誤字脱字や設定の矛盾などあれば教えてくれると有り難いです!
ある日の外出中、突然の強烈な目眩と焼けつくような乾きに襲われ、思わず喉に手をあてた。
次の瞬間、視界を奪う鮮烈な閃光が空を覆い、鼓膜を突き破るような轟音が鳴り響く。
やがて世界から音が消え、最後には足元の感覚も、心臓の鼓動も、すべてが遠のいていった。
――気づけば知らない光景の中で立っていた。
石造りの街も、多種多様な人種も、空を見上げると見える、幾つも浮かぶ巨大な島も、全てがわからない。
“強烈”で“鮮烈”で否応なく“終わり”を思わせる感覚を考えると、自分は死んだと思っていた。
呆然と何が起こったのか考えていると、不意に不可思議な感覚と共に脳内に声が響くように伝わってきた。
《ここは魔物とダンジョンが存在する異世界。ここに召喚されたお前達がどう足掻こうと、
声の主によると異世界に召喚されたようだ。他にも同じように召喚された人がいるらしいが、周りにそんな人がいるように見えない。
それに見世物に退屈凌ぎとは、神か悪魔の気まぐれだろうか。住居と常識をくれたのであれば当面の生活に支障はないはず。声の主の残した不穏な言葉に不吉な予感がする。過酷な運命とはどういうことなのか……。
――――――――――
転移から数か月。
ようやく異世界での暮らしにも慣れ始めた頃。
私はこの世界で迎える成人式に参加する為、このルブランの街で最大の神殿にやってきた。
衣装はせっかくの成人式なので現代のスーツスタイルで気を引き締めた。
異世界といってもダンジョンで様々な衣装が発見される。その為、服装も多様性があって、バリエーションも豊かに用意できる。
きっと成人式会場は華やかな衣装を着た人たちが沢山だろうな。
目的地は神殿の奥で、そこにある大広場は成人式の時だけ大衆に開かれることになっていた。
ルブランの成人式は、人の職業を顕現させる『覚醒の儀』を行う通過儀礼であり、同時に社会でどの階層に属するかを決定づける重大な祭事だ。
成人式会場の大広場に到着すると最初に目についたのは、太陽の光を反射し輝く巨大な水晶だった。
与えられた知識によると、18歳を過ぎてから儀式の最中に特殊な水晶へ触れると、光を浴びた瞬間に職業が覚醒するらしい。
きっとアレがその水晶なのだろう。
職業は今までに経験した事や本人の素質により決定すると言われている。稀に職業に限らず、あらゆる異常が発生するときがあり、それらは[
私はこの世界からすると異世界人、何かが起こるかもしれない。だけどあまり心配してはいなかった。
ここルブランは世界でも有数のダンジョン都市。仕事も幾らでもあり、一定の強者であれば優遇される制度も多く存在している。
それに食料事情も安定し、戦争は数十年全く起こっていない。ダンジョンや魔物の存在により恒久的な平和が築かれている。
ダンジョンからは重要な資源やアイテムを入手でき、色んな戦闘職たちがそこで活躍して利権を握っている。
その影響で実力主義的な側面が強くなっているが、どのような職業になっても気楽に生きていける程度の実力を得る見通しがあるので、気持ちに余裕を持っていた。
ハズレ職業とされる農家や村人は、戦う力を持てず、働き口を失って村へ移る者も多いというけど、技術を磨き、スキルの効率を工夫するだけで十分に戦える。
結局のところ、皆スキルに頼りすぎて、本来の実力を疎かにしているのが悪い。
水晶に近寄り周りを観察すると、儀式の祭事が行われている真っ最中であり、神官や巫女が神聖さを感じる祝詞を唱えているのがわかる。
儀式場の人々の様子は十人十色で、喜び駆け回り、項垂れ泣き崩れている者まで沢山だ。
種族が変わってしまったようで、獣耳や角が生えた人が何人も存在し、姿見に映る自分の姿をみて唖然としていた。
望んだ職業になれた者となれなかった者の対比が激しい。
弱い職業でも工夫次第で活躍する事は難しくないと思うけど……。
鏡を見て唖然としている者達は、見慣れた自身の姿が変わってどんな気分なんだろうか。
「……今年は神の悪戯が多いんですかね?」
神の悪戯の発生頻度は少ないという話だったんだけど。
まあ、皆良く似合っていると思うので、そのまま強く生きて欲しい。
憐憫の視線を周りに送りながら水晶に手を伸ばし触れると、瞬間眩しい光が私の身体を包み込む。
強烈な眩暈で平衡感覚が狂い、天地の行方もわからず、その場で膝をつく。
全身を細胞ごと貫く衝撃。
骨が軋み、筋肉が縮み、皮膚が震える。
胸の奥で脈打つ鼓動は形を変え、声にならない吐息が細く高く漏れ出した。
――過去に、
突然、私を包み込んでいた光が消滅する。
前後不覚の状態から、意識と感覚がゆっくりと正常に戻るまで少し時間がかかった。
何とか手を着いていたおかげで倒れずに済んだようだが、動悸が激しく苦しい。
大きく深呼吸を繰り返し、ようやく気持ちを落ち着かせる。
――だが、呼吸は少し楽になったものの、胸が妙に締め付けられるように苦しい。
身を起こし、無意識に胸元へと手をやる。
――むにゅ。
そこには、かつてなかった柔らかな膨らみがあった。
「……これは?」
混乱の中、脳内に疑問符が次々と浮かぶ。
さらに追い打ちをかけるように、自分の口から漏れた声が耳に届いた。
それは確かに自分の声でありながら、どこか艷やかで、か細く、女そのものだった。
――急いで近くにあった姿見に駆け寄る。
楽観視していた職業の覚醒の儀。メインは職業を得ることで、たとえ種族等の変化があっても、自身であれば問題なく受け入れると軽く考えていた。
しかし、その楽観は大きな勘違いだった。
鏡に映るのは、かつての自分ではない。
腰まで届く輝くような銀髪に長いまつ毛、ルビーを連想させるような輝く緋い瞳。
男の理想を体現させたグラマラスでスレンダーという矛盾を含んだ奇跡の肢体。
サイズ違いの衣服に身を包み、息を乱すその姿は、妖しい色気を纏い、見る者すべてを魅了するだろう。
――そこにいたのは、誰もが思わず息を呑む、絶世の美少女だった。
「…………………………はっ!」
止まっていた思考が動き出して、ハッと周りを見ると、見える範囲全ての注目を集めていた。
欲望に満ちた視線が数え切れないほどに突き刺さる。
怖ろしくて、慌てて逃げるように成人式会場を去った。
帰っている最中も常に視線を浴び続けるので危機感が募り続ける。
物凄く不味いことになった!
それに何だこの姿は!?
内心激しく悪態をつく。
スーツが黒衣に変わり、シャツは走っている間にボタンが弾け飛んで、大きな胸が広く露出してしまっている。
腰も細くなって尻が丸みを帯びた影響か、ベルトが仕事をせず、ズボンがズレ落ちそうで、押さえていなければ脱げているだろう。
それに履いていた革靴のサイズも足に合わなくて、細心の注意で走る必要があった。
――できるだけ急いだ結果、無事に家までたどり着く。
戸締まりをして施錠の最終チェックをした瞬間、息が切れて座り込んだ。
「予想外の結果になってしまった……!」
全ての予定が狂ってしまった。
今の姿では、望んでいた暮らしとはほど遠い未来を迎えることになる。
恒久的な平和が続き、衣食住も満たされている。自由な実力主義社会。
しかし、ダンジョンやモンスターが存在することで、生存率というところではむしろ低い。
そのような世界で女性に求められることは何か。
……それは子供を多く産むこと。
減る以上に増えなければ人口が保てず、人は滅ぶことになる。
そのような事情を背景に、この世界は強者が弱者を従える権利を行使するということが頻繁にあった。
この従えるとは、右腕として扱うことから奴隷まで幅広い。法や契約で縛られる為、裏切ることや逃げることも出来ないので、一度縛られたら基本的にもう自由などない。
それを都合の良いように自己解釈し、弱者女性を無理矢理に襲う者たちが蔓延っている。
それも、暗黙のルールとして、弱い者が犠牲になることは仕方ないと見逃され、弱者は諦めている状況になって久しいという。
特に、一人で過ごしている女性は標的になりやすい。甘い言葉から恐喝、暴力や拉致行為が当たり前という。善意の人が少ない地域帯では改善の兆しもない。
このままではその標的となるのは間違いない。
――今の私に、頼れる者などいない……。
知り合いとの関係がリセットされたといってもいい今の状況では、誰にも助けを求める事ができない。
予定が崩れた今、早急に強くなることを最優先に行動しなければ……。
元々の予定では、ゆっくりと確実に、堅実に、冒険者の高ランクを目指して強くなるプランだった。
だというのに、今や緊急性が段違いに跳ね上がり、このまま何も対策をしないままでは
すぐに
私の精神は男性のままだ。
同性に抱かれるなど想像もしたくない。
最悪の事態から脱出するため。今すぐにでも行動しないと残酷な未来が待っているかもしれない。
TS主人公はどんなのが好きですか?(参考程度)
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