もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら   作:一ノ瀬 崇

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二話目

 朝九時。

 古風なチャイムを聴きながらドアを開ける。

 広い執務室の窓に近い側にある大きな作業用デスク。

 積まれてある書類は昨日よりも明らかに多くなってる気がする。

 先生に徹夜させては申し訳ないと思い頑張ったのが裏目に出たのか、連邦生徒会の人達にもっと書類増やしても大丈夫だろうと判断させてしまったらしい。

 二人でこれを捌くのは骨が折れそうだけど、今日からは当番生徒が来る。

 というか既に来ている。

 ミレニアムの制服を着たツーサイドアップの生徒は、私に気付くと立ち上がって出迎えてくれた。

 

 

「おはようございます。貴女が先生の言ってたシャーレ部員さんね?」

「おはようございます。ワイルドハント一年、脇野フミです。どうぞよろしく」

「私はミレニアムのセミナー会計、二年の早瀬ユウカよ。よろしくね脇野さん」

「フミ、で良いですよ。私もユウカさんとお呼びしても?」

「ええ、もちろん。貴女の事は先生から聞いたわ。これも含めてね」

 

 

 ちょうど仕分け作業の最中だったのだろう、カラフルなボックスにポンと手を乗せて微笑むユウカさん。

 自前のシステムを評価してもらえて思わず口元がモニョモニョしてくる。

 

 

「最新の技術を扱うミレニアムからすると古めかしいやり方かもしれませんが」

「いえ、ミレニアムでも紙媒体で処理する事は多いし、何より書類仕事の初心者に向けたチュートリアルとしては満点なんじゃないかしら。先生も分かりやすくてすごく助かったって言ってたわ」

「それは、なんというか⋯⋯面映ゆいですね」

 

 

 にしし、と照れを誤魔化すように笑う。

 セミナーといえばミレニアムの生徒会だ。

 そこの会計が当番生徒とは心強い⋯⋯が、それはそれとしてここにいても大丈夫なのだろうかという疑問もある。

 まぁ当番が強制ではない以上、ちゃんと余裕を持って来ているのだろう。

 そこまで考えてふと気付いた。

 

 

「あれ、せんせーはどちらに?」

「給湯室でコーヒー淹れてくるって、あ、ちょうどほら」

 “おはよう、フミ。グッドタイミングだね”

「せんせ♡ おはようございます」

 

 

 トレイにマグカップを三つ載せて先生が給湯室から現れたのを、オクターブ高めに出迎える。

 同時にギュルンと音が出そうな勢いで首がこっちに向いたのが分かる。

 なるほど、ユウカさんもか。

 一昨日の着任の時に顔を合わせた内の一人って聞いたけど、先生もなかなか人を誑すのがお上手らしい。

 

 

「昨日の書類は無事提出出来ましたか?」

 “うん、しっかり整理されていたから驚いていたよ”

「それは良かったです。でも書類の山、昨日より増えてません?」

 “あはは⋯⋯追加でお願いしますって言われちゃった”

 

 

 やっぱり頑張り過ぎたのが原因だった。

 そこそこに手を抜きつつ手早く終わらせる新しいやり方を導入しなくては。

 先生の事だから、生徒の為にってどんどん仕事を引き受けていくに違いない。

 

 

「出来る量を超えるような仕事はちゃんと断ってくださいね? 生徒の為だからって何でもホイホイ安請け合いしたらまた徹夜になっちゃいますよ」

 “⋯⋯そこは気を付けるよ”

 

 

 視線を逸らして頬をぽりぽり掻く先生。

 やぁん、コレ絶対安請け合いするやつー♡

 これ幸いと連邦生徒会が余計な仕事を持ち込んでこないように私達で目を光らせておく必要がありそう。

 ユウカさんもそう思ったらしく、視線が交錯した。

 同じタイミングで頷き合う。

 

 

「頑張りましょうね、ユウカさん」

「そうね、私達で先生の仕事量を管理した方が良さそうだわ」

 “⋯⋯さ、今日もお仕事頑張ろう!”

「誤魔化したわね」

「せんせー誤魔化すの下手っぴ♡」

 

 

 ユウカさんと先生を弄りながら書類を仕分け、各々作業を進めていく。

 やはりと言うべきか、ユウカさんは私なんかよりずっと書類を捌くスピードが速い。

 日頃会計として色んな処理を担当しているからなのだろう。

 先生が一枚、私が二枚書類を処理している間にユウカさんは四枚近く終わらせている。

 純粋に尊敬の眼差しを向けていると、私の視線に気付いたユウカさんは少し頬を桜色に染めてこほんと咳払いをした。

 いけないいけない、見惚れてないで私も頑張らないと。

 そんなこんなで正午のチャイムが鳴る頃には書類の半分がボックスにしまわれていた。

 ユウカさん一人が加わるだけでこの処理スピード。

 セミナー会計の肩書は伊達じゃない。

 

 

「お昼休憩にしましょうか」

「そうね、作業もちょうど区切りが付いたし」

 “おぉ⋯⋯もう書類が半分消えてる⋯⋯!”

「ユウカさん様々ですね。来ていただけて本当に助かりました」

 “うん、ありがとねユウカ”

「な、なんですか二人とも。そんなに褒めてもなにも出ませんよ?」

「きゃーユウカさんステキー♡」

 “ファンサくださーい!”

「ええっ、ファ、ファンサってなに!?」

 

 

 少し照れた様子で手を振るユウカさん。

 その仕草は先程までのカッコイイ姿とは違って年相応の女の子っぽい。

 一頻り褒め称えてきゃっきゃした所でお出掛けの準備。

 

 

「それじゃ今日は余裕もありますし、どこか近所のお店でランチとしましょう」

「良いわね、何食べようかしら」

 “私も近所にどんなお店があるのか知らないなぁ。折角だし、お散歩がてらお店を探してみようか”

「さんせーい♡」

「それじゃ戸締まりをしっかりして、行きましょうか、先生」

 

 

 その後三人で仲良く世間話をしつつ近所を練り歩き、主要道路沿いにあったファミレスへ。

 ちょうど混み始める前に滑り込んで並ばずに着席。

 私達の後ろから少しずつ行列が出来ていたから本当に良いタイミングだったらしい。

 案内されたのは四人がけのテーブル席。

 どちらともなくジャンケンを始め、先生の隣はユウカさんが座る事に。

 くそぅ、グーじゃなくチョキを出す場面だったか。

 ともあれ正面からじっくり先生を眺める事が出来るので今回はヨシ!

 先生の隣は次回以降、二人っきりで来た時の楽しみに取っておくとしよう。

 

 

 “あはは、こんなおじさんの隣でごめんね”

「いえいえ、全然! というか先生まだお若いじゃないですか」

「せんせーがおじさんだったら、私達がおばさんになっちゃう年齢も下がっちゃうので、是非ともお兄さんと自称してください」

 “⋯⋯その発想は無かった”

「カップ麺の汁どころか麺まで残し始めたらおじさんって言っておっけーです」

 “それはかなりなおじさんだね!?”

「年を取ると油が重たく感じるっていうのはよく聞きますけど⋯⋯流石に大丈夫ですよね先生?」

 “まだ大丈夫! たまに残したスープにおにぎり入れて雑炊にしたりもするよ!”

「それはそれで糖質の摂り過ぎなのでやめてくださいね先生」

 “アッ、ハイ。気を付けます”

「にしし、今度せんせーの好みに合わせた雑炊作ってあげますから元気出して♡」

 “ほんと? やった!”

「えっ、あ、わ、私も! 私も作りますから! ⋯⋯帰ったらC&Cの空いてる人に料理教えてもらわないと⋯⋯!」

 “ユウカもありがとう! いやぁ、二人の手料理だなんて幸せ太りしちゃうかなぁ”

「し、幸せ太りって、そんな大げさな⋯⋯!」

「うーん、そうゆーとこだよせんせ♡」

 

 

 気を抜くとすぐこうやって間隙を突いてくるんだから。

 しかし私も人の事は言えないけどユウカさんも大概チョロい気がする。

 そうやって賑やかに話してると料理が運ばれてくるまでがあっという間に感じた。

 ユウカさんはオムライスとサラダのセット、私はチキンステーキ御膳とえびたっぷりサラダとデザートにごま団子、先生はハンバーグディッシュにポテサラと味噌汁を追加。

 見事にみんなバラバラだ。

 ならばやる事は一つしかない。

 

 

「ユウカさん、オムライス小鉢に一口分ください。代わりにごま団子をお一つどうぞ」

「あっ、いいの? フミが頼んだの見てちょっと気になってたのよね」

「せんせーもお団子とハンバーグ一欠片交換しませんか? チキンステーキの方でも良いですよ」

 “じゃあ私はチキンステーキの方で”

 

 

 こんな風にちょっとずつ交換して食べるのも食事する時の一つの楽しみ方だと思う。

 美味しく食べ進めていき、気付けばお皿は綺麗になっていた。

 まんぞくまんぞく。

 残ったごま団子に爪楊枝を刺して──ふと思い付いてお団子を二つに割る。

 満足そうに水を飲んで一息吐いている先生に向けて、半分になったごま団子を差し出した。

 

 

「せーんせ♡ あーん♡」

 “えっ”

「んなっ!?」

「にしし、ほらはやくぅ♡ お団子落ちちゃいますよ?」

 “えっと、気持ちは嬉しいけど⋯⋯”

「あーん♡」

 “⋯⋯あ、あーん”

 

 

 よし、押し勝った。

 驚愕に目を開いたユウカさんには気が付かない様子で、先生はおずおずと差し出したごま団子を咥える。

 

 

 “⋯⋯あ、美味しい。素朴な甘みと胡麻の風味がバランス良いね”

 

 

 口に合ったようで、にこっと可愛らしく笑う先生。

 こういう反応がちょっと幼くてなんか良い。

 引き戻した爪楊枝をぺろっと舐めて、私も残ったごま団子を食べる。

 

 

 “!?”

「なっ!?」

 

 

 うん、先生の言った通りしつこくない優しい甘さがいい感じ。

 食後のコーヒーなんかにも合いそう。

 まったり余韻を楽しんでいると、目の前の二人が顔を赤くしているのに気付く。

 二人とも初心だなぁ。

 可愛い顔をした二人を連れて会計を済ませ、シャーレへと戻る。

 執務室に着く頃には落ち着いたようで、何か言いたそうに口元をもごもごさせていたけど私が何も気にしていない様子なのを見て、小さく溜息を吐いていた。

 先生は弄りがいがあるから兎も角、ユウカさんは間接キスくらいで真っ赤になってたら大変だと思うなぁ。

 ともあれ午後のお仕事タイム。

 最初は気が散っていた二人も数分経てば目の前の書類をバシバシ片付けていた。

 私も負けじと書類に訂正の付箋や許可のハンコをぺたぺた。

 程よく集中出来たからか、なんと四時前には全ての書類が片付いていた。

 

 

「お疲れ様でした♡」

 “こんなに早く終わるなんて⋯⋯二人のおかげだよ!”

「これくらいならお任せください、得意ですから」

 

 

 片付いた書類の束を眺めて満足感に浸っていると、ユウカさんがふと思い付いたように手をぱんと鳴らした。

 

 

「折角ですし、お二人の経費申請書の作成もやっちゃいましようか。徒歩通勤の先生はまだしも、電車でここまで来ているフミは定期券買った処理とかまだやってないでしょ?」

「わ、良いんですかユウカさん。それじゃお世話になっちゃいます♡」

 “そう言えば自分のはノータッチだったなぁ。ありがとうユウカ、教えてもらうね”

「ふふっ、お任せください!」

 

 

 という訳で始まった経費申請指南。

 ここで一騒動起きるとは思ってもいなかった。

 私はシャーレまでの交通費申請──電車の定期代と朝のバス代、それとシャーレで仕事をしている間の食事代補助の申請をした。

 特に問題もなくすぐに書類は完成。

 問題が有ったのは先生の方だった。

 

 

 “どれが経費になるんだろう”

 

 

 そんな一言から始まり、それじゃあ確認するのでここ二日で貰ったレシートを全部出してくださいとユウカさんが言った。

 シャーレには食堂が無いので一食につきなんと千円分も補助が出る。

 後日精算とはいえ大盤振る舞い、他の学校に知られたら連邦生徒会への突き上げが強くなるのは想像に難くない。

 事実ユウカさんもちょっと引いてた。

 まぁ主に対象になるのが先生と日によって一人から多くても三人くらいを想定しているらしく、シャーレで働く人への福利厚生という形で手厚くしているんじゃないかとのこと。

 思っていたよりシャーレは重要視されているんだなぁ、なんてのほほんとしていたその時、ユウカさんに電流走る。

 

 

「⋯⋯先生、こちらのレシートは?」

 “あっ”

 

 

 ユウカさんが見付けた一枚のレシート。

 ここのビルの一階にあるエンジェル24のレシートだ。

 お昼ご飯が偏ってるとかのお叱りかなと先生の横から覗き込んでみると、計七千百八円の文字。

 えっ、コンビニの会計で七千円とかお大尽じゃん。

 びっくりして内訳を見ていくとカップ麺やエナジードリンクに交じって《カイテンジャーロボ・局地戦改修型》の表記がある。

 お値段税込六千円。

 なるほどこれかぁ。

 

 

「経費として申請する際の提出書類代わりにもなるんですから、私物と混ぜて会計するのはちょっと」

 “うん、気を付けるね”

「そうしてください⋯⋯先生こちらは?」

 

 

 細い指先に別のレシートが引っ張り出される。

 どれどれ⋯⋯《クラブ・ふわりん 二万円》⋯⋯わぁ、先生早速課金沼にずぶずぶじゃん。

 二万だと新規スタートダッシュキャンペーンの無料石と特別ログインボーナスの無料石も併せて⋯⋯だいたい天井二回分。

 えっ、ヤバ。

 先生ピックアップガチャ両方天井じゃん。

 うわぁ、ご愁傷さますぎる。

 痛ましさのあまり思わず先生の背中をぽんぽんしてると、ユウカさんが頬を赤らめて顔を上げた。

 あ、これは多分クラブって字面で勘違いしてるね。

 案の定両手をぶんぶん振り回しそうな勢いで「信じられません! 最低です!」と怒り狂うのを先生と二人でなんとか宥めて落ち着かせて、R18対象ではないただのスマホゲームだと説明した。

 そもそも間接キスで赤くなっちゃう先生が夜のお店に行ったら前後不覚になるまで呑まされて素寒貧になるか、お持ち帰りされて朝チュンコースのどっちかだよ。

 その後誤解の解けたユウカさんにいつの間にか五千円以上の買い物をする時は相談するように言い含められていた。

 家計簿も付けるとやる気満々のユウカさん。

 私とは違ったタイプの世話焼き体質、というかヒモ製造機らしい。

 

 

「カップ麺やコンビニ弁当ばかりじゃ栄養も偏りますし、最初はサプリからでも良いので栄養バランスの良い食事を心掛けてくださいね!」

 “はい⋯⋯”

 

 

 すっかりしょんぼりしてしまった先生。

 その様子にちょっといけないゾクゾクを感じながら、先生の頭を優しく撫でる。

 

 

「よしよし♡ ピックアップガチャ残念でしたね」

 “うん⋯⋯ってあれ? フミはクラブふわりん詳しいの?”

「え、フミもそのスマホゲームやってるの? さっきゲームだって説明してくれてたけど⋯⋯結構有名なゲームなのかしら」

「カジュアル層だけどサービス開始からやってますよ。普通の生徒じゃなく男性をメインターゲットにしたゲームなので知名度はそこまでですけど、基本的なシステムはシンプル寄りのスマホゲームですね」

 “思わぬ所に古参兵が⋯⋯!”

「折角ですしフレコ交換します?」

 “えっ、良いの?”

「もちろん♡ ユウカさんもどんなゲームか画面見てみませんか?」

「そうね、フミもやってるって聞いて興味出てきたわ」

 

 

 という事でスマホを取り出しアプリを起動。

 スタートを押した時の『クラブ・ふわりん!』のタイトルコールが執務室に響く。

 たま〜に朝の電車内でどこからかこのコールが響いてくる事もあって、存在は知らなくてもフレーズだけは聞き覚えがあるって人も居る筈。

 メイン画面が表示されるとイチオシに設定してあるキャラが画面の下からひょっこり出てくる。

 金髪ショートボブのロリっ娘だ。

 

 

『あ! 来てくれたんだ! 待ってたよぉ〜♪』

「うっ、可愛い⋯⋯!」

 

 

 ちょっと舌っ足らずな甘々ボイスとふわふわな笑顔に、ユウカさんが思わずといった様子で仰け反る。

 ははぁん、ロリコン?

 

 

 “あ、ストーリーで出てきた子だ”

「ピックアップは終わってるけど恒久ガチャ排出だからすり抜けてきますよ」

「この娘はどんな娘なの?」

「ストーリー的なのはネタバレになっちゃうので控えるとして、見ての通り甘えん坊系のロリっ娘ですね。主人公の後ろを笑顔で追いかけて、追い越したと思ったら振り向いて抱っこをせがむ可愛い娘です」

「ほほう!」

 

 

 なんか相槌が力強い。

 

 

「にぱっと笑うと八重歯が見えるのもポイントですね」

「ほほーう!」

「ちなみにタッチボイスも色々ありますよ。こんな風に」

『あははっ、くすぐったいよ〜♪ よーし、おかえしだー! むぎゅぎゅー!』

「ほほうほうほう!」

 

 

 頷きながら早速アプリストアを開いてダウンロードを始めている。

 ユウカさんこんな面白いキャラだったんだ⋯⋯。

 これはもしかすると重課金ユーザーが誕生してしまったかもしれない。

 

 

「キャラ性能としてはバッファーですね。味方全体の火力の底上げに役立ってくれるので、対ザコ戦・対ボス戦両方で活躍してくれます。本人の生存能力も高いので評価も高いです」

 “なるほど、頼れる子なんだね”

「ですね。ユウカさんのインストールやチュートリアルが終わるまでのんびり待ちつつフレコ交換しましょうか」

 “うん、お願い”

「ユウカさんも後でフレコ交換しましょー♡」

「ええ、ちょっと待っててね!」

 

 

 プロフィール欄から先生のコードを入力して新人歓迎キャンペーンの報酬を受け取れるようにする。

 ピコーン、と通知音が鳴り先生の通信ボックスにキャンペーンアイテムが送付された。

 

 

 “ありがとうフミ!”

「どういたしまして♡ せんせーはこの娘をイチオシにしてるんですね」

 “うん、最初のガチャで来てくれた子だね”

「ふーん♡ 最初の娘ってやっぱり特別なんですね」

 “思い入れとかは強くなっちゃうかな。縁を感じるっていうか”

「なるほどー♡」

 

 

 スマホの画面を覗き込んだ体勢から、さらに体を傾けて先生に身を寄せる。

 耳元に口を近付けて、ユウカさんには聴こえないように囁いた。

 

 

「一番最初に応募した私も、せんせーの特別にしてくださいね♡」

 

 

 先生の肩がぴくっと跳ねる。

 にしし、とイタズラな笑みを残して三人分のコーヒーを淹れに給湯室へ向かう。

 この後は無事チュートリアルを終えたユウカさんともフレコ交換をして、ついでにモモトークも交換して五時のチャイムまで楽しく歓談した。

 さっきアレだけ先生の課金に苦言を呈していたユウカさんがなんの迷いも無く有料石の一番高いパックを買った時には思わず三度見した。

 マジですかユウカさん。

 そして力の限りスタートダッシュガチャを回してお目当てのロリっ娘を引いてガッツポーズしていた。

 強い。

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