もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら   作:一ノ瀬 崇

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二十三話目

 先生達との情報共有も終えて合宿四日目。

 今日は一週間合宿の真ん中という事で一日勉強はお休み、完全オフの日だ。

 なのでのんびりと日向ぼっこでもしながらみんなを侍らせてこの世の春でも謳歌しようと思ったのだけど。

 

 

「あうぅ⋯⋯結構降ってますね⋯⋯」

「そうですねぇ」

 

 

 ヒフミンとハナコさんが見上げた窓の外、暗い空からは大量の雨粒が降り注いでいる。

 起きた時から降り続いている雨は、止むどころか勢いを増す一方。

 ざあざあを通り越してダバダバ降ってる。

 傘も差さずに外へ出ようものなら、一瞬で濡れ透け逮捕でお風呂の刑である。

 まぁなんだかんだこの三日間全力で頑張ってきたみんなを休ませるのにはちょうど良いのかもしれない。

 温かいハーブティーとチョコワッフルを載せたトレイをミニテーブルに置いて、ハナコさんのベッド端に腰掛ける。

 

 

「仕方ない、今日はお部屋でのんびりみんなを侍らせてまったりするかぁ」

「あら、ハーレムですね♡」

「ハーレムなんですよ」

「え、ヒフミちゃん⋯⋯?」

 

 

 ガチ返しが来て思わず困惑するハナコさん。

 今更気付いても逃げられないゾ♡

 後ろからむぎゅっと抱き締めて綺麗な髪に顔を埋めて、思いっ切り深呼吸。

 んー、極上♡

 

 

「ひゃ、フ、フミちゃん?」

「ふっふっふ、ハナコさん⋯⋯いや、ハナコちゃん♡ あなたは既に先生ハーレム後宮計画のメンバーとして選ばれているのだー♡」

「何やら凄い計画が⋯⋯!?」

「あはは⋯⋯計画名でもうオチてるんですけどね。おまけに毎回ノリで言ってるので計画名が安定してません」

「という訳でもう遠慮しませーん♡ ハナコちゃんも私のラブラブ仲間にしちゃいまーす♡ 首筋ちゅー♡」

「ひゃぁっ、え、本気なんですか!?」

 

 

 私の本気を感じ取ってかわたわた身動ぐハナコちゃん。

 そんな彼女の手を、ヒフミンは優しく包み込んだ。

 

 

「ヒフミちゃん?」

「大丈夫です、ハナコちゃん」

 

 

 ハナコちゃんの首筋から顔を離してヒフミンを見ると、まるで貞淑な令嬢のように柔らかな笑みを湛えていた。

 

 

「フミちゃん上手いのでいっぱい気持ちよくしてくれますから♪」

「どストレートですか!?」

「お、珍しいハナコちゃんのツッコミ♡」

「うぅん⋯⋯えっちな気配がする⋯⋯」

 

 

 二人でハナコちゃんを捕まえてきゃっきゃしていたらコハルちゃんが目を擦りながら起きてきた。

 寝起きでえっちな気配を察知するとは流石。

 

 

「おはよ、コハルちゃん♡ 今日は雨降りだからみんなの所にお邪魔しちゃった♡」

「んぅ⋯⋯フミおはよう⋯⋯あ、なんか良い匂いがする」

「そっちのテーブルにチョコワッフルとハーブティー置いてあるからご自由に♡」

「あ、ホントだ。えへへ、ワッフルいただきまーす」

「あ、あの? コハルちゃん?」

「どうかしたハナコ?」

「ええと、私いまフミちゃんに襲われてるんですが⋯⋯」

「無罪」

「判決がはやぁい♡」

「ええっ!?」

「いっつもアンタが変な事言ってるから遂に襲われただけでしょ。それにフミなら別に良いじゃない、知らない仲でも無いんだし⋯⋯あ、美味しい♪」

 

 

 笑顔ではむはむとワッフルを食べるコハルちゃんに、ハナコちゃんは見捨てられたショックで固まってしまった。

 裁判長のお許しも出た事だし、どれどれもみもみ♡

 

 

「やっ、ちょっ、あんっ」

「ハナコちゃんの胸大きくて良いなー♡ コレでせんせーを誘惑したのかー! おらー♡」

「んっ、フミちゃ、あっ、んっ」

「ハナコちゃん、もっと力を抜いてください♪ フミちゃんに委ねて⋯⋯♪」

「ふむふむ⋯⋯ハナコは胸の下側が弱いのね」

「やぁんっ、フミちゃんっ、謝るので許し、あぁっ、んぁっ♡」

「おっ、良い声出たじゃない♡」

「わ、ハナコのえっちな声⋯⋯」

 

 

 良い啼き声が出たところで解放する。

 はぁはぁと荒くなった息を整えるハナコちゃんの首筋にもう一度ちゅーをして、今度はコハルちゃんをむぎゅー♡

 

 

「わ、今度は私なの?」

「んー、コハルちゃん温かい♡」

「フミだって温かいじゃない。パジャマももふもふしてるし」

「⋯⋯な、なんだか今日のコハルちゃんはいつもと違いますね?」

「アレよ、志を同じくする友と言うか⋯⋯まぁ、フミの事嫌いな訳じゃないし、私達だけなら良いかなって。もちろん他の人が居る所でやったら問答無用で主文後回しだけどね。それに今回、フミのお陰で勉強も頑張れて点数も上がって小テストで合格ライン突破出来たし⋯⋯私達の健康を考えて毎日美味しいご飯も作ってくれて。フミにはお世話になりっぱなしだもの。お礼って言うのも変な話だけど、フミが私にそういう事したいって思っても拒否感も無いし⋯⋯私もフミなら良いかな、って」

「ふふふー、つまりコハルちゃんも私のものなのだー♡ コハルちゃんちゅーしよ♡」

「⋯⋯ほっぺたなら良いわよ」

「わーい♡ ちゅー♡」

 

 

 コハルちゃんのほっぺたに口付けすると、頭の羽がぱたぱた動いた。

 顔には出さないけど喜んでくれてるみたい。

 やん、コハルちゃん好き♡

 そんな裁判長を目にしたハナコちゃんは愕然としていた。

 まぁアレだけえっちな事に厳しかったコハルちゃんがいきなり受け入れてたら、そりゃねぇ。

 

 

「実はフミちゃんって催眠おじさんだったりします?」

「待って♡」

「催眠では無いけど洗脳と言いくるめは得意ですね」

「私もちょっと疑ってる。フミって心の隙間に入ってくるのが上手いというか、こっちの喜ぶ事や欲しい言葉をすぐ理解してやってくるのよね」

「裁判長、異議あり♡」

「異議を通したいなら賄賂よこしなさい♪ 今日はオムライスが食べたいの♪」

「きゃー裁判長がダークサイドに♡」

「あぁ、コハルちゃんがすっかり図太く⋯⋯」

「図太くってなによ!」

「あはは⋯⋯フミちゃんは淫毒持ちですから」

「ぐぬぬ♡ 取り敢えず朝ご飯にオムライス作ってあげる♡」

「え、良いの?」

「そんな可愛いおねだりされたらねぇ♡」

「やった♪ えへへ、フミ好きよ♡」

「んー、私も♡」

 

 

 もっかいほっぺたにちゅーしちゃう♡

 と、今度はコハルちゃんもほっぺたにちゅーし返してくれた。

 きゃーコハルちゃん好き好き♡

 そんな風にしていて、ヒフミンが大人しくしているはずもなく。

 

 

「フミちゃんフミちゃんっ♪」

 

 

 期待を滲ませた顔で両手を広げてハグ待ちしてる。

 仕方ないなぁ、とヒフミンに抱き着いた。

 お互いに腕と脚を絡めて密着状態。

 あ、こら♡

 みんな居るんだから腰へこは我慢しなさい♡

 

 

「フミちゃん好き♡ 好き好き♡ 大好きです♡」

「私も好きよ♡ もう、寂しんぼさん♡」

 

 

 ぎゅっと抱き締めて頭を撫でてあげると嬉しそうに頬ずりしてきた。

 うぅん、髪の毛はサラサラほっぺたはもちもち。

 これでペロキチさえ無ければ楽なんだけど。

 まぁそこも含めてヒフミンだから良いか。

 可愛いやつめ♡

 という訳で補習授業部の最後の一人、アズサさんもといアズサちゃんを堕とそうと思うのだけど当の本人はまだ夢の中にいる。

 ヒフミンからもらったスカルマンぬいぐるみをぎゅっと抱いて寝てる姿は童女みたいで可愛らしい。

 さっきまできゃいきゃい騒いでた私達も、思わずほっこり。

 天使かな?

 

 

「うぅん⋯⋯ダメ、可愛いものが⋯⋯ふわふわ⋯⋯それはよくない⋯⋯」

「なんてこった寝言まで可愛い♡」

「どんな夢見てるんでしょう?」

「ふふ、幸せそうな顔して♪」

「んぅ⋯⋯フミの、ケーキで⋯⋯ふわふわ⋯⋯飛んでる⋯⋯」

「ステキな夢みたいですね♡」

「そうだ、良いこと思い付いたわ」

 

 

 ニヤリと笑ったコハルちゃんがワッフルを取って戻って来る。

 寝ているアズサちゃんの鼻先を擦るようにワッフルを通過させると。

 

 

「わぁ♡」

「ふふっ、可愛いわね」

「お口をむにむにさせてますっ」

「アズサちゃん天使説♡」

 

 

 あまりの可愛さに全員ノックアウトした。

 コハルちゃんグッジョブ。

 そのまま二つ目のワッフルをはむはむするコハルちゃんも可愛くて困っちゃう。

 先生に自慢しようかな。

 この子達私の嫁で先生の嫁なんすよ♡

 とか遊んでいた所で、突然部屋が明るくなった。

 次の瞬間轟音を伴って空気がびりびりと震える。

 音からして、結構近くに落ちたらしい。

 

 

「わわっ、雷ですか!?」

「大きかったわね」

 

 

 雷が落ちてから雨の勢いだけでなく風の勢いも増してきたようで、窓の外の木が大きくしなっている。

 流石に折れはしないだろうけど、なかなかの強風だ。

 もし先生が大きな風呂敷を手にしていたら全力で止めなくてはならない。

 風呂敷で空を飛ぶのはフィクションなのよ先生。

 と、その時ハナコちゃんが何やら顔色を青くしている。

 

 

「あ⋯⋯」

「ハナコちゃん、どうしたの?」

「忘れていました⋯⋯洗濯物が、まだ外に⋯⋯っ」

「⋯⋯えっ、ヤバ♡」

「ええ!? い、急いで取り込まないと!?」

「ごめんなさいっ、すっかり忘れて⋯⋯!」

「わざとじゃないなら良いわよ! とにかく走って!」

 

 

 急いで玄関、いや勝手口側から!

 ハーレムメンバーを引き連れどたどた廊下を駆け抜ける。

 扉を開けると顔に雨粒が叩き付けられ思わず目を瞑る。

 共用のサンダルに足を突っ込み物干し竿から手当たり次第に回収していくも、全部びちゃびちゃで一部は跳ねた泥まで付いてる。

 こりゃ洗濯機コースだわ。

 入れ替わり立ち代わりで何とか洗濯物を全て回収し終えて一息吐いた私達の所へ小さな足音が近付いてくる。

 目を向ければ、どこか不安げな顔をして銃を手にしたアズサちゃんが立っていた。

 

 

「置いてかないで、私も一緒に⋯⋯!」

 

 

 どこか泣きそうな雰囲気さえあったアズサちゃんを見て、私は着ぐるみパジャマを脱ぎ捨て、出来るだけアズサちゃんを濡らさないようにしながら頭を撫でる。

 

 

「大丈夫、私達はここにいるから。今は外が雨降りだったから、急いで洗濯物を取ってきただけ。アズサちゃんを一人ぼっちになんてさせないから」

「フミ⋯⋯」

「おっとっと♡」

 

 

 濡れるのも厭わず、アズサちゃんが抱き着いてくる。

 震える身体をぎゅっと抱き締めて、優しく背中をぽんぽんと撫でてあげる。

 それを見て、他のみんなもアズサちゃんをぎゅっと抱き締めてあげた。

 結局みんなでどろどろになっちゃったので、仲良くシャワーを浴びたのだった。

 なおヒフミンと私の身体に付いたキスマークが無事バレたのでコハル裁判長から主文後回しを宣告されました。

 まだ刺激が強かったか♡

 

 

 

 

 

 

「さて、大変長らくお待たせしました♡ これより補習授業部による第一回ドキッ♪ 水着だらけの体育館パーティーを始めたいと思います♡」

「いえーい!」

「いえーい?」

 

 

 はい。

 そんな事が有ったので着ていたパジャマ含めて洗濯物は全滅。

 洗濯機にぶち込んでガンガン回しても着替えが追い付かないので、唯一無事だった水着に着替えて体育館に集まっていたのでした。

 しかも途中で停電までしたので、しばらくは出来る事が何も無い。

 非常灯が照らす薄明かりの中、どうせならこのアクシデントも楽しんでしまおうとハナコちゃんが提案したのだった。

 歓声を上げた私に続いてヒフミンも遅れてノってくる。

 流石はゲリラライブでテストをサボった女だ、面構えが違う。

 アズサちゃんはさっきの寝起きのアレでまだ恥ずかしがっていて、コハルちゃんは肌寒そうにしている。

 良かったらくっついても良いのよ♡

 

 

「どれどれ」

「きゃーちべたい♡」

「お、ホントだ。フミ温かいわね?」

「いっそもっとくっついても良いのよコハルちゃん♡」

「それは⋯⋯えっちじゃない?」

「私はコハルちゃんとえっちな事をするのも吝かでない♡」

「や、やぶ⋯⋯?」

「喜んでする、って意味よ♡」

「なるほど⋯⋯って、やっぱりえっちじゃないの!」

 

 

 ぽかぽかと軽く握った手で背中を叩かれる。

 ふぅ、可愛すぎて困っちゃうね。

 

 

 “うーん⋯⋯私も脱ごうか?”

「ええっ!? 先生!?」

 “いや、私だけジャージ着込んでるのもなんか悪い気がして⋯⋯”

「せんせーが風邪引いたら一大事だから辞めて♡」

「それに先生用の水着も無いからな」

 “アズサ、私はスク水を着たい訳では無いんだよ?”

「ンフッ」

 

 

 スク水を着てポーズを決める先生でも想像したのか、ヒフミンが撃沈した。

 めっちゃぴちぴちになってそう。

 

 

「ではみんなで先生に押しくらまんじゅうでもして温まりましょうか♡」

 “ハナコ、それ多分私が潰れるだけだよ”

「じゃあ先生の膝の間や背中に入れてもらうのはどうでしょう?」

 “それなら、まぁ。フミと合わせて二人ずつ温め合えるから良いかな”

「ナチュラルに湯たんぽにされてる♡」

 “懐も心も体も温かいフミは流石だね!”

「後で足つぼ♡」

 “ゆるして!”

 

 

 と言う訳でハナコちゃんとヒフミンを先生に、コハルちゃんとアズサちゃんを私で引き取る事になった。

 最初はみんな照れていたけど、人の温もりには勝てずすぐにほにゃほにゃしていった。

 先生は正面にヒフミン、背中にハナコちゃん。

 私は正面にアズサちゃん、背中にコハルちゃん。

 いや、どう考えても正面ヒフミンは失策なのでは。

 思った通り、ハナコちゃんにバレないように先生に腰へこしてるよヒフミン。

 あれ気持ち良いけど奥に欲しくなってどんどん切なくなってくるんだけどなぁ。

 

 

「んぁー⋯⋯フミ、ホントに温かいわね。冬の間私の所でバイトしない?」

「それなら私もフミが欲しい。この温かさを知ったらもう離れられない」

「うーん、セリフだけ見たらロマンチックなのに実際の扱いはコタツ♡」

 

 

 昨日晩ご飯後に告白してきたアズサちゃんだったけど、恋愛感情から来てるものではないので一旦保留にしてもらった。

 好きって口にする時に、特別な何かを感じるようになったら教えて、と言うと解ってもらえた。

 ドキドキして切なくて、苦しくて嬉しくて。

 そんな矛盾した感情に振り回されてこそ、人を好きになる素晴らしさが解ると思うから。

 

 

「フミを好ましいと思うこの気持ちが、勘違いや気の迷いじゃないと断言出来るように、フミの傍に居たいな」

「私はいつでもいつまでもウェルカム♡ だから離れるとしたらアズサちゃんからだね。私に魅力を感じなくなったか、私より優先したい事が出来たか」

「フミよりも優先⋯⋯か」

 

 

 思う所があるのか、アズサちゃんは少し俯く。

 その額を、私の首横から呼びた指先がぴんとはじく。

 

 

「他の事に構ってる余裕なんて無いわよアズサ。ただでさえ私達を籠絡したシャーレの淫婦なんだから、少し目を離しただけでフミの周りには可愛い女の子が溢れかえるわよ。そしたら、もうアズサが入る隙間なんて無いかも」

「それは⋯⋯イヤ、だな」

「ならしっかりフミを捕まえておくのね。アズサは変な所で頑固だから、ちゃんと自分の言葉で伝えないとダメなんだから」

「分かった。⋯⋯流石コハルだな、私がちょっとでも悩むとすぐに気付いてくれる」

「どれだけ顔を突き合わせて一緒に勉強したと思ってるのよ、友達でしょ?」

「ふふっ、そうだな。友達だ」

「むぅ、私を挟んでイチャイチャとは大胆不敵な♡」

 

 

 伸びた腕をくいと引き寄せコハルちゃんの上半身をより密着させ、私の左側にやってきたぷるぷるほっぺにキスをする。

 すかさず背中に回した手に力を込めて抱き寄せ、右側にやってきたアズサちゃんのぷにぷにほっぺにもキスをした。

 

 

「きゃっ」

「わっ」

「二人とも私の大事な家族にしてあげるから覚悟するよーに♡ めろめろにしちゃうんだから♡」

「⋯⋯もう、フミのえっち♪ 変態♪ 私の傍に終身刑だから♪」

「い、いきなりのちゅーは、ちょっと恥ずかしい⋯⋯」

 

 

 前後から抱き着く力が増し、二人と体温が混ざり合っていく。

 このままベッドインしたいくらいだ。

 先生は先生で、ハナコちゃんをまた口説いていた。

 抑圧されていた分、こうやってバカ騒ぎ出来るのが楽しくて仕方ないみたい。

 そんな状態だからハナコちゃんが浮かべる笑顔も自然なものだし、普段よりずっと可愛くて魅力的だ。

 となると、先生が見逃すはずも無く。

 偽らない本当の自分を手放しに褒められ、嬉しいやら恥ずかしいやらでハナコちゃんは先生の首筋に顔を押し付けてニマニマしちゃう口を隠していた。

 堕ちたな。

 というかこの間ずっとヒフミンは目にハートを浮かべてバレないように先生で幸せになってるけど、明るくなったらびちゃびちゃでバレるんじゃ。

 ⋯⋯いや、水着だからギリ行ける、かな?

 先生の副担任が起立しているのは、まぁ状況が状況だからって言い訳は出来るから良いか。

 

 

 

 

 

 

「っと、電気が」

「復旧しましたね」

 

 

 ジジッ、という音の後で照明に光が宿る。

 眩しいくらいだ。

 なんだかんだ数時間は仲良くくっついて、取り留めのない事をお喋りしていたらしい。

 いつの間にか雨も上がっていて、穏やかな日差しが戻ってきていた。

 

 

「じゃあ、第一回水着パーティーはここまでか。第二回も楽しみにしてる」

「アズサ、第二回とか無いから」

「無いのか? そうか⋯⋯」

「しょんぼりしないの。と言うか今回は大丈夫だったけど次は風邪引くかもしれないじゃない」

「む、それは大変だ。風邪を引いたらフミのご飯が全部お粥になってしまう」

「⋯⋯いや、そうじゃないけどそれも一大事ね」

「期待されててなにより♡ お風呂で温まったらオムライス作ってあげる♡」

「そうだった、オムライスよ!」

 “フミのオムライス美味しいんだよね”

「ですよね♪ あの厚めの玉子も絶妙で♪」

「あら、お二人は味わった事があるんですか? ずるいです♡」

「抜け駆け禁止よ!」

「わわっ、別に抜け駆けした訳では!」

 “よし、逃げろー!”

「きゃあんっ♡ せ、先生?」

「あ、待ちなさい!」

「フミ、追い掛けて!」

「え、このまま?」

 

 

 という訳で前後に二人をくっつけたまま、私と先生はえっちらおっちら大浴場へ向かうのであった。

 なお先生は一緒に入れなかった模様。

 シャーレ戻ったら一緒に入ってあげるから元気だして♡

 なんなら私にいっぱいだして♡

 

 

 

 

 そしてお風呂で温まりご飯も食べて人心地付いた頃。

 乾燥機から取り出した洗濯物を畳み終わり、後のタスクは寝るだけとなった自由時間。

 特にやる事も無いみんなは先生の部屋に集まっていた。

 私はタブレットでちょいちょいシャーレの仕事を片付けつつ、今度シャーレの当番に来てみたいと申し出たコハルちゃんに書類の見方をレクチャー。

 先生はアズサちゃんを抱きかかえながらタブレットで化学の実験動画を流して解説。

 ヒフミンとハナコちゃんはその様子を眺めながらのティータイム。

 先生にプライベートは無いのだ。

 濃厚な女子の匂いに狂うが良い♡

 

 

「いえ、まだです!」

 

 

 ふと、ハナコちゃんが突然声を上げた。

 

 

「このまま終わりだなんて、そんな勿体ない事はさせません!」

「わわっ、どうしたんですかハナコちゃん?」

「突然の雷雨、洗濯物の全滅、そしてみんなで水着パーティー! 確かに楽しいアクシデントではありましたが、せっかくの休日じゃないですか、みんな裸で交わったのに、はいそれじゃお休みなさい、だなんて⋯⋯」

「はっ」

 

 

 そこまで聞いたコハルちゃんは鼻で笑った。

 もはやえっちだ禁止だと騒いでいた頃の純真な恥じらいは無かった。

 

 

「背中流す時に抱き着いてみたり耳に息かけたりしてたけど、フミに反撃されて誰よりもふにゃふにゃに恥ずかしがってたじゃない」

「ウッ」

「その後のヒフミとフミのセクシートークでも余裕そうな顔して耳真っ赤だったし」

「グッ」

「あれよね、ハナコって口では散々思わせ振りな事を言ってる割には純情乙女で可愛いのよね。さっき洗濯物畳んでた時に上機嫌だったけど、あれイヤホンで最近出た『ASMR年上彼氏シリーズ』聴いてたんでしょ。音漏れしてたわよ」

「カハッ」

「ああっ、ハナコちゃん気を確かに!?」

 

 

 容赦の無い三連打にハナコちゃんは崩れ落ちた。

 見事なK.O.勝ちである。

 勝者のコハルちゃんにはクッキーを進呈しよう。

 はい、あーん♡

 

 

「あーん。⋯⋯美味しい、メープルシロップ?」

「当たり♡ 私の好きな味なんだー♡」

「ふーん、じゃあ今フミにキスしたら私にめろめろになっちゃう?」

「やぁん♡ コハルちゃんに手籠めにされちゃう♡」

 

 

 そんな冗談を言い合えるくらいに、コハルちゃんは覚醒を遂げてしまっていた。

 もうハナコちゃんに勝ち目は無いのである。

 こっちを見て口を開けていたアズサちゃんにもクッキーを食べさせてあげると、嬉しそうにもぐもぐした。

 

 

 “うぅん、最初はあんなに人見知りで恥ずかしがり屋さんだったコハルがこんなにたくましくなって”

「人見知りはみんなの前だから大丈夫なだけよ。猥談も不特定多数の前でやらかしたら先生も問答無用で主文後回しだからね、っていうか先生なんだから私達より気を付けなさいよ?」

 “返す言葉もございません⋯⋯”

 

 

 もっともすぎる一撃に先生もしょぼーんとしてしまう。

 下がった頭をアズサちゃんがよしよしすると元気になってたからヨシ!

 ここにきてコハルちゃんの精神的な打たれ強さが著しい伸びを見せ始めた。

 裁判長は閻魔大王に進化したのである。

 ヒフミンは私と切磋琢磨(意味深)しているのですっかり慣れっこ、アズサちゃんはまだまだ知識が足りていない。

 相対的に、いじられ役はハナコちゃんへと引き継がれたのであった。

 でもコハルちゃんもいじられていた仕返しという名目でハナコちゃんに甘えているみたいだし、仲良しの度合いはむしろ深まっている。

 仲良し補習授業部は良いぞ♡

 

 

「と、とにかくですね」

「あ、復活した♡」

「今日一日を締めくくるのに、もう一つくらいイベントが有っても良いと思うんですよ」

 

 

 ヒフミンの介護を受けてハナコちゃんが立ち直った。

 まだ頬と耳が赤いのは見逃してあげてほしい。

 先生の膝の上で首を傾げたアズサちゃんが、口元に人差し指を当てて問い掛ける。

 

 

「具体的に言うと?」

「うふふ⋯⋯♡ 合宿と言えば、合宿所を抜け出すイベントが鉄板ですよね♡」

「えぇ⋯⋯?」

「という訳で、みんなで外へお散歩に行きませんか? トリニティならこの時間でも開いているお店は多いですし、商店街巡りをして食べ歩きとかしてみたくはありませんか?」

「アンタ仮にも正義実現委員会のメンバーである私の前でそれ言う?」

「良いじゃありませんか! ハスミさんだってこないだこっそりパトロールのついでに深夜パフェを貪っ⋯⋯おかわりしていたと言う目撃証言も有りましたし! 意外とみなさん自由に出歩いたりしてますよ、ですよね、ヒフミちゃんっ」

「あはは⋯⋯そ、そう、ですね⋯⋯」

 

 

 ハナコちゃんはまだ知らない。

 同意を求めた相手がブラックマーケットの住民から『ファウスト』の名で呼ばれている大悪党である事を。

 ちなみにコハルちゃんは尊敬する先輩のしょうもないエピソードを聴いて顔を覆ってしまった。

 ただおかわりしていたならまだしも、貪ると形容されてしまう勢いだったらしいのはちょっとフォローが難しい。

 まぁ、休日にみんなと遊びたかったという気持ちは解る。

 なので判断は先生に任せよう。

 

 

「で、どうしますせんせ♡」

 “開いてるお店のピックアップは出来てるよ”

「やん♡ ノリノリ♡」

 “みんなの青春の思い出作りなら、ちょっとくらいはね。それに私もみんなとデート行きたいし”

「両手に花束♡」

「ですって! やりましたね、ハナコちゃん♪」

「ええ、ありがとうございます先生♡」

「お出掛けか⋯⋯いつ出発する? 私も同行する」

「先生が良いなら良いか⋯⋯てかアズサ、なによその言い回しは」

「先生のタブレットに入っていた漫画のセリフだ。結構面白かった」

 “いつの間に!?”

「管理が甘い♡」

 

 

 

 

 

 

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