗議すると鬼火のお説教が始まり、オルペウスは泣き顔で鬼火からのお説教を受ける羽目になった。
トリガーはそんな二人を見て微笑んだ後、再び機械の方へ視線を向ける。
殆ど目の見えないトリガーには別のものが見えていた。
エーテル波動とは別の何かの気配……まるで激しく燃えた様な炎から出た火の粉の様な微量な粒子が漂っている……そんな何かを感じていた。
「(前に起きた赤牙組襲撃事件のあの機械人とこの場にある機械……何か関係があるのでしょうか……?)」
トリガーはこれが単なる所属不明機械の調査だけで終わる事態ではない予感を感じつつ任務に戻った。