もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら   作:一ノ瀬 崇

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二十二話目

 ヒフミンの失言から始まった情報交換会。

 ティーパーティーホストのナギサさんの思惑やら昼間に先生と接触してきたミカさんから齎された情報やら、だいぶピースは揃ってきたと思う。

 穴抜けの多い情報から答えを導くには、私の勘よりハナコさんの思考の方が精度が良いので今回はハナコさんにブレイン役をお任せ。

 フミちゃんはお気楽サポートに回るのだ♡

 実際、ハナコさんの頭の回転の速さがヤバあじ。

 仮説を立ち上げて私に投げ、私の勘で合否を確かめ、再度仮説を導き出していく。

 いやそんなめちゃくちゃな方法で深掘り出来るとか私も知らなかったんですけど。

 これが天才足る者の素質か、と舌を巻き巻き。

 まぁハナコさんはそうした《天才》のレッテルを貼られて天才らしく振る舞う事を周りに求められる事に嫌気が差したみたいだけど。

 水着を着て出歩いたり、テストで手を抜いたり。

 自分の理想を押し付けてくる子達への反骨心が根底にはあったっぽい。

 だからこそ、ありのままの自分で楽しめ、受け入れてくれる補習授業部が好きになった。

 プール掃除の時のはしゃぎようはそう言う事だった。

 解ってみれば、ハナコさんも可愛い女の子に過ぎなかったって事だね。

 

 

「で、どうしましょうかね」

 “アリウス自治区か⋯⋯流石に詳しく調べないと出て来ないね”

「でしたら、古書館を訪ねてみてはどうでしょう」

 

 

 ハナコさんが言う古書館とは、トリニティの歴史そのものと言っていいほどの書物を保管・修復・管理している施設らしい。

 古い書物であればシスターフッドも保管してはいるだろうけど、そちらは秘密主義が強いのでシャーレの先生と言えど顔パスでは通してもらえない可能性が高い、と。

 

 

「なら明日、私が行ってみますか」

 “私も行こうか?”

「いえ、せんせーは補習授業部でハナコさんと一緒にみんなの成績アップをお願いしますね。裏で渦巻く陰謀が何であれ、まずは正道。正面からテストを突破しないといけませんから」

 “分かった、任せたよ”

「任されました♡」

「じゃあ今日はこれで解散ですかね? ⋯⋯ふわぁ」

 

 

 ヒフミンがあくびを漏らす。

 なんやかんやで良い時間になっていた。

 

 

「なんだか眠るのが勿体ないように感じてしまいますね」

「じゃあハナコさん、今日は一緒に寝る?」

「あら♡ 良いんですかフミちゃん♡」

「親睦を深める意味でも是非♡ それに私のパジャマ、もふもふで温かいんですよ♡」

「なら私も⋯⋯!」

「あんたは失言の罰でおあずけ♡」

「そんなぁ〜」

「うふふ♡ ヒフミちゃん、一日だけフミちゃんをお借りしますね♡」

「まぁえっちな事はしないからコハルちゃんにも怒られないでしょ」

「あら、しないんですか?」

「テストが全部無事終わったら、当番でなくてもシャーレに遊びに来てください♡ そこでしっぽりムフフ、といきましょー♡」

「あっ、これはガチですねフミちゃん」

 “ヒフミが何かを感じ取った⋯⋯”

 

 

 そんな訳で先生の部屋を辞去し私のお部屋へハナコさんをご招待。

 特にえっちな事はしないまま、ベッドの中でちょっとお喋りをしてから普通に眠った。

 朝起きたら寝惚けて抱き着いてきたので、おでこにちゅーしてあげたら真っ赤になってしまった。

 おやおやぁ、初々しい反応ですなぁ?

 イタズラ心がにょきにょきしてきたので、ハナコさんの耳元に口を寄せ優しく囁く。

 

 

「おはよう、ハナコさん。可愛い寝顔でしたね」

「⋯⋯お、おはようございます、フミ、ちゃん」

「おや、顔が赤いですよ? どれどれ」

「わひゃっ」

 

 

 前髪を掻き上げ額を合わせる。

 ついでにハナコさんの瞳を覗き込むと、若葉色の瞳が揺れていた。

 うわまつ毛長くて綺麗。

 やっぱりハナコさんは美人さんだなぁ。

 なんて考えて額を離し、笑いかける。

 

 

「熱は無いみたいで良かった。気分は悪くないですか?」

「は、はい⋯⋯」

「⋯⋯ふふ、寝起きのハナコさん、とっても可愛いですよ」

「う、も、もう起きます」

 

 

 起き上がろうとしたハナコさんの肩に手をかけ、そっと押し戻す。

 

 

「もう少しだけ、可愛いハナコさんを独り占めさせてください♡ もう、ちょっとだけ♡」

「〜〜〜〜っ!」

 

 

 さらに顔が赤くなったハナコさんは、ベッドに潜って顔を隠してしまった。

 うむ、謎の達成感。

 掛け布団から頭だけ出しているハナコさんを優しくなでこなでこ。

 

 

「ここでは取り繕わなくて良いんです。やりたい事、やりたくない事をはっきり口にしても、誰も文句は言いません。ヒフミンもアズサさんもコハルちゃんも、みんなハナコさんの事を大切に思ってくれる友達ですから。もちろん、私も♡ ハナコさんを悪く言ったり自分勝手に利用しようとする子が居たら、私が吹っ飛ばしてやりますから♡ ハナコさんのやりたかった青春、一緒に楽しんで行きましょう♡」

 

 

 

 

 

 

「おはよー♡」

「おはようございます♡」

「おはよう。⋯⋯ん? なんかアンタ達近くない?」

「気のせいですよ♡」

「おはよう。フミとハナコは昨日より仲良しになったのか?」

「一緒のベッドでお話して、仲良くなりました♡」

「一緒のベッド!?」

「まぁ、普通に喋って寝ただけだよ♡ 今度コハルちゃんとアズサさんもやってみる? 夜更かしお喋り♡」

「あ、なんだお喋りなのね⋯⋯それは私も、やってみたいかも」

「私も興味がある。フミの話はいつも面白いから」

「じゃあ明日はコハルちゃんで明後日はアズサさんね♡ 今から楽しみ♡」

「うぅ、フミちゃん分が足りませんよぅ⋯⋯」

「仕方ないなぁ⋯⋯ほら、ヒフミン」

「なんでんむっ」

「あら♡」

「はっ!?」

「おぉ」

 

 

 しょんぼりヒフミンを元気付ける為に軽くちゅーしてやった。

 見る間に血色が良くなるヒフミンの横で、コハルちゃんも真っ赤になっていた。

 

 

「えっ、えええっ、えっちなのはダメーっ! 主文後回し!!」

 

 

 

 

 とまぁ、そんな賑やかな朝から始まった合宿三日目。

 今日の朝ご飯は予告していた通り和食。

 焼き鮭、厚焼き玉子、大根と人参の煮物、オクラと鰹節のポン酢和え、豆腐とさやえんどうの味噌汁、五穀米。

 飲み物は水と緑茶を用意してある。

 

 

「わぁ、ホテルの朝ご飯みたい!」

「にしし、喜んでもらえて良かった♡」

「フミは料理が上手だな」

「昔から料理もお菓子作りも上手なんですよ」

「なるほど、ヒフミちゃんのもちもちはフミちゃんが作り上げたんですね♡」

「はぅっ!? そ、そうとも言えますけど」

「ヒフミのほっぺたはもちもちですごかった。毎日触っていたいくらい」

「あ、アズサちゃんまで⋯⋯う、うぅ」

 “ヒフミのほっぺたは大人気だね”

「今度ヒフミンのほっぺたを再現した柔らか大福アイスでも作ってみようかな?」

「大福アイス⋯⋯! それは興味深い」

「ひえぇぇぇ⋯⋯!?」

 

 

 和やか賑やかに朝食を終えて、小テストへ挑むみんなを見送り今日の分の料理を作っていく。

 差し入れはコハルちゃんのリクエストで焼きプリン。

 気合い入れすぎて茶碗蒸しみたいなサイズになっちゃったけど、みんなならぺろっと食べちゃうだろう。

 お昼ご飯は辛さ控えめ麻婆丼、春雨スープ、茄子の煮浸し、杏仁豆腐と中華で纏めてみた。

 晩ご飯は冷しゃぶ、フキと人参の煮物、溶き卵の味噌汁、白米でいこう。

 デザートはこしあん揚げ団子にしよう。

 今日も喜んでくれると良いな♡

 鼻歌を歌いつつご機嫌に準備を済ませ、焼きプリンの仕上げ、表面をバーナーで炙っていく。

 この焦げてパリパリになったのが良いんだよねぇ♡

 飲み物はダージリンにしようかな。

 トリニティは紅茶が好まれてるだけあって、安くても良質な茶葉が手に入るのが良い。

 代わりに小さじ一杯で五千円を超えるお高いやつもあるらしい。

 こわー、と思ったけど今の私なら普通に常飲出来るんだよね⋯⋯うーん、金銭感覚が狂う♡

 ともあれ焼きプリンをトレイに載せてみんなの待つ教室へ。

 モモトークで先生に確認すると、ちょうど採点が終わった所だと返ってきた。

 テスト中にお邪魔しちゃうと悪いから確認大事、ヨシ!

 

 

「フミちゃんイーツでーす♡ 今日はコハルちゃんリクエストで焼きプリンだよー♡」

 

 

 教室の扉を開けるとみんなが笑顔で出迎えてくれた。

 いつもよりちょっと遅れたからソワソワしてたらしい。

 もー、みんな可愛いんだから♡

 

 

「焼きプリン! 焼きプリン!」

「コハルがぱたぱたしている⋯⋯そんなにすごいものなのか」

「あらあら♡ コハルちゃん大興奮ですね♡」

「頭の羽もピコピコしてて可愛いです♪」

 

 

 早速みんなに配っていく。

 コハルちゃんは一口目から至福の笑み、アズサさんは食べるごとに目がキラキラ、ヒフミンとハナコさんも大満足のようだ。

 

 

「はい、せんせーの分♡」

 “ありがとう、フミ。なんだか茶碗蒸しみたいだね⋯⋯?”

「大きめに作ったらそっくりサイズになっちゃった♡」

 “ふふ、いっぱい食べられてお得だね”

「そうそう、せんせー前にシッテムの箱にいちごみるくのパック置いたら消えてましたけど、理屈はともかくアロナちゃんにも物を送れるんですか?」

 “うん、それほど大きくなければね”

「じゃあ、これ♡ アロナちゃんの分♡」

 “ありがとうフミ、わ、アロナが両手ぱたぱたして大はしゃぎだよ”

 

 

 先生が焼きプリンとスプーンをタブレットの前に置いて何か操作をすると、容器ごと焼きプリンが消えた。

 相変わらずシッテムの箱周りは謎が多い。

 

 

 “ほっぺたを押さえて幸せそう。フミにありがとう、だって”

「どういたしまして♡ これからはお菓子もアロナちゃんの分作ります?」

 “んー、あんまりあげるとお菓子が無い時に動いてくれなくなるかも⋯⋯あはは、ごめんアロナ”

 

 

 私には見えないけど、なんとなく画面の向こうで先生をぽかぽか叩いてる女の子の姿が脳に浮かんだ。

 今度いちごみるくを使ったお菓子でも作ってみよう。

 そして気になる今日の小テストの結果は。

 

 

 

 

 第三回試験対策小テスト採点結果

 ──阿慈谷ヒフミ:81点 合格

 ──白州アズサ :63点 合格

 ──下江コハル :64点 合格

 ──浦和ハナコ :100点 合格

 

 

 

 

 見事、全員合格ラインを突破した。

 先生の発表から一拍置いて、歓声が上がる。

 コハルちゃんとアズサさんはハイタッチ、ヒフミンはハナコさんに捕まってむぎゅむぎゅされている。

 かと思えばそのままコハルちゃんとアズサさんも捕まえてお団子むぎゅむぎゅ状態に。

 そんな四人を眺めながら、私と先生は顔を見合わせ、どちらともなくニカッと笑ったのだった。

 初の合格ライン突破を祝って、晩ご飯の後でケーキ出してあげよっと♡

 ヒフミン主催のスカルマン授与式も拍手に包まれて終わり、ぬいぐるみを抱き締めたアズサさんの可愛さにみんなでめろめろになったりもした。

 興奮を落ち着ける為にもう一度お茶を飲んで一休みし、小テストの復習に挑む。

 一つ壁を超えたからか、みんなのモチベーションも高まっているみたい。

 結局お昼ご飯を食べ終えるまで、みんなの興奮は冷めなかった。

 

 

 

 

 午後、私は合宿所を離れて本校舎がある方へと歩いていた。

 抜け出すのに思いの外手間取ったせいか、額に軽く汗が滲んでいる。

 というのも、アズサさんが侵入者対策として殺傷力のないトラップを目一杯仕掛けて置いたからだ。

 アリウスではゲリラ戦術を教えているのか、簡単な部品さえあればどこでも製作出来るようで、危うく何回か引っ掛かりそうになった。

 先生が引っ掛かっても大丈夫なように、という事で仕掛けられたトラップに悪意が無く危険も無い為、私の勘が反応するのがだいぶ遅れて足先にぴんと張られた糸が触れていた、なんて事もあった。

 アレはもう余程トラップに精通してる人じゃないと連鎖させてえらいヒットボーナスを稼がれるね。

 

 

「っと、ここかぁ」

 

 

 一時間近くのっぽりのっぽり歩いて辿り着いたのはいかにも歴史が有りそうな威容の建物。

 重そうな扉を開いて中に入ると、高い天井とやや薄暗い室内が目に入る。

 続いて天井まで届きそうな高さがある大きな本棚と、隙間無く並べられた古書の数々。

 足元はふかふかの絨毯が敷いてあって、温度湿度ともにしっかりと管理されているのが分かる。

 

 

「⋯⋯どなたですか」

 

 

 ダウナーな感じの声が届く。

 視線を向けるとカーディガンを羽織った長髪の生徒さんが広い机の上に本を広げ、羽根ペンを手にこちらを見ていた。

 

 

「お邪魔します。脇野フミと申します」

「古関ウイです⋯⋯その制服、ワイルドハントの⋯⋯?」

「ワイルドハント一年です。今は連邦捜査部シャーレとして来ました」

 

 

 その言葉にウイさんは面倒くさそうに目を細めた。

 あまり他人と関わりたくないタイプの人っぽいかな?

 なら世間話は省いて単刀直入に用事を伝えよう。

 

 

「アリウス自治区に関する書物、あるいは情報を探しに来ました」

「アリウス自治区⋯⋯? また珍しいものをお探しですね、それもシャーレが」

「エデン条約に絡む事で必要となりまして。どの棚に有るか教えて頂ければ自分で探します」

「⋯⋯⋯⋯D区画21-4、下から三列目にあります。本は乱暴に扱わず、読み終わったら近くの回収用台車の上に置いてください。持ち出し、撮影は厳禁です」

「ありがとうございます」

 

 

 頭を下げて、早速教えられた本棚へと向かう。

 ⋯⋯いや、古書館内の全部の書物の場所暗記してるの?

 えっ、ヤバ♡

 実はとんでもないプロフェッショナルだったのではとちょっと興奮してきた。

 目当ての本棚を見付け、片っ端から読み漁っていく事にする。

 幸いすぐ傍に閲覧用の机が有ったので腰を据えて読書タイムといこう。

 これはトリニティの成り立ちと派閥の違い⋯⋯こっちは第一回目の公会議にまつわる当時の情勢と資料⋯⋯これはアリウス派が追放されるまでの議事録の断章⋯⋯こっちは比較的新しい当時の資料や様子をまとめ直した解説書⋯⋯。

 んー、アリウスに関する情報はそんなに多くないけど、どこにも《vanitas vanitatum》の文字が無いぞぉ?

 虚無主義らしきものはあるけどあくまでシスターフッドが有する神の教えの一文の解釈例でしかない。

 となると、アズサさんが口にしたvanitas vanitatumの教えは()()()()()()()んだろう。

 専門書、歴史書をだいたい読み終え、近年の噂話や都市伝説を纏めた娯楽書の類まで入ってきた。

 でも、その中で興味深い一文がある。

 つい十年ほど前までアリウスでは内乱が続いていて、新しい生徒会長が就任した事で争いは収まったらしい。

 ほー、ほー。

 書かれていたのは誰が書いたとも知れないスクラップ記事を集めて、センセーショナルな見出しとともに空想を巡らせるような文体を並べた古いムック本の片隅。

 珍しく情報提供者の名前が載っている。

 ゴルコンダ。

 ペンネームだろうか、聞き馴染みの無い音だ。

 他の文章はこんなに簡潔に書かれてはいない。

 それこそゲヘナにゲッシーが出たとか、ミレニアムでは半分近くの生徒が脳を改造されているとか、そんな都市伝説を面白おかしく真面目風に解説した娯楽本だ、著者のクセやお気に入りのリズムがずっと滲みやすい。

 本来ならくすっと笑って次の瞬間には記憶から消し去られているような一文の羅列。

 その中で、このゴルコンダという人の文は異彩を放っていた。

 だけど、私の勘は《これだ》と囁いている。

 もし、この記述が本当だとしたら、十年前までアリウスはばにたす思想を教えてる余裕すら無いような戦乱の中にあったと。

 ならコイツか?

 内乱を収めてアリウスを手中に置いた生徒会長とやらが、もし今もなお権力にしがみついているとしたら。

 これはアズサさんに確かめておきたい所さん。

 調べたい事はあらかた調べ終わったし、今日の所はお(いとま)しようかな。

 本を丁寧に台車へ並べ、固まった背筋をぐぐっと伸ばす。

 長い事集中していたから甘味が恋しい。

 スマホを取り出せばもう六時近い。

 今から戻ったら晩ご飯の時間だ。

 帰り際、ウイさんにお礼を告げて古書館を後にする。

 ⋯⋯え、ウイさんもずっと作業してたの?

 なるほど古書館の主。

 

 

 

 

 

「ただーいまー♡」

「おかえりなさい、フミちゃん♪」

「おっとっと♡ 良い子にしてた?」

「むー、当たり前じゃないですかぁ!」

「いや前科がね」

「ぐぅ」

 

 

 ぐぅの音出ちゃった♡

 抱き着いてきたヒフミンを抱きかかえて食堂に着くと、みんながお茶をしながら待っていてくれた。

 

 

「ただいま♡ 先に食べていてくれても良かったのに♡」

「何言ってるの、フミも補習授業部の仲間なんだから、ご飯も一緒に決まってるじゃない!」

「フミ、お味噌汁温めて置いたぞ。早く一緒に食べよう」

 “ごーはーん! ごーはーん!”

「ふふ、先生も待ち切れないみたいですから♡」

「いやなんで先生が一番子供っぽいの♡ 可愛いから良いけど♡」

 

 

 という事で待っていてくれたみんなと一緒に晩ご飯。

 両手を合わせていただきます。

 冷しゃぶはおろしポン酢と胡麻ダレとピリ辛焼肉のタレから好きなのを掛けて食べられるようにした。

 おろしポン酢はハナコさんと先生、胡麻ダレはヒフミンとコハルちゃん、ピリ辛焼肉のタレは私とアズサさん。

 結構好みが分かれたね。

 特にアズサさんは私と同じくらいの勢いで、冷しゃぶで白米をかき込む快感に酔いしれている。

 

 

「フミ、このタレすごい! ご飯が消える!」

「アズサさん、豚肉でキャベツを巻くようにして食べてからご飯行ってみて♡」

「んぐんぐ⋯⋯、っ!? ん〜っ!」

「そこですかさずお味噌汁をぐい〜っと♡」

「ごくっごくっ⋯⋯ぷふぅ」

 

 

 味噌汁を飲み込んだアズサさんはぺかーっと満面の笑みを浮かべた。

 やだもう可愛い♡

 その後も美味しそうにパクパクと食べ進め、あっと言う間に完食。

 食後のデザートにこしあん揚げ団子と緑茶を出したら、それもぺろっと平らげた。

 さらに合格ライン突破記念のショートケーキを出したらそれも綺麗に食べ尽くした。

 かと思えば、空になった皿を見つめてポツリと呟く。

 

 

「あんなに美味しかったのに、もう無い⋯⋯ばにたす⋯⋯」

「そこで虚無感じないで♡」

 

 

 仕方がないのでオマケのこしあんどら焼きを作ってあげた。

 めっちゃ好評だった。

 

 

「こんなに美味しいお菓子を魔法みたいに次々と⋯⋯! フミ、私はこんな粗忽者だけど、良かったら嫁に来てはくれないだろうか⋯⋯? 精一杯、幸せにしてみせる」

 

 

 求婚された。

 

 

 

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