もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら   作:一ノ瀬 崇

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二十話目

 “絶景かな絶景かな”

 

 

 満足そうにプールサイドから眺める先生。

 その視線の先では、スク水に身を包んだ少女達が戯れながらプールを掃除している。

 もちろん私もスク水姿。

 何故かハナコさんは自前のビキニの上にワイシャツを着ている。

 濡れ透けで攻めるとはなかなか。

 おちちもたわわだから、張り付いて浮かぶ谷間が実にイイ感じである。

 

 

「うふふっ、見てください♪ 虹ですよ、虹!」

「わぁっ、ハナコちゃん!?」

「うひゃー、ちべたい♡」

 

 

 ハナコさんが手にしたホースから水が飛び散り、空中に小さな虹を作っている。

 その水を浴びて私とヒフミンはすっかり濡れ濡れだ。

 

 

「もう、ハナコったら子供みたいにはしゃいで」

「でも、不思議と悪くない。むしろ、私も楽しい」

「そうね。普段からあれくらい無邪気なら可愛いのに」

「コハルはハナコに気に入られているんじゃないかな。コハルの素直で飾らない物言いが、ハナコには気分の良いものなのかもしれない」

「えぇ⋯⋯? でもそれを言うならアズサもなんじゃないの? 実直で真面目だし。時々変な事はするけど」

「そうか? コハルに言われるとなんだか嬉しいな」

「ちょ、ちょっと、なんだか照れくさいから」

 

 

 プールの端の方ではコハルちゃんとアズサさんが並んで底面をゴシゴシと清掃中。

 補習授業部で一番仲良しなのは、実はあの二人なのかもしれない。

 ほっこりしてるとホースの水がまた飛んできたので、今度はヒフミンを盾にする。

 

 

「忍法身代わりの術♡」

「ぴゃぁっ!? ただの肉盾じゃないですか!?」

「うふふ、油断禁物ですよ♡」

「ならば自爆特攻だ! ハナコさんむぎゅー♡」

「きゃぁー♡ 捕まってしまいました♡」

「こらそこー! 私達に働かせてイチャイチャするなー! えっちなのは禁止!」

 

 

 コハル裁判長からお叱りを受けてしまったのでハナコさんを解放して洗剤撒きに戻る。

 途中ヒフミンがじっとり見つめて来たので、先生にしか見えない角度でキスしてあげた。

 

 

 “うーん、やはり淫婦”

「異議あり♡」

 

 

 その後もプール清掃は問題なく進み、先生が片付けてくれたプールサイドで私が作ってきたサンドイッチをみんなで食べた。

 特にアズサさんに大好評で、目を輝かせながらはむはむ食べていた。

 可愛いの化身か?

 夕方には一週間分の食材も届くようなので、腕によりをかけて美味しいご飯を作ろうかな。

 英気を養ったところで掃除を再開し、ようやく全面ぴかぴかに磨き上げた頃には日が暮れていた。

 紫に染まった空の下、ゆっくりとプールに水が溜まっていくのを眺めながらみんなでまったりしていた。

 

 

「プールに水を張る時間の事を忘れてましたね」

「ごめんなさい、失念していました」

「いや、謝る事はない。綺麗になってスッキリしたし、合間に遊んだのも楽しかった」

「はぁ⋯⋯明日からは勉強漬けね」

「あはは⋯⋯頑張りましょうね」

「疲れたけど⋯⋯この綺麗な光景が見られたから良しとするわ」

「そうですね⋯⋯夜のプールなんて、なかなか見る機会も有りませんし」

 

 

 きらきらと月光に照らされ揺らめく水面が、夜のプールという空間と合わさり非日常を演出する。

 かすかな水音以外には互いの呼吸くらいしか聴こえないくらいの平和な時間。

 気付けばコハルちゃんが眠たげに目を擦っていた。

 隣に座っていたハナコさんがそっと肩に手をかける。

 

 

「おねむですかコハルちゃん」

「そんな事無いわよ⋯⋯ビンビン起きてるわよ私は」

「無理はしちゃダメよ♡ お布団連れて行ってあげるから♡」

「ううん⋯⋯フミのご飯、食べるの。美味しくて、優しいから、好き⋯⋯」

 

 

 そこまで言うと、コハルちゃんはハナコちゃんに寄りかかったまますぅすぅと寝息を立て始めた。

 明滅していたヘイローも消えている。

 

 

 “寝ちゃったね。私が運ぶから、先導をお願い出来るかな”

「では、みんなお部屋に戻りましょうか」

「私は食堂で、後でも摘めるようなもの作っておきますね。お腹が空いたら好きに取っていってください♡」

 

 

 コハルちゃんをお姫様抱っこで持ち上げる先生。

 その腕に抱かれて運ばれていくのを見送って、私は食堂へと向かう。

 何を作ろうか。

 届いた発泡スチロールの箱を開封しながら中身を適時冷蔵庫と冷凍庫に詰めていき、献立を考える。

 身体も冷えてるだろうし、野菜たっぷりの豚汁と種を抜いた梅おにぎり、あ、お菓子に人形焼も作っておこっと。

 具材を炒めてから寸胴鍋で煮込み、おにぎりはラップで包み、人形焼は纏めてお皿に乗せてラップをかける。

 これでヨシ♡

 作り終わったら私もなんだか眠くなってきた。

 後で先生のお部屋にお邪魔するとして、私も一休みしてこよう。

 

 

 

 

 仮眠明け、私は食堂に寄って夜食を手に先生のお部屋へとお邪魔した。

 

 

 “やぁ、フミ。お疲れ様”

「せんせーもお疲れ様♡ 夜食持ってきましたよ♡」

 “ありがとう、ちょうど取りに行こうかと思ってたんだ”

 

 

 机の上にお盆を置いて、二人で仲良くおにぎりを食べる。

 温めた豚汁も身体に沁みて美味しい。

 我ながらイイ感じ♡

 

 

 “あ、梅だ。好きなんだよね”

「種を抜いたのでそのまま全部いけますよ♡」

 “細やかな心遣いが嬉しい”

「でしょー♡」

 “ますますフミの掌の上で転がされちゃうなぁ”

「せんせーは転がす側ですよね?」

 “人聞きが悪いから遠慮したいかな!”

「今更ですよ♡ もういっそシャーレの淫魔コンビとしてやっていきましょう♡」

 “もはや人ですらない!”

「せんせーと一緒ならどこまでも堕ちていけますよ♡」

 “地獄の底突き抜けて、空に堕ちて行きそう”

「詩人の才能もあるんですかせんせ♡」

 “人は皆無力を知った瞬間詩人になるんだよ”

 

 

 いつものようにイチャイチャしながらご飯を食べ終え、淹れたお茶でほっと一息。

 このまままったりするのも良いけど、今の内に話を進めておきたい。

 

 

「じゃ、報告会と対策会議を始めますか」

 “わーぱちぱち”

「えへんえへん、それでは追ってもらった情報についてお願いします」

 “うん。アズサの転学に関して諸々の手続きを進めていたのは、どうやらミカで間違いないみたいだね”

「聖園ミカさん、ですか」

 “以前の学校に関する情報は無かったね。恐らくだけど、隠蔽したんじゃなくて、最初から入力しなかったんじゃないかな”

「なるほど⋯⋯消せば消した痕跡が残りますが、最初から無ければ何も探せない。それを押し進めるだけの権力はティーパーティーが握っている。となれば文書ではなく、直接顔を合わせてのやり取りですね。やはり裏切り者としてはアズサさんでしょう」

 “そうなるかぁ⋯⋯”

 

 

 目を伏せてタブレットの画面を指先でぽんぽん撫でる先生。

 その姿を眺めながら、私は思考を走らせる。

 まだ入口でしかない。

 立場としての裏切り者はアズサさんでも、エデン条約を妨害する意図を持った裏切り者とイコールにならない。

 スパイとして活動するには、アズサさんの行動は色々とちぐはぐだ。

 正義実現委員会に捕捉されたり、補習授業部で真面目に勉強したり、スパイとして溶け込むにしてももっと中央、ティーパーティーに近い場所の方が動きやすいのではないのか。

 単独で動き回るのにちょうど良いとしても、エデン条約に関する情報は、ここでは手に入らない。

 ならどこから手に入れる?

 それとも────手に入れる必要が無い?

 

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯なるほど」

 “お、何か思い付いたね?”

 

 

 思案に耽っていた私が顔を上げたのを見て、先生が楽しそうに微笑む。

 

 

「恐らく、近日中にミカさんの方から先生に接触してくると思います。そこで先生は、ナギサさんが聞かされた事以外の情報を持っていないかのように振る舞ってください」

 “ミカが、私に?”

「その時に追加で当たるべき情報が抜けるはずです。手持ちのピースで眺められる景色はここまでです。得られる情報によっては、或いは」

 “⋯⋯或いは?”

「ミカさんさえ手駒として利用する、真の敵が出てくるかもしれませんね。それこそ、先生が嫌悪するタイプの」

 “そうだとしたら厄介だけど、そうなると良いね”

 

 

 先生は柔らかく微笑んだまま、視線を上げた。

 電灯の白い明かりが室内を照らしている。

 

 

 “それなら、ミカも利用されただけ。悪い事はしたのかもしれないけど、本当に悪と言える生徒は一人も居なかったって事だからね”

 

 

 どこまでも生徒を思いやり慈しむ。

 これだから先生は目が離せない。

 目を離した隙に、どれほどの生徒が先生に脳を焼かれるのやら。

 連邦捜査部シャーレが♡愛の巣・シャーレ♡になるのもそう遠くはないかもしれない。

 

 

「後は⋯⋯そこで聞き耳を立ててるヒフミンをどうにかしちゃう?」

 “え?”

 

 

 先生が入口に目をやると、おずおずとヒフミンが入ってきた。

 イタズラがバレた子供みたいな顔をしている。

 おいでおいでと手招きをして膝の間に座らせ、後ろからむぎゅっと抱き締めてやる。

 

 

「まぁ聴かれててもヒフミンなら別に良いんだけど。むしろ話す手間も省けて楽々ちんちんちん」

 “ちんの数多くない?”

「せんせーの一本だけで良いもんね♡」

 “しまった、罠だ!”

「あ、あはは⋯⋯」

「全く、このイタズラっこちゃん♡ 私とせんせーの密会が気になっちゃうお年頃?」

「たまたま、たまたまなんです!」

「ちんとかたまとか、はしたないですわね♡」

 “フミが一番はしたないよ?”

「いやらしい女の子はお嫌いですか?」

 “うーん⋯⋯いや、んー⋯⋯うん”

「めっちゃ悩んでる♡」

 “どちらかと言えばとても好き、と判断されました”

「だってヒフミン♡」

「えぇっ、なんでそこで私に振るんですか!? いやらしいのはフミちゃんの特権では!?」

「お♡ なんだ♡ やるかこの♡」

「ひゃあぁぁ!?」

 

 

 足首を絡め取って強制的に開脚させてやる。

 といってもパジャマ姿なので別に下着が見える訳でもないのだけど。

 しかも悲鳴を上げた割には無抵抗だし。

 

 

「ほらせんせ♡ 無防備ヒフミンですよー♡」

「はぅぅ⋯⋯見ちゃダメです⋯⋯♡」

 “スカートだったら嬉しかったかなぁ”

「あ、あれ!? 先生思ったよりも動揺してません!?」

「そりゃ今更ただの開脚くらいじゃねぇ」

 “ヒフミはとても可愛いと思うよ”

「フォ、フォローがツライ⋯⋯! さては日頃から淫婦ミちゃんの淫乱具合に毒されて!」

「なんだこのやるか?」

「ひゃぁぁっ!?」

 

 

 生意気なヒフミンのほっぺたをぐりぐり。

 この誘い受けめっ♡

 

 

「ま、聴いてた通りヒフミンにやってもらう事はまだ無いから大人しく明日からの問題集とか小テストの作成に勤しんでなさいな。今はあんたがあの子達を率いる部長なんだから」

「うぅ⋯⋯ん、私に務まるでしょうか⋯⋯?」

「このおねだり上手め♡ 私の好きなあんたがこれくらいで躓く訳無いでしょ♡」

「⋯⋯えへへへ♡」

 “やはりここにキマシタワーを”

「ぴぴーっ♡ 建築基準法違反でーす♡」

 

 

 一通りわちゃわちゃと楽しんでから、食堂でお茶と人形焼を用意して頑張る二人に差し入れ。

 私は先に休むけど深夜一時には寝ないとダメよー♡

 

 

 

 

 翌朝、合宿二日目。

 

 

「みんな、おっはよー♡ 朝ご飯出来てますよ♡」

 

 

 眠そうに目を擦りあくびをするヒフミンを筆頭に四人が食堂に入ってくる。

 なにやらコハルちゃんの顔が赤いけど何か面白いイベントでも発生したのかな?

 ちょっと警戒心が出てたけど、朝ご飯の香りを嗅ぎ付けたのか表情が明るくなる。

 

 

「わ、なんか良い香り」

「今日の朝ご飯はトースト、ハムエッグ、オニオンサラダのごまドレッシング和え、カフェオレ、うさぎさん赤リンゴでーす♡ 物足りなかったら追加のミニクロワッサンも有るからねー♡」

「朝から豪華だ⋯⋯!」

「ふふ、美味しそうですね♡」

「んぅ⋯⋯フミちゃん、私のは⋯⋯」

「はいはい♡ いつものね♡」

 

 

 ヒフミンのカフェオレに角砂糖を二つ入れて軽くスプーンでかき混ぜ、ホイップを軽く乗せる。

 まだ眠いのかいつもよりだらしない笑顔を浮かべてトレイを受け取った。

 

 

「えっ!? いつもの!?」

「あらあら、まるで熟年夫婦みたいですね♡」

「おぉ⋯⋯これが話に聞いた『マスター、いつもの』というやつか」

「ふぇ⋯⋯?」

 

 

 分かっていないヒフミンを席に着かせた所で先生もやってくる。

 いつものスラックスと胸元を軽く開いたワイシャツ姿。

 

 

 “おはよう、みんな”

「せんせーおはよう♡」

「おひゃようごじゃるます⋯⋯ふわぁ⋯⋯」

「おはよう、先生」

「おはようございます、先生」

「先生、おはよう」

 “ヒフミはまだ眠そうだね”

「はい、せんせーの分♡」

 “ありがとう、フミ。お、うさぎさんリンゴだ”

 

 

 トレイを受け取った先生はリンゴを見て喜んでいる。

 炒飯にお子様ランチ用の旗を立てても喜ぶかもしれない。

 今度試してみよっと♡

 私も自分の分を用意して席へ。

 お隣失礼するねコハルちゃん♡

 あ、ちなみに昨日の夜食は朝来た時には人形焼含めて全部食べられてた。

 みんな食べ盛りでなにより♡

 さて、食べ終わったらみんなはこの後小テストと各課題集に取り組む事になる。

 私はその間に色々と仕込んでおこう。

 んー⋯⋯テスト後の差し入れは、りんごと蜂蜜のデニッシュにアールグレイで良いかな?

 お昼はショートパスタのカリカリチーズ焼きとサーモンマリネ、それと卵スープにしよっと。

 夜はどうしよっかなー⋯⋯量を調節出来るようにビーフシチューとバゲット、コーンサラダとみかんのジェラートで良し、っと。

 

 

 

 

 “そこまで、試験終了だよ”

「お、タイミングばっちり♡ 出前フミちゃんでーす♡ テスト後の差し入れ持ってきましたよ♡」

 

 

 ちょうど小テストが終わり、みんなの緊張が解れた所に襲来フミちゃん。

 特に机に突っ伏して頭の糖分を使い切ったコハルちゃんとどこか満足げに見えるアズサさんの反応が激しく、その体勢から顔だけがギュルンとこっちを向いた。

 ハナコさんとヒフミンも顔をほころばせている。

 

 

「フミの差し入れの時間ね!」

「この瞬間はいつもわくわくするな」

 “フミ、今日の内容は?”

「今日はりんごと蜂蜜のデニッシュでーす♡ 紅茶もアールグレイ淹れてきたよー♡」

 

 

 大きめのトレイに乗せて持ってきた一人用バスケットを配っていく。

 中には一口サイズのデニッシュが三つ。

 まぁまだお昼前だし、軽く糖分補給の量で。

 魔法瓶に淹れてきた紅茶をコップに注いで手渡していく。

 最後に先生へ持っていくと、先生は答案を眺めて嬉しそうに微笑んでいた。

 お、そろそろ来ちゃう?

 注目の結果とは!

 

 

 第二回試験対策小テスト採点結果

 ──阿慈谷ヒフミ:76点 合格

 ──白州アズサ :59点 不合格

 ──下江コハル :58点 不合格

 ──浦和ハナコ :08点 不合格

 

 

「惜しい!?」

「くっ、紙一重だったか」

「すごいです! コハルちゃんは最初の点数から三倍以上伸びましたよ! アズサちゃんも今回は本当に紙一重の所まで迫ってます!」

「ハナコさんも最初の点数から二倍二倍って伸びて来てるし、回数重ねたらすぐ合格ラインまでいけちゃいますね♡」

「うふふ、次も頑張ってみますね♡」

 “みんな、もう一息だね。明日の小テストが今から楽しみだよ”

 

 

 今回は小テストとはいえ、ギリギリまで合格に迫ってきた。

 予想以上に二人の伸びが良い。

 それだけの素質が有ったのだろう、コハルちゃんは将来名実共に正義実現委員会のエリートとして活躍するかもしれないし、アズサさんもその好奇心とも呼べる知識欲であらゆる事を吸収した戦術教官に成長するかもしれない。

 目標に、手が届く距離まで来た。

 ⋯⋯となれば、今夜辺りに接触してくるかな。

 私がそんな事を考えていると、ヒフミンがバッグをごそごそと漁り始めた。

 

 

「合格ラインまであと少し! みなさんのモチベーションをさらに高めるべく、なんとご褒美を用意しました♪」

 

 

 あっ。(察し)

 しばらく大人しかったからこいつのペロキチ具合を忘れていた。

 案の定バッグからは多種多様なモモフレンズグッズが出てきて教壇の上に所狭しと並べられていく。

 おいヒフミン見ろって、コハルちゃんとハナコさんが引いてるゾ♡

 アズサさんはこういったグッズを見るのは初めてなのか、興味深そうに眺めている。

 

 

「どうですかこのセレクション! 次回以降の小テストで合格ラインを越えた方には、私秘蔵のモモフレンズグッズを進呈しちゃいます!」

 “おお、これはまたすごい数だね”

「バッグに詰め込めるだけ詰め込んできました!」

 “それで一人だけ荷物多かったんだ⋯⋯?”

 

 

 なお、そのバッグの半分以上の容量を占めた特大ペロロ人形はヒフミンのベッドの枕元に置いてある。

 もはや宗教だ。

 そして、遂にヒフミンの熱心な勧誘が実を結ぶ。

 

 

「か⋯⋯」

「どうですか、アズサちゃんっ」

「かわいい⋯⋯っ!」

 

 

 両手を握り締め童女のように顔を輝かせるアズサさん。

 いやん、私がアズサさんに魅了されそう♡

 ぬいぐるみやバスタオル、アクリルスタンドが並ぶ教壇に駆け寄りあわあわと両手を伸ばしたり引っ込めたり、まるで初めておもちゃ屋さんに連れてきてもらった幼子みたいに大興奮だ。

 その様子にヒフミンはもちろん、コハルちゃんやハナコさんも優しい笑顔になっている。

 先生はこっそり撮影しないで♡

 撮りたくなるのは分かるけど♡

 

 

「すごい⋯⋯! ヒフミのペロロ様以外にも色んな子がいる⋯⋯! 不思議な長さの猫や、まん丸な目をしたフクロウに、こ、この子は⋯⋯っ!?」

 

 

 アズサさんが目を付けたのは黒いボディに丸くデフォルメされた骨のような顔が特徴のスカルマン。

 ほほう、数あるモモフレンズからスカルマンを選ぶとはなかなか♡

 

 

「かっ、かわいい⋯⋯! ヒ、ヒフミっ、本当にこの子がもらえるのっ!?」

「もちろんです! 今ならなんとオマケして必勝スカルマンハチマキも付けちゃいます!」

「⋯⋯⋯⋯よし、明日の小テストは限界を超えて挑ませてもらうとしよう」

「アズサちゃん、頑張りましょう♪」

 

 

 熱意をメラメラ燃やして拳を握るアズサさん。

 信者を獲得してご満悦のヒフミン。

 

 

「コハルちゃんとハナコさんは、小テスト後の差し入れのリクエスト権でどうですか♡」

「フミのお菓子リクエスト権⋯⋯!」

「あらあら、それはちょっと魅力的ですね♡」

 

 

 という事で二人へのフォローもヨシ!

 少しでもハナコさんが本気を出すキッカケ作りになれば良いんだけど。

 みんなのモチベーションも上がった所で小テストの見直しと間違えた所に関連する課題集を選んで復習。

 

 

 

 

 お昼ご飯を挟んで、午後は次の範囲の勉強をする。

 途中先生が席を外したから、恐らく接触があったね。

 夜にアロナちゃんが録画したものを見せてもらうとしようかな。

 今はコハルちゃんとアズサさん、ヒフミンとハナコさんのペアでお互いに課題を解いている。

 ハナコさんはヒフミンが詰まりそうな所で自分から解説を求めてヒフミンに答えを導かせる、実に高度な教え方をしていたけど。

 最初の頃に有ったみんなとの壁が無くなったようで、見ていて微笑ましい。

 コハルちゃんもやった所はちゃんと覚えていて、アズサさんが詰まった所を丁寧に教えている。

 流石は未来のエリート、人見知りが収まって増長癖が無くなったら頼れるお姉さんになりそうだ。

 と、そんな時に事件が起きた。

 

 

「コハル、ここの問題なんだけど」

「うん? えーっと、これは⋯⋯いや、確か参考書で見た記憶が⋯⋯? ちょっと待ってね」

 

 

 コハルちゃんがごそごそとバッグから()()()を取り出した。

 

 

「確かこれに載っていたはず⋯⋯⋯⋯」

 

 

 本人は参考書のつもりで机にそれを置き、バッグの中身を整理して口を閉める。

 そしてこの場に居る全員がそれを目にした。

 お子様お断りのピンクな本《シャーレの当番に行ったら先生の夜の当番もさせられちゃった♡ 〜〜禁断の愛、許されないからこそ熱く〜〜総集編》を。

 待って♡

 色々言いたいけど総集編ってなにごと♡

 そんなにいっぱい種類出てたの♡

 ヒフミンは予想外の過酷本に顔を赤らめさせつつ表紙に写る上裸の先生をガン見している。

 ハナコさんは意識外からのネタ提供に思わずあらあらと大興奮してコハルちゃんを見ている。

 アズサさんはこれが参考書なのかと表紙を見つめたあと、ぺらりとページを捲っている。

 

 

「コハル。この参考書に、答えが載っているのか?」

「えぇ、そうよ────⋯⋯⋯⋯!?」

 

 

 あ、気付いた。

 自分が何を取り出してしまったのか認識したコハルちゃんは真っ赤になって叫んだ。

 それを皮切りにきゃあきゃあと悲鳴が飛び交う。

 特に日頃からエ駄死の洗礼を受けていたハナコさんはもう大喜びで、コハルちゃんを弄っている。

 アズサさんはマイペースにページを捲ってふむふむとお勉強中、ヒフミンはハナコさんを止めようとしつつも捲られるページをちらちら見ている。

 むっつりさんめ。

 

 

「はいはい、そのへんで一旦ストーップ♡」

 

 

 収拾が付かなくなる前に手を鳴らして注目を集める。

 

 

「コハルちゃんが可愛いからってあんまりつんつんしちゃダメですよハナコさん♡」

「⋯⋯そうですね。ごめんなさいコハルちゃん、ちょっとやりすぎました」

「コハルちゃんは確か正義実現委員会で押収品の管理もしてましたから、押収品が荷物に紛れ込んじゃったんですよ。ね、コハルちゃん♡」

「そっ、そうなの⋯⋯だからこれは私のじゃなくって⋯⋯!」

「うんうん、ちゃんと分かってるから大丈夫♡ みんなも説明したから分かってくれたよ♡」

 

 

 よしよしと背中をぽんぽん撫でてあげると、コハルちゃんは縋るように抱き着いてきた。

 あらん、役得♡

 お返しむぎゅむぎゅ♡

 よしよし、良い子良い子♡

 

 

「ふむふむ⋯⋯先生はこういうのが好みなのか。私みたいな貧相な身体では挟めないな、となると⋯⋯太もも?」

「待って♡」

「はわわっ、アズサちゃんそれを本当に参考書としちゃダメですよぉ!?」

「ちょ、じっくり読んでたのアズサ!?」

「あらあら♡ アズサちゃんは勉強熱心ですね♡」

「フミ、この参考書では大体の生徒の胸がハナコくらいあるが、先生は大きい方が好きなのか?」

「んー、大きさよりも許されるかが大事かな」

「許される、ですか?」

「大きくても小さくても、本気で嫌がらないなら先生は見てくれますから♡ 昨日のプール掃除の時も、先生みんなの事を見てちょっと嬉しそうでしたし♡ すぐに先生としてこれはいけない、って自分を戒めてましたけど」

「フミちゃん良く見てますねぇ⋯⋯」

「にしし♡ 私は先生の専属だからね♡」

「勉強になるな⋯⋯この分野はフミの得意とするところなんだな」

「え、えっちなのはダメ、だけど⋯⋯もうちょっと聞いてみたい⋯⋯!」

「私もフミちゃんのお話を是非聞きたいです♡」

「わ、私も興味が無いというと嘘になっちゃいますね⋯⋯」

「んー、教えてあげたいのはやまやまなんだけどぉ」

 “きみたち”

「「「「ひゃあっ!?」」」」

「せんせーが帰ってきちゃったからまた今度ね♡」

 “いや、そういうのも青春ではあるけど、流石に先生として見過ごす訳にもいかないからね”

 

 

 戻ってきた先生の声にみんな揃って驚いていた。

 いやぁ、みんな初々しいなぁ♡

 そんな事では先生との初夜で先生にご奉仕出来ないゾ♡

 

 

「まぁ、これが手元にある状態だとみんな集中出来ないだろうし、今から保管室に戻しに行こっか♡」

「えっ、今から?」

「今から♡ 先生も付いてきてくれますか?」

 “もちろん、私が居た方が色々とスムーズに進みそうだね”

「みんなは待ってる間、ヒフミンもちもちしてて良いですから♡」

「えぇっ!?」

「あら♡ では早速♡」

「ひゃぁ、ハナコちゃん!?」

「よし、私もやろう」

「アズサちゃんまで!? あわわわ〜!?」

 

 

 ほっぺたやらお腹やらをもちもちされるヒフミンの声を背に、私と先生とコハルちゃんは一路正義実現委員会本部へと舞い戻るのであった。

 あ、コハルちゃん道中手を繋いで行こっか♡

 ほら、友達仲良しにぎにぎ繋ぎ♡

 コハルちゃん手ちっちゃくて可愛い♡

 

 

 

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